【EBMの学び】脂質異常症に対するスタチン

STEP1 臨床患者に即したPI(E)CO
【評価を行った日付】
2015年9月28日
【臨床状況のサマリー】
5年ぶりの市民健診でLDL203,T.Chol270を指摘された65歳女性。特に大きな既往もなく、1日40分程度散歩するなど健康には気をつけている方という自負のある方。5年前の健診では特記事項なし。兄弟でコレステロールの薬を飲んでいる人がいたため、自分もついに薬を飲まなければならないのかと不安に思いながら小生外来受診となった。診察上黄色腫や黄疸、甲状腺腫大など認めず、血糖、腎・肝機能、甲状腺機能にも大きな異常を認めなかった。喫煙なし 飲酒なし 家族歴 父;食道癌 母;心不全、ペースメーカー留置後。「投薬せずに経過をみる症例」と考えたが、今回一次文献に遡り文献上の吟味を経た意思決定を行うことにした。
P;心血管系イベントの既往のない高齢女性
I(E);スタチン投与群
C;プラゼボ投与群と比較して
O;心血管イベント発生率に差が出るか

STEP2 検索して見つけた文献の名前
【見つけた論文】
Primary prevention of cardiovascular disease with pravastatin in Japan (MEGA Study): a prospective randomised controlled trial. Lancet. 2006 Sep 30;368(9542):1155-63.

STEP3 論文の評価
STEP3-1 論文のPECOは患者のPECOと合致するか?

P;冠動脈疾患既往のない軽~中等度(総コレステロール値220~270mg/dL)の高脂血症患者
I;食事療法+プラバスタチン(10~20mg/日)群
C;食事療法単独群
O;冠動脈疾患の発症に差が出るか
→患者のPECOと (合致する ・ 多少異なるがOK ・ 大きく異なるため不適切)

STEP3-2論文の研究デザインの評価;内的妥当性の評価
①研究方法がRCTになっているか?隠蔽化と盲検化はされているか?
→ランダム割り付けが ( されている ・  されていない )
→隠蔽化が      ( されている ・  されていない )
→盲検化が      ( されている ・  されていない )←不完全
実際のT ableで介入群と対照群は同じような集団になっているか?
→( なっている ・ なっていない )
②解析方法はITT(intention to treat)か?
→ITTが (されている  ・  されていない)

STEP3-3 論文で見いだされた結果の評価
Outcomeについて、以下の値を確認する
【①治療効果の有無; P値を確認する】
 ※Figure1を参照 (5.3年後の結果)
  ●Primary endpointsでは冠動脈疾患、心筋梗塞、冠動脈再潅流術
  ●Secondary endpointsでは冠動脈疾患+脳梗塞、全心血管イベント
 でP<0.05となり有意差あり。
【②治療効果の大きさ;比の指標と差の指標を確認する】
  ・ RR(あるいはHR・OR)を確認する
  ・ARRとNNTを計算する
 ※Figure2を参照
  ARR=101/3966-66/3866=0.0084
  NNT=1/ARR=119(“Results”内にも記載あり)
【③治療効果のゆらぎ;信頼区間を確認する】
 P値と同様の項目で有意差あり。
 (ただし、冠動脈再潅流術の項目以外はおおよそ0.5-0.9程度に入り、幅は広い印象。)

STEP4 患者への適用
【①論文の患者と、目の前の患者が、結果が適応できないほど異なっていないか?】
 論文の対象者(Table 1)は女性の占有率が70%と高く、女性の喫煙率が低い点、コレステロールの平均値などは一致している。一方、年齢が少し若い点や高血圧や投薬例が40%弱を占めている点などは若干異なる。
 登録患者は全て病院の外来受診患者であるため、診療所の患者とは背景が異なる点もあるが、今回の症例には適用可能な点も多いと考える。
【②治療そのものは忠実に実行可能か?】
 投薬していても、癌の発生率や総死亡に差がないこと、(発症すると致命率の高い)横紋筋融解症の発生がゼロなのはメリット。
 メバロチンの薬価も100点を下回っておりコスト面でも問題なし。
【④患者の考え・嗜好はどうなのか?】
 患者は健康意識の高い方であり、基本的には「薬による治療は最後の手段」という認識がある方だった。母親に心疾患があったことも考慮し、スタチン投与による心血管イベントのNNTを説明したところ再度投薬希望はされなかった。今後も定期的に健診は受けられる予定であり、follow可能なことは確認しつつ、次回半年後に再度フォローとした。

【開催日】
2015年10月14日(水)

脳梗塞再発予防における抗血小板薬

―文献名―
Wuxiang Xie, Fanfan Zheng, Baoliang Zhong, Xiaoyu Song, Long-Term Antiplatelet Mono- and Dual Therapies After Ischemic Stroke or Transient Ischemic Attack: Network Meta-Analysis, J Am Heart Assoc. 2015 Aug 24;4(8)

―要約―
BACKGROUND
The latest guidelines do not make clear recommendations on the selection of antiplatelet therapies for long-term secondary prevention of stroke. We aimed to integrate the available evidence to create hierarchies of the comparative efficacy and safety of long-term antiplatelet therapies after ischemic stroke or transient ischemic attack.

