【EBMの学び】高齢者への骨粗鬆症予防

STEP1 臨床患者に即したPI(E)CO
【評価を行った日付】
 2015年5月4日
【臨床状況のサマリー】
 88歳女性。腰部脊柱管狭窄症、腰椎圧迫骨折疑いで他院にて保存的加療中だった。訪問リハビリ目的に当院紹介となり、外来受診となった。診療も当院への転医を希望されたため、継続して診療に当たることとなった。事前に当院理学療法士からの依頼があり、骨密度を評価したところ、YAM 55.77%と低値だった。高齢であるがADLはほぼfullである。これまで、骨粗鬆症は指摘されていたようだが、特に治療はされていなかった。88歳と高齢であり、治療のメリットと副作用のデメリットを考え、骨粗鬆症に対する治療を行うか否かを迷っている。
 P;80代女性
 I(E);骨粗鬆症の薬物治療を行う群
 C;骨粗鬆症の薬物治療を行わない群
 O;骨折の発生率

STEP2 検索して見つけた文献の名前
【見つけた論文】
Safety and Efficacy of Risedronate in Reducing Fracture Risk in Osteoporotic Women Aged 80 and Older: Implications for the Use of Antiresorptive Agents in the Old and Oldest Old

STEP3;論文の評価
STEP3-1.論文のPECOは患者のPECOと合致するか?

 P;骨粗鬆症の80歳以上の女性
 I(E);リセドロネート5mg/日+カルシウム1000mg/日を3年間投与
 C;プラセボ+カルシウム1000mg/日を3年間投与
   ※介入群、対照群ともに血清中の25ヒドロキシビタミンDの値が40nmol/Lを下回るときにはビタミンD 500IU/日を投与した。
 O;椎体骨折の発生率
 →患者のPECOと (合致する ・ 多少異なるがOK ・ 大きく異なるため不適切)

STEP3-2論文の研究デザインの評価;内的妥当性の評価
【①研究方法がRCTになっているか?隠蔽化と盲検化はされているか?】
 →ランダム割り付けが ( されている ・  されていない )
 →隠蔽化が      ( されている ・  されていない )
 →盲検化が      ( されている ・  されていない )
 実際のTableで介入群と対照群は同じような集団になっているか?
 →( なっている ・ なっていない;どう異なるか?)
【②解析方法はITT(intention to treat)か?】
 →ITTが ( されている ・ されていない)

STEP3-3論文で見いだされた結果の評価
【①治療効果の有無; P値を確認する】
 リセドロン投与群がプラセボ群に比べて新たな椎体骨折の危険性を81%減少させた。(P<0.001) 【②治療効果の大きさ;比の指標と差の指標を確認する】  ・RR(あるいはHR・OR)を確認する   1年後、新たな椎体骨折の発生率 プラセボ群10.9%、介入群2.5%   →HR=0.19   3年後、新たな椎体骨折の発生率 プラセボ群24.6%、介入群18.5%   →HR=0.56  ・ARRとNNTを計算する   1年後 ARR=8.4% NNT=11.9   3年後 ARR=6.1% NNT=16.4 【③治療効果のゆらぎ;信頼区間を確認する】  1年後 95%CI=0.09-0.40 P<0.001  3年後 95%CI=0.39-0.81 P=0.003 ※他にこの論文について気になったこと ・研究期間が1993年~1998年と時代が古い ・製薬会社Procter and Gamble Pharmaceuticals(P&Gの米国法人、現在は製薬部門は他社に委譲している)がスポンサーとなっている STEP4患者への適応
【①論文の患者と、目の前の患者が、結果が適応できないほど異なっていないか?】
 ・年代、椎体骨折の発生率という点では合致している。
 ・人種の違いがある(北米、ヨーロッパ、オーストラリア)
 ・日本国内での添付文書上での投与量は2.5mg/日である。
【②治療そのものは忠実に実行可能か?】
 リセドロン酸ナトリウム(商品名:アクトネル、ベネット)は国内では2.5mg、17.5mg(週1回)、75mg(月1回)の製剤が発売されている。
 リセドロン2.5mgは通常毎日早朝空腹時に内服し、その後30分は横にならないようにしなくてはならない。それがこの患者さんに可能かどうか、ご家族が対応出来るかどうか確認する必要がある。
 また、週1回の製剤、月1回の製剤も発売されているので、それなら対応可能かを確認する必要がある。
【③重要なアウトカムはコストや害を含めて全て評価されたか? 】
 ・非椎体骨折の発生率に関しては有意差を認めていない。(80歳未満では有意差があったが、80歳以上では有意差がなかった)
 ・有害事象について吐き気、腹痛、消化不良、嘔吐、胃腸障害、深刻な上部消化管有害事象の有無について評価され、両群で有意差はなかった。
 ・週1回の製剤、月1回の製剤も発売されているが、これらが同様の結果が得られるものなのか、副作用の発症率などを別に検討する必要がある。
【④患者の考え・嗜好はどうなのか?】
 ・骨粗鬆症の治療については次回の外来で相談することとしていたため、ご本人の希望についてはまだ確認出来ていない。
 ・リハビリに関しては意欲的である。当院PTが訪問リハビリで関わっているので普段の様子を確認していきたい。

