訪問診療

【文献名】
著者名:和田忠志
文献タイトル:在宅医療
雑誌名・書籍名:臨床入門
発行年:2009年5月1日 第一版

【要約】
序論:現在の在宅医療
旧来の『往診』による在宅医療と『現在の在宅医療』
旧来の往診:急病に対する往診 現在の在宅医療:定期往診と24時間対応

<歴史的背景>
1970年まで:自宅での医療水準と外来での医療水準は同等
1970年以降:技術進歩により緊急に検査を駆使して行う「救急外来」が高水準の医療を提供
病院隆盛の時代となったがその一方で「スパゲティ症候群」「植物状態」「転院問題」「DNAR」
「転院先老人病院の治療および環境問題」など様々な問題が指摘された。
    1970-1980年代:
病院での治療が有効で無くなったがなお重い障害を持つ患者や治癒不能な癌患者に対応する医師
が全国各地に現れた。その時のスタイルが定期往診と24時間対応という現在の在宅医療の原形で
あり当初は病院から発祥し病院医療を補完する機能を有していた。
  そして近年高齢化(高齢障害者の増加と癌患者の増加)に伴い在宅医療が要請される時代となり、 
  国は在宅医療に対し並々ならぬ推進意欲を見せ、2006年に在宅療養支援診療所制度が発足した。
  
1在宅医療の導入
<初診の往診依頼に対する考え方>
・初診の急性期疾患に対する依頼があった場合往診はそれほど有用な技術ではないため基本は断る
・例外として往診を受けるメリットがデメリットを上回ればリスクを了承してもらった上で往診する
 <訪問診療導入面接>
 ・治療関係の明確化、大まかな治療方針の確認、病院からの事前情報収集

2.診察
 ・普段との比較が重要であるため普段からバイタルサインや意識状態はもとより、全身を良く見る
 ・自宅での動きを診ることの重要性、複数医師による診察のメリット

3.検査
 ・身体所見と血液検査を中心とした検査の有用性と限界を理解した上で在宅医療を実施すること
 ・新しく始める場合はポータブルレントゲン、腹部超音波、血液ガス検査装置は揃えなくても良い
 ・有力な連携病院をもち、必要に応じて在宅医療と病院を使い分けながら検査を行う方法をもつことが重要

4.家族のエンパワメント
 ・在宅医療は、家族介護力に依拠する医療形態であり、「家族を支える」ことは在宅医療の根幹に関わる技能である。指導するというニュアンスより、家族のポテンシャルを引き出すことが理想。
 ・家族の境遇、家族の方法論、家族の構造変化を知ることが大切

5.緩和ケア 主に癌患者を中心に
・患者は自分の治療やデータについて知っているが、自分の運命について認識が乏しい場合が多い
・対話を繰り返し患者の本心の希望を聞く、疾患が治癒しないことに患者と共に向き合うことが重要
・家族の忍びない気持ちや恐怖感、罪悪感、介護の疲労を理解し声かけを行う。

6.24時間対応
・有効な24時間対応は日中の医療水準によって決定される。
・あおぞら診療所(220-240名)の18時-9時までの臨時往診回数は月に8.9回
・電話を受ける手法:受け手をだれにするか?医師、留守電、事務当直、訪問看護

7.訪問看護師との連携
・医療機関から行う訪問看護と訪問看護ステーションから行う訪問看護
・中心静脈栄養、人工呼吸器、経管栄養、腎膀胱留置カテーテル、褥創などのケア指導は訪問看護師に積極的に行ってもらうと上手くいくことが多い
・訪問看護ステーションとの情報交換:直接的な電話、連携カンファレンス

8.薬局連携と処方
・かかりつけ薬局を持ってもらうことで、その薬局もお得意様として患者さんを長期にわたり大切にするという関係が築ける

9.歯科連携
・栄養状態や誤嚥性肺炎予防の観点から歯科の重要性
・どのような情報を提供する(診断名、血液媒介感染症情報、処方情報、抗生剤の使用について)

10.社会資源活用
・障害者福祉制度の活用:身体障害者交付のための診断書を記載できることが望ましい
・長期生活支援資金貸付制度:65才以上で土地評価額が1000万以上であり低所得世帯が対象