METHODS and RESULTS
We performed a network meta-analysis of randomized controlled trials to compare 11 antiplatelet therapies in patients with ischemic stroke or transient ischemic attack. In December 2014, we searched Medline, Embase, and the Cochrane Library database for trials. The search identified 24 randomized controlled trials including a total of 85,667 patients with antiplatelet treatments for at least 1 year. Cilostazol significantly reduced stroke recurrence in comparison with aspirin (odds ratio 0.66, 95% credible interval 0.44 to 0.92) and dipyridamole (odds ratio 0.57, 95% credible interval 0.34 to 0.95), respectively. Cilostazol also significantly reduced intracranial hemorrhage compared with aspirin, clopidogrel, terutroban, ticlopidine, aspirin plus clopidogrel, and aspirin plus dipyridamole. Aspirin plus clopidogrel could not significantly reduce stroke recurrence compared with monotherapies but caused significantly more major bleeding than all monotherapies except terutroban. The pooled estimates did not change materially in the sensitivity analyses of the primary efficacy outcome.

CONCLUSIONS
Long-term monotherapy was a better choice than long-term dual therapy, and cilostazol had the best risk–benefit profile for long-term secondary prevention after stroke or transient ischemic attack. More randomized controlled trials in non–East Asian patients are needed to determine whether long-term use of cilostazol is the best option for the prevention of recurrent stroke.

【背景】
 最新のガイドラインでは、脳梗塞の二次予防のための長期抗血小板薬の選択について、明確な推奨はしていない。我々は、利用可能なエビデンスを統合して、脳梗塞後、または一過性脳虚血発作後の長期抗血小板薬治療の効果と安全性の階層を創出することを目的とした。

【方法と結果】
 我々は、11の脳梗塞または一過性脳虚血発作の患者に対する抗血小板薬療法のランダム化比較試験についてネットワークメタ分析を行った。2014年12月、我々はMedline、Embase、Cochrane Libraryを検索した。その検索で、85,667人の少なくとも1年の抗血小板薬の治療を受けた患者を含む24のランダム化比較試験が見つかった。シロスタゾールは、アスピリン(オッズ比 0.66, 95%信頼区間 0.44 – 0.92)とジピリダモール(オッズ比 0.57, 95%信頼区間 0.34 – 0.95)と比較して著明に脳梗塞の再発を減少させた。シロスタゾールは、アスピリン、クロピドグレル、テルトロバン、チクロピジン、アスピリンとシロスタゾールの併用、アスピリンとジピリダモールの併用のそれぞれと比較して著明に頭蓋内出血を減少させた。アスピリンとクロピドグレルの併用は、単独療法と比較して著明な脳梗塞の再発を減少させることはできなかったが、テルトロバンを除くすべての単独療法と比較して主要な出血イベントを著明に増加させた。プールされた推定値は、有効性の主要な一次アウトカムの感度分析に著しく変化を与えなかった。

【結論】
 長期の単独療法は、長期の併用療法よりも良い選択であり、シロスタゾールは、脳梗塞後または一過性脳虚血発作後の再発予防にリスク対効果で最も優れていた。非東アジア系患者において脳梗塞の再発予防におけるシロスタゾールの長期使用が最も良いかどうかを決定するには、より多くのランダム化比較試験が必要である。

※ネットワークメタ分析(Network meta-analysis)とはメタ分析の一種である。通常のメタ分析は治療法Aと治療法Bを比較した臨床試験を収集し、個々の比較結果を統計的に併合する。従って、治療法Aと治療法Cや、プラセボを比較した臨床試験は分析対象とはならない。今まで分析対象外となっていた臨床試験を含めたメタ分析がネットワークメタ分析である。

※シロスタゾール:プレタール®、クロピドグレル:プラビックス®、チクロピジン:パナルジン®

【開催日】
 2015年11月4日(水)

肥満治療に対するGLP-1受容体作動薬の効果

―文献名―
Xavier Pi-Sunyer, M.D. et al. A Randomized, Controlled Trial of 3.0 mg of Liraglutide in Weight Management. N Engl J Med. 2015 Jul 2;373(1):11-22.

