プライマリ・ケア外来における診断推論〜患者中心のアプローチ〜

=文献名=
Donner-Banzhoff N. Solving the Diagnostic Challenge: A Patient-Centered Approach.
Ann Fam Med. 2018 Jul;16(4):353-358. doi: 10.1370/afm.2264.PMID: 29987086

=要約=
Abstract
臨床上の問題について合意された妥当な説明を得ることは、臨床医だけでなく患者にとっても重要である。臨床医がどのようにして診断にたどり着くかについての現在の理論(閾値アプローチや仮説演繹的モデルなど)は、総合診療における診断プロセスを正確に記述していない。総合診療における確率空間は非常に大きく、各疾患が存在する事前確率は非常に小さいため、診断プロセスを臨床医の可能性リスト上の特定の診断に限定することは現実的ではない。ここでは、患者と臨床医が特定の方法で協力する方法についての新たなエビデンスが議論されている。診断課題をナビゲートすることと、患者中心の医療面接を利用することは、別々の作業ではなく、むしろ相乗効果がある。

Introduction
フランス映画『Irreplaceable』で、田舎の高齢医師が健康上の理由で診療を断念せざるを得なくなり、彼は患者に若い同僚の医師を後任として紹介した。ある中年の患者が最近発症した頭痛の治療を受けようとしている。若い医師はすぐに直接質問をして、場所、重症度、関連する特徴を明らかにしようとしたが、この非常に尖った質問からは明確なイメージが浮かび上がらない。高齢医師は、診察の最初に患者が何か言いたがっていることに気付いていたが、若い医師に遮られてしまった。高齢医師が促すと、患者は糖尿病のために新しい薬を飲み始めてから頭痛が始まったと説明する。
医師がどのようにして診断にたどり着くかは、多くの議論の対象となっているが、実証的研究はあまり行われていない。特にプライマリ・ケアのようなジェネラリストの設定では、認知的課題は膨大である。しかし、これまでの理論では、臨床医がどのように対処するかを十分に説明できていない。ここでは、プライマリ・ケアの意思決定に関する最近のエビデンスに基づいた新しいアプローチを提案する。
まず、診断プロセスに関するこれまでの理論を見直し、プライマリ・ケアの環境特性との適合性を論じる。最近出てきた証拠に基づいて、ジェネラリストの診断プロセスの異なる概念化を提示する。

臨床決断に対する閾値アプローチ(threshold approach)
1980年、PaukerとKassirerは診断の閾値モデルを提案した。このモデルでは、医師が特定の疾患を検討しているとき、取られる行動は2つの閾値、つまり治療閾値と診断閾値に依存すると仮定する(図1)。疾患の確率が治療閾値を超えると、医師は診断プロセスを終了し行動を起こす。この行動は治療であるかもしれないが、状況に応じて、紹介などの他の手段も考えられる。
一方で、もし疾患の確率が診断閾値を下回った場合、医師は病気が存在しないと考え、その診断を確定するか否かを判断するためのデータ収集を終了する。疾患の確率が診断閾値と治療閾値の間にある限り、治療閾値を上回る(疾患が存在すると仮定する)か,診断閾値を下回る(疾患が存在しないと仮定する)ことにより症例が解決するまで、さらなる診断検査が正当化される。
診断閾値と治療閾値が設定される確率値に影響を与える要因には、疾患の重症度、検査や治療の利点と弊害がある。閾値を計算するための他の形式的なモデルも提案されている。後者は、閾値モデルが臨床医が自分自身の価値観や患者の価値観に合わせて診断を行うのに役立つ場合に適用される。
閾値モデルには直感的な魅力があるが、プライマリ・ケアにおける最近の研究では、特定の仮説の明示的な検証(演繹的検証)は診断エピソードの40%未満でしか行われていないことが示されている。特定の疾患仮説に向けられていない戦略の方が一般的であり、仮説検証よりも診断上の手がかりをより多く得ることができる。すべての診療において、疾患の確率が2つの閾値のうち1つの閾値を超えて意思決定に至るとは限らない。急性・重篤な疾患が除外された後、臨床医は待機的戦略(watchful waiting)を用いる。最後に、閾値モデルは医師に焦点を当てたもので、この見解では患者は完全に受動的な立場である。この見解は、患者が臨床決断(診断)に積極的に参加していることを示す実証的研究と矛盾している。