11.後継者を養成する
・学生に診療鞄を持たせることで患者さんが学生を傍観者ではなく、診療介助者として認識する
・学生にカルテを書かせる。メモをとるのは車内でおこなうようにしてもらう。
・振り返りを行う
・看護師同行診療、臨時往診研修(訪問看護に同行)、症状が安定した患者の診療(指導医が30分以内で駆けつけることが出来るようにする)

【開催日】
2012年6月13日

高齢者救急入院に対するCGAは死亡率と在宅復帰率を改善する

【文献名】
著者名:Graham Ellis et al
文献タイトル:Comprehensive geriatric assessment for older adults admitted to hospital: meta-analysis of randomized controlled trials. 
雑誌名・書籍名:BMJ 2011;343:d6553 doi: 10.1136/bmj.d6553
発行年:2011

【要約】
<OBJECTIVE>
高齢者救急入院におけるCGAの効果を評価する

<PECO of Meta-analysis>
P=高齢者で救急入院した者
・高齢者とは65歳以上、救急入院とは計画や予約がない急性の状態による入院
E=CGA(Selection criteria参照) 
C=通常ケア=一般内科への入院で、Geriatric specialistではない医師によるケア
O;1次アウトカムは在宅生活
2次アウトカムは死亡率、施設入所、依存状態、状態の悪化(機能の)、死亡or依存状態、死亡or状態の悪化、ADL、認知脳、再入院、入院期間、資源の利用量、とした。
Search strategy 研究者がEPOC Register, Cochrane’s Controlled Trials Register, the Database of Abstracts of Reviews of Effects (DARE), Medline, Embase, CINAHL, AARP Ageline, and handsearched high yield journalsを検索した。更に、掲載可能性が高い雑誌、カンファレンスプロシーディング、関連したレビューの参考文献リストを直接調査した。

<Selection criteria> 
CGAの効果と通常のケアを比較したRCTであること(病棟(Ward※1)固定の研究か、それとも院内で移動可能なチーム(Team※1)かは問わない)。CGAとは、多職種による多面的な評価プロセスで、医学的・心理学的・機能的な能力を虚弱高齢者において評価し、協働的で、統合された計画を治療と長期フォローアップについてたてるものである。
除外基準として、ある特定の疾患に対する組織だったケアを評価した研究は除外し、入院セッティングでない場合も除外した。

<Data collection and analysis>
3人の独立した評価者が、個々の研究が適格かどうかと、その質を評価し、出版されたデータを抽出した。さらに二人の評価者が調整を行った。

