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家庭医療とは

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家庭医療の概念

北海道家庭医療学センター。
何だかかたい名前だなと思われたかもしれません。我々が「家庭医療」という言葉にあえてこだわっているのにはそれなりの理由があります。ここでは、ずばり「家庭医療」そのものについて説明していきたいと思います。

本輪西ファミリークリニック 草場鉄周

 

家庭医療とはいったいどのような医学分野なのでしょう?

現医学の世界は、小児科/産婦人科のように医療を提供する対象に基づく分類、耳鼻咽喉科/皮膚科のような医療を提供する身体部分に基づく分類、あるいは、麻酔科/外科のように医療提供の方法に基づく分類などが入り乱れて複雑に分岐していますが、家庭医療はそうした分類とは一線を画した特徴を持っています。

「家庭医療は家庭医が提供する医療である」という定義があります。冗談のように思われるかもしれませんが、これが最も正確な定義かもしれません。もっと具体的に言うと、その地域や診療環境で家庭医に求められる医療であると。つまり、家庭医療の具体的な内容を循環器科や小児科のように、取り扱う病気や手技/検査などで厳密に規定することは難しいわけです。例えば、離島でたった一人で働く家庭医に求められるもの、大都会の診療所の家庭医に求められるものは、オーバーラップする部分はあるものの相当異なる訳ですが、いずれも家庭医療であることに何ら変わりはありません。

家庭医とは?

それでは、家庭医とはどのような医者なのでしょうか? 日本の中でも30年ぐらい前には当たり前だった「古き良き時代のまち医者」を何となく思い浮かべていただきたいと思います。地域住民と継続的な人間関係を築いていて、患者一人一人の個性や家族の状況、さらには地域環境も把握し、幼児でも、おじいちゃん、おばあちゃんでも、また、どのような健康問題でも、「専門外」などと言わずに、とにかく診てくれる。呼ばれれば往診もし、場合によっては夜中に診察することもある。そんなイメージです。

これを診療面で詳しく言うと、内科・小児科の病気を中心に、外科や整形外科、皮膚科、耳鼻科、精神科などの一般的な病気に広く対応できる最新の医療知識や技術を持ち、自分で治療できる範囲を的確に判断した上で、専門医の力が必要な場合は専門病院にも速やかに紹介する医者ということになります。

この際、よくある訴え(例えば胸痛)から幅広い病気を思い浮かべながら、命に関わる病気(心筋梗塞など)を素早くチェックし、その後は一般的に多い病気(胸の筋肉痛など)を念頭に入れて、必要な病歴と身体診察を的確に実施し、必要最低限の検査で診断を絞り込む能力が重要となります。初期症状の原因には、複数の臓器(心臓、肺、筋肉、皮膚、血管など)の病気が候補に挙がる訳ですから、細かく専門に分かれていない家庭医に最初に受診することは無駄な検査や誤診を防ぐ上でも合理的です。家庭医から必要に応じて専門医に紹介することで、専門医も自分の専門領域の特殊検査や治療に専念することができます。

家庭医と患者、そしてその家族

家庭医は患者と長年の人間関係を築いていることが多く、患者の価値観や人生観、そして家族の状況なども広く把握しています。そのため、なぜこうした病気になってしまったのか、この病気が患者にとってどういう意味を持つのか、ということも考えます。そして、こうした患者の思いに対する理解と前述した医師としての専門的判断に基づいて、患者と共に今後の治療を検討し決断していくことになります。時には、患者の家族のような気持ちになることもあるかもしれません。家庭医は、そうした気持ちも自覚しながら、「この人の役に立ちたい」と自然に思える人間臭い医者でもあります。

また、診療は医師と患者の1対1で完結することはなく、生活習慣病の指導や在宅医療では家族との関わりが重要となり、患者を取り巻く家族を視野に入れた診療が欠かせません。そして、病気や障害を抱えながら地域で暮らす人のサポートに欠かせない介護保険サービスや福祉制度を上手に活用する上で、ケアマネージャー・地域の保健師など多くの医療福祉関係者と協働することも求められます。

まとめると、地域住民が日常の様々な健康問題を気軽にまず相談できる、最も身近で信頼できる医師が家庭医であります。

地域への広がり

ここまで述べたことは診療所に来院する患者を対象にした話題でしたが、家庭医はこの診療所の壁の向こうの世界、つまり地域社会全体も視野に入れていきます。

家庭医は地域の保健・福祉にも積極的に関わり、地域の健康増進にも関わっていきます。小さな村にただ一つの診療所であれば、村民の健康問題を村の保健福祉担当者と共に探り、協力して村の行政を動かしていくこともあります。都市部であれば、地域の医療保険福祉関係者との草の根ネットワークを構築し、様々な健康問題に対してアプローチすることもあります。

この考え方の背景には、健康問題は個人の生活習慣や遺伝のみならず、地域のコミュニティ・文化の影響も大きく受けるという事実があります。例えば、職場でほとんどの従業員が喫煙する環境で、一人禁煙を貫くことの難しさを考えれば、容易に想像できるでしょう。診療所で一人の喫煙者に熱心に禁煙を推奨するよりも、職場を分煙とするよう経営者にアプローチする方が有効かもしれません。これと同様に、地域住民の考え方や生活習慣、慣習、行政制度など様々な社会システムに家庭医は関わっていくわけです。

家庭医が実践する家庭医療

以上、家庭医の役割、そして家庭医が実践する家庭医療について説明してきました。何だ、そんな医者は近くにずっといるぞと思われた方もいるでしょう。また、そんなスーパードクターが本当にいるのかといぶかしく感じた方もいるかもしれません。

ただ、北海道家庭医療学センターに所属する家庭医、また、家庭医を目指して研修中の医師が日々目指している医療のあり方はここに述べた通りです。いまだ完全に実践できているわけではありませんが、こうした医療を通じて地域の方々が安心して暮らし、病気を抱えながらも充実した人生を送るためのお役に立てればと願っています。

最後に、より詳しい学術的な家庭医療の背景を知りたい方は、他のページにじっくり記しておりますので参考にどうぞ。

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