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臨床問題空間(Clinical problem space)の環境特性
閾値アプローチでは、臨床的確率空間は明確に境界があり、ほとんどが特定可能な疾患で埋め尽くされていると仮定する。しかし、この仮定はプライマリ・ケアにおいては当てはまらない。例えば、胸痛を呈する患者でも、急性冠症候群を有する患者は1.5%から3.5%に過ぎない。肺塞栓症、解離性大動脈瘤、その他多くの生命を脅かす疾患は、プライマリ・ケアでは定量化することすらできないほど稀である。言い換えれば、閾値モデルを真面目に考えれば、ほとんどの重篤な疾患は診察の最初に除外すべきだと考えるだろう。
エビデンスに基づく医学の共通の考え方は、病気を除外するためには、感度の高い検査が好ましいということである(略語で「snout」)。しかし、低有病率の環境では、検査後に疾患が存在する可能性、つまり疾患の陰性予測値は常に小さい。感度の高い検査でさえ、この低い確率を有効に修正することはできない。例えば、プライマリケアで胸痛を呈する患者では、急性冠症候群の有病率は約2.5%である。患者がかなり若く(女性であれば65歳以下、男性であれば55歳以下)、胸の圧迫感や絞扼感を感じない場合、その確率は0.26%に低下する。しかし、冠動脈疾患が判明していたり、緊急の往診依頼があったりするような陽性所見がある場合には、診断閾値を超えて臨床的に有意な42%まで上昇する。言い換えれば、有病率が低い場合には、感度の高い検査は多くの場合役に立たないということである。
この状況は、診断プロセスの開始時に疾患の確率が診断閾値以上で治療閾値以下であるという閾値モデルの暗黙の仮定と矛盾している。そもそもプライマリ・ケア医はどのようにして最初から診断閾値以上の疾患の確率に到達するのだろうか?
医師は多くの潜在的に重篤な状態を除外しなければならないため、その課題はさらに大きくなる。さらに、プライマリ・ケアではほとんどの症状が曖昧であり、たとえ関連が薄くても、いくつかの異なる説明が可能である。最後に、多くの臨床的に重要な健康問題は、従来の疾患分類では捉えられない。

空間の探索
特に患者との出会いの初期段階において医師が実際に行っていることについては、このように新たな記述が必要となる。医師がまずこの拡大した問題空間を探索し、ここで患者が主導的役割を担っているというモデルを提案する。