―要約―
【背景】
肥満は重大な健康問題を引き起こしかねない慢性疾患である。しかし、生活習慣への介入のみでは減量を維持する事は難しい。GLP-1受容体作動薬であるリラグルチド(ビクトーザ○R)3.0mgの1日1回皮下注射が体重コントロールに有効であったと示された。

【方法】
2型糖尿病のない患者3,731人を対象とした二重盲検試験を56週間行った。参加者のBMIは少なくとも30以上、あるいは、脂質異常症、高血圧症(治療の有無は問わない)がある場合は少なくとも27以上。リラグルチド3.0mgを1日1回皮下注射する群(2,487人)とプラセボを1日1回皮下注射する群(1,244人)にランダムに割り付けて、両群ともに生活習慣の改善指導も行った。プライマリエンドポイントとして、体重の変化と少なくとも5%、10%以上減少した患者の比率を設定した。

【結果】
ベースラインとしては、患者の平均年齢は45.1±12.0歳、平均体重は106.2±21.4kg、平均BMIは38.3±6.4、78.5%が女性で61.2%が糖尿病になる前の状態であった。56週後の平均体重減少幅はリラグルチド群8.4±7.3kg、プラセボ群2.8±6.5kgだった(95%信頼区間 −6.0 to —5.1;P<0.001)。体重が5%以上減少した患者の割合はリラグルチド群が63.2%、プラセボ群で27.1%だった(P<0.001)。体重が10%以上減少した患者の割合はリラグルチド群が33.1%、プラセボ群で10.6%だった(P<0.001)。リラグルチド群で最も頻度の高い有害事象は軽度から中等度の嘔気、下痢が報告された。重症の有害事象の発生率はリラグルチド群が6.2%、プラセボ群で5.0%だった。

【結論】
今回の試験から、リラグルチド3.0mg投与は食事療法、運動療法に補助的な役割を果たし、体重を減少させ、肥満コントロールを改善する効果がある。(ノルディスク社による支援あり)

―考察とディスカッション―
元々は2型糖尿病の治療に用いる注射薬を、用量を増やして肥満の体重コントロールに使用した臨床試験。肥満患者の減量治療の補助薬として、リラグルチドは一定の効果はありそうである。しかし、製薬会社からの支援を受けている試験でもあり、信頼性に一部疑問はある。また、日本人でここまでの肥満患者はあまりいない事を考えると、日本で同様の条件で採用される事はないかも知れない。皆さんはどのように考えますか?

【開催日】
2015年10月21日(水)

ALS患者におけるラジカットの有効性と安全性

―文献名―
KOJI ABE, YASUTO ITOYAMA. Confirmatory double-blind, parallel-group, placebo-controlled study of efficacy and safety of edaravone (MCI-186) in amyotrophic lateral sclerosis patients. Amyotrophic Lateral Sclerosis and Frontotemporal Degeneration,2014;15:610-617

―要約―
【目的】
 ALS患者を対象に、二重盲検並行群間比較法により、ラジカット60mgを6クール投与したときの有効性及び安全性について、プラセボを対照として検討した。

【対象】
 ALS患者205名(ラジカット群101名、プラセボ群104名)
 選択基準はEl Escorial 改訂Airlie House診断基準のうち、「Definite」「Probable」「Probable-laboratory- supported」、ALS重症度分離のうち、1,2度、努力性肺活量は70%以上、罹病期間は3年以内、前観察期12週間のALSFRS-Rスコアの変化が-1~-4の患者。

【方法】
 投与開始12週前の前観察期の後、被験者をラジカット群又はプラセボ群に二重盲検下で割付け、点滴静脈内投与を6クール行った。主要評価項目はALSFRS-Rスコア、二次的な評価項目はFVC、手首・指先の力変化、Modified Norris Scale score、ALSAQ-40。

【結果】
 主要評価項目であるALSFRS-Rスコアの6クール、24週間の変化量はラジカット群とプラセボ群の投与群間差は0.65±0.78で、p値は0.4108であり、有意な差を認めなかった。%FVC、手首の力、Modified Norris Scale score、ALSAQ-40についても有意な差を認めなかった。指先の力については繰り返しの分散分析において有意差を認めた。

【結論】
 ラジカット投与によってALSFRS-Rはプラセボと比べ減少は少なかったがALSにおける効果は示されなかった。

このままだとなぜラジカットが保険適応になったかは不明すぎる・・・

追加
今回の試験(検証試験 1回目 第Ⅲ相)
榎原先生①.jpg

 主要な評価項目で有意差を認めなかったが診断が確実なものや重症度が低いほうが差があると考えられたためにその後の試験(検証試験2回目 第Ⅲ相)が行われた。
榎原先生②

 2試験とも重症度1、2度の患者さんを対象ではあったが、この基準が曖昧だったため、検証的試験1回目は重症度分類3度に近い重症の患者さんが多数エントリーされ、有効性を確認できなかった一因となったと結論。そのため、検証的試験2回目はALSFRS-Rスコアが「全項目2点以上」という基準を設け、厳格に軽症の患者さんを定義し、さらに、検証的試験2回目は努力性肺活量80%以上の患者さんを対象とすることで、より軽症の患者さんを選択し、1回目と同様の試験を実施した。
 その結果、主要評価項目のALSFRS-Rスコアの低下はラジカット群とプラセボ群の投与群間差で2.49±0.76で、p値は0.0013有意な低下を認め、6か月投与時点でプラセボ投与群の4か月のスコアと同程度だった。ALSAQ-40スコアの6クール、24週間の変化量は、ラジカット群とプラセボ群の投与群間差で-8.79±4.03で、p値は0.0309であり、ALSAQ-40スコアの上昇は有意な差を認めた。

