EQを高めてバーンアウトを防ぐ10の方法

-文献名-
Ten Strategies for Building Emotional Intelligence and Preventing Burnout
FPM January/February 2018

-要約-
EQ(Emotional Intelligence)のコンセプトは1990年に精神科医のPeter Salovey, PhD, and John D. Mayer, PhD,によって以下のように定義された。
• (自分と他人の)感情に気づく能力
• 感情を用いて思考を促進する能力
• 感情(の原因、意味、思考や行動との関係)を理解する能力
• 特定のゴールに達するために感情をマネージする能力

Daniel GolemanはEQをこのように表現している。
• Self-awareness — the ability to recognize and understand personal moods, emotions, and drives,
• Self-management — the ability to control or redirect disruptive impulses and moods,
• Empathy — the ability to understand the emotional experiences and responses of others,
• Relationship skills — the ability to build rapport and manage relationships.

EQは患者ケアに役立つだけでなく、リーダーシップの必須コンピテンシーともみなされている。

生まれつきのものと学習するものの両方の要素がある。
EQを高める10の方法は以下の通り。
1.自分の1日のなかでのintentionを明らかにする
 例)「穏やかにしよう」
2.セルフケアの練習をする
3.感情のチェックをする
 自分はどう感じているのか?顔はどうなっている?胸は?胃は?
4.ゆっくりする
 数秒でも止まることで自己制御感を得る 深呼吸もよい
5.好奇心を持つ
6.すべての感情のスペースを作る
7.read the room
8.人を頼る
9.謝る
10.はじめと終わりをきちんとする
 あいさつなど

【開催日】2018年6月6日(水)

プライマリ・ケアにおける適正なパネルサイズは,チームへの権限委譲のあり方によってどう変化するか?

-文献名-
Altschuler J, Margolius D, Bodenheimer T, Grumbach K. Estimating a reasonable patient panel size for primary care physicians with team-based task delegation. Ann Fam Med. 2012 Sep-Oct;10(5):396-400.

-この文献を選んだ背景-
 プライマリ・ケア医は周辺の地域住民をケアの対象とするが、外来患者数が多いと診療の質が落ちることも懸念され、どの程度の患者数が適正なキャパシティなのかを把握しておく必要がある。また、外来患者数が多い場合は、どういった形なら診療の質を落とすことなく対応可能なのかについての知見が必要である。この度、以上の内容に一つの見解を示すような研究を発見したので、紹介する。

-要約-
目的:
 プライマリ・ケア医が少ない地域では、過剰なパネルサイズの患者に対応しなければならない。この研究では、プライマリ・ケア医が擁する医師以外のスタッフへの業務委譲の仕方に応じて、適切なパネルサイズがどのように変化するかを推定する。
方法:
 プライマリ・ケア医が2,500人のパネルサイズの集団に対して予防、慢性のケア、急性のケアを提供した場合に要する時間に関する先行研究を用い、これらのケアの一部を非医師のスタッフに業務委譲した場合に適切なパネルサイズがどのように変化するのかをモデル化した。
結果:
 業務委譲の程度に関して3つの仮定(予防/慢性ケア:77%/47%、60%/30%、50%/25%)を用いたところ、プライマリ・ケアチームが適切にケアできるパネルサイズはそれぞれ1,947人、1,523人、1,387人と推定された。
結論:
 非医師に予防と慢性ケアの一部を委譲することができれば、プライマリ・ケアにおいて推奨される予防と慢性ケアを、業務遂行力に応じた適切なパネルサイズに提供することができる。

【要旨】
(導入)
●先行研究によると、2,500人のパネルサイズに対して必要な予防、急性ケア、慢性ケアを提供しようとした場合、一人のプライマリ・ケア医は1日に
 21.7時間業務しなければならない。アメリカの平均的なパネルサイズは2,300人である。55%の患者しか、適切な予防、急性ケア、慢性ケアを
 受けていない。
●パネルサイズを小さくすれば適切なケアが提供できるようになるが、その方針でうまくやれるほどアメリカには十分なプライマリ・ケア医がいない。
●非医師やICTを活用したチームモデルを適用すれば、医師の業務量を押さえたまま、推奨されるケアを、適切なパネルサイズに提供することが
 できるようになる。
(方法)
予防・急性ケア・慢性ケアに要する時間の推定
●Duke大学の研究によると、USPSTFのGrade AとBの予防を2,500人のパネルサイズに提供しようとすると、年間1,773時間必要となる。
●同様のパネルサイズに、10のコモンな慢性疾患への対応、かつ5つの疾患には適切なコントロールがなされている状態を達成しようとすると、
 2,484時間必要となる。
●同じく急性期ケアには888時間必要となる。
委譲可能な時間の推定
●予防に関するルーチンのカウンセリングの全てと、予防接種、化学的予防の説明以外の部分を非医師に委譲すると、プライマリ・ケア医師が予防に
 費やす時間の77%を節約できる。
●10のコモンな慢性疾患のうち、1/3はコントロール良好、2/3はコントロール不良とすると、委譲によりプライマリ・ケア医が慢性ケアに費やす時間は
 前者で75%、後者で33%節約でき、計47%の時間を節約できる。
●この予防77%/慢性ケア47%の委譲をモデル1とする。これが最大限の委譲と仮定して、より穏やかなモデル2(予防60%/慢性ケア30%)、
 モデル3(予防50%/慢性ケア25%)も作成した。
パネルサイズの計算
●AAFP(American Academy of Family Physicians)の推定によると、家庭医は年間2,025時間働いている。これを患者一人当たりに予防・慢性ケア・
 急性ケアを提供するために、年間必要になる時間数の合計で割り、適切に診療できるパネルサイズを計算した。また、それぞれのモデルによる
 パネルサイズの変化を調べた。
(結果)
●プライマリ・ケア医が年間2,025時間時間働くとすると、委譲なしで適切な予防・慢性ケア・急性ケアを提供できるパネルサイズは983人となった。
 同様に、モデル1は1,947人、モデル2は1,523人、モデル3は1,387人となった。
加藤先生図

