妊娠中のアセトアミノフェン使用と 小児期の問題行動との関係

-文献名-
Association of Acetaminophen Use During Pregnancy With Behavioral Problems in Childhood: Evidence Against Confounding. JAMA Pediatr. 2016 Oct 1;170(10):964-970.

-要約-
Introduction:
アセトアミノフェンは一般的な鎮痛薬の一つであり、妊娠中の全ての段階で安全であると考えられ、解熱・鎮痛の第一選択になっている。
妊娠中のアセトアミノフェンの使用は、多動障害およびADHD様リスクと関連している。 いくつかの研究で報告されている。以前の研究では多くの潜在的な交絡因子が説明されていたが、まだ認識されていない交絡の可能性がある。測定されていない家族性の交絡が考慮される必要があり、
母体の出生前の曝露と母体の出生後の曝露の比較、妊娠中のパートナーの曝露がある。

Method:
2015年2月から2016年3月までに、ALSPAC(Avon Longitudinal Study of Parents and Children)から得たデータを分析した。前向きの出生コホート。
1991-1992年の間にALSPACに登録された7796人のお母さんが対象で、子供とパートナーも調査対象となった。
(ALSPACには、出生前からの子どもと両親の長期にわたる個人情報が、遺伝子研究資源とリンクされて保管されている。)

母親は、妊娠18ヶ月と32ヶ月時に、前3ヶ月間にアセトアミノフェンを使用したかを尋ねられた。
子供が61ヶ月時点で、同様の質問を、母親とパートナーに質問した。また、筋骨格系の問題、感染症、片頭痛あるいは頭痛が同時期にあったかどうかも質問された。投与量や期間などについては詳細に確認をしていない。
子供が7歳になったときの母親から報告で、Strength and Difficulties Questionnaire(SDQ)を測定した。

Results:表やグラフがあれば適宜紹介する。
JC20171206貴島

JC20171206貴島2

妊娠18週および32週でのアセトアミノフェン使用は、行為障害、多動障害と
妊娠32週でのアセトアミノフェン使用は、感情的な症状やSDQ total difficulties と関連していた。

JC20171206貴島3

出生後の母親、パートナーのアセトアミノフェンは関連なし

Discussion:今回の研究の限界、残された課題などを記載する。
胎児期にアセトアミノフェンに曝露した小児は、複数の行動障害のリスクが増加し、アセトアミノフェンと関連した未知の社会的要因や行動要因によっては説明できないようである。
この結果は、公衆衛生上のアドバイスに影響を及ぼす可能性がある。更なる研究により結果が再現され、機序が明らかになることも必要である。
Limitation:
頭痛・筋骨格系の問題・感染症など一般的な使用理由は調整されたが、アセトアミノフェンの適応の情報がない。
妊娠中の母親の健康に対する交絡や胎児への影響の可能性は除外できない。
アセトアミノフェンの用量や期間の情報がない(毎日使用していたのは0.1%)

【開催日】2017年12月6日(水)

「患者のどれだけ生きたいか?と、前立腺癌の治療の選択をする・しない」の調査

-文献名-
Jinping Xu et al. Patients’ Survival Expectations With and Without Their Chosen Treatment for Prostate Cancer. Ann Fam Med May/June 2016 vol. 14 no. 3 208-214

-この文献を選んだ背景-
 前立腺癌は男性の部位別罹患率の3位であり、長期生存の見込めるがんであるため、家庭医の継続的な外来で遭遇することの多いがんであるとも言える。実際、当院でも、これまで複数の前立腺癌患者を経験している。多くは治療継続という外来であるが、最近経験した2例においては限局性前立腺癌患者のカウンセリング(2ndオピニオン含)をも担う外来となった。それぞれの価値観や性格傾向に合わせて継続的なケアを行なっているが、「どれだけ生きたいか?」という期待が「治療選択の有無」にどのように影響しているのか?を調べた文献に遭遇し、今後の診療に行かせる研究と考え共有したい。