資料
ALS重症度分類
榎原先生③

ALS機能評価スケール改訂版(ALSFRS-R: The revised ALS Functional Rating Scale)
 患者への聞き取り及び実際の動作を観察して採点を行う。以下の12項目について、各項目を0~4の5段階で採点する。
榎原先生④

●ALSAQ-40
 ALSに特異的なQOL尺度
 5つのカテゴリーに割り振られた40項目の質問からなる。
 <5つのカテゴリー>
  「フィジカルな可動性(10問)」、「ADLと自立性(10問)」、「食べて飲むこと(3問)」、「コミュニケーション(7問)」、
  「感情作用(10問)」
 各質問に対し被験者が1~5点で回答し、合計スコアで評価を行う。スコアが大きいほど、QOL低下を示している。

―考察とディスカッション―
 今回読んだ文献ではラジカット投与群とプラセボでの比較では指先の力以外では有意差は無かった。さらに進めた研究で、診断が確実で重症度が軽度な方で評価項目に有意差が出たことがわかり、2カ月程度進行を遅くしている可能性があるということがわかった。しかし、具体的にどの部分の点数に差が出たのかなどについてはわからなかったため消化不良な感じは残っている。現在MFCでラジカット投与している患者さんの重症度は1~3度の患者さんであり、3度の患者さんにはあまり効果はないのかもしれない。ただALSという治癒が望めない疾患で保険適応が通った新薬であり重症度で適応が決められていないということを考えると患者さんが治療を望むことは非常に理解できる。今後もALS患者さんは訪問診療で関わっていくことが予想されるため、ラジカットの限定的な効果などを医療者側が認識しながら患者さんに寄り添っていくことが大切だと思う。

ディスカッションポイント
 ①ALS患者さんに対してラジカットを勧めますか?
 ②勧める場合はどのように説明しますか?

【開催日】
 2015年10月21日(水)

風邪とプラセボ効果

―文献名―
Barrett B, Brown R, et al. Placebo Effects and the Common Cold: A Randomized Controlled Trial. Ann Fam Med 2011;312-322.

―この文献を選んだ背景―
 伝統的に使用されてきた対症療法薬の多くが症状の緩和や有病期間を短くする効果がないことが示されている。今回、米国で伝統的に使用されている対症療法薬Echinacea(Cochraneのシステマティックレビュー1)でプラセボと有意差がなかったことが示されている)をオープンラベルとしたときの効果を盲検化したときと比較した研究を小児の風邪に関する総説を執筆中に見つけ、結果が興味深かったので紹介する。
1)Linde K, Barrett B, Wölkart K, Bauer R, Melchart D. Echinacea for pre- venting and treating the common cold. Cochrane Database Syst Rev. 2006;(1):CD000530.

―要約―
【目的】
 オープンラベル化した薬剤をランダムに割り付けた場合、二重盲検化し実薬とプラセボに割り付けた場合、何も薬剤を処方しない場合の3者を比較した場合、風邪による症状の重さや期間が変わるかどうかを調べる。

【方法】
 新規発症の風邪患者でRCTを行った。参加者は4グループ(Figure1,(1)薬剤なし,(2)盲検化されたプラセボ,(3)盲検化されたechinacea(4)オープンラベルのechinacea)に割り付けられた。主要アウトカムは有病期間とarea-under-the-curve global severity、二次アウトカムは内服2日後の鼻腔洗浄液の好中球数とIL8レベルとした。

【結果】
 719の参加者のうち6名が離脱した。女性が64%,白人が88%、年齢は12歳から80歳。
○ 有病期間の平均
 7.03日(薬剤なし),6.87日(盲検化プラセボ),6.34(盲検化echinacea),6.76(オープンラベルechinacea)、
 グループ間の比較では統計学的に有意差なし
○ global severityスコアの平均
 286(薬剤なし),264(盲検化プラセボ),236(盲検化echinacea),258(オープンラベルechinacea)、
 グループ間の比較では統計学的に有意差なし。
  ※ 薬剤なしと盲検化したプラセボグループの比較
    有病期間 -0.16日(95%CI -0.90 − 0.58) severity -22ポイント(95%CI -70 − 26)
  ※ 盲検化echinaceaとオープンラベルechinaceaグループの比較
    有病期間 0.42日(95%CI -0.28 − 1.12) severity 22ポイント(95%CI -19 − 63)
○ IL8と好中球数の変化の中央値
 30pg/ml/1cell(薬剤なし),39pg/ml/1cell(盲検化プラセボ),58pg/ml/2cell(盲検化echinacea),
 70pg/ml/1cell(オープンラベルechinacea)。
 グループ間の比較では統計学的に有意差なし。
○ 薬剤の服用時にechinaceaの有効性を高く見積もった(100点を「きわめて有効」とするスケールで50点以上をつけた)
 120の参加者において盲検化されたプラセボ群は薬剤なしの群と比較して有病期間は2.58日有意に短く(95%CI -4.47 − -0.68)、
 global sevirtyスコアの平均は26%低かった(−97,95%CI −249.8 – 55.8 有意差なし)。
 このサブグループにおいては盲検化echinacea群とオープンラベルのechinacea群で比較すると有病期間も重症度も違いはなかった。