(議論)
●この推定は、なぜプライマリ・ケア医が日々の診療に圧倒される感覚を抱くのか、なぜ慢性ケアの治療指標を達成できない患者が多いのかを説明する
 材料と考えられる。今回のパネルサイズは、他の実際の報告の内容とも合致している。
●限界について。慢性ケアについては10の慢性ケアに要する時間しか検討しておらず、委譲で節約できる時間もタイムスタディに基づくものではない。
 非医師の訓練時間を組み込んでいない。また、プライマリ・ケアの診療は多様性に富むので、一人に要する時間は様々であることが反映されて
 いない。
●医師、ケアチーム、患者の3つの関係性の変化が、プライマリ・ケアの現場で起きている大きなパラダイムシフトである。
●プライマリ・ケア医が少なく、過剰なパネルサイズへの対応を求められる現場では、医師のみによるケアからチームによるケアへの移行が
 求められる。

-考察とディスカッション-
この研究の結果を日本の環境に合わせると、月に1回ケアすべき対象がクリニックを受診するという仮定を置き、稼働日数を21日/月とした場合、従来のケアモデルでは50人/日、モデル1では90人/日、モデル2では75人/日、モデル3では65人/日が、適切なパネルサイズということになる。

ディスカッション)
 1.この数字は皆さんの診療の感覚と一致していますか?
 2.この数以上の診療をしているサイトでは、どの程度の委譲を実践していますか?委譲するにあたって、どのようなルールづくり、訓練などを
  行っていますか?
 3.この数以下の診療をしているが手一杯のサイトでは、手一杯になっている原因はどこにありますか?

【開催日】
 2016年8月3日(水)

郡部で働く女性家庭医が健全なワークライフバランスを保つ為の戦略とは?

-文献名-
PHILLIPS, Julie, et al. Rural Women Family Physicians: Strategies for Successful Work-Life Balance. The Annals of Family Medicine, 2016, 14.3: 244-251.

-要約-
【目的】
 女性の家庭医は、郡部の診療に携わる際に、ワークライフバランスの維持に困難に直面する。この研究では、郡部の家庭医診療に携わって実績を挙げている女性が、どのように仕事と個人のニーズを両立させて、長期的に満足できるキャリアを成し遂げているのか、そのための個人的・専門職としての両方の戦略についての理解を深めることを目指す。

【方法】
 アメリカの郡部の診療に携わっている女性家庭医に対して半構造化面接を行った。面接内容は録音し、専門家によって文字起こしされ、immersion and crystallization法によって分析された。そこから創出したテーマについて詳細なコーディングを行った。

【結果】
 25人のインタビュー参加者から、良好なワークライフバランスを取る為の戦略を記述した。1つ目は、個人的役割との両立を達成するために、仕事の時間を減らしたり、柔軟性を持たせたりしていた。二番目に、多くのインタビュイーは配偶者またはパートナー、両親、他の地域の住民からサポートが得られる関係性を持っており、そのため、患者からの要請に応えることを可能にしていた。三番目に、インタビュイーは仕事と生活の周辺について、明確な境界線を維持しており、そのため、育児・趣味・休息の時間を取ることが可能であった。

【結論】
 女性の家庭医は、郡部においても成功したキャリアを構築できるが、雇用者、周りの関係性からのサポートと、両親からのアプローチがこの成功の鍵を握っている。教育者・雇用者・地域・政策立案者にとって、郡部におけるキャリアに積極的な女性家庭医をサポートする際に、こうした女性達の実践が、役に立ちうる。

【詳細】
参加者の特徴(本人だけでなく、家族構成やパートナーの仕事など:Table1参照)
 テーマについて
 ①Variations in work hours and Flexibility
  ・1/3の対象者は、ワークライフバランスやwellnessの改善のためにフルタイムよりも減らした勤務時間で対応していた。
   そういった場合にも育児などの影響から、フルタイムよりも「忙しい」スケジュールになっていた。
  ・スタッフや他の同業者のリクルートを行いながら、時間の調整を達成していることも多かった
  ・郡部診療を行う理由として、幅広い実践を維持できるからという理由がほとんどだが、そうした幅広い実践の多くは救急や出産のように予想
   できない形で来る。そのためか、彼らに週に何時間働いているのか?という質問をしてもすぐに明確な数字で言えないことが多かった。
   あるインタビュイーは40-80時間の間、という答え方をしていた。そうした働く時間の変動に合わせて、彼らは家族や趣味に使う時間を柔軟に
   変えていた。その際に配偶者が柔軟なスケジュールを行うことができるかどうかが鍵となっていた。