<Results>6か国で10315人を評価した22の研究が見つかった。一次アウトカムである在宅での生活については、フォローアップ期間の最後の時点において、通常のケアを受けた患者より、CGAを受けた患者の方がより自宅で生活していた。(フォロー中央値が12か月の場合はOR 1.16 (95%CI 1.05 to 1.28; P=0.003; NNT 33)、中央値が6か月の場合は1.25 (1.11 to 1.42; P<0.001; NNT 17)  更に、CGAを受けた患者においては入所になった者がより少なかった。(0.78, 0.69 to 0.88; P<0.001).  サブグループ解析においては、「Ward」と「Team」で行った場合に、前者の方が結果が良好であった(※2)。また、CGAを受けた患者の方が、死亡と機能低下の合計の発生はより少なく(0.76, 0.64 to 0.90; P=0.001)、認知機能の改善はより多かった(standardised mean difference 0.08, 0.01 to 0.15; P=0.02) <Conclusions> CGAは救急入院した患者において、自宅での生存率を改善した。特にこれは病棟全体がCGAを行えるように組織された場合に実現すると思われ、そして通常の医学的ケアと比べてコスト削減とも関連があると思われた。 【考察とディスカッション】  今までCGAについては特定の状況でのエビデンスがあることは知っていたが、このように一般化して救急入院の形で効果が示されたことは大きい。アウトカムの設定の仕方も「在宅生存」であり、ただの「生存」としていないことも注目に値する。(通常の生存については有意差なし。)  日本では老年医学の専門家は非常に稀有で、CGAを中心とした高齢者アプローチの教育の主軸は家庭医や病棟総合医が担っているといってもよい状況である。そうした中で、我々家庭医が担うべき役割として、  ①郡部サイト・僻地で入院施設がある場合は現場での実践 が挙げられるし、入院をもたない都市部サイトであっても  ②家庭医診療所に見学に来た研修医や病棟勤務医に対する教育  ③医学生に対する教育  ④コメディカルに対する教育  ⑤開放病床へのアプローチ・連携 が挙げられると考えられた。将来的には我々プライマリケア医と病棟勤務医の連携によるアプローチ(文献中のTeamアプローチに近いものになるであろう)が可能な仕組みを提案したり、CGAを実践できる病棟勤務医を多く育てることで高齢者ケアの質の改善に貢献できると思われた。 【参考】 ※1この文献におけるWardとTeam ‘Ward’CGAを病棟でケアする際には二つの主流な方法があり、病棟全体をCGA病棟として運営する方法と、移動可能なチームを病院内で形成し、必要な患者を訪れて担当の医師やスタッフに指示する方法がある。前者を’Wards’、後者を’Mobile team’とこのStudyでは呼んでいる。前者にはacute care for elders (ACE units), geriatric evaluation and management units (GEMU), or rehabilitation wardsなどと名前がついているようである。後者はICTやNSTのようなスタイルであろう。 ※2TeamとWardで違いが出たのは?  ・過去にも似たような現象はあり。Strokeなど。  ・理由としては①Wardの方が、高齢者ケアの時間がながく、スタッフの学習を促し、技術と専門的知識をより発達させた可能性がある。また、グループで多職種がより近い場所で働くため、より能率的で効果的な多職種業務が行え、チームビルディングが高まった可能性がある。②Teamの場合だと直接患者に関わるスタッフや専門家の行動を修正することが難しかった可能性がある。結局治療に対する推奨が守られていないという結果となる。そしてこのプロセスをコントロールすることでよりよいアウトカムを見いだせる可能性はある。また、ある状況に対するプロトコールの開発なども影響している可能性がある。 【開催日】 2012年5月23日

高齢者をケアするということ

【文献名】
 
著者名:Richchard J. Ham et al.
文献タイトル:Primary Care Geriatrics.
雑誌名・書籍名:5th Ed. MOSBY.
発行年:2007.

【要約】
Chapter1 Caring for Older Patients and an Aging Population

<OBJECTIVES>
・Describe the demographic changes resulting from the ageing population of US (Japan)
・Explain how demographic changes occurring among rural population, minorities, and women will affect health care.
・Discuss primary care as it pertains geriatrics
・Describe two features that make up the foundation of geriatrics medicine
・Describe the newest trends and programs in geriatric care 

<POPURATION DEMOGRAPHICS>
 In 2003, nearly 36 million people age 65 and over live in the US
  Women make up 58% of those over age 65 and almost 70% of those over 85
  A common myth in America is that older people are “dumped” into nursing home

<RURAL ELDERS>
Rural elderly living on farms are more likely than urban elderly to be married and living with their spouse.
 These limitations affect rural elder’s use of health care services, especially owing to limited access to health maintenance visits and prevent care.

<ECONOMICS OF AGING>
 Social Security income has provided the largest share of income for older Americans since the early 1960s

<DEMOGRAPHY AS IT AFFECTS HEALTH CARE>
 Childhood mortality has been significantly reduced 
 Changes in public health
 Changes of Causes of death (1940s;infections,trauma→Now; chronic disease )

<CHANGES IN LONG-TERM CARE AND THE INFLUENCE OF THE BABY BOOMERS>
 One of the greatest shifts in long-term care culture is currently within the nursing home setting.

<PROVIDERS OF GERIATRIC CARE>
 All clinicians see older persons
 All health care providers to have substantial geriatrics training 

<PRIMARY CARE>
 Successful primary care for the frail/complex older adult is based both on a special knowledge set and on a philosophy of care.

