慢性的な呼吸困難感に対するモルヒネ徐放製剤の多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化比較試験

-文献名-
Currow D, Louw S, McCloud P, Fazekas B, Plummer J, McDonald CF, Agar M, Clark K, McCaffery N, Ekstrom MP; Australian National Palliative Care Clinical Studies Collaborative (PaCCSC).
Regular, sustained-release morphine for chronic breathlessness: a multicentre, double-blind, randomised, placebo-controlled trial.
Thorax. 2020 Jan;75(1):50-56. doi: 10.1136/thoraxjnl-2019-213681. Epub 2019 Sep 26.

-要約-
【目的】
 モルヒネは慢性的な呼吸困難感を緩和すると考えられるが、大きなRCTによるデータが不足している。慢性的な呼吸困難感に対する低用量のモルヒネ徐放製剤の有効性と安全性をプラセボ対照無作為化比較試験により検証する。
【方法】
 オーストラリアの呼吸器・循環器・緩和ケアの入院・外来サービス14施設で二重盲検の無作為化比較試験を行った。修正版MRC息切れスケールで2以上の呼吸困難感を有する成人を対象とした。介入群は経口モルヒネ徐放製剤20mg/日と下剤、対照群はプラセボと下剤をそれぞれ7日間服薬した。両群とも必要時にモルヒネ速放製剤2.5mg/回を1日6回まで使用可とした。主要エンドポイントは現在の呼吸困難感のVAS評価の前後での変化とした。二次エンドポイントは24時間前と今における呼吸困難感の最低・最高・平均強度と患者のQOL、介護者のQOL、患者の治療への好みを評価した。
【結果】
 介入群に145名、対照群に139名が無作為に割り付けられた。主要評価項目である現在の呼吸困難評価の変化に有意差はみられなかった(変化の差-0.15 mm, 95%信頼区間 -4.59 to 4.29; p=0.95)。副次評価項目でも介入効果は認められなかった(24時間で最悪の呼吸困難感, p=0.064; 24時間で最良の呼吸困難感, p=0.207; 24時間の平均的な呼吸困難感, p=0.355; 現在の呼吸困難の不快感, p=0.338; 倦怠感, p<0.001, 介入群の方が倦怠感増悪; QOL, p=0.880; 全身状態, p=0.260)。介入群は便秘(p=0.001)、疲労(p<0.001)、悪心・嘔吐(p=0.008)が有意に多かった。モルヒネのレスキュー使用は対照群でより多かった(介入群, 平均5.8回, 対照群, 8.7回; p=0.001)。 【結論】  慢性的な呼吸困難感に対するモルヒネ徐放製剤の定期服用の介入効果は認められなかったが、レスキュー使用は対照群より少なかった。 【開催日】2020年3月11日(水)

在宅における新生児緩和ケア

-文献名-
Kuhlen, M., Höll, J. I., Sabir, H., Borkhardt, A., & Janßen, G. Experiences in palliative home care of infants with life-limiting conditions. European journal of pediatrics. 2016;175(3):321-327.

-要約-
研究の目的:予後の限られている疾患を持った新生児およびその家族が在宅緩和ケアにおいて直面する問題点を同定し、医師・支援者がそのニーズを理解することを目指す
背景:これまでに在宅緩和ケアを受ける新生児についての実態調査研究は2013年のポーランドのものをのぞいてほとんどない。同研究では37.7%(20人)が緩和ケアから通常のケアに安定して脱していることが報告されている。
デザイン:ドイツ・デュッセルドルフの子供病院の小児緩和ケアチーム(PPCT)に紹介され、自宅ケアを受けた事例を2007-2014年の期間で記述的研究を行った。生後365日を超えた事例は除外した。なお、同都市では5820人の子供が1年あたり生まれている。
結果(Table1, 2, 3参照):31人の患児が該当した。そのほとんど(17人)が先天性奇形または染色体異常だった。21人が死亡し、そのうち5人は入院中の死亡だった。64.5%が自宅でお看取りとなった。83.9%が嚥下機能障害を持ち、NGチューブあるいはPEGを受けていた。1/5の子供がPEG造設のために再入院したが、その周術期に死亡していた。71%が鎮痛薬による治療を受け(そのうち16人72.7%がNSAID、2人9.1%がトラマドール、17人77.3%が強オピオイド)、45.2%が酸素療法が必要で、9.7%が人工呼吸器を要していた。
死亡率が最も高かったのは、周産期合併症を持っていた場合(75%)であった。4人の患者においては、状態が劇的に改善し、緩和ケアから通常ケアに脱することができた。