【開催日】
2015年5月13日(水)

認知症の人の心理的理解 パーソン・センタード・ケア

―文献名―
大嶋光子,中村真規子 「認知症の人の心理的理解 パーソン・センタード・ケアの一考察」 太成学院大学紀要

―要約―
 認知症の人は何もわからなくなってかえって楽ではないかと思われがちであるが、認知症の本人の語りから、自分が壊れていくようなおびえと不安を抱えて生きていることがわかっている。認知症の治療には①薬物療法、②脳活性化リハビリテーション、③介護者や家族の対応がある。③のように、身近な者による個別性の高い治療ができる可能性があり、その可能性を生かすため、認知症の理解を深め、認知症の人や介護者の尊厳を高めるパーソン・センタード・ケアについて考察を行う。

・認知症の心理的理解の方法
①認知症の人のためのアセスメントツール センター方式
 認知症の人を支えるチームで情報を集約し、お互いの気づきやアイディアをもとに会話しながら「その人を知る」ためのアセスメントツール。
②バリデーション
 たとえケアする側からみて違っていても、認知症のその人にとって現実であることを理解し、訴えや行動を否定しないで、受け入れることから始めるコミュニケーション法。
③精神的ケアの20か条
 室伏が1987年に述べた、老年期に精神障害(神経症、精神病、痴呆)をもつ患者の生活全般をとらえて、共通して心がけるべきケアの原則。
④ブレーンストーミング法を用いた他者理解
 「あなたが認知症になったときに望むケア」をテーマに認知症介護指導者研修の研修生に行われたブレーンストーミング法の実施報告。

・最新の認知症ケア パーソン・センタード・ケア
 最近、認知症の当事者が自らの気持ちや環境について、もしくは望む支援について語り始めている。自らの気持ちに代表されるように「その人らしさ」という言葉が新たな認知症ケアのキーワードになっている。
 英国ブラッドフォード大学認知症研究グループTom Kidwood教授の造語であるパーソンフッド(personhood)に由来。パーソンフッド:「一人の人として、周囲の人と関わりをもち、周囲から受け容れられ、尊重され、本人もそれを実感していること」
そのパーソンフッドを核として、それを維持し、認知症の人の生活の質を高めていくケアのあり方が「パーソン・センタード・ケア」である。
認知症を持つ人には「よい状態」と「よくない状態」がある。

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よい状態の指標があれば、パーソンフッドが保持されていることを示す。
パーソンフッドが損なわれ、認知症の人と介護者の間に悪循環が起こる原因となるものは「悪性の社会心理」と名付けられた。(下表)