帰納的渉猟(inductive foraging)と誘発されるルーチン(triggered routines)
282件のプライマリケア診察と163件の診断エピソードを分析した結果、特定の仮説を立てる前に、帰納的渉猟(inductive foraging)と呼ばれるプロセスがあることが明らかになった。このプロセスは、患者が自分の症状を説明するように患者に最初に促すものである。通常、それは患者が現在の訴えとして記録されていることを述べることをはるかに超えたものである。患者は自発的に更なる症状や機能的な関連性、そして多くの場合、自分自身の説明や懸念事項についても言及する。もし患者が干渉することなくそうすることが許されるならば、患者は臨床医を症状や問題点に誘導し、問題空間の探索を提供することになる。
いくつかの例を挙げると、疲労感があり気分が落ち込んでいる63歳の男性が、最近シャツのボタンを留めるのに苦労していることを話してくれ、初期のパーキンソン病のヒントを与えてくれる。67歳の定年退職した配管工の男性が、最近頻繁に咳をしていると報告する。喀痰検査をオーダーするかどうかを考えていると、彼が定期的に地元の吹奏楽団でチューバを演奏していることに言及しているのを聞き逃すところだったことに気付き、医師は彼の肺機能が問題ないと安心する。
ほぼ無限の確率空間を背景にして、医師が直接質問をして、ほとんどがクローズドエンドな質問をすることは、ジェネラリストの設定では現実的ではない。一旦患者の話が遮られると、患者は通常受動的なモードに切り替わり、医師が思いつく問題に関連した質問にのみ答えるようになる。このような早期閉鎖の後では、重要で予想外のポイントが見落とされることは明らかである。この結果は、薬物誘発性頭痛についての紹介例を見れば明らかである。あの若い医師が薬物の有害事象という仮説に自力でたどり着く可能性は低く、たどり着くとしたら長い質問とあれこれ悩んだ後にのみ到着したであろう。患者に病像を話すのに十分な時間を最初に確保し、積極的傾聴により患者の話を促すことは、患者にとって親身というだけでなく、診断を豊かにし診察の効果性を高めることにもつながる。
患者の助けを得て問題空間が定義された後に、医師はその限られた領域を直接的な質問によって探索する。しかし、この探索は特定の仮説に従うものではなく、このプロセスを誘発されるルーチン(triggered routines)と呼ぶ(図2)。例えば、嘔吐を訴える患者は腹痛と排便について尋ねる。冒頭の若い医師が患者に頭痛の性状について質問するのは別の一例である。帰納的渉猟と誘発されるルーチンは、明確な仮説を必要としない。仮説をあまりに早期に検証するのは、重要な情報が失われる可能性があるため、ともすれば有害である。以前の調査で示されているように、これらの探索的戦略は十分な情報が得られるため、特定の診断仮説が必要な診療は全体の半分未満だった。この残りの少数派についてのみ、プライマリ・ケア医は、Elsteinらによる独創的に富む研究に端を発する仮説演繹モデルが提唱するような特定の診断仮説によって導かれる追加データを収集する必要がある。

JC今江202007②

診断の仮説演繹モデル
仮説演繹モデルは、医学における診断推論理論として今でも支配的な理論である。このモデルによると、患者との出会った初期の段階で、
医師は可能性のある説明(仮説)がいくつか浮かぶ。これらの仮説に従い、確定または除外を目的としたさらなるデータ収集が行われる。このモデルは、導入された当時は画期的だったが、標準化された模擬患者を評価する一方で、病院勤務医が自らの推論を省察する様子(思考発話)を観察することに基づいていた。しかし、このセッティングでは、実際のプライマリ・ケア患者よりも特定の仮説を想起する可能性が高くなる。というのもプライマリ・ケアでは患者の症状を生物医学的枠組みの範疇で十分に説明できないことが多いのである。

確証バイアスか、合理的反証戦略か
臨床推論の誤りに関する文献では、診断エラーの原因として確証バイアスが頻繁に言及されている。このバイアスの影響を受けると、医師は自分が抱いている仮説を確かなものとする情報のみを探し集め、矛盾する結果を無視してしまうことになる。ただし、広い問題空間を探索する必要がある場合は、疾患の存在を示す証拠に注目するという本来なら批判される行為こそが理にかなった戦略になる。

上記で示唆したように、プライマリ・ケア診断は、深刻な状態を除外できるという前提から始まる。診療の間に、この仮定をもとに、特定の疾患が存在する場合、さらなる検査につながることを示唆する所見を探索することにより、極めて重要な検査が行われ、もし所見があればさらに追及する。言い換えれば、医師は反証戦略を用いて、上記の通り問題空間を探索する。この早期段階では、陰性所見の確認に労力を使うことはない。なぜなら、陰性所見がもたらす情報はあまりないからである。したがって、疾患の有病率が低い限り、医師は示唆的な陽性所見を探求するのは至極当然のことである。特定の診断の可能性がその方向を指し示す所見によってその疾患の可能性が高くなってからでなければ陰性所見は意味をなさない。