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【開催日】2020年2月12日(水)

Comfort Feeding Only

-文献-
Eric J. palecek, et al. Comfort Feeding Only: A Proposal to Bring Clarity to Decision- Making Regarding Difficulty with Eating for Persons with Advanced Dementia. J Am Geriatr Soc. 2010 March ; 58(3): 580–584.

-要約-
体重減少につながる経口摂取・食事の困難は、認知症進行期において一般的である。このような問題が発生すると、家族はしばしば胃瘻造設に関する意思決定に直面する。
観察研究に基づく既存のエビデンスは、経管栄養が生存率を改善したり、誤嚥のリスクを低下させたりしないことを示唆しているが、認知症患者では経管栄養が広く行われており、施設入居者の大部分は人工的水分・栄養補給法に関する希望について文書による事前指示を得られていない。
理由の1つは、人工的水分補給・栄養法を差し控える指示が「経口摂取させない」と誤って解釈され、その結果家族の抵抗感を生むためである。
さらに、施設は体重減少に対する当局の監査を恐れており、経管栄養の使用は可能なことがすべてが行われていることを意味すると誤って信じている。
これらの課題は、患者のケアの目標を強調する明確な言語を作成することで克服できる。
個別の食事ケア計画を通じて患者の快適性を確保するためにどのような措置を講じるべきかを示す新しい指示「Comfort Feeding Only」を提案する。
慎重な食事介助による可能な範囲での快適な経口摂取に注力することは、経管栄養に代わる明確な目標指向の代替手段を提供し、人工的水分・栄養補給を放棄する現在の指示によって課せられることになる見かけの「ケアする」「ケアしない」の二分法を排除する。

【開催日】2019年11月6日(水)

サルコペニアと嚥下障害

―文献名―
Ichiro Fujishima. Sarcopenia and dysphasia. Sarcopenia and dysphagia. 2019; Jan 9.

―要約―
Introduction:
 サルコペニアと嚥下障害については学会や研究会で話題に上がることが多い。しかし、明確な基準や定義はまだ定まっておらず。今後のさらなる研究の発展のためにも、現時点でわかっていることをまとめる必要があると考えられた。メカニズム・診断・治療・今後の展望について統一見解を出すことを目的とする。(日本摂食嚥下リハビリテーション学会、日本サルコペニア・フレイル学会、日本リハビリテーション栄養学会、日本嚥下医学会の4学会合同で作成)