【結論】
 薬剤なし群に割り付けられた群では有病期間が長くなり、症状が重くなる傾向があった(統計学的有意差はない)。
 Echinaceaの有効性を信じているサブグループで薬剤を与えられたグループでは有病期間が短くなり、症状が軽くなる傾向があった。
 これらの結果は、患者の治療に対する信念や感じ方が重要であり、医療における意志決定においては考慮されるべきであるという考え方を支持するものであった。

【開催日】
2015年10月7日(水)

【EBMの学び】IBSに対するSSRI

STEP1 臨床患者に即したPI(E)CO
【評価を行った日付】
 2015 / 9 / 8
【臨床状況のサマリー】
 70代女性、血便を主訴として来院。Vital変化や腹痛などは認めず、CT上でも虚血性腸炎の可能性は低い印象であった。本人とも相談の上、TCS施行相当と考え後方病院へ紹介。TCS上では明らかな器質的異常は指摘されず、血便の原因は痔核によるものと推測された。
 患者は遡ること2ヶ月前より便性変化(便柱が細くなったり軟便を繰り返す)や腹部膨満感、ストレス下での放屁などで悩んでおり、(混合型)過敏性腸症候群(IBS)の疑いがあると考えられた。大建中湯、ポリフル®(ポリカルボフィル)や整腸剤の投与などを行うもいずれも改善に乏しく、結果として現在はその中でも最も効果があったと思われる大建中湯を使用して経過を見ている。
 本邦におけるIBSに特化した内服治療は、ポリフル®に代表される合成高分子化合物、イリボー®に代表される5-HT3受容体阻害薬、トランコロン®に代表される抗コリン薬が挙げられるが、劇的な効果は期待できないことも多い。諸外国では、これらの他に三環系抗うつ薬やSSRIなどが治療に用いられるケースもあり、SSRIの効果について検討された論文を検索した。
 P;(混合型)IBSが疑われる70歳代女性に対して
 I(E);SSRIを投与した場合
 C;偽薬を投与したのと比較して
 O;消化器症状の改善が得られるか
 
STEP2 検索して見つけた文献の名前
【見つけた論文】
Vahedi H, Merat S, Rashidioon A, Ghoddoosi A, Malekzadeh R.
The effect of fluoxetine in patients with pain and constipation-predominant irritable bowel syndrome: a double-blind randomized-controlled study. Aliment Pharmacol Ther. 2005 Sep 1;22(5):381-5.

STEP3 論文の評価
STEP3-1 論文のPECOは患者のPECOと合致するか?
 P;RomeⅡ基準(※2005年発行の論文のため)に該当した便秘型IBS患者(年齢=34.9±10.0歳、50歳以上で初発のPt.は除外されている)
 I(E);20mg/dayのfluoxetineを12週間投与した場合
 C;偽薬を投与した場合と較べて
 O;IBS症状の数がどれくらい減少したか
→患者のPECOと (合致する ・ 多少異なるがOK ・ 大きく異なるため不適切)

STEP3-2 論文の研究デザインの評価;内的妥当性の評価
① 研究方法がRCTになっているか?隠蔽化と盲検化はされているか?
  →ランダム割り付けが ( されている ・  されていない )
  →隠蔽化が      ( されている ・  されていない )
  →盲検化が      ( されている ・  されていない )
 実際のTableで介入群と対照群は同じような集団になっているか?
  →( なっている ・ なっていない;)
   どう異なるか? 介入群の方が、女性の割合が高い
② 解析方法はITT(intention to treat)か?
  →ITTが (されている  ・  されていない)

STEP3-3論文で見いだされた結果の評価
Outcomeについて、以下の値を確認する
【① 治療効果の有無; P値を確認する】
 介入4週間目の評価で、5つの主要症状について、全てP<0.05
 主要症状数の変化について、介入2週間目の評価で、P<0.005、
 介入16週間目の評価で、P<0.001
【② 治療効果の大きさ;比の指標と差の指標を確認する】
 ・RR(あるいはHR・OR)を確認する
 ・ARRとNNTを計算する
 <介入16週目の評価>
 (1) 腹部不快感:RR=0.44、RRR=0.55、ARR=0.50、NNT=2
 (2) 腹部膨満感:RR=0.59、RRR=0.41、ARR=0.35、NNT=3
 (3) 硬便   :RR=0.30、RRR=0.70、ARR=0.35、NNT=3
 (4) 排便回数減少:RR=0.18、RRR=0.82、ARR=0.45、NNT=2
 (5) 便性変化 :RR=1、RRR=0、ARR=0、NNT=∞
【③治療効果のゆらぎ;信頼区間を確認する】
 信頼区間の記載なし