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ケアする者はパーソン・センタード・ケアを実践するために、パーソンフッドを損なう悪性の社会心理を改善、排除し、人としてのニーズを満たす積極的な関わりを提供していかなければならない。

【開催日】
2014年9月3日(水)

ユマニチュード

―文献名―
本田美和子/イヴ・ジネスト/ロゼット・マレスコッティ.マニチュード入門.2014年

―要約―
はじめに
ユマニチュード(Humanitude)はイヴ・ジネストとロゼット・マレスコッティの2人によってつくり出された、知覚・感情・言語による包括的コミュニケーションにもとづいたケアの技法。
「人とは何か」「ケアをする人とは何か」を問う哲学と、それにもとづく150を超える実践技術から成り立つ。
認知症の方や高齢者のみならず、ケアを必要とするすべての人に使える、たいへん汎用性の高い技法。

Section1 ユマニチュードとは何か
1 ケアをする人と受ける人
・日常の風景
・それは防御かもしれない
2 その人に適したケアのレベル
・ケアのレベルを設定する
 ①健康の回復を目指す(たとえば肺炎を治す)。
 ②現在ある機能を保つ(たとえば脳梗塞後の麻痺が進行しないようにする)。
 ③回復を目指すことも、現在ある機能の維持をすることも叶わないとき、できるかぎり穏やかで幸福な状態で最後を迎えられるように、死の瞬間までその人に寄り添う(たとえば、末期のがんの緩和ケアを行う)。
・誤ったレベルのケアは害である
3 害を与えないケア
・なぜ罪悪感を抱いてしまうのだろう・・・
・強制ケアが健康を害している
・睡眠を妨げない
 ・記憶の保持が困難になった人でも、幸せな気分で眠りについたという思いは感情記憶にとどまりますから、就寝時のケアは大切なのです。
 ・夜間の安否確認のための訪問や、失禁していないかと確認するためのおむつ交換がどれほど悪い影響をもたらしているか想像できるでしょう。
・抑制はしない
 ・入院の原因となった肺炎の治療が終わった2週間目には歩けなくなっている、ひとりでは食べられなくなっている、という皮肉な現実がある。
 ・「生きているものは動く」「動くことが生きていることだ」を当たり前に受け止めるケアの文化を育て、ケアの方法を変えていくことが必要です。
・わきを持ち上げない
 ・肩関節の脱臼に繋がる危険性があります。
 ・人の身体の動きを知ったうえで立位を介助する方法を正しく学び訓練することが必要です。
4 人間の「第2の誕生」
 ・ユマニチュードは、この「人と人との関係性」に着目したケアの技法です。
 ・ユマニチュードは、自分も他者も「人間という種に属する存在である」という特性を互いに認識し合うための、一種のケアの哲学と技法です。
 ・その中心に位置するのはケアを受ける人とケアをする人との「絆」です。
・もし他者との絆がなければ
 ・自分が人間的存在であると認識することができます。つまりこれが第2の誕生です。