 -Geriatrics as a Philosophy of Care-
  Treatment decisions should be evaluated in terms of the potential benefit of enhancing or maintaining function versus the potential risk of causing a loss independence

 -Ethical Decision Making-
  There is much that we can do in medicine, but key question in geriatric care is what we should do.
  Geriatric clinicians need to be aware of their own values toward disease and disability
-Patient-centered care-
  The clinician can utilize the questions in the acronym FIFE to explore the meaning and impact of changes in the patient’s life

<RECOGNIZING AND AVOIDING AGEISM>
  Ageism refers to the unfair judging of elderly adults simply because of their advanced age
  This stereotype can be so prevalent in society that it is almost invisible, but it can perpetuate negative behavior.

<FUTURE TRENDS>
 -Collaborative Practice-
  Effective care of the older adults in highlighted by collaboration between multiple health care providers

-Prevent Care-
  Research has shown that health promotion and disease prevention activities are beneficial in any age 
 -Chronic Disease Self-Management-
 -Special Programs for Organizing, Funding, and Providing Geriatric Care-
・the complexity involved in providing comprehensive geriatrics care has led to the development of number of special programs to improve quality and reduce risks.
 -Program of all-inclusive care of the elderly-
・The example of a managed capitates approach to improving the care for the frail elderly the Program of all-inclusive care of the elderly(PACE)….The two cost medical care components are hospital and nursing home care…PACE program are able to expand the range of covered service

<SUMMARY>
 The aging population will mean that all primary care clinicians will spread a significant portion of their time providing care to older persons.
 Clinicians must be aware that “Older persons” is very diverse and each patients likely to present with special needs and challenges.
 Geriatric care involves both a specific knowledge base and a particular approach to problems.
 The foundation of that approach is attention to the patient’s function capabilities and an appreciation for the ethical questions that underline all medical decisions.
 Because of complexity involved in caring for this diverse population, interdisciplinary teams and special programs are often necessary. 

【開催日】
2012年4月18日

一部の抗精神病薬は施設入所高齢者の死亡リスクを高める可能性がある

【文献名】

著者名:Huybrechts K F, Gerhard T, et al.
文献タイトル: Differential risk of death in older residents in nursing homes prescribed specific antipsychoticdrugs: population based cohort study. 
雑誌名・書籍名:BMJ. 
発行年:2012 Feb 23;344.

【要約】

<OBJECTIVE>
To assess risks of mortality associated with use of individual antipsychotic drugs in elderly residents in nursing homes.

<DESIGN>
Population based cohort study with linked data from Medicaid, Medicare, the Minimum Data Set, the National Death Index, and a national assessment of nursing home quality.

<SETTING>
Nursing homes in the United States.

<PARTICIPANTS>
75 445 new users of antipsychotic drugs (haloperidol, aripiprazole, olanzapine, quetiapine, risperidone, ziprasidone). All participants were aged ≥65, were eligible for Medicaid, and lived in a nursing home in 2001-5.

<MAIN OUTCOME MEASURES>
Cox proportional hazards models were used to compare 180 day risks of all cause and cause specific mortality by individual drug, with propensity score adjustment to control for potential confounders.

<RESULTS>
Compared with risperidone, users of haloperidol had an increased risk of mortality (hazard ratio 2.07, 95% confidence interval 1.89 to 2.26) and users of quetiapine a decreased risk (0.81, 0.75 to 0.88). The effects were strongest shortly after the start of treatment, remained after adjustment for dose, and were seen for all causes of death examined. No clinically meaningful differences were observed for the other drugs. There was no evidence that the effect measure modification in those with dementia or behavioural disturbances. There was a dose-response relation for all drugs except quetiapine.

<CONCLUSIONS>
Though these findings cannot prove causality, and we cannot rule out the possibility of residual confounding, they provide more evidence of the risk of using these drugs in older patients, reinforcing the concept that they should not be used in the absence of clear need. The data suggest that the risk of mortality with these drugs is generally increased with higher doses and seems to be highest for haloperidol and least for quetiapine.

