
医療法人 北海道家庭医療学センター
平成20年3月24日
1.本輪西ファミリークリニック(本部)
2.栄町ファミリークリニック
1.更別村国民健康保険診療所
2.寿都町立寿都診療所
3.北星ファミリークリニック
4.国民健康保険上川医療センター
・ 医師 23名 (上級スタッフ6名、一般スタッフ3名、フェロー4名、後期研修医10名)
・ 看護師 5名
・ リハビリスタッフ 3名
・ 事務 9名
・ 良質な家庭医療の実践
・ 良質な家庭医の養成
・ 北海道及び日本の家庭医療の発展に対する貢献
〒050-0065 北海道室蘭市本輪西町3-36-9
本輪西ファミリークリニック 北海道家庭医療学センター事務
電話: 0143-55-1212 FAX: 0143-55-3000 E-mail:info@hcfm.jp
HCFMが実践する家庭医療は「家庭医療」で述べた通りですが、実践のフィールドとして都市型・地方型と2つのパターンを持っています。都市型としては、室蘭地区を基盤とする本輪西ファミリークリニックを直接運営し、地方型としては、更別村国保診療所と寿都町立寿都診療所に家庭医を派遣し両町村の医療を担っています。
・ 近隣の診療所や病院との間で検査や紹介を通じた密接な連携
・ 多くの保健福祉機関や医療福祉関係者との複雑な連携体制
・ 独居や高齢夫婦世帯に対する訪問診療のニーズの大きさ
・ 複数の医療機関を渡り歩く患者が心理社会的問題を抱えて受診するケースの多さ
室蘭地区では、こうした特徴をふまえて、小児から高齢者までの幅広い外来診療に加えて、在宅療養支援診療所として多くの訪問診療や施設診療を展開しています。また、在宅でのターミナルケアをホスピスと連携しながら推進しているのも特徴です。
詳しくは
・ 近隣の専門医療が乏しいことによる、整形外科などの内科・小児科以外の幅広い医療分野へのニーズの高さ
・ 24時間対応の救急体制や有床診療所による入院機能維持への住民の期待
・ 公的診療所の場合は町村の医療保健福祉行政と密接に連携
十勝管内の更別国保診療所では2001年、後志管内の寿都診療所では2005年から北海道家庭医療学センターの医師が複数名常駐し、人口約3500人規模の町村の中核的な有床診療所(19床の入院ベッド)として地方型家庭医療を展開してきました。乳幼児健診、学校医活動、健診活動、町村の保健師や医療福祉行政担当者との密接な連携など、診療所外での活動も幅広く行い、診療所では多くの外来診療や入院治療、そして24時間の救急体制も整備しています。
詳しくは
この3つのタイプの家庭医療を今後も北海道家庭医療学センターは展開し、それぞれのモデルとなるような診療を展開するべく、より一層の充実を図っていきます。
こうした家庭医療の実践に不可欠なのは質の高い家庭医の存在です。しかし、「家庭医療と北海道家庭医療学センターの歴史」で記したように、日本の中でこうした家庭医を専門的に養成するシステムは長らく存在しませんでした。
北海道家庭医療学センターでは、家庭医を目指す医学生・研修医に対して広く教育プログラムを提供し、特に専門医養成コースでは家庭医療専門医の養成に力を注ぎ、2008年3月までに27名の家庭医を輩出してきました。研修修了者はセンターに残って指導医として活躍する者、道内の地域で家庭医として活躍する者、国内各地で家庭医療指導医として活躍する者と進路は多彩です。
この家庭医療学専門医コースは、いわゆる後期研修と言われる卒後3年目以降の医師を対象とするもので、1999年からの10年間の歴史があります。前章で示した6つの直営診療所で、経験ある家庭医療指導医の監督のもと実際に診療を担当し、まさに「家庭医として生きる」ことを現場で学んでいきます。これに、2007年より内科や小児科の病棟研修も加わり、2008年からは勤医協中央及び札幌病院・江別市立病院など道内で研修環境が充実した施設と幅広く提携していくこととなります。詳細は「後期研修」の項をご覧ください。2011年4月には7名の研修医が在籍することとなりますが、現状に満足することなく、更に質の高い研修を提供するべく不断の改善を続けていきます。
こうした後期研修の前段階に医学部卒業直後の2年間で実施される卒後初期研修があります。北海道家庭医療学センターはこの初期研修医に対してハーフデイバックという制度のもとで、1997年より家庭医療研修を提供してきました。これは、初期研修中に内科や外科・産婦人科などの病院研修を続ける間にも、週に半日は診療所での外来や訪問診療の機会を提供し、家庭医としての基礎となる診療能力を養成することが目的でした。事実、これまで当センターの後期研修修了者のほぼ100%がこの研修を受けてきました。