 ②supprotive relationship
  ・医学生・研修医の女性にどんなアドバイスをするか?という問いにしばしば支援してくれるような配偶者を見つけることだという答えが
   みられた。
  ・回答者たちはしばしば、郡部に住む為に、配偶者に犠牲を敷いていることを認めており、そうした犠牲が無い限り、彼らの専門業は成り立たない
   としていた。
  ・多くの配偶者は、自営業やパートタイム、あるいは遠隔業務が可能な仕事か、もともと郡部出身者で農業などの郡部の仕事を持っているため
   郡部居住を強く望んでいる、のいずれかであった。
  ・そうしたサポートが難しい何人かの回答者は郡部勤務をやめることを計画していた。
  ・しばしばこうした家庭では男性が育児や家事の主な役割を担っていた。その結果、女性家庭医がより患者ケアに時間を使えるようになっていた。
  ・また、家庭医同士の結婚の場合は、家での家事育児の役割は平等な形を取っているという話もあった。
  ・多くの郡部勤務者は学生のうちかその前から郡部診療に関心を持っており、そうした地域に住みたいというパートナーを見つけていた。
   自分にとって家あるいは故郷のような地域に戻ることである回答者が60%であり、他には、配偶者が郡部との繋がりがあって、お互い話す中で
   郡部に移ることを決めているという場合もあった。また、両親のサポートも重要であった。
  ・回答者が最も難しいと感じるのは緊急時や夜間受診があった際の子供の世話だった。例えばこんな説明もあった。「多くの人が、オンコールでも
   子供といれるからいいよね、と言うが、彼らはこちらの実情を分かっていないと思う。文字通り、ドアをあけて病院に数分以内に行くべき時に、
   子供の外出の準備や用意をさせて誰かの家に預けにいくなどとてもじゃないができない。必ずしもみながこの仕事の困難さ・意味を理解は
   していないからだ。」
 ③Clear boundaries around work
  ・殆どの全ての回答者が、自分の余暇・趣味・育児に十分な時間を取る為に何らかの境界線を設けていた。ほとんどはグループ診療で、
   他のメンバーが自分の患者をカバーできるようにしていた。
  ・医師によっては、患者の期待をリフレーミングして、自分のwellnessを保っていた。公共の場で相談を受けて、仕事中でない時は、
   ちょっと距離を空けることで相手にそれが良く無いことを伝えようとしていたり、アドバイスを簡潔にして別の日にまた連絡するように
   伝えたりしていた。場合によっては、自分が母親でもあり、今はオンコールでないから、他の医師が対応すると明確に伝える、とも述べていた。
  ・しかし、そういった患者ケアと自分の家族ニーズが重複して衝突する時に、罪悪感も感じていた。ある医師は、その子供のケアと
   1日クリニックを閉じることの間で自己決定を続けることに向き合い続けるのが難しいので、勤務地変更を真剣に考えていると述べていた。

【開催日】
 2016年6月22日(水)

危機におけるリーダーの危うい姿と望ましい姿

―文献名―
ASTDグローバルネットワークジャパン リーダーシップ開発委員会「2011年度 ASTDグローバルネットワーク・ジャパン リーダーシップ開発委員会報告」2012年3月16日
 *ASTD:American Society for Training & Developmentという非営利団体の略称。主に人材開発や組織開発の分野でカンファレンスやセミナーを
      行っている団体。

―この文献を選んだ背景―
 診療所経営で日々様々な問題を経験し対処・対応しているが、その問題が危機的状況となると違うリーダーシップが自然と発動される感覚があった。先の震災でも話題になった「危機のリーダーシップ」について学習・省察しようと調べてみたところ、この文献に出会うことが出来たので共有する。

―要約―
【作成経緯】
 ASTDの日本支部のリーダーシップ開発委員会で、2011年7月から2012年2月まで10回の議論を行い、企業組織の内部に起因する“危機”とその対処における“あるべきリーダーシップ”に着目し、組織の危機対応のプロセスを①迫りくる危機、②危機への対処、③体質の転換の3つのフェーズに区切り、各フェーズでのリーダーシップ(トップ、ミドル、社員に求められるフォローワーシップ)の仮説を立て、インタビューや文献調査によるモデル化を行った。

【資料要約】
●フェーズ①「迫りくる危機」:危機は顕在化していないが、リスクが存在する局面
  ■組織の状況
   ◇ 杜撰で不透明な管理体制、不正や問題に対する感度の低さ、世間と組織の倫理観のズレ、現状追認の意識、組織防衛を優先
  ■リーダーの意識・行動の描写
   ◇ トップ:緩い現状認識、重んじる判断軸のズレ、自らの地位への執着
   ◇ ミドル:当事者意識の欠如

  ■望ましい意識・行動
   ◇ トップ・ミドル共通:
    ・信頼関係の構築、問題解決への執着、鋭い情報収集アンテナ、失敗経験を生かす、厳しい現状認識から逃げない姿勢(不都合な情報・
     事態に向き合う、丹念な情報収集)、価値基準の明示(長期的な組織の発展を重んじる、顧客・社会の立場で考える)
   ◇ トップに求められること:
    ・理念・危機対応方針の共有、危機対応への覚悟、私利私欲の排除
   ◇ ミドルに求められること:
    ・社内の連帯作り、現場での危機対応シナリオ構築、危機対応への覚悟
   ◇ 現場に求められること:
    ・現場の生の声を上げる
  ■望ましい組織体制・文化のあり方
   ◇ 組織全体に求められること:
    ・風通しの良い組織作り、危機の想定の具体策、危機対応シナリオ構築、危機対応に関する社内リソース構築、危機対応に関する
社外リソース活用
   ◇ トップに求められること:
    ・適切な人材登用