-要約-
Introduction:
・スクリーニングで同定された限局性前立腺癌への過剰治療は公衆衛生学的に重要な関心事である。
・低リスクのものは初期マネジメント戦略として「経過観察/積極的な監視療法」がガイドラインに含まれているが、実際選択しているのは10-20%程度である。新しい技術の存在やがん進行の不安・恐れが影響し、低リスクへの積極的な治療は増加傾向にある。
・現在、積極的治療と待機的観察を比較するPIVOT試験が進行中であり、10年間の中央値で待機的観察と比べて積極的手術が全ての原因もしくは前立腺癌に関連した死亡率を著しく低下させるという結果は示せなかった。手術や放射線療法などの積極的な治療が生存率向上に寄与するかはこれまで十分に確立されてもいない。
・治療決断に際し、治療オプションの利点・決定を正確に理解する必要があり、患者の期待余命が治療選択に影響するのかの調査はほとんどない。我々は患者の期待余命と限局性前立腺癌への治療選択の有無について調査を行なった。

Method:
・横断研究
・デトロイト市都心部に住む75歳以下の黒人・白人男性で、新たに診断された限局性前立腺癌患者が対象
・MDCSSというシステムのRSAというデータを利用し、自記入式調査表を用いての研究を行なった
・カルテレビューと治療選択、選択理由、どんな治療を紹介・推奨されたかなどを調べ、「治療をしなかった場合どれ
だけ生きられると認識しているか?」「治療しなかった場合、どれだけ生られると思うか?」という2つの質問を行なった
・治療無しで期待余命があると思う群、治療をして期待余命があると思う群、その群間の分析、年齢・人種・学歴・健康状態などによる多変量解析を行なった

Results:
松井先生図①

<治療希望の有無別の期待寿命>
・治療しない群では、33%が5年以下の期待余命であった。41%が5-10年、21%が10-20%、5%が20年以上だった。
・積極的治療を選択する群は3%が5年以下、9%が5-10年、10-20%が33%、20年以上が55%であった。
松井先生図②

<治療選択群毎の期待余命比較>
・積極的治療を選択する群の期待余命は11年以上と長く、治療しない群と比べて4年以上長かった。
・手術選択群と放射線選択群との違いは無かった。
・変数調整後、待機観察選択群では治療なしの場合にでより長い期待余命を持ち、治療ありの場合でより短い期待余命を持っていた。
松井先生図③

・治療しない群では待機観察で期待余命が長く、治療する群での期待余命が短かった。
松井先生図④

<多重線形回帰分析>
・年齢、健康状態、癌の深刻さの認識、治療選択群が期待余命の予測因子となった。
・人種やリスクレベルは含まれず。
松井先生図⑤

Discussion:
・全ての男性が、年齢、人種、学歴、合併症に関わらず、積極的治療での非現実的な期待余命を保持していた。
・手術や放射線を選択した男性は、それをすることでしない場合よりも10年以上余命が伸びると期待していた
・この誤解の訂正こそが重要で、治療の意思決定のみならず、PSAでのがんスクリーニングへの認識を改善するであろう
・他の研究では限局性前立腺癌と診断された男性は、全ての年齢と合併症の状態に関わらず86-98%がその癌で亡くなってはいない
・治療後の10年以上の観察結果でも、手術選択が生存を伸ばしたという確証は得られていない
・限局性前立腺癌の診断時に、出会った医師がどのような推奨を行なうかは初期の促進因子となる
・意思決定やその支援において、治療の比較や副作用に焦点があたることはあっても、期待余命を話題にすることは少ない
・泌尿器や放射線の医師が深い医師患者関係を構築してタイトな時間の中で診断や治療についてのディスカッションを行なえる機会は乏しい
・患者を長期に継続的に診ているプライマリケア医こそが、患者についての個人的な知識を持ち、意思決定へのアプローチ、疾患管理の流れの中で何を優先するかに利点を持っている
・本研究の限界としては、①経過観察・監視療法が31名と少なく、より多い人数での調査が今後必要であること。②2009-2010年の研究なので、監視療法が今よりも少ない時代の調査となったこと。③一箇所の都市で行った調査なので他の地域には当てはまらないかもしれない。

-考察とディスカッション-
・2例の患者の低リスクの1例は確固たる信念で治療を選択せず経過観察しているが、専門医からの圧力で不安が度々生じている。もう1例は中リスクでもあったが、手術や放射線のメリット・デメリットに悩み、またダビンチ手術や小線源刺入放射線療法という新しい治療方法でオプションが増えたことで、治療決定に悩み・迷走する時間があった。
・家庭医が意思決定のガイドとして、患者の人生を支援することは期待される役割であるが、多くの場合は
・待機的な観察は、治療の合併症を減らし、手術をしないコスト低下が期待できる。家庭医が期待余命などを含めて意思決定支援に関わるメリットは大きい。
・しかし、現状の医療体制や専門医との関係性の中で「患者が家庭医に相談を持ち込むか?」「家庭医と患者の決定を専門医がどう認識するか?」についてはまだまだ弱い体制・コンセンサスである。