STEP4 患者への適応
【① 論文の患者と、目の前の患者が、結果が適応できないほど異なっていないか?】
・本患者は混合型IBSの可能性が高く、便秘型のIBS患者を扱った本論文の患者群と完全には合致していない。
・本論文では50歳以上の患者については除外対象としており(理由は不明であるが)、70歳代の本患者に適応できない可能性がある。
【②治療そのものは忠実に実行可能か?】
・先述の通り、本邦においてIBS患者への抗うつ薬の適応が認可されていないため、実際には保険病名を別につけることで処方せざるを得ず、現実的な適応には困難な点もある。
・またfluoxetineが本邦でそもそも認可されていない薬である。論文中にはパキシル®(パロキセチン)など、他のSSRIでも有効であったとの記載がある(p.384左側)。
【③重要なアウトカムはコストや害を含めて全て評価されたか?】
・食思不振や下痢、食道炎などの消化器症状の副作用が偽薬よりもfluoxetineでより多く報告されている。
【④患者の考え・嗜好はどうなのか?】
illness/contextの観点からは治療は行うべきか?あるいはillness/contextを更に確認するべきか?
・患者は上記症状で日常生活に支障をきたしており、何らかの治療planを提示するべきと思われる。SSRIの導入にあっては、薬の特性や効果に限定的な部分があるかもしれないことを説明した上での投与となるだろう。

 

【開催日】
2015年9月9日(水)

【EBMの学び】帯状疱疹に対するPSL

STEP1 臨床患者に即したPI(E)CO
【評価を行った日付】
 2015/08/12
【臨床状況のサマリー】
 関節リウマチでプレドニゾロン5 mg/day、環軸椎亜脱臼による疼痛でトラムセット内服中の70代男性。高齢者住宅に独居でADLはベッド上生活、当院定期訪問診療中。前胸部左側に疼痛を伴わない水疱・発赤出現し、帯状疱疹と診断したが、発疹出現から約80時間と72時間を過ぎていたため抗ウイルス薬の適応はなく、無治療経過観察とした。訪問看護師に報告すると、帯状疱疹後神経痛(PHN)予防のため何かできないかと相談を受けた。インターネットで帯状疱疹治療ガイドラインの概要をみると、PHN予防にプレドニゾロン60 mg/day内服7日間(以後漸減)を行うことがあるようだった。プレドニゾロンにPHN予防のエビデンスがどれほどあるのか疑問に感じ、文献を検索した。
  P;帯状疱疹急性期の患者
  I(E);プレドニゾロン内服
  C;プラセボ内服
  O;PHNの出現を抑制するか

STEP2 検索して見つけた文献の名前
【見つけた論文】
 Wood MJ, Johnson RW, Mckendrick MW, Taylor J, Mandal BK, Crooks J.
A randomized trial of acyclovir for 7 days or 21 days with and without prednisolone for treatment of acute herpes zoster. New England Journal of
Medicine 1994;330(13):896-900.

STEP3 論文の評価
STEP3-1 論文のPECOは患者のPECOと合致するか?
 P;免疫抑制状態にない18歳以上の成人(各対照群の平均年齢は60歳前後)で、発疹出現から72時間以内
   の中等度以上の疼痛を伴う帯状疱疹急性期の患者
 I(E);アシクロビル+プレドニゾロン40mg/day内服7日間or 21日間
 C;アシクロビル+プラセボ内服
 O;疼痛が完全消失するまでの期間を短縮するか
   (6か月後まで疼痛をフォローし、PHNの重症度として評価)
 →患者のPECOと (合致する ・ 多少異なるがOK ・ 大きく異なるため不適切)

STEP3-2 論文の研究デザインの評価;内的妥当性の評価
①研究方法がRCTになっているか?隠蔽化と盲検化はされているか?
 →ランダム割り付けが ( されている ・  されていない )
 →隠蔽化が      ( されている ・  されていない )
 →盲検化が      ( されている ・  されていない )
 実際のTableで介入群と対照群は同じような集団になっているか?
 →( なっている ・ なっていない;どう異なるか?)
②解析方法はITT(intention to treat)か?
 →ITTが (されている  ・  されていない) (intention to treatの記載なし)

STEP3-3 論文で見いだされた結果の評価
 Outcomeについて、以下の値を確認する
【①治療効果の有無; P値を確認する】
 P=0.74
【②治療効果の大きさ;比の指標と差の指標を確認する】
 ・RR(あるいはHR・OR)を確認する
  コックス比例ハザード分析 HR = 1.043
 ・ARRとNNTを計算する
   Outcomeが「日数」なので計算不可?
【③治療効果のゆらぎ;信頼区間を確認する】
 HRの95%信頼区間:0.81-1.34