●フェーズ②「危機への対処」:危機が顕在化し、危機への対処処置を行っている局面
  ■組織の状況
   ◇ 危機への無関心・楽観、危機発生直後にパニック発生、不安・不信の高まり、情報錯綜・隠蔽、外部からの関心の高まり、
     司令塔不在による混乱、外部からの批判・糾弾、組織内部の疲弊、社会的制裁
  ■リーダーの意識・行動の描写
   ◇責任回避、判断回避、外部の権威への依存、多方面への受身の対処、脅威による疲弊

  ■望ましい意識・行動
   ◇ トップ・ミドル共通:
    ・的確でスピーディーな情報収集、的確な情報発信、事態収拾の徹底
   ◇ トップに求められること:
    ・価値観の明示と実践、正しい現状認識、適切な情報コントロール、積極的な内部コミュニケーション、社内のモチベーション維持への配慮、
     覚悟の明示、真摯な対応姿勢、ポジティブな思考と迅速な行動
   ◇ ミドルに求められること:
    ・方向性の明示、オープンな情報共有・的確な状況把握、主体的な行動、危機対応に集中
   ◇ 現場に求められること:
    ・事実に基づく現場の状況報告、即時最善の行動
  ■望ましい組織体制・文化のあり方
   ◇ 組織全体に求められること:
    ・危機対処組織の立ち上げ

●フェーズ③「体質の転換」:危機をバネに新生を目指している局面
  ■組織の状況
   ◇ 経営破綻への不安、上層部への批判、原因追究の動き、事態収拾の兆し、組織改革への機運、引責者・退職者の出現、組織の主体的な
     情報発信・危機的状況の沈静化、現場の主体性回復、再建への機運、新体制・ルールの構築、再生に向けた価値の再定義、新体制での方針・
基準策定、問題解決への取り組み、再発防止への取り組み
  ■リーダーの意識・行動の描写
   ◇ 旧リーダーの機能不全、新たなリーダーの出現、事業・組織体制の改革、企業価値・基準の新たな定義、信頼回復に向けたコミュニ
     ケーション、リーダーとしての覚悟と実践、大胆な改革・ビジョンの提示

  ■望ましい意識・行動
   ◇ トップに求められること:
    ・過去との決別・逃げない覚悟、新たな企業価値観の追及と明示、根本原因の解決、強いエネルギーと熱意、期限かつ誠実な行動、
ポジティブマインドを促す、部下への感謝、社外へのメッセージ発信、情報開示の徹底、着実な再生への取り組み、経営陣の信頼関係構築
   ◇ ミドルに求められること:
    ・風土改革の主導・実践、再生への熱意、方針を現場に落とす、現場のチーム作り、誠実な行動、体質転換への問題把握、
     有能な社員の引き留め
   ◇ 現場に求められること:
    ・現場管理の徹底、確実な業務運営、再生への建設的な関与、キャリアの再考
  ■望ましい組織体制・文化のあり方
   ◇ 組織全体に求められること:
    ・オープンで多様性を活かすしくみづくり、新たな企業文化構築への取り組み

―考察とディスカッション―
 危機を3つのフェーズに分け、在りがちな組織の現状やリーダーの行動の描写は反面教師になった。また望ましい意識・行動のリストは自分が行えていること・行えていないことのチェックリストにもなり、自然発生的な危機のリーダーシップでは不足する部分(意識しないと振る舞えないリーダーシップ)を補う情報となった。
 またリーダーのみならず、ミドル(HCFMならサイト長、診療所ならフェロー)の役割の重要性も認識できた。当事者意識を持ってリーダーと積極的にコミュニケーションを行い、現場を指揮するミドルの存在が危機対応には欠かせないと改めて実感した。
 また危機のときほど事実確認が濁り、組織のコントロールが難しくなる実感を持っている。自分なりには先入観や希望的観測を排し、冷静に「事実に基づくこと」情報管理と細かな情報発信を重視している。また組織コントロールを握るためにも、ギアをあげて巻き込むと同時に穏やかに落ち着いて振る舞うという、スピード感と安定感のバランスにも工夫している。
 危機を等身大に扱いどのようなパースペクティブで扱うのかのリーダーシップを鍛えていきたい。
皆さんが、この資料を読んで新たに学んだことは何ですか?
皆さんが、危機のリーダーシップで大切にした(い)ことは何ですか?

【開催日】
 2015年11月18日(水)

診療所内のチームビルディング

―文献名―
仲山進也. 「今いるメンバーで「大金星」を挙げるチームの法則」講談社.

―要約―
「グループとチームの違い」
  ① グループ→個々が役割以上のことはしないまたは出来ない組織
  ② チーム→個々が役割以上の力を発揮する組織
  ③ この本では「グループ」が成長して「チーム」になると考えている

「タックマンモデルの紹介」
チーム成長の法則「70 点のグループ」が「赤点」を経て「120 点以上のチーム」に変身する

「優秀なリーダーがいればチームになる必要はないのでは?」
 右肩上がりの時代であれば優秀なリーダーがいるグループのまま100 点を目指す方針でも皆ハッピーに仕事ができたが、
変化の激しい時代と言われている現在においては、リーダー1人が変化を捉えてアクションを考えるのでは間に合わないほど、
変化する要素が増えている。だからこそ各自が考えて行動出来る自走型の「チーム」になる必要がある。

■ 第1章フォーミング
 ● フォーミング体質①自己主張をしない。空気を読んで遠慮する。
 ● フォーミング体質②対立、衝突によりパフォーマンスが低下した時点で、チーム状態が悪くなってきた。
    もとに戻そうという発想・行動をとる
 ● ストーミングに入ると組織としてパフォーマンスが低下するため企業の多くはフォーミングに戻す選択をすることが多い
 ● フォーミングを進めるにはコミュニケーション量の増大が鍵
   例)自己紹介名鑑の作成、フォーミング飲み会の開催