<ディスカッションポイント>
 ・限局性前立腺癌の治療決定に関わったことがありますか?その際に、期待余命などを話題にしたことがありますか?
 ・今後、どのようにすれば患者が家庭医に前立腺癌の治療方針の相談を持ち込めると思いますか?どのようにすれば家庭医と泌尿器科医、放射線治療医で日本や各医療圏でのコンセンサスをつくれると思いますか?

【開催日】
 2016年9月21日(水)

家庭医はDVとどう対峙するか

―文献名―
O’Doherty LJ1, Taft A, Hegarty K, Ramsay J.Screening women for intimate partner violence in healthcare settings: abridged Cochrane systematic review and meta-analysis.BMJ 2014;348:g2913  PMID:24821132

―要約―
1)目的
医療機関のセッティングでパートナーからの暴力についてスクリーニングすることの効果を検証する事で、その意義を高め、女性の幸福に寄与し、今以上の暴力や害悪の原因を減少させるため

2)研究デザイン
スクリーニングの有用性を評価するためにシステマティックレビューおよびメタ分析を行なった。研究評価、データの抽出、質的評価は著者ら二人が独立して行なった。リスク比および95%信頼区間の設定については標準化された方式を用いて求めた。

3)データ
2012年7月までに、9つのデータベース(CENTRAL, Medline, Medline(R), Embase, DARE, CINAHL, PsycINFO, Sociological Abstracts, ASSIA)で検索され、2010年までに5つのトライアルが登録された

4)研究の選択における加入クライテリア
医療機関において16歳以上の全ての女性に対して、パートナーからの暴力を受けているかのスクリーニングプログラムがあることが、ランダム化もしくは準ランダム化試験が組み入れ基準である。スクリーニングだけを目的として介入したものと、普段のケア(スクリーニングをしない)との比較した研究だけを選定し、権利擁護や治療的介入のような構造的な介入を目的としたスクリーニングプログラムは除外した。

5)結果

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11のトライアル(n=13027)が同定され組み入れられた。(figure1)
6つの研究(n=3564)のメタ分析では、パートナーからの暴力を同定する割合が(通常のスクリーニングを行なわないケアに比して)上昇した(リスク比2.33、95%信頼区間1.39~3.89)。(figure2)とりわけ、出産前においては、リスク比4.26、95%信頼区間1.76~10.31となっていた。

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3つの研究(n=1400)のメタ分析では、スクリーニングプログラムは、DVの専門機関への紹介につながるエビデンスがないことが証明された。(リスク比2.67、95%信頼区間0.99~7.20)。(figure3)

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2つの研究だけのメタ分析では、スクリーニング後(3~18ヶ月)の暴力の経験を調査しているが、パートナーからの暴力は減っていない事を証明した。1つの研究から、スクリーニングに害悪はないと報告があった。

6)結論
医療機関におけるスクリーニングによりパートナーからの暴力が同定されるケースは増えているが、こうした暴力の潜在的な確率と比較すると、まだ低い状態である。また、スクリーニングが、効果的な専門家への紹介につながっているかどうかは不明である。短期間では、スクリーニングは、害悪がないとされているが、医療機関でスクリーニングを行なう上では十分なエビデンスはない。女性の長い期間の幸福において、スクリーニング法と、事例発見法、治療的介入を織り交ぜたスクリーニング法の有用性を比較する研究が必要である事を、医療機関におけるDV発見政策を施行しようとする政府に知らしめなければならない。

【開催日】
2014年10月1日(水)

立位排尿と座位排尿が前立腺肥大の患者に与える影響

―文献名―
Ype de Jong ,et. al. Urinating Standing versus Sitting: Position Is of Influence in Men with Prostate Enlargement. A Systematic Review and Meta-Analysis. uly 22, 2014 DOI journal.pone.0101320

―要約―
【背景】
これは、排尿時の姿勢が薬理学的介入に近づく程度に下部尿路症状(LUTS)を有する患者における尿力学パラメータに影響を与えることができることが示唆される。
この論文では、健康な男性とLUTSを有する男性において排尿時の姿勢が排尿中の最大尿流率(Qmaxを)、時間排尿(TQ)と排尿後の残存量(PVR)に与える影響をシステマティックレビューとメタ解析で分析した。