【開催日】
2012年3月28日

褥瘡を悪化させず介護負担軽減にも有用な「体位交換法」

【文献名】

大浦武彦,見て・考える褥瘡ケア 創面をみればすべてがわかる ここで差がつくテクニック,

中山書店:p106,2010年9月


【要約】
褥瘡の発生要因でもあり、治癒阻害要因であるものが「圧」と「ズレ」である。これらは治療で排除できる種類のものではなく、ケアこそがその役割を担うことになる。このために、褥瘡においてはケアが非常に重要で、ケアと治療が車の両輪のようにうまく機能してこそ、褥瘡は予防でき、また治癒させることができるのである。

 すなわち、褥瘡ケアの質は、いかに「圧」と「ズレ」を排除できるかにかかってくる。



○想像以上に大きい「圧」と「ズレ」

背上げや体位変換時に生じた「圧」と「ズレ」は、想像以上に大きい。背上げをしただけでも「圧」と「ズレ」は背中と殿部に滞留する。そこで、背上げや体位交換時には必ず「背抜き」を行わなければならない。



○背抜き

健常者が姿勢を変えた時、例えば椅子で座位姿勢を変える時、無意識ながら、最後に必ず少し腰を浮かして姿勢を整えるが、背抜きでは、その動作をケアで行うことをイメージすればよい。健常者が無意識に行うその動作が障害をもつと容易にできなくなるので、それを支援するということである。

 姿勢を変えた時、「圧」と「ズレ」が過剰にかかる部分を少し浮かせるようにして、そこに手のひらをさっと通す。この時’マルチグローブ’などを用いると、適切に確実に「圧」と「ズレ」を排除できる。



○褥瘡と患者に優しい体位交換

背抜きを行うことは前述の通りであるが、体位交換の方法そのものを工夫することも必要である。’マルチグローブ’をはめた両腕を、患者の身体の下(特に仙骨部の突出した部分)をくぐらせるようにして、そのまま患者の身体(特に褥瘡部位)を両上腕にのせたままスライドさせるように体位交換を行うと、「圧」と「ズレ」の発生を大幅に減らすことができる。
 この場合、両腕をスライドさせるのであって、患者をもち上げない。
 

参考動画:http://www.youtube.com/watch?v=yYAG4AE7ys8



【開催日】

2011年8月3日

高齢者の予後予測には歩行速度が有用かもしれない

【文献名】
 Gait Speed and Survival in Older Adults
Stephanie Studenski et al.  JAMA. 2011;305(1):50-58

【要約】
<目的>
①高齢者の歩行速度と予後の関係を評価すること
②年齢や性別を補正して歩行速度が予後の変動性を説明しうるのかを明らかにする
 
<研究デザイン、セッティング、対象者>
1986年から2000年の間に行われた9つのコホート研究を解析。
地域社会に暮らし、ベースラインの歩行速度が得られた65歳以上の高齢者34485人を6~21年(平均12.2年)フォローアップ下。対象者の平均年齢は73.5歳59.6%が女性、79.8%が白人(11.2%がアフリカ系アメリカ人、7.7%がヒスパニック)、平均の歩行速度が0.92m/sであった。
 
<主要アウトカム>
生存率と平均余命。
 
<結果>
17528名が研究期間中に亡くなった。全体の5年生存率は84.8%(CI 79.6%-88.8%)、10年生存率は59.7% (95% CI, 46.5%-70.6%)。すべての研究において歩行速度が生存率と関連性を示した(hazard ratio per 0.1m/s1は0.88。95%CI 0.87-0.90, p<0.001)。 歩行速度が0.1m/s増加するごとに生存率が上がる傾向がすべての歩行速度において見られた。75~84歳の男性では歩行速度が0.4m/s未満では10年生存率が15%、1.4m/s以上では50%。 女性においては35%~92%。 民族による層別化でも同様の傾向であったが、信頼区間は広くなる傾向にあった。 ベースラインの歩行速度ごとに余命を予測すると中央値は0.8m/sあたりであった。 年齢、性、歩行速度による予後予測は年齢、性別、移動補助具の使用、自己申告による機能評価を組み合わせたものや年齢、性別、慢性疾患、喫煙、血圧、BMI、入院歴を組み合わせた指標と同様に正確であった。   <限界> この観察研究では歩行速度と余命との因果関係はわからず、様々な形のHealthy volunteer biasの影響を受けている。9つのうち1つのみしか実際の臨床をベースにしておらず、研究への参加に同意できる進行した認知症患者はほとんどいない。身体の活動性と生命予後の関連は活動性の足底の仕方にばらつきが大きいため評価することはできない。今後はより臨床を基礎にした対象者において他の重要なアウトカム(障害など)について検討する必要が賀あるだろう。   <臨床への適用> 介護予防的介入に用いるのが適当であろう。ベースラインの歩行スピードを測定することにより高齢者の全体的な健康状態の特徴をつかめる。歩行速度を経時的にモニターしていくと、低下は評価を要する新しい問題の発生を示唆することになるだろう。歩行速度は手術や化学療法のリスク評価に用いることができるかもしれない。 【開催日】 2011年3月2日