 サルコペニアは1989年に提案された概念で、骨格筋量の低下に伴う筋力低下による身体機能低下を示している。診断基準は未だまちまちで、骨格筋量は必須項目であるものの、筋肉の機能の評価には筋力低下(握力)と身体機能低下(歩行速度)の両者もしくはいずれかを採択するのかで意見は分かれている。嚥下機能との関連については2012年に最初の報告があり、その後は本邦を中心に研究が重ねられている。サルコペニアの概念は、老化に伴う生理的なもの(内的要因)と運動不足・栄養摂取不足といった外的要因の両者が誘因となって生じる筋萎縮を示しており、原因には中枢神経、筋繊維自体の変化、ホルモンや栄養、生活習慣などが関与している。嚥下筋のサルコペニアについては未だ議論中で、嚥下筋の廃用とサルコペニアの違いや、栄養改善と訓練によって回復可能性があるのかどうかについてさらなる研究が必要である。
 サルコペニアによる摂食嚥下障害のリスク因子としては、サルコペニアそのもの、低栄養、低ADLがあり、予防にはリハビリテーションや栄養管理が有用ではないかと考えられている。
現在、サルコペニアに伴う嚥下障害は2017年に診断フローチャート(Fig.1)があり、嚥下関連筋の筋肉量を評価せずに診断が可能である。これにより、「サルコペニアの嚥下障害とは、全身と嚥下筋関連のサルコペニアによる摂食障害である。全身のサルコペニアをみとめない場合、神経筋疾患によるサルコペニアは除外。加齢・活動低下・低栄養・疾患による二次性サルコペニアは含む。」定義されている。嚥下関連筋の筋肉量はCTやエコーで評価可能と言われており、特にオトガイ舌骨筋のエコーでの筋肉量・輝度による評価が有用と言われており、サルコペニアの診断基準案(Table.1参照)を提示した。
 治療によってサルコペニアによる摂食嚥下障害が改善されたという報告は3例。いずれも摂食嚥下リハビリと同時に35kcal/kg(理想体重)を目標とした栄養管理を行っている。リハビリテーションと栄養改善の併用がやはり重要と言える。

 嚥下筋にサルコペニアが生じた場合の嚥下障害の判定方法は未だ不明瞭。両者の関係性についても引き続き議論を要する。予防や治療については、栄養改善を目指した栄養管理がどこまで予防・治療に効果を及ぼすのかを明らかにしていきたいところ。健常高齢者や加齢に伴う変化を評価していくことや、薬物療法の開発も今後の課題の一つである。

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CC:下腿最大径、DXA:二重エネルギー X 線吸収測定法、BIA:生体インピーダンス法
DXAは全身測定用のものが必要のため、骨密度測定に一般に使われているものは不適切
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【開催日】2019年2月6日(水)

アドバンス・ケア・プランニングの効用

―文献名―
Karen M. Detering The impact of advance care planning on end of life care in elderly patients: randomised controlled trial. BMJ. 2010; 340: c1345.

―要約―
【目的】
 高齢患者に対する人生の最終段階におけるケアに対するアドバンス・ケア・プランニングの影響を調べること

【方法】
 デザイン:Prospective randomised controlled trial.
 セッティング:オーストラリアメルボルン大学の単一施設研究
 参加者:80歳以上の医療入院患者309名を対象とし6ヶ月もしくは死亡するまで追跡調査した
 介入 :参加者は通常ケアか通常ケア+アドバンス・ケア・プランニング(the Respecting Patient Choices model 文献12のトレーニングを受けた
     看護師またはヘルスケアワーカーが主治医などの協力のもと実施)を受けるため無作為に割り付けられた。アドバンス・ケア・プランニング
     は患者が患者の目的、価値観、信念を将来の治療選択の考慮と代理意思決定者の任命と希望の文章化に反映することのサポートを目的として
     いる。
 アウトカム測定:主要アウトカムは患者の人生の最終段階における希望が知られており尊重されているかどうかであった。他の結果には、入院患者
         および家族の満足度、および死亡した患者の親族におけるストレス、不安、うつ病のレベルが含まれていた。
 
【結果】
 309名のうち154名が介入群に無作為に割り付けられた。125名(81%)にアドバンス・ケア・プランニングが実施され、108名(84%)が希望を表明したか代理意思決定者を指名した。6ヶ月で死亡した56名のうち介入群(25/29,86%)はコントロール群(8/27,30%;P<0.001)に比べ人生の最終段階における希望がより知られ、従われる傾向にあった。介入群では亡くなった患者家族のストレス(介入群5、コントロール群15、P<0.001)、心配(介入群0、対照群3、P=0.02)、抑うつ(介入群0、対照群5、P=0.002)がコントロール群と比較して有意に少なかった。患者と家族の満足度は介入群と比較してより高かった。
 