このプロセスでは、医師は特定の疾患と病理学的所見(症状、徴候、検査異常など)が50%よりもはるかに少ない頻度で発生するという事実を利用する。疾患が存在しないという当初の仮説に反して、医師は特定の疾患を示唆する所見を求めて問題空間を探索する。この段階では特異性の高い診断基準が特に役立つのは明らかである。もしそのような診断基準が満たされている場合、高い確率で疾患が存在することになる。このような基準が存在するからといって、ほかの特定の病気にも特異的であることを必ずしも意味しない。プライマリ・ケア医は、多数の病気を管理しやすいように疾患をグループ化する(例:「厄介な難解なウイルス」というように)。所見があることで探索を深める価値のある領域がわかるなら、その所見は有用である。呼吸器感染症の患者が呼吸困難の症状に言及していると、良性で自然治癒する疾患だろうという第一印象を翻して、新しい探索が行われるだろう。こうして狭まった問題空間には、肺炎、閉塞性肺疾患、またはうっ血性心不全が含まれる場合がある。「レッドフラッグ」の概念は、特定の仮説を必ずしも念頭に置かずに問題空間を探索するという考え方に近い。何かが合わない、何かがおかしいという奇妙な印象も同様に役立つ。

患者の関与を必要とする適応戦略
特定の兆候が仮に複数なかったとしても、関連疾患が十分除外できるわけではなく、そのためには問題空間の帰納的かつ協調的に徹底して探索することによってのみ除外できる(図2)。そのためには、堂々といつもと違うことや、心配していることをすべて話すだけの、またはその両方のすべてのことに言及するのに十分な時間と動機が患者にあることが不可欠ある。威圧的な態度で業務をしていたり、帰納的渉猟で患者の治療を早期で遮断したりする医師は望みが薄い。薬物誘発性頭痛の導入例が示すように、そのような医師は症状を説明できるあらゆる仮説の想起と関連情報の収集をすべて自分で行わなくてはならないため、重要な所見や仮説がどうしても見逃されてしまう。したがって、診断プロセスの精度は、臨床医と患者の関係の質に大きく依存する。ここで述べた最初の病歴聴取と診察のアプローチは、画像検査や侵襲的検査などにおけるshared decision makingにも活用できる可能性がある。

人間は、自分の認知戦略をおかれている環境と手を付けている業務に適応させる。Elsteinらの独創的な研究に参加していた医師は、演者が演じた症例や紙に記載された事例が明確な正解があるものと考えていたに違いない。実際にはそうではなく、医師は潜在的に無限の問題空間の別の課題に直面し、患者の所見も多様かつ曖昧で、医学的に説明がつかないことが多い。問題空間が十分狭くなったものの関連情報がまだ見つかっていない段階になって初めて、医師は戦略を仮説演繹法に切り替える。

上記の現象学は、医学的診断に関連するほかのプロセス(直観、経験則、パターン認識)を除外するものではない。医師が適切な症状および徴候をすべて把握しているときに有効に働く。帰納的渉猟は、不適当な結論に勇んでたどり着いてしまうことを防ぐことができる。

患者と医師が協働して問題空間を探索することが、プライマリ・ケアの診断プロセスの現象学を描写するのに最も適当である(図3は、関連する戦術と潜在的なピットフォールを示している)。この協働的探索のモデルは、以前に定式化された理論、特に閾値モデルと仮説演繹モデルに対しての批判に応えるものである。関連データの大半はプライマリ・ケアから得られたものだが、このモデルは複数の疾患が関心の対象となっている臨床セッティングであれば、いかなる場合でも適用できると考えている。