Section2 ユマニチュードの4つの柱
・人間の尊厳を取り戻すために
 ・(1)その能力や状態を正しく観察し、評価と分析を行うこと。
 ・(2)見つめ、話しかけ、触れ、立つことや移動を効果的にサポートすること。
 ・(3)その行動の抑制も強制も行わない環境をつくること。
1 ユマニチュードの「見る」
・ポジティブな見方とネガティブな見方
 ・水平に目を合わせることで「平等」
 ・正面から見ることで「正直・信頼」
 ・顔を近づけることで「優しさ・親密さ」
 ・見つめる時間を長くとることで「友情・愛情」
・「見ない」は「いない」
・ケアを受ける人は本当に見てもらっているか?
 ・相手を「見る」ためには0.5秒以上のアイコンタクトが必要だとされています。
・「見る」ことに関する2つの方法
 ・自然にできる「見る」
 ・後天的に学ばないとできない「見る」
・職業人として「見る」ということ
・文化の問題ではない
2 ユマニチュードの「話す」
・赤ちゃんにはどう話す?
・話さない人には話しかけなくていい?
・コミュニケーションの原則
・オートフィードバック
 ・自分の行っているケアの様子を言葉にする。
3 ユマニチュードの「触れる」
・広い面積で、ゆっくりと、優しく
・ケアの場での「触れる」
・皮膚から伝わる感覚の情報は場所によって違う
・”つかむこと”が伝えるメッセージ
 ・「親指を手のひらにつけて、絶対に使わない」と強く意識することが必要になってきます。
・5歳の子の力以上は使わない
4 ユマニチュードの「立つ」
・立つことの意味
 ・子どものころに自分で立ち上がったこと、それを見ていた親や大人に喜ばれたという記憶は、ポジティブでほこりに満ちた感情記憶です。
・立つことの生理的メリット
・多くの場合、歩けないのは医原性
・一日20分、立位でのケアを
・脳に誤情報を与えないこと
5 人間の「第3の誕生」
・人間らしい世界に迎えられなかった子どもは?
・近く遮断状態の高齢者
・フライデーはどこにいる

Section3 心をつかむ5つのステップ
・責めるのではなく、変えればいい
・よかれと思ったことが・・・
・マナーとして当たり前のこと
・出会いから別れまでの5つのステップ
1 出会いの準備
・なぜノックするのか?
 ①3回ノック。
 ②3秒待つ。
 ③3回ノック。
 ④3秒待つ。
 ⑤1回ノックしてから部屋に入る。
 ⑥ベッドボードをノックする。 
・自分が来たことを告げて反応を待つ
2 ケアの準備
・合意が得られなければ、あきらめる
 ・3分以上このプロセスに時間をかけない。
・「あなたに会いに来た」というメッセージ
 ・「◯◯です。お話をしに来ました。ご一緒してよろしいですか?」
 ・”あなたと話をしに来た””あなたに会いに来た”というメッセージを伝える。
・嫌がる言葉は使わない
・正面から近づく
・視線をとらえる
・2秒以内に話しかける
・いきなりケアの話はしない
・話す、触れる
・顔はプライベート・ゾーン
3 知覚の連結
・2つ以上の感覚を使う
・複数の知覚情報を矛盾させない
・知覚の連結とは
・適正よりも技術
・2人でケアを行うときには「黒衣とマスター」技法を使う
・マスター役は「見る」「話す」、黒衣役は「触れる」
・どちらが効率的か
4 感情の固定
・「この人は嫌なことをしない」という感情記憶を残す
・やや大げさに表現する
・共に働く人たちの理解を得るには
5 再会の約束
・約束を書きとめておく
・次回来られない場合には

Section4 ユマニチュードをめぐるQ&A

【開催日】
2014年7月16日(水)

認知症の家族の介護者のメンタルヘルスを促進するプログラム(manual based coping strategy programme)の臨床効果

- 文献名 -
 Clinical effectiveness of a manual based coping strategy programme (START, STrAtegies for RelaTives) in promoting the mental health of carers of family members with dementia: pragmatic randomised controlled trial  Gill Livingston, et. al.  BMJ 2013;347:f6276 doi: 10.1136/bmj.f6276 (Published 25 October 2013)
 
- この文献を選んだ背景 -
 認知症の家族を介護している介護者が精神的にダメージを受けるケースをよく経験する。今回、認知症の家族を介護する介護者のメンタルヘルスに関する論文を読んだので共有する。