~重症認知症患者の肺炎治療の意義~

【文献名】

Givens JL, Jones RN, et al. Survival and Comfort After Treatment of Pneumonia in Advanced Dementia. Arch Intern Med 170 (13), 1107-9.





【要約】

[目的]
重度認知症や老年期の患者において、肺炎の抗菌薬治療が「生命予後」や「生活の快適さ・安楽さ」を改善しうるかどうか明らかにする。



[研究デザイン]

前向きコホート研究(CASCADE)
(最大で18か月又は亡くなるまで追った。)



[セッティング]

2003~2009年のボストン、マサチューセッツの22ナーシングホーム入居者323人



[対象集団]

重度認知症の入居者で肺炎と確定診断された患者 Table1参照。

※これはCASCADEのベースラインと似通っている★代表的な集団が選ばれているか?

・60歳以上

・いずれのtypeの認知症と診断された

・Cognitive Performance Score 5^6点(重度の認知能低下)

・Global Deterioration Scale 7点(家族がわからない、最低限の会話、ADL全介助、便尿失禁)



[介入/要因]

抗菌薬治療を、しない群・経口治療のみ・筋注治療のみ・点滴治療(入院も含む)で分類。



[主要アウトカム]

生命予後:肺炎発症後~亡くなるまでの日数

快適さ(scored according to the Symptom Management at End-of-Life in Dementia scale:SM-EOLD)

測定前90日間の痛み・呼吸苦・抑うつ・恐れ・心配・いらいら・落ち着き・皮膚の損傷・介護への抵抗の項目に対して頻度(なし、月1回、月数回、週1回、週数回、毎日)を介護士?nursing caringが記載。点数が高いほど、快適度が高いスコア。

※90以内に亡くなった方は除外されるが、Comfort Assessment in Dying with Dementia scaleが死亡後2週間以内に測定された。



[統計手法]

生命予後:コックス比例ハザードモデル

快適さ:線形回帰モデル

多変数モデルを各治療群の差を調整するのに使用



[結果]

225の肺炎のエピソード(133人41%)があり、治療なし8.9%、経口治療のみ55.1%、筋注治療のみ15.6%、点滴・入院治療20.4%であった。

生命予後Table3/Figureは、治療しない人と比べて、すべての治療あり群は改善(経口群リスク比0.2 95%CI 0.10‐0.37)(筋注群リスク比0.26 95%CI 0.12‐0.57)(点滴・入院群リスク比0.2 95%CI 0.09‐0.42)であった。

快適さはTable4、治療前のSM-EOLDと比べ、いずれの抗菌薬治療をえた群でもscored according to the Symptom Management at End-of-Life in Dementia scaleは低かった。



[結論]

ナーシングホーム入居中の重度認知症の方において、肺炎の抗菌薬治療は、生命予後は改善するが、快適さは改善しない。





【開催日】

2011年1月12日(水)

~意欲の低下した認知症患者にどう関わるか~

【文献名】
折茂賢一郎、安藤繁、新井健五 共著 廃用症候群とコミュニティケア  医歯薬出版株式会社 p187-195, 

【要約】
Tさん 82歳女性 認知症
・ADLは誘導と指示などの軽介助があればほぼ自立。
・意欲・活動性が低く放っておくとすぐに横になって居眠りする。→自宅で転倒し大腿骨頚部骨折で入院加療
・家族が話しかけても開眼すらしない。
・体を他動的に起こそうとしても、全身に全く力が入らない。

このように、認知症高齢者は「どうせ、何もできないから・・・」、「また、失敗するから・・・」、「何を言ってもわからないから・・・」、「聞こえないから・・・」と放置されやすい。また、問題点(できないこと)を探すとできないことだらけになってしまい、「これはよくなる見込みはない」と判断して放置してしまう。

