臨床研修 家庭医療 | 北海道家庭医療学センター

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家庭医療の実践

HCFMが実践する家庭医療は「家庭医療」で述べた通りですが、実践のフィールドとして都市型・地方型と2つのパターンを持っています。都市型としては、室蘭地区を基盤とする本輪西ファミリークリニックを直接運営し、地方型としては、更別村国保診療所と寿都町立寿都診療所に家庭医を派遣し両町村の医療を担っています。

都市型の家庭医療の特徴

・ 近隣の診療所や病院との間で検査や紹介を通じた密接な連携
・ 多くの保健福祉機関や医療福祉関係者との複雑な連携体制
・ 独居や高齢夫婦世帯に対する訪問診療のニーズの大きさ
・ 複数の医療機関を渡り歩く患者が心理社会的問題を抱えて受診するケースの多さ

室蘭地区では、こうした特徴をふまえて、小児から高齢者までの幅広い外来診療に加えて、在宅療養支援診療所として多くの訪問診療や施設診療を展開しています。また、在宅でのターミナルケアをホスピスと連携しながら推進しているのも特徴です。
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地方型の家庭医療の特徴

・ 近隣の専門医療が乏しいことによる、整形外科などの内科・小児科以外の幅広い医療分野へのニーズの高さ
・ 24時間対応の救急体制や有床診療所による入院機能維持への住民の期待
・ 公的診療所の場合は町村の医療保健福祉行政と密接に連携

十勝管内の更別国保診療所では2001年、後志管内の寿都診療所では2005年から北海道家庭医療学センターの医師が複数名常駐し、人口約3500人規模の町村の中核的な有床診療所(19床の入院ベッド)として地方型家庭医療を展開してきました。乳幼児健診、学校医活動、健診活動、町村の保健師や医療福祉行政担当者との密接な連携など、診療所外での活動も幅広く行い、診療所では多くの外来診療や入院治療、そして24時間の救急体制も整備しています。
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この3つのタイプの家庭医療を今後も北海道家庭医療学センターは展開し、それぞれのモデルとなるような診療を展開するべく、より一層の充実を図っていきます。

家庭医の養成

こうした家庭医療の実践に不可欠なのは質の高い家庭医の存在です。しかし、「家庭医療と北海道家庭医療学センターの歴史」で記したように、日本の中でこうした家庭医を専門的に養成するシステムは長らく存在しませんでした。

北海道家庭医療学センターでは、家庭医を目指す医学生・研修医に対して広く教育プログラムを提供し、特に専門医養成コースでは家庭医療専門医の養成に力を注ぎ、2008年3月までに27名の家庭医を輩出してきました。研修修了者はセンターに残って指導医として活躍する者、道内の地域で家庭医として活躍する者、国内各地で家庭医療指導医として活躍する者と進路は多彩です。

この家庭医療学専門医コースは、いわゆる後期研修と言われる卒後3年目以降の医師を対象とするもので、1999年からの10年間の歴史があります。前章で示した6つの直営診療所で、経験ある家庭医療指導医の監督のもと実際に診療を担当し、まさに「家庭医として生きる」ことを現場で学んでいきます。これに、2007年より内科や小児科の病棟研修も加わり、2008年からは勤医協中央及び札幌病院・江別市立病院など道内で研修環境が充実した施設と幅広く提携していくこととなります。詳細は「後期研修」の項をご覧ください。2011年4月には7名の研修医が在籍することとなりますが、現状に満足することなく、更に質の高い研修を提供するべく不断の改善を続けていきます。

こうした後期研修の前段階に医学部卒業直後の2年間で実施される卒後初期研修があります。北海道家庭医療学センターはこの初期研修医に対してハーフデイバックという制度のもとで、1997年より家庭医療研修を提供してきました。これは、初期研修中に内科や外科・産婦人科などの病院研修を続ける間にも、週に半日は診療所での外来や訪問診療の機会を提供し、家庭医としての基礎となる診療能力を養成することが目的でした。事実、これまで当センターの後期研修修了者のほぼ100%がこの研修を受けてきました。

しかし、2004年の初期研修の必修化以後は全国の研修レベルが次第に向上し、後期研修を目指す初期研修医が多様な病院からやってくる傾向が強まってきました。そこで、2008年からはハーフデイバックを一部の病院で継続する一方で、道内の初期研修実施病院と幅広く提携して、初期研修の間から家庭医療にふれる機会を提供するプログラムをスタートします。こちらも詳細は「初期研修」の項をご覧ください。