- 要約 -
【目的】
 manual based coping strategy programmeが通常の治療と比較して、認知症の家族を介護している介護者のうつ、不安症状を軽減するかどうかを評価する。
【デザイン】
 Randomised, parallel group, superiority trial.
【セッティング】
 英国(ロンドンとエセックス)、Three mental health community services and one neurological outpatient dementia service
【参加者】 260人の認知症の家族を介護している介護者
【介入】
 manual based coping strategy programme:8回のセッションから成り、指導された心理学の専門家から提供される。認知症、介護者のストレス、感情的サポートを得る場などの精神教育、介護者の行動の理解、行動を管理するテクニック、支援がないという考えの変容、受容の受け入れ、自らの意見の主張、relaxation、将来のプランニング、楽しい活動の増加、スキル学習の維持など。これらの事を自宅でマニュアルを使いながら、relaxation CDを聞きながら学ぶ。
【Main outcome measures】
 4ヶ月後と8ヶ月後の症状 (hospital anxiety and depression total score)
<Secondary outcomes>
・depression and anxiety caseness on the hospital anxiety and depression scale;
 介護者のQOL:health status questionnaire, mental health
 要介護者のQOL:quality of life-Alzheimer’s disease
 介護者から要介護者への潜在的な虐待行為:modified conflict tactics scale
【結果】
 260人の介護者が選ばれた(Figure)。ランダムに173人が介入群、87人が通常の治療群に割り付けられた。
 8ヶ月後のhospital anxiety and depression total scoreは介入群が通常の治療群と比較してより低かった(adjusted difference in means −1.80 points (95% confidence interval −3.29 to −0.31; P=0.02) 
)(Table5)。
 うつのケースが介入群で低かった(odds ratio 0.24, 95% confidence interval 0.07 to 0.76) (Table5)。
 介護者のQOLが介入群で高かった(difference in means 4.09, 95% confidence interval 0.34 to 7.83) (Table5)。
 介護者から要介護者への潜在的な虐待行為の報告は介入群で少なかった(odds ratio 0.47, 95% confidence interval 0.18 to 1.23) (Table5)。
【結論】 
 manual based coping strategy programmeが認知症の家族を介護している介護者の不安やうつに対して効果があり、介護者のQOLを改善させている。

- 考察とディスカッション -
 認知症の家族を介護している介護者への支援プログラムが有効である事が改めて示された。寿都町では、町役場の保健師が中心となって定期的に家族会を開催しているが、今回の論文のような体系だったプログラムでの支援ではない。今後、このような支援プログラムを作成するかは議論の余地があるが、皆さんの地域の状況はいかがでしょうか? 

開催日:平成25年12月11日

高齢者の不健康な行為と能力低下(disability)の関係

– 文献名 –

 Unhealthy behaviours and disability in older adults: Three-City Dijon cohort study. Fanny Artaud PhD,et al.  BMJ 2013 ;347 :f4240

– この文献を選んだ背景-
 
 我々家庭医は高齢者を診る時、常にCGA(Comprehensive Geriatric Assessmesnt:高齢者包括機能評価)を念頭に入れて高齢者を診察している。今回、高齢者の能力低下に関わる事として、不健康な行為との関わりを研究した興味深い論文を読んだので紹介する。

- 要約 -

【目的】
 不健康な行為(低い/中間の肉体活動度、1日1回以下のフルーツ、野菜の摂取、現在の喫煙/過去の喫煙、全く飲酒しない/以前の飲酒/大量の飲酒)とフランスの高齢者の能力低下の危険度との関係(個々の行為と行為の組み合わせとの関係)を調査すること。またこれらの関係に関与する潜在的な因子を評価すること。

【デザイン】
前向きコホートスタヂィ

【セッティング】
Three -City studyのうちのディジョンセンター

【参加者】
3,982人(女性:2,410人(60.5%))
1999~2001年の間の65歳以上のフランス人
健康行為を評価した時点ではベースラインは能力低下はない

【主要評価項目】
3つの能力低下スケール(移動能力、IADL,ADL)から得られたデータの組み合わせ
能力低下の階層別指標(なし、軽度、中等度、重症)
2001~2012年までの間に5回評価