【結論】
 調整されたアドバンス・ケア・プランニングは人生の最終段階におけるケアを改善する。アドバンス・ケア・プランニングは遺族の不安、抑うつ、心的外傷後ストレスを軽減する。アドバンス・ケア・プランニングは入院後の患者と家族の満足度を改善する。
 
【Discussion】
 ・意思表示能力がない患者(認知症など)のアドバンス・ケア・プランニングについては評価していない
 ・単一施設研究のため地域の文化的、システム的な影響があるかもしれない
 ・6ヶ月以内での追跡は出来たがそれ以降の追跡は出来ていない

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村井先生図2

村井先生図3

村井先生図4

村井先生図5

【開催日】
2018年11月7日(水)

ホスピスケアの平均余命

―文献名―
Todd Eichelberger. Life Expectancy with Hospice Care. Am Fam Physician. 2018 Mar 1;97(5)

―要約―
-Evidenve-Based Answer-
ホスピスケアを受けている肺癌、膵臓癌、転移性黒色腫の終末期患者は、寿命が最小限に延長される。少なくとも1日のホスピスケアを受けると、平均余命は3ヶ月まで延長される可能性がある。(Recommendation:B)

▶2007年の後ろ向きコホート研究(n = 4,493)は、末期診断を受けた患者の生存期間を測定した。すべての患者は、診断から3年以内に死亡した。ホスピスケアを受けたのはおよそ2分の1(2,095人)だった。研究は、乳癌、結腸癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌終末期の診断の患者を含む、疾患特異的コホートから構成された。サブグループ分析では、ホスピスケアを受けた肺癌および膵臓癌の患者は、ホスピスケアを受けていない患者と比較して平均余命が延長した。(肺癌患者では279日対240日、P 1. Connor SR, Pyenson B, Fitch K, et al. Comparing hospice and nonhospice patient survival among patients who die within a three-year window. J Pain Symptom Manage. 2007;33(3):238–246.

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(原著(上記添付)を参照すると、平気余命を最も延長したのは慢性心不全患者群。研究の限界として、ホスピス入院の決定に関連する要因が結果に影響するかは正確にはわからないと記載あり。この研究によりホスピスケアが死を早めるという誤解を払拭する情報を提供したいらしい。)

▶2015年の台湾の末期肺癌患者に関する後ろ向きコホート研究は、少なくとも1日でもホスピスケアを受けた患者(n = 566)とホスピスケアを受けていない患者(n = 2,833)の生存率を比較した。(20歳未満の患者は除外)ホスピスケアは診断後の生存期間を延長した。(中央値= 0.86年対0.61年、P <.001)
2. Chiang JK, Kao YH, Lai NS. The impact of hospice care on survival and health care costs for patients with lung cancer: a national longitudinal population-based study in Taiwan. PLoS One. 2015;10(9):e0138773.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4583292/

▶2014年の後ろ向きコホート研究は、転移性黒色腫を有する65歳以上の患者(n = 862)のホスピスケアの生存効果およびコスト効果を調べた。ホスピスケアを受けていない患者(n =225例)、3日以内のホスピスケアを受けた患者(n =523例)、3日以上のホスピスケアを受けた患者(n =114例)がいた。終末期の診断から死亡までの平均生存期間は、ホスピスケアを受けていない患者では6.1ヶ月、3日以内のホスピスケアを受けた患者では6.5ヶ月、3日以上のホスピスケアを受けた患者では10.2ヶ月であった(P <.001)。4日以上のホスピスケアを受けた患者は、3日以内の患者よりも平均生存期間が3.3カ月長い(ハザード比= 0.66; 95%信頼区間0.54〜0.81)
3. Huo J, Lairson DR, Du XL, et al. Survival and cost-effectiveness of hospice care for metastatic melanoma patients. Am J Manag Care. 2014;20(5):366–373.
https://www.ajmc.com/journals/issue/2014/2014-vol20-n5/survival-and-cost-effectiveness-of-hospice-care-for-metastatic-melanoma-patients