【証拠収集(方法)】
14の医療データベースによって体系的な検索がされた。
立位と座位での尿力学パロメーターを比較した研究はインクルージョンされた。
参加者の男性は健康状態によって層別化された:健常またはLUTSを有する患者。
LUTSと健常人および患者:研究が含まれ、男性参加者の健康状態に応じて層別化した。
Qmax、TQ、PVRの標準平均差は、ランダム効果モデルにプールされた。

【結果】
11個の論文が採用された。LUTSを有する男性において座位姿勢の方が立位姿勢と比較して明らかに残尿量(PVR)が低かった。(-24.96 ml; 95%CI -48.70 to -1.23)
さらに、座位姿勢での排尿において有意差は出なかったが最大尿流率(Qmax)は増加(1.23 ml/s; 95%CI 21.02 to 3.48)、時間排尿(TQ)は低下(20.62 s; 95%CI 21.66 to 0.42)を認めた。
健常人においてはQmax (0.18 ml/s; 95% CI -1.67 to 2.02)、TQ (0.49 s; 95%CI -3.30 to 4.27)、PVR (0.43 ml;95%CI -0.79 to 1,65)と立位と座位では近似していた。

【結論】
健常男性では尿力学パラメーターの違いを認めなかった。LUTSを有する患者においては、座位姿勢が尿力学の改善にリンクしていた。

【開催日】
2014年8月6日(水)

さまざまな設定のPSA検査を用いた前立腺がん検診システムモデルの有効性比較

― 文献名 ―
Comparative effectiveness of alternative PSA-based prostate cancer screening strategiesAnn Intern Med. 2013 February 5; 158(3): 145-153. doi:10.7326/0003-4819-158-3-201302050-00003.

― 要約 ―

【背景】
米国予防医学特別作業部会(USPSTF)は最近、PSA検査を用いた前立腺がん検診は不利益が利益を上回るため中止すべきとの勧告を出した。

【目的】
さまざまなPSA検診システムの相対的有効性評価を行う。

【研究デザイン】
様々なPSA検診システムによる不利益と救命効果を定量化した、前立腺がんの罹患および死亡のマイクロシミュレーションシステム

【データ源】
PSA値の上昇、検診と生検パターン、罹患、治療分布、治療の有効性、死亡に関する全米および臨床試験のデータ

【対象集団】
現在の米国人男性コホート

【対象期間】
生涯

【視点】
社会的

【介入】
検診の開始・終了年齢、検診間隔、生検適応のPSA閾値を様々な設定で組み合わせた35種類の検診システム

【主要評価項目】
PSA検査、偽陽性の検査結果、前立腺がんの発見、過剰診断、前立腺がん死、救命数、救命月数 

【基本ケースの解析結果】
検診を実施しない場合、前立腺がん死のリスクは2.68%である。50~74歳の男性に年1回検診を行い、生検適応のPSA閾値を4μg/Lに設定する基準モデルでは前立腺がん死のリスクが2.15%に低下し、過剰診断のリスクは3.3%となる。高齢の男性に対する生検紹介のPSA閾値を高めに設定する戦略を用いると、前立腺がん死のリスク(2.23%)は同程度であるが、過剰診断のリスクは2.3%に低下する。検診を隔年で行い、PSA低値の男性に対する検診の間隔を延ばしたモデルでは、前立腺がん(2.27%)と過剰診断(2.4%)のリスクはほぼ同等であるが、総PSA件数が59%減少し、偽陽性率は50%減少する。

【感度分析の結果】
罹患率の設定値を変えたり、検診の生命予後改善効果を小さくしても結論は変わらなかった。

【限界】
このモデルは前立腺がんの自然史を単純化しており、検診による生命予後の改善効果を確定するものではない。

【結論】
標準的なPSA検診システムモデルと比較し、高齢の男性に対する生検適応のPSA基準値上限設定値を高くするモデル、PSA低値における検診間隔を広げるモデルを用いると、救命効果を維持しつつ不利益を減らすことが出来る。