【結果】
 12年間のフォローアップ期間中に1,236人(女性:861人(69.7%))が中等度から重症の能力低下に進展した。能力低下の危険性に関与した項目として、低い/中間の肉体活動度(HR:1.72,95%CI:1.48,2.00)、1日1回以下のフルーツ、野菜の摂取(HR:1.24,95%CI:1.10,1.41)、現在の喫煙/過去の喫煙(HR:1.26,95%CI:1.05,1.50)、一方で、アルコール消費量には強い相関関係はなかった。能力低下に関係する不健康な行為の数が増えれば増えるほど能力低下の危険は増加した(P<0.001)。3つの不健康な行為を行っている人は何も不健康な行為がない人と比べるとの能力低下の危険性は2.53倍増した。逆の因果バイアスは最初の4年間で能力低下が見られた人は除外して、排除している。不健康な行為のスコアと能力低下との間の関係の30.5%がBMI,認知機能、うつ病の症状、外傷、慢性疾患、心血管疾患とそのリスクファクターによって説明される。最も関係しているのが慢性疾患であった。

【結論】
不健康なライフスタイルは能力低下の危険性と関係している。不健康な行為が増えれば増えるほど、その危険性は増す。慢性疾患、うつ病の症状、外傷、BMIは部分的にこの関係を説明した。

開催日:平成25年8月21日

高齢者における余暇活動と認知症リスク

– 文献名 –

 Leisure Activities and the Risk of Dementia in the Elderly J. Verghese and others(N Engl J Med 2003; 348 : 2508 – 16 : 

– 要約 –

Background
 Participation in leisure activities has been associated with a lower risk of dementia. It is unclear whether increased participation in leisure activities lowers the risk of dementia or participation in leisure activities declines during the preclinical phase of dementia.

Methods
 We examined the relation between leisure activities and the risk of dementia in a prospective cohort of 469 subjects older than 75 years of age who resided in the community and did not have dementia at base line. We examined the frequency of participation in leisure activities at enrollment and derived cognitive activity and physical-activity scales in which the units of measure were activity days per week. Cox proportional-hazards analysis was used to evaluate the risk of dementia according to the base line level of participation in leisure activities, with adjustment for age, sex, educational level, presence or absence of chronic medical illnesses, and base line cognitive status.

Results
 Over a median follow-up period of 5.1 years, dementia developed in 124 subjects (Alzheimer’s disease in 61 subjects, vascular dementia in 30, mixed dementia in 25, and other types of dementia in 8). Among leisure activities, reading, playing board games, playing musical instruments, and dancing were associated with a reduced risk of dementia. A one-point increment in the cognitive-activity score was significantly associated with a reduced risk of dementia (hazard ratio, 0.93 [95 percent confidence interval, 0.90 to 0.97]), but a one-point increment in the physical-activity score was not (hazard ratio, 1.00). The association with the cognitive-activity score persisted after the exclusion of the subjects with possible preclinical dementia at base line. Results were similar for Alzheimer’s disease and vascular dementia. In linear mixed models, increased participation in cognitive activities at base line was associated with reduced rates of decline in memory.

Conclusions
 Participation in leisure activities is associated with a reduced risk of dementia, even after adjustment for base-line cognitive status and after the exclusion of subjects with possible preclinical dementia. Controlled trials are needed to assess the protective effect of cognitive leisure activities on the risk of dementia.

開催日:平成25年8月14日

認知症患者の予定されていない入院後の予後:前向きコホート研究

<文献名>
 Elizabeth L. Sampson, et al,Survival of people with dementia after unplanned acute hospital admission: a prospective cohort study, International Journal of Geriatric psychiatry, 21 December 2012.

<要約>

【目的】
 入院後の長期生存に関する認知症の影響を調べ,どのような認知症が死亡率の独立した予測因子となるのかを評価することである.この情報は,適切なケアの提供のために不可欠である.

【方法】
 この研究は,ある大都市の急性期総合病院における予定しない入院となった616人の患者(70歳以上)についての前向きコホート研究である.主要な曝露因子は,DSM-Ⅳにおける認知症で,一次アウトカムは死亡リスクであった.認知症の重症度は,FAST(Functional Assessment Staging scale)で評価を行った.また,変数の範囲については,急性の生理学的変化(Acute Physiology and Chronic Health Evaluation),慢性の併存疾患(Charlson Comorbidity Index, CCI),褥瘡リスク(Waterlow score)で検討した.