 

【開催日】2018年8月1日(水)

病院における終末期患者の治療目標に対する意志決定の障壁因子について

-文献名-
Barriers to Goals of Care Discussions With Seriously ill Hospitalized Patients and Their Families A Multicenter Survey of Clinicians
ohn J. You, MD, MSc1,2; James Downar, MDCM, MHSc3,4; Robert A. Fowler, MDCM, Epi5,6; et al
JAMA Intern Med. 2015;175(4):549-556. doi:10.1001/jamainternmed.2014.7732

-Introduction-
終末期の入院患者に対して、ケアの目標に対するコミュニケーションと意志決定がEOL(end of life)のケアの質を向上させる優先事項である。EOLのケアの質を改善するためには既存の障壁を取り除く必要がある。ただ、今までこれらに対する病棟の臨床家の見解を明らかにした論文はなかった。目的としては病院臨床家の観点から1終末期患者とその家族とのケアの目標を阻害する因子について、2臨床家がこのプロセスに従事する意欲と受け入れについて調査することである。

-Method-
カナダの5つの州の教育施設である13の病院で勤務している内科スタッフ、内科レジデント、看護師を対象とし、医師、看護師で個別性を持つアンケートを3段階で作成した。アンケートの内容に関しては、最初のセクションは臨床問題(Box)を読んでもらい、その中で患者と意志決定を議論する上での21の障壁(家族、患者因子に関わるものが10個、臨床医の要因が4つ、システムに関する要因が7つ)の重要性について、主要アウトカムとして7点スケール(1重要でない7非常に重要)で評価するように回答。
次のセクションではケアの目標に対する様々な側面について調査しています。ディスカッションの会誌、情報交換、コーチング(価値の明確化、治療のオプションなど)、延命を希望するかしないかについての最終的な意志決定についてです。それぞれ参加者はどの程度意欲的に取り組んでいるのか、看護師は職場環境でどのくらいこれらに関わっているのか尋ねられた。これも7点スケール(1意欲がない、7きわめて意欲的である)で評価。紙ベースとWebベースの両方で出来るよう対応。結果は研究調整センターで分析された。
解答に関してはスタッフ医師、レジデント、看護師に分けて記載。カテゴリ変数はカウントとパーセンテージ、連続変数は平均と標準偏差で記載。平均と障壁における95%信頼区間が全試験サンプルで報告。専門科での各障壁に対する重要度の違いも評価した。

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-Results-
2012年9月から2013年3月の期間で、1617人の対象者のうち1256人がアンケート調査を受け解答した。全体の回答率は77.7%(646人の看護師のうち512人[79.3%]、634人のうち484人[76.3%]、337人のスタッフ医師[ 77.2%])。
Figure1はすべての参加者によるケアの目標を決める際の障壁と感じるものの重要性です。
障壁の重要性の順位付けは3グループともに同様であり、家族、患者に関連した因子が最大の障壁となっているとの答えであった。
(家族、患者が短い予後を受け入れられない、治療の限界や合併症の理解が難しい、家族間の合意の欠如、本人の意志決定能力
の欠如)。臨床家は自分達のスキル不足、要因はあまり重要ではないと考えていた。また、障壁の順位は類似していたが各重要度は看護師が最も高かった。
Figure2は意志決定の目標を達成する意欲と支持について記載されている。スタッフ医師が最も意欲的であり、次はレジデントであった。
看護師は目標達成の意欲、職場環境のサポートともに高くはなかった。
Figure3はコミュニケーションと意志決定における様々な専門職との関わりの重要性について記載されている。
スタッフ医師とレジデントは意志決定に非常に重要であると評価された、一方でスタッフ医師、レジデントは看護師と比較して、看護師、SW、他の医療スタッフが意志決定に関わることはあまり重要ではないと評価していた。

【開催日】2018年5月23日(水)