しかし、2004年の初期研修の必修化以後は全国の研修レベルが次第に向上し、後期研修を目指す初期研修医が多様な病院からやってくる傾向が強まってきました。そこで、2008年からはハーフデイバックを一部の病院で継続する一方で、道内の初期研修実施病院と幅広く提携して、初期研修の間から家庭医療にふれる機会を提供するプログラムをスタートします。こちらも詳細は「初期研修」の項をご覧ください。
最後に、医学生への家庭医療の学びの提供ですが、1996年の創設以来継続してきたエクスターンシップという体験型合宿研修が伝統あるプログラムです。洞爺湖畔のログハウスを利用したり、十勝平野の雄大な景色を眺めながら往診をしたりと、頭だけでなく体で家庭医療を理解することが目的です。2008年からはプログラム内容を一新してより魅力あるものにしていきます。詳細は「エクスターンシップ」の項をご覧ください。
また、北海道家庭医療学センターから関東や関西あるいは道内にスタッフやレジデントが出張して、ワークショップなどの教育を提供する機会もあります。日本家庭医療学会 夏期セミナーは家庭医療に関心ある学生交流の場としては最大で例年ワークショップを担当していますし、関西で家庭医療に関心のある医学生が集うFPIG関西の冬期合宿、更には北海道内の旭川医大プライマリ・ケアを学ぶ会のセミナーなどでも家庭医療の魅了を少しでも伝えるべく頑張っています。
医学生の頃に持っている家庭医への憧れの気持ちを大切にして、具体的な進路へと結びつけてもらうためにも、医学生へのアプローチは今後もずっと大切にしていきます。
ここまで述べたような12年間のミッションの実践を通じて、室蘭/更別/寿都の皆さんから一定のご評価をいただき、また30名弱の家庭医を養成することができました。特に地方部門は、なかなか医師が根付かない僻地医療のあり方に一石を投じるモデルとして各方面から注目していただき、チーム医療で研修医を育てながら再生産を繰り返す「地域循環型モデル」として北海道や国の諸機関からも高い評価を受けております。
このモデルは、いわば河川へのサケの放流のようなものです。従来は、サケをただ乱獲するように、都市部で成長してきた医師が大学から地方の診療所に派遣され、地方はありがたくその恩恵をただ受けるという構図でした。これでは、地方の過重勤務で疲弊した勤務医が都市部で開業するという流れを変えることは困難で、サケが枯渇するように地方から医師が減っていくのは必然です。今後はサケの稚魚を河川に放流して、将来に備えるのと同じように、こうした診療所の医療を志す若手医師を地方で育てて、いずれは地方に根付いて働いてもらえるように環境を整えていくことが大切だと思います。そのためには、チーム医療で安全かつ満足度の高い研修環境を指導医と地域がタッグを組んで作り上げることが重要です。
お金や強制などで地方に医師を縛り付ける時代はもう終わろうとしており、地方の医療を心から楽しむ医師をいかに養成するかが21世紀の地方の医療充実のための最優先課題です。北海道家庭医療学センターは様々な機会を通じて、こうした考えを各方面にアピールし、北海道の医療を少しでも良くしていくために草の根から貢献していくつもりです。
また、その一方で室蘭のような中規模の都市では在宅医療の受け皿がまだまだ不足しており、今後の超高齢化社会の中で行き場のない高齢者が多数出てくることが予想されます。室蘭地区では、室蘭/登別で合計15万人の人口規模がある地区でたった2つしか在宅療養支援診療所がない現実をふまえて、効率よく複数の医師チームで24時間対応の在宅医療を展開していきます。そして、こうした地方都市の在宅医療を中核とした家庭医療のあり方のモデルを提示していければと考えています。
家庭医療の歴史で記したように、日本の家庭医療はようやく産声を上げたような段階です。その考え方もまだ整理されていませんし、専門医の認証や養成システムなども学会レベルではここ数年動き始めたにすぎません。
北海道家庭医療学センターは12年間の積み重ねから得た組織としての学びを、こうした全国レベルの学会や行政機関、そしてシンポジウムなどでお伝えすると同時に、代表が日本家庭医療学会の理事として直接学会運営に携わり、各種の制度構築に汗を流すことによって、日本全体の家庭医療の発展に貢献してきました。例えば、日本家庭医療学会の学会認定後期研修プログラムは当センターの後期研修の研修目標を土台にして構築されており、制度設計の際はセンターの関係者が中心となりました。
北海道家庭医療学センターは今後も日本の家庭医療をリードできるような組織であり続けていきたいと思っています。
北海道家庭医療学センターの歴史を考える上で、日本における家庭医療の歴史を簡単に理解することが助けになります。