JC今江202007③

Conclusion
患者中心性(patient-centeredness)は、McWhinneyやStewartらによって、優れた家庭医療の本質的な特徴であると説得力を持って主張されてきた。しかしながら、患者中心性は一般的に適応されているとは言い難く、傾聴の失敗は臨床医に対する最も多い批判の一つである。効果的な関係を築くことと診断を行うことは別のスキルと思われがちであるが、これらは相乗効果があることを強調したい。診断の効率化は、患者の貢献なしには非常に難しい。

プライマリ・ケアにおける診断プロセスに関するキーメッセージ
・ジェネラリストの診療では、起こりうる問題(診断)の問題空間はほぼ無限大である。
・最近の研究では、すでに確立された他の方法論では、臨床医が診断に到達するために何をするかを十分に把握できていないことが示唆されている。
・inductive foragingとtriggered routinesによる問題空間の探索は、ジェネラリストの診療に適応できる診断戦略として浮上してきている。
・患者はこの共同作業の中で主導的な役割を担っている。

【開催日】2020年7月22日(水)

決断の共有(shared decision making)を教えること

-文献名-
Guylène Thériault. et al. Teaching shared decision making. Canadian Family Physician. 17 JULY 2019;vol.65: 514−516.

-要約-
(Introductionに準じた部分)
医療の目標は患者さんの転機を改善することで、それには患者中心のケアを提供する能力を学習者に育成することが重要である。
決断の共有とは、「臨床医と患者が意思決定の課題に直面したときに利用可能な最善のエビデンスを共有し、情報に基づいた好みを達成するために選択肢を検討するよう患者を支援するアプローチ」である。
患者の価値と好みを引き出し、有意義な方法で情報を共有する能力を習得することが重要である。特に、利益と害のバランスが取れている場合は重要である。
エビデンスとベストプラクティスヘルスケアの他の分野と同様に、SDMを教える際、医師は知識、態度、スキルに注意を払う必要がある。多くの場合、焦点はスキルにあるが、他も重要である。
教育は、SDMの目標と原則に関する知識を養う必要がある。一部の学習者は、SDMを認識せず、最終的にすべての決定を下す必要があるかのように練習する。
これは、ケアのいくつかの側面(例:緊急の状況)には当てはまるかもしれないが、ケアの他の多くの側面にはSDMが関係するはずである。
SDMを教える最良の方法はない。SDMに必要な中核となる能力には、リスクコミュニケーションのスキル、患者の好みの引き出し、患者の価値の明確化が含まれる。
SDMに対する既知の障壁の1つは、患者が私に決定してほしいのではないかという信念である。これに対処するには、医師(教育者)は患者の自己決定を取り巻く問題を定期的に学習者と話し合う必要がある。
これは、任意のトピックに関するプレゼンテーションに埋め込むことができる。
たとえば、糖尿病患者の調査と治療をレビューした後、簡単な臨床ケースを提供し、学習者に計画を提供するよう依頼することができる。
その後、学習者に徐々にこの患者の生活の特定の側面を認識させる(たとえば、妻は緩和ケアを受けている、患者は仕事を失ったばかりなど)。
その後、新しい情報に照らして証拠がどのように見えるかを生徒に考えてもらう。最終的な目標は、学生が意思決定における患者の価値と好みの重要性を認識することである(Box 1)。

Box 1(概要)
最後に… だから、あなたは私たちが糖尿病患者に提供できるさまざまな薬について学びましたが… 
聞いて… 薬の選択を後押しするのは何だと思いますか? 
学習者は次の点を指摘するかもしれない。そうでない場合は、必ずそれらについて話うように。
有効性の証拠、薬物の適用範囲またはアクセシビリティの他の側面、価値と好み

JC黒木201909

もう1つの障壁は、SDMに時間がかかること。実際、コンサルテーションの長さに対する効果の中央値は2.5分。
ロールプレイは、学習者が必要なスキルを開発するのに役立つという点で、SDMを教える上で非常に興味深く、形成的である。
ロールプレイのシナリオを使用する場合は、学習者に相互作用が有意義であり、ディスカッションの時間をためらうことなく、それほど長くないことを認識させてください。
決断の共有には、さまざまな手順が含まれる(Box 2)。教材として、一部の教師は学習者が携帯できるリマインダーカードを使用している。
他の人はこれらの手順を使用して、構造化されたフィードバックを提供している。