終末期緩和ケア患者の感染症に対する抗菌薬の使用について

―文献名―
Joseph H. Rosenberg, Jennifer S. Albrecht, Erik K. Fromme, et al. Antimicrobial Use for Symptom Management in Patients Receiving Hospice and Palliative Care: A Systematic Review
J Palliat Med. 2013 Dec 1; 16(12): 1568–1574

―要約―
Introduction
 米国でも高齢化により緩和ケアの必要性が高まっている。終末期患者は高い感染のリスクがあり、約27%の患者が死亡する週に抗菌薬が投与されている。この状況にも関わらず終末期患者における抗菌薬の投与が、予後の延長と症状緩和に寄与するかについては明らかではない。2002年に終末期患者に対する感染のSystematic Reviewがあったが、その中では症状の改善に関する論文は1つだけであった。この10年で終末期患者における抗菌薬の使用を検討するいくつかの論文が発表されている。今回はそれらの文献を体系的にレビューし、症状の改善に対する既存のデータを要約した。これにより今後の終末期患者の抗菌投与の有無の判断について役立てることが目的である。

Method
 PubMedで2001年1月1日~2011年6月30日までの間に発表された終末期患者の抗菌薬使用についての文献のSystematic Reviewであり、palliative care、infection 、antibiotic等の文字で検索した。癌を含む終末期患者における、抗菌薬使用率と使用後の症状の改善を測定した文献に限定して分析した。創傷、口腔ケア、衛生環境、薬物動態に焦点を当てたものは除外としている。対象としている論文は記述研究である。データベース以外の検索はしておらず、funnel plotなし。文献の評価については、1人目の著者は文献が基準を満たしているのかを評価し、2人目、3人目の著者が選ばれた文献をレビューし、4人目の著者が評価者の内容に偏りがないかチェックしている。

Results
 PubMedで984の文献を検索し、基準を満たす文献は11個であった。table1は患者数、主病名、療養環境、国、研究方法、反応性、抗菌薬使用率について記載している。table2は抗菌薬に対する症状の改善について記載されており8個の文献が当てはまっている。全体での抗菌薬による治療の効果については、21.4%(95%CI:13.2%-31.7%)~56.7%(95%CI:52.7%-60.6%)と様々であった。点滴投与のみの研究は2つあり、効果はそれぞれ52.9%(95%Cl27.8~77.0%)、75.9%(95%Cl:52.7~60.6%)であった。また臓器別の抗菌薬の効果について記載された論文が3つあり、その中の2つの文献によると尿路感染症では60~92%、呼吸器感染症では0~53%、菌血症では0%の効果であった。

Discussion
 今回の研究の課題としては、抗菌薬使用群と非使用群との比較対照した研究ではない。抗菌薬の使用状況と症状の改善を同時に測定している事に異質性がある。現時点ではランダム化比較試験の研究はない。症状の改善という点でも有効な症状測定ツールを使用しておらず、主観的な評価を用いている(ただ、症状の評価自体が主観的であり測定が難しい)。解熱剤等の抗菌薬以外の治療の効果が除外されていないので、抗菌薬の独立した効果かは不明。抗菌薬の副作用についても考慮していない。
ホスピスでは感染症の診断自体があいまいな場合が多い。今回の研究では数が限られているため
ファネルプロットを用いた出版バイアスの評価も行わなかった。
今回の研究結果はこの分野における質の高い研究の必要性を再確認するものであった。
今後研究を行う際は、有効な症状測定ツールを活用する。抗菌薬治療群と非治療群とを分けて評価する。感染症を定義付ける。副作用も調査する。他の薬剤使用等の症状管理状況の交絡因子をきちんと除いたプロスペクティブな研究が必要である。

【開催日】
 2017年5月24日(水)

末期癌患者の在宅死の実現に影響を与える要因

―文献名―
S.Fukui, et.al.Late referrals to home palliative care service affecting death at home in advanced cancer patients in Japan: a nationwide survey.Annals of Oncology 2011;22:2113-2120.