日本では明治時代にドイツ医学を採用し、東大を頂点とする帝国大学医学部に医局講座制度が少しずつ整備されていきました。西洋の最新医学の吸収と医学研究はそうした講座で精力的に行われ、科学の進歩に伴って、欧米と同様の専門分化が進んでいきました。その一方で、町のお医者さん、すなわち開業医は地元住民に密着した存在として定着し、子供からお年寄りまで幅広く診察する医療がどこででも当たり前のように続いていました。
しかし、欧米と同じく、戦後の高度成長期には病院が急増し、そこに配属される専門医の数もうなぎ上りに増えていきました。国民も高度な医療機器が整備された大病院を志向する傾向が強まり、「3分診療」にも関わらず患者が殺到するのが当たり前になっていきました。
しかし、日本の場合は、1960年代の欧米のようにGP(総合的な医療を行う医師)、すなわち一般的な開業医の提供する医療を「家庭医療」という専門的な医療分野と位置づけて医療システム全体を再構築することはありませんでした。そして、フリーアクセスが患者の権利として殊更強調される中で診療所と病院の機能分化も明確にならないまま、現在に至っています。一度、1985年に「家庭医に関する懇談会」という組織が厚生省(当時)主導で作られ、こうした問題を検討したようですが、残念ながら議論は進まなかったようです。その後、1986年に家庭医療学研究会が発足しますが、なかなか大きな発展は見られず時が過ぎていきました。
北海道家庭医療学センターはこうした日本の医療情勢の中で、カナダで家庭医療専門研修を受けた初代所長の葛西龍樹と医療法人社団日鋼記念病院理事長(当時)の西村昭男の手で1996年4月に北海道室蘭に開設されました。ミッションは家庭医療がなかなか発展しない日本で本格的に家庭医療学の診療・教育・研究を推進することであり、早速、翌年1997年5月からは4年間の臨床研修プログラムを開始しました。
卒後初期研修が必修化されていない中、厳しい認定基準をクリアして臨床研修病院の指定を受けた日鋼記念病院での2年間の病棟研修、そして、室蘭市内のクリニックや岐阜、沖縄の診療所を舞台にした2年間の診療所研修。家庭医療という分野がまだ理解されにくい医療現場で、初期の研修医は多くの困難にぶつかり、およそ半数程度しか研修を修了できない厳しい状況が続きました。
しかし、そうした中でも、北海道の地域医療の一翼を担う使命を抱き、2001年には北海道十勝の更別村にある更別村国保診療所に研修医を派遣。2004 年には滋賀県竜王町の弓削メディカルクリニックと研修協力体制を築き、2005年からは北海道後志・寿都町の寿都町立診療所、2006年からは北海道礼文町の国保船泊診療所に研修医を派遣するなど、少しずつ研修のネットワークを広げていき、各地の地域医療に貢献する実績を積み上げていきました。
それと同時に、2002年には研修修了者がスタッフとして初めて赴任し、指導体制も年々少しずつ整備され、研修環境も整えられていきました。当センターの研修体制に対する評価も高まり、全国の研修施設から見学者が来訪し、北海道や厚労省からも視察を受けるまでになりました。2007年度厚生労働白書にも「総合的な診療に対応できる医師の養成」というテーマで掲載され、日本家庭医療学会の学会認定家庭医療研修プログラムのひな形にもなりました。
2006年、センター設立10年の節目となる年、初代所長の葛西龍樹が福島県立医大地域・家庭医療部の教授としてセンターを去るにあたり、修了生でもある草場鉄周が第2代所長に赴任しました。新体制を迎えて、メンターシップ制度の導入などのきめ細かい研修体制の構築、都市部・地方での家庭医療モデルの確立に力を注ぎ、日本家庭医療学会や北海道医療対策協議会などで日本、そして北海道の家庭医療・地域医療の推進に向けて活動してきました。
そして、2008年4月、12年間に渡ってセンターを暖かく見守ってくれた医療法人母恋の傘下から離れて独立し、「医療法人 北海道家庭医療学センター」として新たな一歩を踏み出すこととなりました。 これを契機に、より一層、北海道の地域医療への貢献や家庭医の養成に力を注ぐと同時に、現場の実践に基づく臨床研究の推進などへ活動の幅を広げ、北海道家庭医療学センターは更なる発展を目指していきたいと考えています。21世紀が家庭医療の世紀だったと後世の人々から評価される日を夢見て。
2008年5月2日 Japan Medicineに掲載されました。
・新たに来年度開設を目指す診療所
・家庭医を目指す初期研修医をサポートするシステムについて取り上げられています。
2008年5月2日 Japan Medicineに掲載されました。
・新たに来年度開設を目指す診療所
・家庭医を目指す初期研修医をサポートするシステムについて取り上げられています。