■ 第2章ストーミング
 ● 特徴としてはメンバーの本音の意見が場にでて、対立や衝突がおこりイライラやモヤモヤが発生。
   その結果生産性が低下するが本音を言うことで「自分ごと化」が進む。
 ● ストーミングで解散しないために
   ・ ビジョンが示されている
   ・ ストーミングの意義を共有:チームとして成長するために必要なプロセス
   ・ 個人の安全を確保:個人攻撃の場ではなく、皆の意見が場に出揃うことが目的
   ・ グループ全体の安全を確保:生産性が低下して売り上げ低下しても資金ショートを起こさない地盤確保
   ・ ストーミングを進み易くする:各自が紙に書くなど
 ● ストーミングを進めるためにはコミュニケーションの質が大事

■ 第3章ノーミング
 ● 特徴としては小さな成功体験を繰り返すうちにチームの暗黙のルール(行動規範)が築かれる。
  共通言語が生まれ、「私たちのやり方」「ウチのチームは」という表現がメンバーの口からでるようになる
 ● ノーミングを進めるために、自分たちでつくったルールを徹底化するために明文化し確認と共有を繰り返す

■ 第4 章トランスフォーミング
 ● 特徴としてはメンバーの協働意志で、上位のビジョンを目指す。他のメンバーへの貢献につながる行動が自動化する。
  チームに対する帰属意識が高まり、「ずっとこのチームでやりたい」、「このチームなら何でもできる」という意識になる
 ● さらなる上位のビジョンを目指すためビジョンや価値観に共鳴できる人を採用する

【開催日】
2015年10月7日(水)

リーダーシップを体系的に学ぶための入門書

―文献名―
リーダーシップ3.0 〜カリスマから支援者へ〜.小杉俊哉.祥伝社.2014

―要約―
カリスマ型のリーダーは必要なのか?現場の第一線が自律的に働き価値を提供したり提案をあげたりすること(ボトムアップ)、中間管理層が活発な議論と組織の上下左右に対して働きかけ活性化すること(ミドルアウト)がなければ組織は立ち行かないことは自明である。このような状況をもたらすためのリーダーシップがリーダーシップ3.0である

<時代によるリーダーシップの変遷>
・リーダーシップ1.0:権力者がヒエラルキーの頂点に立ち、指示命令による中央集権的に組織を支配する。画一的なサービスの大量提供には向いていてるが、多様なニーズに応える柔軟性がない

・リーダーシップ1.1:各事業部に責任者を置き、そこに権限を委譲して責任を持たせることで組織全体をコントロールする。しかし事業部内で現場とマネジャー間の対立を深め、階層による厳格な管理、効率重視による賃金のみによる動機付けは従業員の独創性を削いでいった。またトップから各事業部に下った指示にフィードバックをかける仕組みがなかったため、急激に変化する環境に対応しきれなくなった

・リーダーシップ1.5:権力によって率いるのではなく、組織全体に価値観と働く意味を与えること、雇用の安定を図るなど協調を促し、組織全体の一体感を醸成することにより組織を牽引する。従業員がわくわくするものを見つけ出し、意図的にそれを持続させたり、終身雇用、年功序列、労使協調に代表される手法で価値観を一体化させたりする。いわゆる企業戦士が登場した。しかし当初は有効だった価値観に基づく行動パターンが形骸化した。退職したもの、職を失ったものはその瞬間、収入以上のものを失うこととなった。また個人の目的が不要、あるいはいかにそれを組織に合わせるかが問われた。また組織重視のためコンプライアンスの低下をもたらし、CSR(企業の社会的責任)が問われる事件が頻発した。

・リーダーシップ2.0:いわゆる「変革のリーダーシップ」。組織の方針を提示し、大胆に事業領域や組織の再編を行い、競争や学習を促し、縦割りの部門間、社員間の交流、活性化により組織を変革する。経営コンサルタントを雇い、新たな経営戦略を策定し実行した。しかしカリスマ個人の力量に依存するところが大きく、破壊的イノベーションには対応しにくい。またカリスマに依存し社員が受け身になる。トップが答えを持っていないと企業全体をミスリードしてしまう。経営コンサルタントに依存するとどの企業も同じような分析になり、差別化できない。

<リーダーシップ3.0>
  生まれた背景:外部環境が急激に変化する中で、企業のトップの最大の課題は、いかに新しいビジネスモデルを作るかに尽きる。そのためには1)アンラーニング(成功体験の否定)、2)ベンチャー思考(想像性を発揮しリスクをとる)、3)非連続性の発想、である。今まではトップ20%の人材と信頼関係を作っていればよく、下位の人材は入れ替えれば良いという考え方が主流であったが、これらを達成するためには、顧客により近い現場のリーダーに権限を渡し、トップは彼らを支援し、そこで彼らが活躍できるような場にすることが必要になる。つまりトップ20%だけでなく、全社員に対して注目する必要があるという認識がなされるようになってきた。ここから、人間を機械とみなすのではなく、個人のコンピテンシー(業績者には単にスキルや知識があるだけでなく、「良好な対人関係の構築力」「高い感受性」「信念の強さ」など複数の特性が見られる)、いわゆる人間力を重視していくこととなる。上下関係ではなく、社員を社内顧客として扱う。リーダーシップをあえて一言で表すなら「信頼」(by トーマス・ピーターズ)とも言われるようになった。