―要約―
【背景】
多くの患者が在宅での死を希望しながら希望した場で死を迎えられていない。

【目的】
病院から在宅への紹介のタイミングに焦点を当て、在宅緩和ケアを受ける患者の死亡場所に影響を与える要素を明らかにする。

【方法】
日本全国の在宅ケア施設から無作為に選ばれた1000施設(訪問看護)に直近の在宅緩和ケア患者1名について回答を依頼する質問紙を用いた横断研究。合計568(名の患者について)の回答が解析された(有効回答率は69。1%)。

【結果】
多変量ロジスティック回帰分析により以下が在宅緩和ケアの死亡場所に影響を与えることが明らかになった(Table3 表示)。
(1) 患者特性
家族介護・看護者が在宅ケアを希望していること、家族介護・看護者が娘か義理の娘であること、紹介時の身体機能が完全に寝たきりであること
(2) 病院における退院前のサポート
早期の紹介(退院前8日以上)、病院のスタッフによる退院し在宅で生活し亡くなることに関する明解な説明
(3) 在宅ケアへ移行後のサポート
在宅緩和ケアチームに含まれる医師が(病院医ではなく)家庭医であること、医師や看護師が患者に対して24時間の支援を保証する契約を結ぶこと、退院後最初の1週間、訪問看護師が3回以上医師と訪問すること

【結論】
病院側のスタッフによる早期かつ丁寧にコーディネートされた円滑に機能する退院支援システムと在宅ケアチームによる退院直後の質の高い支援は患者の在宅死を増やす可能性がある。

【開催日】
2014年11月5日(水)

終末期における、家庭医の認められた役割 ~入院の予防とガイド~

―文献名―
Thijs Reyniers .The Family Physician’s Perceived Role in Preventing and Guiding Hospital Admissions at the End of Life: A Focus Group Study.Annals of Family Medicine.2014;Vol12:441-446.

―要約―
【目的】
家庭医は終末期ケアを提供する際に、そして終末期の患者が住み慣れた環境で亡くなっていく際に重要な役割を担っている。この研究の目的は、終末期における、入院を予防したり進めていったりする際の役割と困難さについての家庭医の認識を探る事である。

【方法】
5つのフォーカスグループが開かれた。参加した家庭医はベルリンの家庭医で39人。 議論はテープ起こしされ、constant comparative approach※1で分析された。

【結果】
終末期における、入院の予防と案内での5つの重要な役割が分かった。①未来のシナリオを予想するケアの計画者; ②助言するという形での急変時の決断をする役割;③終末期ケアの提供者(これは能力と態度が重要である);④特に急変時に対応できるという支援の提供者;⑤総合的な責任を担う意思決定者

【結論】
終末期における入院の予防と案内の際、家庭医は多様で複雑な役割と困難さに直面する。 病院医療へのゲートキーパーとして家庭医の役割を向上させたり、家庭医にもっと終末期ケアのトレーニングをさせたり、家庭医をサポートする方法を発展・拡大すれば、終末期における入院の割合を減らせるかもしれない。

※1:constant comparative approach;データの収集,コーディングとカテゴリ化,理論構築の作業を、データ収集ごとに分析の結果を絶えず比較し,それをまたデータ収集に反映することを繰り返す

―考察とディスカッション―
この研究で導き出された5つの役割は、どれも納得できるものであった。あくまで終末期における「入院」に関わる家庭医の役割ではあるが、かなりの部分が網羅されていると思われる。

①皆さんはこの結果を見て納得できるか?
②終末期ケアにおける家庭医の役割として、皆さんが抱えている悩み、疑問はどんなものがあるか?
③「終末期ケアにおける家庭医の役割は?」というクリニカルクエッションに対し、この研究に更に上乗せするとしたら、どのような切り口で研究を構成していくか?

【開催日】
2014年10月22日(水)