STEP4 患者への適応
【①論文の患者と、目の前の患者が、結果が適応できないほど異なっていないか?】
 年齢が論文の対照群より高齢であり、もともと関節リウマチでプレドニゾロン長期内服中であるため、免疫抑制状態である点が異なる。また、発疹出現から72時間をわずかに超えている点、トラムセット内服中で疼痛を伴っていない点(マスクされている可能性あり)でも異なる。しかしながら、プレドニゾロンを追加投与のPHN予防のエビデンスが低いということを確認するには、当論文で概ね問題はないと思われる。(あるいは、若年者より高齢者の方がPHNのリスクが高いので、対照群を高齢者に限定すれば、違った結論に至るのかもしれない)
【②治療そのものは忠実に実行可能か?】
 実行可能
【③重要なアウトカムはコストや害を含めて全て評価されたか? 】
 副作用も評価されている。当論文は、プレドニゾロン投与はPHNの重症度に影響を与えず、副作用出現の可能性もあるため、推奨しないと結論している。
【④患者の考え・嗜好はどうなのか?】
 疼痛もないため、発疹の出現をまるで気に留めていない。無治療経過観察の方針で、何の抵抗もなく合意している。上記③と併せて、本症例にプレドニゾロン追加投与する理由はないと考える。

健常者の無症候性ピロリ菌感染に対する除菌治療の有効性

―文献名―
Alexander C Ford, et al. Helicobacter pylori eradication therapy to prevent gastric cancer in healthy asymptomatic infected individuals: systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. BMJ. 2014 May 20:348:g3174.

―要約―
【目的】
 健常者の無症候性ピロリ菌感染に除菌治療を行うと、プラセボや無治療と比較し、胃癌発症を減らせるか。

【方法】
 Systematic review and meta-analysis of RCT

【情報源】
 Medline、Embase、Cochrane(~2013年12月)、会議録(2001~2013年)、関連研究の参考文献。言語による制限なし。2人の独立した研究者で評価し、不一致あれば合意形成。

【採用基準】
 健常者の無症候性ピロリ菌感染に対する除菌治療の胃癌発症減少効果を調べたRCT。除菌治療は最低7日間。対照群はプラセボまたは無治療。追跡期間が最低2年間。

【主要アウトカム】
 除菌治療による胃癌発症減少効果(RR:relative risk)

【結果】
 1560文献が検索され6件のRCTを採用、Random effects modelで結果が統合された。除菌治療群3294名中51名(1.6%)、対照群3203名中76名(2.4%)に胃癌が発症し、RR0.66(95%信頼区間0.46-0.95)で有意差があった。研究間の異質性なし(I2=0%、P=0.60)。除菌治療効果が生涯続くと仮定すると、NNT16(中国人男性)からNNT246(アメリカ人女性)と人種性別によって幅あり。なお、日本人男性NNT16、日本人女性NNT23であった。

【限界】
 妥当性の高いRCT(Cochrane handbookによる評価)は6件中3件のみ。除菌レジメンが研究間で異なる。有害事象の検討はされていない。

【結論】
 アジア人健常者の無症候性ピロリ菌感染に対する除菌治療は、胃癌発症予防効果あり。

【開催日】
2015年7月22日(水)

長期尿道カテーテル留置患者の閉塞

―文献名―
DJ Stickler and RCL Feneley. The encrustration and blockage of long-term indwelling bladder catheters: a way of forward in prevention and control. Spinal cord (2010)48, 784-790

―この文献を選んだ背景―
 訪問診療を受ける患者には尿道留置カテーテルが挿入されている人も少なくない。そのなかで閉塞を繰り返して頻回の訪問看護での出動となったり、医療材料の供給で規定を超える数が必要となって自己負担いただく事例が多い。その原因について調べたところこの論文にあたった。

―要約―
目的
 細菌のバイオフィルムの結晶によってFoleyカテーテルが硬い層で覆われ、閉塞するかを説明した文献を概観することで、長期膀胱内カテーテル留置をうける患者のケアのなかでこの合併症を制御するための戦略を導き出す。
方法: 1980年から2009年12月までに発表された文献のPubMedの広範な検索を‵バイオフィルム´‵泌尿器へのカテーテル法´‵カテーテル関連尿路感染症´‵尿路結石´の語を用いて行い、妥当な論文を探し出した。

Nature of encrustration
 カテーテルに付着した結晶の分析からストルバイトとアパタイトの2種類が中心ということが示された。電子顕微鏡での解析は多数の桿菌が結晶生成に関連していることがわかった。培養の結果、ウレアーゼ産生菌が主体となっていた。ウレアーゼが触媒となってPHをあげ、リン酸マグネシウムとリン酸カルシウムの結晶化が引き起こされる一方で細菌のバイオフィルムが形成される。このプロセスはカテーテルを閉塞するまで続く。Proteus mirabillisの感染が実験上でも疫学的にも主因となっていた。