開催日:平成26年3月19日

配偶者からの暴力被害を相談されたとき

【文献名】 
配偶者からの暴力被害者支援情報 http://www.gender.go.jp/e-vaw/index.html

【要約】
暴力の形態
 ・身体的なもの:殴ったり蹴ったりするなど、直接何らかの有形力を行使するもの。
 ・精神的なもの:心無い言動等により、相手の心を傷つけるもの。
 ・性的なもの:嫌がっているのに性的行為を強要する、中絶を強要する、避妊に協力しないといったもの。

支援マップ
 ・安全な生活を確保する
→ 警察、配偶者暴力相談支援センター、民間シェルター、地方裁判所、病院など
  ・法的手続きを進める
→ 弁護士会、日本司法支援センター(愛称:法テラス)、家庭裁判所など
  ・自立生活を促進する
→ 婦人相談所、各自治体の福祉窓口・福祉事務所、公営住宅・民間アパート、保育園・保育室、教育委員会、ハローワークなど

被害者の要望別支援方法
 ・夫(妻)から逃げたい
→ 警察、婦人相談所

 ・夫(妻)が近寄ってこないようにしたい
→ 地方裁判所、警察

 ・夫(妻)を罰してほしい
→ 警察

 ・夫(妻)と別れたい
→ 家庭裁判所、弁護士会、日本司法支援センター(愛称:法テラス)

 ・新しい生活を始めたい

支援に際しての留意事項
1. 個人としてではなく組織として対応
→ 担当者が1人で問題を抱え込まずに、組織として問題を把握し、多角的に問題を捉えることが必要です。

2. 関係機関の連携
→ 1つだけの機関で問題を解決することは困難です。必要に応じ、関係機関と柔軟に連携し、問題解決
に当たることが必要です。

3. 構造的問題としての把握
→ 被害者の悩みは、それぞれ個人的な問題のように見えても、夫が妻に暴力をふるうのはある程度は仕方がないといった社会通念、妻に収入がない場合が多いといった男女の経済的格差など、構造的問題も大きく関係しています。

4. 安全確保の優先
→ 相談を受けたときは、今、安全かどうかを最初に確認します(電話相談でも同様です)。帰宅後の安全確保についても話し合っておきます。

5. 被害者の意思の尊重
→ 援助の最終目的は、被害者が自分の問題を解決できるような行動を、自分自身で決定できるようにすることです。支援者が思うように被害者が行動できるとは限りませんが、こうした場合、被害者を非難してはいけません。被害者の意思を尊重することが大切です。対応者の言動が被害者をさらに追いつめ、傷つけることがあるので十分な配慮が必要です。

6. プライバシーの保護
→ 支援者の援助の際に知った事実を第三者に口外してはいけません。相談があったという事実についても同じです。関係機関との連携に際しても、細心の注意が必要です。

7. 支援者自身の心のケア
→ 被害者を支援することは、支援者の精神面に大きな負担となります。自分自身が燃え尽きないよう、セルフケアが必要です。

8. 支援者の安全の確保
→ 加害者が支援者に暴力を振るったり、加害者から逆恨みされてつきまとわれたりすることもあります。支援者自身の個人情報を守るなどの対策が必要です。

【開催日】
2012年10月24日

妊娠期間中の鉄、葉酸の補充が、子供の知能と運動機能に与える影響について

【文献名】
Parul Christian,DrPH  et al. Prenatal Micronutrient Supplementation and intellectual and Motor Function in Early School-aged Children in Nepal. JAMA:Vol 304,No24 2716, 2010.
 
【要約】
背景
鉄と亜鉛は知能と運動能力の発達に重要である。鉄と亜鉛を妊娠期間中の中枢神経が発達する重要な時期に補うことが、子供の後の機能に影響するかどうかを調査した研究はほとんどない。
 
目的
妊娠中に微量元素のサプリメントを行った母親の子供の知能と運動能力を調査する。
 
研究デザイン, 背景, 対象
ネパールの地方において、1999年から2001年までの間に出生前に各微量元素のサプリメントを与えられた5グループのうち4グループの女性から生まれた、676人の7~9歳の子供達を2007年6月から2009年4月までコホート研究により追跡調査した。サプリメントを与えたグループはコミュニティに基づき、二重盲検、ランダム化比較試験が行われている。研究対象の子供達は、後に行われた就学前の鉄と亜鉛の補充試験でのプラセボグループの子供達である。
 