【結果】
 全集団の42.4%は認知症だった.半分近く(48.3%)の認知症患者は入院後12ヵ月で死亡した.(認知症ではない人々の生存期間中央値2.7年に対して1.1年だった.)

 調整していない認知症患者の死亡率についてのハザード比は,1.66(95%信頼区間 1.35-2.04)で,中等症から重症の認知症患者の場合は,2.01(95%信頼区間 1.57-2.57)であった.年齢,性別,Acute Physiology and Chronic Health Evaluation,Charlson Comorbidity Index, Waterlow scoreで調整した後では,認知症の死亡リスクは,1.24(95%信頼区間 0.95-1.60)で,中等症から重症の認知症では,1.33(95%信頼区間 0.97-1.84)であった.

【結論】
 認知症である人々の生存期間は,認知症ではない人々の半分である.死亡率における認知症の影響は,特に虚弱性のマーカーのひとつであるWaterlow scoreによる調整後に減少した.

 1年の生存期間中央値は,臨床医に対して救急病院に入院した中等症から重症の認知症の高齢患者のケアにおいて,支持的なアプローチを取り入れることを検討すべきであることを示唆する.

開催日:平成25年5月22日

高齢者のポリファーマシーに対するシステマティックなアプローチ

-文献名-
Garfinkel D, et al. Feasibility Study of a Systematic Approach for Discontinuation of Multiple Medications in Older Adults. Arch Intern Med. 2010;170:1648-54. 

-要約-
Background: Polypharmacy and inappropriate medication use is a problem in elderly patients, who are more likely to experience adverse effects from multiple treatments and less likely to obtain the same therapeutic benefit as younger populations. The Good Palliative Geriatric Practice algorithm for drug discontinuation has been shown to be effective in reducing polypharmacy and improving mortality and morbidity in nursing home inpatients. This study reports the feasibility of this approach in community-dwelling older patients.

Methods: The Good Palliative-Geriatric Practice algorithm was applied to a cohort of 70 community dwelling older patients to recommend drug discontinuations. Success rates of discontinuation, morbidity, mortality, and changes in health status were recorded.

Results: The mean (SD) age of the 70 patients was 82.8 (6.9) years. Forty-three patients (61%) had 3 or more and
26% had 5 or more comorbidities. The mean follow-up was 19 months. Participants used a mean (SD) of 7.7 (3.7)
medications. Protocol indicated that discontinuation was recommended for 311 medications in 64 patients (58% of drugs; mean [SD], 4.4 [2.5] drugs per patient overall, 4.9 per patient who had discontinuation). Of the discontinued
drug therapies, 2% were restarted because of recurrence of the original indication. Taking nonconsent and failures together, successful discontinuation was achieved in 81%. Ten elderly patients (14%) died after a mean follow-up of 13 months,with the mean age at death of 89 years. No significant adverse events or deaths were attributable to discontinuation, and 88% of patients reported global improvement in health.

Conclusions: It is feasible to decrease medication burden in community-dwelling elderly patients. This tool
would be suitable for larger randomized controlled trials in different clinical settings.

開催日:2013年5月1日

認知症患者の精神症状へのリスペリドン継続使用

【文献名】
Relapse Risk after Discontinuation of Risperidone in Alzheimer’s Disease
   D.P. Devanand, et al. N Engl J Med 2012; 367:1497-1507

【要約】

BACKGROUND
   Among patients with Alzheimer’s disease who have had a response to antipsychotic medication for psychosis or agitation-aggression, the risk of a recurrence of symptoms after discontinuation of the medication has not been established. 