  支援者としてのリーダーシップ3.0:リーダーは組織全体に働きかけ、ミッションやビジョンを共有し、コミュニティ意識を涵養する。と同時に個人個人とも向き合い、オープンにコミュニケーションを取り、働きかけて組織や個人の主体性、自律性を引き出す。組織全体をそのような場として整える。コミュニケーションは、組織の階層を通じて行うこともあれば直接現場の担当者に対して行うこともある。またそのコミュニケーションの対象は必ずしも社内に限らず、社外の参画意識を持った人々とのコラボレーションも促す。このようにして組織自体や組織内外の人々に対して支援することによってリーダーシップを発揮する。組織全体の価値創出のために個人の最大の力を引き出し、目標達成に向けて一体となれる組織が実現され、個人個人が自律的に動くことで優れたパフォーマンスを発揮することが可能になる。その点在する個人が事業に共鳴し参画意欲とともに集まり組織化され、試行錯誤を繰り返し、既存の情報を自分たちの目的に合うように新しく組み直し、新しい製品、サービス、生産システム、経営システムを作り出せれば、それがイノベーションとなる。
  リーダーのコミュニケーションは、メンバー一人一人と向き合う双方向性が必要になる。コラボレーションを絶えず促すような動きを、リーダー自身がとる必要がある。その点から人間性や人間味も非常に重要になる。
  サーバントリーダーシップ(ロバート・K・グリーンリーフ)、羊飼い型リーダーシップ(リンダ・A・ヒル)、コミュニティシップ(ヘンリー・ミンツバーグ)、オープンリーダーシップ(シャーリーン・リー)、コラボレイティブ・リーダー(ハーミニア・イバーラ)、第5水準のリーダーシップ(ジェームズ・C・コリンズ)なども、このリーダーシップ3.0を示している。
  裏付ける理論:マネジメント2.0、場の理論とマネジメント、モチベーション3.0、マーケティング3.0、U理論などもリーダーシップ3.0を支持する内容となっている。

<3.0リーダーに必要とされるもの>
 要素1「ビジョンを持ち語る」

 要素2「リーダーになる」:ビジョンを持っている、情熱を持っている、誠実である、信頼を得ている、好奇心と勇気を持っている

 要素3「ミッションを持つ」:自分のギフトに気づき、それをミッションに生かす

 要素4「他者を支援するという自然の成長に従う」:40代に訪れると言われる「中年の危機」を迎えると今までの勝ちパターンが使えなくなる。そこで新しい自分のアイデンティティを確立する必要がある。そこで将来世代の幸福に対する関心が生まれる。

 要素5「人間力を磨く」:人を惹きつける独特の雰囲気、確固とした人生哲学や豊かな人間性、周囲の人を熱気に巻き込んで実現する人心掌握、社会的善を経験的に知っている、無理な目標を「できるかもしれない」と思わせる影響力、遊びも尋常でなく多様な人間を通して審美眼が磨かれている、場の状況を読み適切に対応することで他人の共感を呼び起こす

 要素6「仮面をとる」:リーダーは弱さを見せていい。自分の弱点を受け入れ、他者の不完全さも受け取る。フォロワーはリーダーが完璧であるからついていこうと思うのではない。ふとリーダーの弱みや人間的なところを見た時、なんとかこの人の足りない部分を支えたい、この人に成果をあげさせてあげたいとついてくる

 要素7「ファシリテートする」:場を提供し、フォロワーが自律的に動くように支えるためには、リーダーがファシリテーターの役目を果たすことが必要。問題解決アプローチではなく、ポジティブアプローチで。

 要素8「エンパワーメントを正しく理解し実行する」:なぜやるのかを伝え、どうやるかは任せるのがエンパワーメント。どうやるかも指示するのが権限移譲。

 要素9「動機付けを行う」:外発的動機付けは機能しなくなっている。内発的動機付けとして「人と協力すること」、「仕事内容そのものに満足」、「自分で選択できるということ」がある。上司の期待と、任せられるという責任感が動機付けになる。

【開催日】
2015年8月5日(水)

リーダーシップと人との関係

―文献名―
ロナルド・A・ハイフェッツ/マーティ・リンスキー 著.竹中平蔵 監訳.第4章 政治的に考える in 「最前線のリーダーシップ」.p111-144.ファーストプレス.2007.

―この文献を選んだ背景―
 マネジメント・ケース・カンファレンスにおいて、リーダーには以下の2つのスキルが求められると感じた。問題の所在をあぶりだすスキルと、適応を推進するスキルである。適応を推進するのはリーダーにとっても危険を伴う行為である。このJournal Clubでは、リーダーがある程度のリスクヘッジをしながら適応を推進するために必要な5つの方法のうち、今回のケースにいくらか関連があると思われた「政治的に考える」という方法を紹介する。

―要約―
政治的に考えるうえでの6つの根本的な視点
 成功するリーダーに共通するすぐれた資質の1つは、人間関係の大切さを理解する力だろう。とくに選挙で選ばれる政治家にとっては、人間関係は空気と同じくらい大切なものだ。政治家にとって、ある主張がもたらす利益やそれを進めるための戦略は、判断要因の1つでしかない。彼らは人脈を最重視する。相談でき、ともに目の前の問題解決に取り組むことができる人々のネットワークをつくり、それを大きくすることに労力を注ぐ。リーダーシップを発揮する際に「政治的に考える」上での6つの根本的な視点がある。1つは、あなたの側にいる人々との関係からの視点、もう1つは、反対の立場の人々との関係からの視点。そして残る4つは、自分の立場を明らかにせず慎重になっている人々を動かすための視点である。