そこで、「残存能力(できること)」を発見しようとする視点をもち、評価することが大切。
・過去の生活史や仕事、趣味などの「個人」の情報から残存能力を見つけ出す、「昔とった杵柄によるアプローチ」。
・Tさんは東京の女学校を優秀な成績で卒業、読書が趣味だったという話から「昔取った杵柄」は「読書」「活字」「文字」に関連する能力ではないかとアプローチして、「声を出して文章(活字)を読むことができる」という能力が残っていたことがわかった。
・Mさんは和裁の先生をしていたという生活史から、周囲の「危ない!」という反対の声もあったが、「針と糸とタオル」を渡したところ、みごとに雑巾を縫い上げた。

いずれのケースも、発見したアプローチを継続的に実施し、発展させていくことで着実に認知症状は改善をみせた。このように、認知症の高齢者に対するアプローチは、個別に行っていくことが大切である。

【開催日】
2010年12月29日(水)

~認知症高齢者の困った行動(BPSD)とどう接するべきか?「パーソンセンタードケア」②~

【文献名】
認知症の介護のために知っておきたい大切なこと パーソンセンタードケア入門 トム・キットウッド,キャスリーン・プレディン著 高橋誠一監訳 寺田真理子訳 筒井書房 より p69-90

【要約】
(おさらい)パーソンセンタードケアとは?
おおもとは、イギリスの心理学者のT. キットウッドが提唱。
●パーソンセンタードケアのコンポーネント
•人間性が失われたのではなくて、見えなくなっているだけとみなす。
•全てのケアの場面で、その人の人間らしい側面を重視する。
•環境やケアを個別化したものとする
•意志決定の共有(Shared-decision making)を提案する
•認知症の方の行動を、その方の視点にたって解釈する
•ケアのルーチンタスク(清拭など)と同等に、認知症の方との関係性に重きを置く。

(この書籍について)
T.キットウッドが自らが介護者・家族向けに書いた、認知症患者との接し方の訳本。
上記の原則から始まって、日常の接し方、サポート、生きがい、薬との付き合い方、人権やグリーフまで網羅して接し方について具体的なことから心構えのようなところまで記してある。
その中から、今回は第7章『徘徊やおもらし、攻撃…認知症の「困った!」にどう対応すればいいの?』を紹介します。この章は、いわゆる認知症の問題行動(BPSD;Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)」について総論と、よくあるもの7つ(徘徊、失禁、攻撃、物を隠す、同じことを繰り返す・叫ぶ、性的行動、妄想・幻覚)について個別に取り上げています。

(基本的な考え方)
●認知機能が衰えてくると、周りの世界は以前よりもおそろしい場所のように思える。周りの人がだれなのかわからなくなっていく。混乱は不安を生み、さらにこの年齢層に特有の病気や障害の多さが加わって、生活の中でのあらゆる問題によって、うちのめされてしまう。喪失や障害を抱えている彼らがうまくいかないということに共感することが重要である。
●問題行動を起こしているのは「彼ら」であるが、実際には私たちの思いやりや優しさ、注意が足りないために、「わたしたち」も問題の一部であることが往々にしてある。
●手っ取り早い解決策を取ろうとする代わりに、以下の5つを考えることが有用である。
①それは本当に問題なのか?どれくらいの頻度で起きているか?
②どうしてそれが問題なのか?
③だれにとって問題なのか?私たち介護者が変化や適応、受け入れを拒むことで問題にしたのではないか?
④「問題行動を」する人は、わたしたちに何かを伝えようとしているのではないか?
⑤どうすれば、その人の生活の質を高めるような方法でこの問題を解決できるでしょうか?