METHODS
   Patients with Alzheimer’s disease and psychosis or agitation-aggression received open-label treatment with risperidone for 16 weeks. Those who had a response to risperidone therapy were then randomly assigned, in a double-blind fashion, to one of three regimens: continued risperidone therapy for 32 weeks (group 1), risperidone therapy for 16 weeks followed by placebo for 16 weeks (group 2), or placebo for 32 weeks (group 3). The primary outcome was the time to relapse of psychosis or agitation. 

RESULTS
   A total of 180 patients received open-label risperidone (mean dose, 0.97 mg daily). The severity of psychosis and agitation were reduced, although there was a mild increase in extrapyramidal signs; 112 patients met the criteria for response to treatment, of whom 110 underwent randomization. In the first 16 weeks after randomization, the rate of relapse was higher in the group that received placebo than in the groups that received risperidone (60% [24 of 40 patients in group 3] vs. 33% [23 of 70 in groups 1 and 2]; P=0.004; hazard ratio with placebo, 1.94; 95% confidence interval [CI], 1.09 to 3.45; P=0.02). During the next 16 weeks, the rate of relapse was higher in the group that was switched from risperidone to placebo than in the group that continued to receive risperidone (48% [13 of 27 patients in group 2] vs. 15% [2 of 13 in group 1]; P=0.02; hazard ratio, 4.88; 95% CI, 1.08 to 21.98; P=0.02). The rates of adverse events and death after randomization did not differ significantly among the groups, although comparisons were based on small numbers of patients, especially during the final 16 weeks. 

CONCLUSIONS
   In patients with Alzheimer’s disease who had psychosis or agitation that had responded to risperidone therapy for 4 to 8 months, discontinuation of risperidone was associated with an increased risk of relapse.

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【開催日】
2012年11月7日

高齢者の長寿の要素

【文献名】 
著者名:Debora Rizzuto PhD student 1, Nicola Orsini associate professor 2, Chengxuan Qiu associate professor 1, Hui-Xin Wang senior researcher 1, Laura Fratiglioni professor 1 3
文献タイトル:Lifestyle, social factors, and survival after age 75:population based study
雑誌名・書籍名:BMJ
発行年:2012;345:e5568 doi: 10.1136/bmj.e5568 (Published 30 August 2012)

【要約】
<目的>
75歳以上の成人の長寿に関連する要素を同定する

<デザイン>
population based cohort study

<セッティング>
スウェーデン ストックホルムの一地区

<対象>
Kungsholmenプロジェクトに参加した1810人の75歳以上の成人。18年間追跡(1987-2005の状況調査)

<主要アウトカム>
死亡年齢の中央値

<結果>
・追跡期間中、1661人(対象者の91.8%)が死亡。参加者の半数が90歳以上まで生存した。

・喫煙者の半数は非喫煙者よりも1年(95%信頼区間:0.0-1.9年)早く亡くなった。

・身体活動が最も強く寿命と関連した。日常的に水泳・ウォーキング・体操を行っている群は行っていない群と比較し2.0年(0.7-3.3)長生きした。

・低リスク群(健康的な生活習慣・少なくとも一つの身体活動・良好な社会的つながり)は高リスク群(非健康的な生活習慣・身体活動せず・限定された社会的つながり)よりも5.4年長生きした。

・85歳以上の場合も慢性疾患を抱えている場合も、低リスク群のほうが4年長生きした。

<結論>
75歳以上であっても、非喫煙や身体活動などの生活習慣は長寿と関連する。低リスクの習慣は女性には5年、男性には6年の生存期間を付加する。これらの関連は85歳以上の高齢者や慢性疾患を抱えた方にも同様である。

【考察とディスカッション】
この年代の患者さんが生活習慣改善を行った時に寿命が長くなるかはこの研究からは不明だが、少なくともその時点での生活習慣改善からその後の予後を考えたり患者さんに情報提供したりする一つの材料とはなるだろう。また、若い年代の成人への情報提供の材料ともなるだろう。
それぞれの群の生活の質も情報提供できると、そのメリット・デメリットがさらにイメージしやすくなるか。

【開催日】
2012年10月10日

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