Controlling the rate of crystalline biofilm formation
 P.mirabillis感染を受けたカテーテル挿入された患者の前向き研究ではカテーテル閉塞が起こるまでの時間は2-98日と幅があった。閉塞を決める重要な要因は尿PHと同定され、pHが高ければ高いほど、カテーテル閉塞まで長くなる。P.mirabillis感染モデルの実験結果ではpHが8.3を超えるとバイオフィルムの結晶は形成されなかった。健康なボランティアでの研究では単純に水分量を増やしクエン酸摂取でpHを上げることができる。

Epidemiology and pathogenesis of P.mirabillis infections
 長期カテーテル留置を受ける44%の患者でP.mirabillisが尿検体から同定されている。留置カテーテルは膀胱結石の重大なリスクとなっており、Chenらは脊髄損傷患者1336人のコホートの病歴を解析し、受傷後最初の1年でカテーテル挿入されてない人と比べて9倍のリスク上昇と報告している。Fenelyらによると膀胱鏡検査の結果、カテーテル閉塞する62%で膀胱結石が発見され、膀胱結石が見られた90%の患者にP.mirabillis感染が起こっていた。

結論
 カテーテル挿入された尿路への出現を発見次第の抗生剤加療によるP.mirabillisの除去は、多くの患者のQOLを改善させ、カテーテル閉塞の合併症を管理するうえで現状の資源の浪費を減らせるかもしれない。すでに慢性的に閉塞し、結石形成している患者に対しては、抗生剤治療はバイオフィルムの結晶内に細胞が潜むことから効果的である見込みはない。クエン酸飲料と飲水量増量といった戦略は膀胱結石除去するまでカテーテル問題をコントロールできるかもしれない。

【開催日】
2015年7月15日(水)

敗血症の治療方針(Early goal-directed therapy:EGDT)は時代遅れなのか

―文献名―
Ling Zhang, Guijun Zhu, Li Han and Ping Fu .Early goal-directed therapy in the management of severe sepsis or septic shock in adults: a meta-analysis of randomized controlled trials:BMC Medicine (2015) 13:71

―要約―
【背景】
 The Surviving Sepsis Campaignガイドラインでは、early goal-directed therapy (EGDT) が、重症敗血症または敗血症性ショックの患者の致死率を下げる重要な戦略だとしている。しかしながら、その効果は不明である。

【方法】
 1966年1月から2014年10月までのMedline, Embase, the Cochrane Library, Google Scholar, Chinese database (SinoMed)といったデータベースにある文献を渉猟した。
重症敗血症または敗血症性ショックに対するEGDTに関する全てのランダム化比較試験について、システマティックレビューおよびメタアナリシスを行った。プライマリアウトカムとしては致死率、セカンダリーアウトカムとしてはICU滞在期間、入院期間、人工呼吸器管理、昇圧剤、輸液、輸血とした。Review Manager 5.2を用いて、相対リスク、95%信頼区間を算出した。

【結果】
 2011年~2014年までの10のRCT、4157人の患者を組み入れた。全ての研究で、EGDT群とコントロール群では致死率に有意差を認めなかった(RR 0.91, 95% CI: 0.79 to 1.04,P = 0.17)。異質性の検定ではχ2 = 23.65, I2 = 58%であった。サブグループ解析では、標準EGDT群(注1)は、修正EGDT群(注2)と違って、通常治療(注3)に比較して低い致死率だった(RR 0.84, 95% CI: 0.72 to 0.98, P = 0.03)。しかしながら、EGDT群は、早期に乳酸除去をした群と比較し、より高い致死率であった(RR 1.52, 95% CI: 1.06 to 2.18, P = 0.02)。最初の6時間で、EGDT群は通常治療に比較して、より昇圧剤が投与され、輸液され、輸血をされていた。ICU滞在期間、入院期間、気管挿管率、昇圧剤投与については有意差を認めなかった。

注1:標準EGDT…治療開始6時間以内のCVP8~12mmHg、平均血圧65~90mmHg、尿量0.5ml/kg/h以上、中心静脈酸素飽和度(ScvO2)70%以上を保つ方略
注2:修正EGDT…標準EGDTを簡素化したもの(CVP、ScvO2を計測しない)
注3:通常治療…元文献によるが、おおよそ輸液量、昇圧剤の使用量はEGDTに比べて少量

【結論】
 EGDTは、重症敗血症、敗血症性ショックの患者にとって生命予後を改善しないようである。EGDTは早期乳酸除去群と比較してより高い致死率であった。早期乳酸除去(※)をするEGDTについての、質の高いRCTが施行されることが望ましい。

※乳酸除去治療…おそらく持続的血液透析濾過治療(CHDF)のことを指す

【開催日】
2015年7月1日(水)