(各論)
全般的に、問題行動の裏にあるその人の不安が何かをくみ取り、その人が本当は必要としているもの、を考えるように促す内容が記されています。(「徘徊」の部分の内容を例に挙げてみます。)
●徘徊は、不安を感じた人が、なじみの場所や愛する人を探したり、仲間や安心を求めているため起こす行動かもしれない
●活気や十分な刺激がなくて、単に生きていることを実感したいだけかもしれない。
●夜に増えるのは、光や音がなくなり、人もいなくなり、感覚に訴えるものが少ないからで、仲間と一緒にいて安心する人は夜になると不安になってくるかもしれない。
●混乱が原因ではないこともある。トイレに行きたいかもしれない。痛む所があるのかもしれない。服が汚れて気持ちが悪いのかもしれない。退屈なだけかもしれない。運動不足が原因のこともある。

●徘徊をやめさせるための鎮静薬は、徘徊する人より混乱させてしまう可能性が高い。安全に徘徊できるようにする方がいい。もっと徘徊者を安心させる方法は、一緒に歩いてみること。腕や手をとったり、近くに一緒に居るというメッセージを送り、安心させる。
●急に家具の場所を変えたり、夜に物の位置を変えることは避ける。寝室の明かりをつける
●一人で外へ出る人なら、状況に応じて鍵をかける必要がある。馴染みのないドアの下の部分につける必要がある。身分証明書は持たせるようにする。

●万が一徘徊しても、パニックを起こさず、警察の力を借りて探すのを手伝ってもらう。
●再発をどうやれば防げるか考える。刑務所のように閉じ込めるよりは、少しのリスクを引き受ける方がよいでしょう。

【開催日】
2010年12月15日(水)

~認知症患者の自動車運転の可否をどう評価するか?~

【文献】
D.J. Iverson, D.J. Gronseth: Practice Parameter update: Evaluation and management of driving risk in dementia. Report of the Quality Standards Subcommittee of the American Academy of Neurology. Neurology: 2010; 74: 1316-1324.

【要約】
《背景》
軽度の認知症患者は集団としては自動車運転のリスクが高いが、最近の研究では76%もの患者が路上運転試験をパスし、安全に運転が可能であることが示されている。臨床医は安全に運転できる患者を不必要に制限することなく、リスクの高い患者を見つける方法を求めている。
《目的》
認知症患者の自動車運転の能力を予測できる患者特性や病歴、認知機能テストの有用性に関するエビデンスをレビューすることと運転のリスクを回避する方法の有効性を測定すること。
《方法》
American Academy of Neurology’s evidence-based methodsを用いた文献のシステマティックレビュー。
5つの問いをたて、文献をレビューした。
《結果》
(1)認知症の重症度の包括的な測定法はどの程度運転能力と強く相関するか?
Clinical Dementia Rating(CDR; 参考文献参照)は危険な運転のリスクの高い患者の発見に有用。(Level A)
MMSE24点以下は有用とするエビデンスはある(Level C)一方で、相反するエビデンスもある。
(2)患者自身や介護者は運転能力や危険をどの程度評価することができるか?
介護者による評価は危険な運転者のリスクの高い患者の発見に有用。(Level B)
患者自身による評価は患者が安全に運転できることを保証するには有用ではない。(Level A)
(3)どのような病歴が運転能力の低下と関連するか?
・ 過去1~5年の間に事故を起こしたという病歴、過去2~3年の間に交通違反のきっぷをきられたという病歴は有用。(Level C)
・運転する距離が短くなった、運転の機会をなるべく避けるようになったという病歴は有用。(Level C)
・運転の機会をへらしているという病歴がないことは安全に運転できる能力があることを保証するものではない。(Level C)
・攻撃的、直情的な性格傾向は運転のリスクが高い患者の発見に有用。(Level C)
(4)神経心理学的検査は役に立つか?
神経心理学的検査が運転のリスクの評価に有用であるという十分なエビデンスはない。(Level U)
(5)運転のリスクを軽減する介入法は存在するのか?
認知症を有する運転者に対する介入法の効果を支持するまたは否定する十分なエビデンスはない。(Level U)
《考察》
CDR1.0の比較的軽度の認知症の患者では路上運転試験をパスするケースも多いため、運転を制限する必要のない患者に介入を行わないように、その他のリスクファクターを考慮して対応を決めるような下記アルゴリズムを提唱している。

101124

DMV: department of motor vehicles
※ 参考文献: Morris JC. The Clinical Dementia Rating (CDR): current version and scoring rules. Neurology 1993;43:2412-2414.

【開催日】
2010年11月24日(水)

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