介入
追跡調査される子供の母親は、鉄と葉酸、鉄と葉酸と亜鉛、鉄と亜鉛と葉酸に加え11の他の微量元素を含むマルチビタミンを、すべてビタミンAとともに与えられる群と、ビタミンA のみ与えられる対照群とにランダムに割り当てられ、妊娠早期から出産後3ヶ月まで毎日、各々のサプリメントを与えられた。これらの子供達は半年毎のビタミンAの補充以外、他の微量元素のサプリメントは受けていなかった。
 
結果測定方法
子供達の知能を測定するために the Universal Nonverbal Intelligence Test (UNIT)を用い、実行機能を測定するために go/no-go test, the Stroop test, and backward digit spanを行った。また 運動機能を測定するために the Movement Assessment Battery for Children (MABC) と finger-tapping testを用いた。
 
結果
鉄と葉酸が与えられた群ではコントロールに比較し、結果の違いが著明に出たが、その他のサプリメントグループでは違いはなかった。
鉄/葉酸群のUNITテスト平均点数は51.7(SD,8.5)であり、対照群では48.2(SD, 10.2)、交絡因子調整後の平均値の違いは2.38であった。 (95% CI, 0.06-4.70; P = .04) 対照群と鉄/葉酸/亜鉛群(0.73; 95% CI, −0.95 to 2.42)、マルチ微量元素群(1.00; 95% CI, −0.55 to 2.56)では差は明らかではなかった。
実行能力のテストでは、鉄/葉酸群の点数は対照群に比べ、Stroop test (失敗した人達における平均の差, −0.14; 95% CI, −0.23 to −0.04)とbackward digit span (平均の差, 0.36; 95% CI, 0.01-0.71)では良かったが、go/no-go testでは差はなかった。
MABC スコアは鉄/葉酸群は対照に比較し低かった(良かった)が、交絡因子調整後は有意ではなかった(平均の差, −1.47; 95% CI, −3.06 to 0.12; P = .07)。Finger-tappingテストでは鉄/葉酸群では点数が高かった(平均の差, 2.05; 95% CI, 0.87-3.24; P = .001)。
 
結論
鉄欠乏が蔓延している地域において、妊娠期間中の鉄+葉酸の補充は、出生した子供のワーキングメモリ、抑制のコントロールを含む知能の面、運動機能の面に、良い方向に関連している。
 
【考察・ディスカッション】
この研究の対象は、鉄の摂取不足が蔓延している地域の母親とその子供となっているが、食糧事情は悪くない日本においても、有用な情報となり得る。総務省統計局のホームページ、日本の統計2010によると、日本国民一人一日あたり食品群別栄養等摂取量にて摂取量自体は増加傾向にあるが、鉄分に関しては昭和50年の摂取量13.4mgであったのが、年々減少をみせ、平成18年では7.9mgとなっている。鉄の必要摂取量は閉経前の女性で12mg、妊婦では20mgとされている。つまり、現在の日本でも、妊婦における鉄不足は十分に考えられる状況である。この研究において、妊娠中の鉄+葉酸摂取が生まれてくる子供の知能、運動能力の発達に重要な役割を担っていることが示され、今後は栄養状態の乏しい国・地域への対策のみならず、飽食状態にあるわが国でも、意識的に栄養摂取を考える促しや、特に妊婦にはサプリメントの利用も積極的に勧めていくべきではないかと思われた。
 
【開催日】
2011年3月9日

~「更年期」の女性への対応~

【文献名】
D. ASHLEY HILL, SUSAN R. HILL: Counseling Patients About Hormone Therapy and Alternatives for Menopausal Symptoms. American Family Physician: 82(7):801-807, 2010