視点1:パートナーを見つける
●パートナーは、あなた自身とその活動を助けてくれる。論理的な主張や証拠に頼るだけではなく、政治的な力も築ける。パートナーの口から自分とは別の見解を聞くことは、アイデアの改善にもつながる。
●変えることが最も困難なグループのなかにいるパートナーこそが、最も重要な役割をもたらす。
●パートナーがどこまでなら協力してくれるのかを把握するためには、彼らがすでに持っている協力関係やその協力相手に対する責任感の度合いを知っておく必要がある。

視点2:反対派を遠ざけない
●リーダーシップを発揮しながら生き残り、なおかつ組織を変えることに成功するためには、支持者とともに作業するのと同じくらい緊密に、反対の立場の人々とも一緒に作業に取り組まなくてはならない。
●不安を抱きながらそれを無視して進むよりは、その不安を、自らの脆弱要因であるとともに、反対はグループにいかに強い脅威を与えているかを示すシグナルととらえるべき。それは、やがて直面する抵抗の端緒であり,放置しておけば自体は悪化してしまう。

視点3:自分が問題の一部であったことを認める
●もしあなたが組織で責任ある役割を担っており、その組織に問題が起きているとすれば、あなたにも問題が起こった責任の一端があり、問題が手つかずになっている理由の一部があなたにあることはほぼ明らかである。あなたがもたらそうとしている変革の障害になりうる部分が、あなたの行動や価値観の中にもあると知っておく必要がある。たとえ人々をよりよい場所に導こうとしているとしても、自分がいまの状況に何らかのかかわりがあることを理解し、その責任を認める必要がある。
●あなたが誰かを非難したり、だれかに自分がやりたくないことをやらせていたりするとき、彼らにとって最も簡単な選択肢は、あなたを排除することだ。その問題は「あなた対彼ら」という構図になってしまう。しかし、もし彼らと一緒に問題を直視し、その問題に関する責任の一部を引き受けるのであれば、あなたは自分が攻撃されるリスクを軽減できる。

視点4:喪失を認識する
●人々は理由がはっきりしているのであれば、犠牲をいとわない。犠牲を払うだけの価値があるのかどうかを知る必要がある。しかし、希望にあふれた未来を示すだけでは不十分であり、変化に伴ってだれが何を喪失するのかを明確にし、それをしっかりと認識する必要がある。
●あなたが人々に求めている変化は困難なもので、人々にあきらめるように求めているものには大きな価値があることを認識し、それを明確に示す必要がある。彼らとともに悲しみ、喪失を記憶する。あなたが本当に理解しているということを人々に納得させるには、たいていの場合、声明よりもより目に見える、公式の何かが必要となる。例えば、人々に求める行動を自分がモデルとなって示すことなど。

視点5:自らモデルになる(上記参照)

視点6:犠牲を受け入れる
●もし人々が変化に適応できなかったら、取り残されることになる。そして犠牲者となる。これは組織やコミュニティが大きな変革をけいけんするときには、事実上、避けられない。適応できないか、一緒に進もうとしない人々は必ずいる。あなたは、彼らを守り続けるか、彼らを犠牲にしても前進するかを選ばなければならない。犠牲者を出すことに耐え切れないほどの苦しみを覚える人々にとっては、このようなリーダーシップは大変なジレンマである。しかし、これはリーダーの仕事の1つなのだ。
●犠牲者を出すことを受け入れるかどうかは、あなたが本気で取り組もうとしているかどうかを示すシグナルとなる。もしあなたが犠牲を出したくないというシグナルを発するのであれば、それは、態度を決めかねている人々に対して、あなたの取り組みは無視してもらって結構と言っているようなものだ。現実の危機無くして、なぜ人々が何かを捨ててまでいままでのやり方を変えようとするだろうか。

―考察とディスカッション―
 リーダーシップは諸刃の剣であり、用いる人間にも危険が伴う。また、適応の障害は人々の中だけではなく、自分の中にもあることを、リーダーは認識しておかなければならない。今回扱った内容はリーダーシップの要所のうちのほんの一部ではあるが、今回扱ったここまでの内容について、自分にも思い当たることはあるだろうか?あるとすれば、そうした場面で自分はどのような行動をとっているだろうか?そこにはどんな難しさがあるだろうか?自分のリーダーシップを振り返るきっかけとして活用いただきたい。

【開催日】
2015年7月15日(水)

プライマリ・ケア看護師の担うべき役割と必要な能力

―文献名―
斜森 亜沙子, 森山 美知子.我が国のプライマリ・ケア機能を担う診療所における看護師の担うべき役割と必要な能力.日本プライマリ・ケア連合学会誌 38-2;2015;102-110

―要約―
【目的】
 プライマリ・ケア診療所において、診療所の果たすべき機能とそこで働く看護師の役割、必要な能力を明らかにする。

【方法】
 プライマリ・ケア診療所に勤務する医師6名と看護師11名を対象に、フィールド調査(面接法及び参加観察法)を実施し、質的機能的分析を行った。

【結果】
 プライマリ・ケア診療所には「外来機能」「在宅支援機能」「地域支援機能」の3つが抽出され、それを支える看護師の役割として「個人及び家族の健康を守る役割」「人々が住み慣れた場所で安心して療養でき/最期を迎えることを支援する役割」「地域の健康問題に対処する役割」、これらの機能を支える「診療所をマネージメントする役割」の4つのカテゴリーが、役割に対応する能力として9カテゴリーと、プライマリ・ケアを実践する専門職者に必要な4つの基本能力が抽出された。

【結論】
 診療所におけるプライマリ・ケア看護師は幅広い役割と能力が必要とされていることが明らかになった。

―考察とディスカッション―
 この論文で抽出された役割・能力は幅広いものであるが、どの項目も必要と思われるものであり、病院でのセッティングでは習得が困難なものと思われる。そのため、まずはこのような能力とそれを習得していくための教育の重要性をスタッフが認識することが第一かと思われた。今後、リハビリや栄養士など、他の職種にも同様の検討が必要と思われる。

みなさんの現場では、
 ・役割/能力の必要性を感じたことはありますか?
 ・特にどのような役割/能力を重点的に習得すべきと思いますか?