最後に、医学生への家庭医療の学びの提供ですが、1996年の創設以来継続してきたエクスターンシップという体験型合宿研修が伝統あるプログラムです。洞爺湖畔のログハウスを利用したり、十勝平野の雄大な景色を眺めながら往診をしたりと、頭だけでなく体で家庭医療を理解することが目的です。2008年からはプログラム内容を一新してより魅力あるものにしていきます。詳細は「エクスターンシップ」の項をご覧ください。

また、北海道家庭医療学センターから関東や関西あるいは道内にスタッフやレジデントが出張して、ワークショップなどの教育を提供する機会もあります。日本家庭医療学会 夏期セミナーは家庭医療に関心ある学生交流の場としては最大で例年ワークショップを担当していますし、関西で家庭医療に関心のある医学生が集うFPIG関西の冬期合宿、更には北海道内の旭川医大プライマリ・ケアを学ぶ会のセミナーなどでも家庭医療の魅了を少しでも伝えるべく頑張っています。

医学生の頃に持っている家庭医への憧れの気持ちを大切にして、具体的な進路へと結びつけてもらうためにも、医学生へのアプローチは今後もずっと大切にしていきます。

北海道の家庭医療の発展のために

ここまで述べたような12年間のミッションの実践を通じて、室蘭/更別/寿都の皆さんから一定のご評価をいただき、また30名弱の家庭医を養成することができました。特に地方部門は、なかなか医師が根付かない僻地医療のあり方に一石を投じるモデルとして各方面から注目していただき、チーム医療で研修医を育てながら再生産を繰り返す「地域循環型モデル」として北海道や国の諸機関からも高い評価を受けております。

このモデルは、いわば河川へのサケの放流のようなものです。従来は、サケをただ乱獲するように、都市部で成長してきた医師が大学から地方の診療所に派遣され、地方はありがたくその恩恵をただ受けるという構図でした。これでは、地方の過重勤務で疲弊した勤務医が都市部で開業するという流れを変えることは困難で、サケが枯渇するように地方から医師が減っていくのは必然です。今後はサケの稚魚を河川に放流して、将来に備えるのと同じように、こうした診療所の医療を志す若手医師を地方で育てて、いずれは地方に根付いて働いてもらえるように環境を整えていくことが大切だと思います。そのためには、チーム医療で安全かつ満足度の高い研修環境を指導医と地域がタッグを組んで作り上げることが重要です。

お金や強制などで地方に医師を縛り付ける時代はもう終わろうとしており、地方の医療を心から楽しむ医師をいかに養成するかが21世紀の地方の医療充実のための最優先課題です。北海道家庭医療学センターは様々な機会を通じて、こうした考えを各方面にアピールし、北海道の医療を少しでも良くしていくために草の根から貢献していくつもりです。

また、その一方で室蘭のような中規模の都市では在宅医療の受け皿がまだまだ不足しており、今後の超高齢化社会の中で行き場のない高齢者が多数出てくることが予想されます。室蘭地区では、室蘭/登別で合計15万人の人口規模がある地区でたった2つしか在宅療養支援診療所がない現実をふまえて、効率よく複数の医師チームで24時間対応の在宅医療を展開していきます。そして、こうした地方都市の在宅医療を中核とした家庭医療のあり方のモデルを提示していければと考えています。

日本の家庭医療の発展のために

家庭医療の歴史で記したように、日本の家庭医療はようやく産声を上げたような段階です。その考え方もまだ整理されていませんし、専門医の認証や養成システムなども学会レベルではここ数年動き始めたにすぎません。

北海道家庭医療学センターは12年間の積み重ねから得た組織としての学びを、こうした全国レベルの学会や行政機関、そしてシンポジウムなどでお伝えすると同時に、代表が日本家庭医療学会の理事として直接学会運営に携わり、各種の制度構築に汗を流すことによって、日本全体の家庭医療の発展に貢献してきました。例えば、日本家庭医療学会の学会認定後期研修プログラムは当センターの後期研修の研修目標を土台にして構築されており、制度設計の際はセンターの関係者が中心となりました。

北海道家庭医療学センターは今後も日本の家庭医療をリードできるような組織であり続けていきたいと思っています。

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