【要約】
最近の大規模臨床研究の結果から臨床家や患者は更年期のホルモン治療の安全性に疑問を持つようになった。過去には、健康全般を改善、心疾患を予防を試みるためにホルモン療法を行っていた。ホルモン療法は3-5年以上使用した場合、乳癌のリスクを高めるようである。従って、規制当局はホットフラッシュや膣乾燥といった更年期症状に対してのみ、最短期間、最少量での処方を行うよう助言している。ホットフラッシュにはエストロゲンが最も効果的ではあるが、venlafaxine(ベンラファクシン:SSNRI)やgabapentin(ガバペンチン:抗てんかん薬)といった代替療法も有効なことがある。dong quai(中国で古くから用いられたハーブ)、 朝鮮人参、kava(ポリネシア原産のハーブ)、食用大豆といったハーブ製剤はプラセボ以上の利益は得られないようである。子宮内膜保護目的のプロゲステロンの追加治療が必要ないので、外陰膣部の乾燥症状に対するエストロゲン局所療法は全身投与に比べて魅力的である。SERM:選択的エストロゲン受容体モジュレーターを閉経後骨粗鬆症の予防に対してホルモン療法の代替治療として支持している人もいる。どちらの治療も潜在的に健康に有害な効果があり、静脈血栓症のリスク増加と関連しているため、どちらを使用するかは臨床症状によって、またリスクとベネフィットを評価して決めるべきである。
Key Recommendations for Practice :(R8、B9)
 【Bioidentical and compounded formulations;人体と同一の、調合された製剤】
R:FDAおよび米国産婦人科学会は、配合ホルモン製剤の処方に関する安全性と有効性データの欠如に対して、警告を発している(エビデンスレベルC)。
 【Bone health;骨の健康】
B:エストロゲン補充療法は閉経後骨粗鬆症性骨折のリスクを減らす選択肢の一つ;FDAに認可された骨粗鬆症治療ではないものの、非ホルモン療法が使えない場合の選択肢の一つとなる(エビデンスレベルB)
 【Cancer risk;悪性腫瘍のリスク】
R:エストロゲン・プロゲステロン併用療法を3~5年以上継続することにより乳癌のリスクが上昇する(エビデンスレベルB)
B:エストロゲン単独療法では明らかな乳癌のリスク上昇は認められない(エビデンスレベルB)
B:エストロゲン・プロゲステロン併用療法は大腸癌のリスクを減少させる。エストロゲン単独療法におけるリスクの変化は明らかでない(エビデンスレベルB)
R:子宮のある女性でのエストロゲン単独療法は子宮体癌(子宮内膜癌)のリスクを上昇させるため、完全な子宮の残った女性がエストロゲンを使用する場合は、プロゲステロン療法の併用が勧められる(エビデンスレベルC)
 【Dosage and duration;用量と期間】
B:更年期症状を訴える女性に対して、ホルモン補充療法は治療の選択肢の一つであり、最小有効量を最短の期間で用い、定期的に再評価を行う(エビデンスレベルC)
R:ホルモン補充療法を3~5年継続した後は、毎年治療の終了を試みるべき(エビデンスレベルC)
 【Heart disease;心疾患】
R:ホルモン補充療法は心疾患予防としてはいかなる年齢の女性に対しても勧められず、既存の心疾患治療にもならない(エビデンスレベルA)
B:早期ホルモン補充療法(閉経開始の時期)は、更年期症状を訴える、心疾患のリスクの低い女性に対しては妥当なものである(エビデンスレベルB)
R:60~70歳代の女性に対してホルモン補充療法を開始することは、冠動脈疾患のリスクを高める;この治療法はホルモン以外の薬物療法に耐えられない有症状の女性に対し、治療のリスクと有益性を医師と十分に議論した上でのみ行われるべき(エビデンスレベルA)
 【Stroke;脳梗塞】
R:エストロゲン・プロゲステロン併用療法とエストロゲン単独療法はいずれも虚血性脳卒中のリスクを上昇させる。特に治療開始後1~2年間はリスクが高い(エビデンスレベルA)
B:知見は一貫していないものの、50~59歳でホルモン補充療法を開始した女性では脳卒中リスクは上昇しないと思われる(エビデンスレベルB)
 【Vasomotor symptoms;血管作動性の症状】
B:更年期の血管運動症状に対して、エストロゲンは最も有効な治療法であり、この適応に対してはFDAも認可している(エビデンスレベルA)
 【VTE;静脈血栓症】
R:エストロゲン単独療法およびエストロゲン・プロゲステロン併用療法はVTEのリスクを上昇させる。特に治療開始後1~2年間はリスクが高い。60歳未満、あるいはエストロゲン単独療法の女性のリスクはやや低い(エビデンスレベルA)
B:観察研究のデータ(ランダム化比較試験ではない)によると、経皮エストロゲンは経口エストロゲンよりもVTEのリスクが少ない可能性がある(エビデンスレベルB)
 【Vulvovaginal symptoms;外陰膣部症状】
B:中等度から重度の外陰・膣萎縮に対しては、局所エストロゲン療法が最も有効な治療法であり、この適応に対してはFDAも認可している。プロゲステロンの追加は必要としない(エビデンスレベルA)

【開催日】
2010年12月1日












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