【開催日】
2015年7月1日(水)

医師における性別役割分担 ―診療時間と家事労働時間の男女比較―

―文献名―
安川 康介,野村 恭子,医師における性別役割分担 -診療時間と家事労働時間の男女比較-,医学教育,2012.8:第43巻,第4号,p.315-319

―要約―
【背景】
 日本における女性医師の数は近年増加傾向にあり、平成 22 年度の厚生労働省の調査によれば、全医師に占める女性医師の割合 18.9%、29 歳以下の医師では 35.9%となっている 。しかし、現在の医療現場において、女性医師が仕事と出産・育児を両立することは難しく、離職せざるを得ない女性医師は少なくない。日本医師会調査によれば、約 4 割の女性医師が休職・離職を経験しており、約 4 人に 1 人は 6 カ月以上の休業・離職を経験していた。同調査では、女性医師の 64.1%が女性医師としての悩みは「家事と仕事の両立」であると回答し、勤務形態が常勤以外の女性医師の 44.3%が常勤ではない理由として家庭と育児を挙げている。

【方法】
 平成21 年6 月の時点で都内某私立大学医学部同窓会に所属する会員1,953 人中、連絡先住所不明の607 人を除いた1,346 人(男性1,030 人 女性316 人)に自記式調査票によるアンケート調査を行った。
 調査内容は年齢、婚姻の有無、結婚年齢、配偶者の仕事(女性のみ)、子供の有無、主な所属機関、就労形態、「社会的には育児はまだまだ男性よりも女性の仕事である」に対する意識、週当たりの診療時間、週当たりの家事労働時間である。
 年齢、婚姻状況、子供の有無、就労状況、職場、診療時間と家事労働時間について性別で差があるか否か有意差検定を行った。

【結果】
 回収数は男性452 人、女性224 人、回収率はそれぞれ44%と71%であった。
平均年齢は女性が43 歳と男性(48歳)に比べてやや若く、婚姻率は男性が高く(67% vs 88%)、子供を持つ割合も男性で高かった(64% vs 78%)。婚姻している女性は159名(71%)おり、76%が男性医師を配偶者に持っていた。
 週当たりの診療時間については男性の中央値(IQR)が50 時間(40,60)であるのに対し女性では40 時間(30,55)と低かった(p<0.0001)。一方週当たりの家事労働時間については男性の中央値3 時間(0,8)に比べ女性の中央値は30 時間(15,42)であった(p<0.0001)。 【結語】 1)医師における性役割分担の実際について検討するため、都内某私立大学医学部同窓会に所属する医師を対象に、診療時間と家事労働時間に関する任意無記名の質問紙調査を実施した。 2)週当たりの診療時間は男性の中央値が 50 時間、女性では 40 時間と女性の方が短いが、週当たりの家事労働時間は男性の中央値 3 時間に比べ女性は 30 時間であった。 3)診療時間に家事労働時間を加えた労働時間は、男性医師よりも女性医師の方が長かった。 4)本研究では、医師という専門職においても性別役割分担が存在していることが認められた。 【開催日】 2015年6月17日(水)

グループ診療が壊れるとき

―文献名―
Francois Marechal, Dorothee Schmidt, Evelyne Lasserre and Laurent Letrilliart. When the group practice breaks up; a qualitative study. BMC Family Practice. 2013 May 3;14:53.

―要約―
【背景】
グループ診療は世界中のプライマリ・ケア医の間でだんだんと普及してきている。しかしグループ診療の中で分裂が起こる可能性もしばしばあり、そのプロセスはこれまで研究されていない。この研究の目的は家庭医のグループ診療の破綻の原因を探索し、それにまつわる感情を記述することである。

【方法】
我々は、フランスのローヌ・アルプ地方でグループ診療の破綻を経験した、21人の家庭医と1人の事務員を対象とした深層インタビューによる質的研究を行った。

【結果】
初めてグループ診療を始めるとき、若い医師たちは準備が出来ている、あるいは、サポートされていると感じておらず、必ずしもパートナーと同じ期待を共有しているわけではなかった。破綻の原因には、グループ内の不均衡、対照的な働き方やマネジメント・スタイル、コミュニケーションの途絶などが含まれていた。破綻のプロセスにより、それを経験したパートナーほぼ全員、特に辞めた方のパートナーは、苦悩や失敗といった感覚を長く持ち続けていた。

【結論】
パートナーシップの最も初期の段階から弱体化の要因が存在し、グループ内で起こる変化や出来事すべてにおいて問題が増加する可能性があった。そこで我々は以下のことを推奨する。公正なマネジメント、明確な契約に基づく共有されたプロジェクト、必要に応じて第3者からもらう助言、そして最悪の場合にはグループ診療を辞めることである。

【開催日】
2014年5月14日(水)

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