Box 2. 決断の共有の手順
1. 決定する必要があることを認める。
2. オプションと代替案を提示する。
 • フレーミング効果の回避* • 独自の価値観を適用しない•適切な意思決定支援ツールを使用する
3. 各オプションの潜在的なリスクと潜在的な利点について話し合う。
 • 潜在的な利益のために同様の分母を使用し、潜在的な害
 • 自然数を使用します(たとえば、1%の代わりに100人に1人)
4. その情報に照らして患者の価値と好みを話し合う
5. 患者の日常生活と目標における、さまざまなオプションの効果について話し合う
6. 患者が(意向を)反映するのを助けるために必要とされる、特定の問題に関する情報を提供する
7. 患者の懸念を確認し、理解を明確にする
8. 計画を立て、必要に応じてフォローアップを整理する
注)フレーミング効果とは、複数の選択肢から意志決定や判断をする際に、絶対的評価ではなく、そのときの心的構成
(フレーミング)や質問提示のされ方によって、意志決定が異なる現象のこと。
*フレーミングには、さまざまな代替手段の価値または利益と損害の認識に影響を与える可能性のある方法で情報を提示することが含まれる。

結論
意思決定を共有することは、教えることのできるスキルである。それが実践に統合されるためには、それは、単独の
カリキュラムではなく、すべての教育の重要な部分である必要がある。 他のトピックと同様に、多様式のアクティビテ
ィを使用すると、学習の効率が向上する可能性がある。 Box 3には、可能な活動に関するさまざまなアイデアがリストさ
れている。

Box 3. SDMを教えるための具体的な活動(概要)
ロールプレイ 
・どの質問がより有用であったか、それはなぜかを熟考する
・私たち自身の価値を反映していないかもしれない、次の決定を受け入れることの難しさについて話し合う
  学習者に会話ツールまたは意思決定支援ツールを作成してもらう
  フレーミング効果について議論する
• 情報を提示するさまざまな方法(割合、治療に必要な数、相対リスクなど)で学習者を考えさせ、内省を促進するビデオを使用する
SDMの手順を構造化された方法で使用してフィードバックを提供する
• これらの手順を毎日または毎週の学習者のフィードバックフォームに埋め込みます
 正式な教育に取り組む
•多くの(ほとんどではないにしても)講義の最後に、患者に意味するかもしれないことについてのいくつかの考察を含めることを目指す

JC黒木2019092

【開催日】2019年9月11日(水)

予診票にQOLに関する質問を加えても患者中心のケアは促進されない

-文献名-
Becky A. Purkaple, et al. Encouraging Patient-Centered Care by Including Quality-of-Life Questions on Pre-Encounter Forms. Ann Fam Med. 2016; 14: 221-226.

-この文献を選んだ背景-
 当院では看護師のトリアージや診察時間の短縮を狙い発熱で受診する患者のみを対象に予診票を利用している。内容は医学的な項目のみであるが、患者中心の医療におけるillnessを含めると診察時間の短縮に繋がるだろうか?専攻医のillness聴取の動機づけになるだろうか?などと考えたことがあった。
定期的に目次を眺める本雑誌においてそういった疑問に答える論文に出会ったため、読んだ。

-要約-
【目的】
 臨床における意志決定に患者が参加することはQOLをはじめとしたアウトカムを改善するが、典型的な問題解決志向のアプローチはそのようなケアの目標を考慮することの妨げになる。患者が予診票にQOLに関するケアの目標を記入することによりプライマリ・ケア医がそういった目標に注意を払うようになるか調査することを目的として研究を行った。

【方法】
 大学の家庭医療科の診察において異なる2つの予診票を使用し、その影響を比較するランダム化比較試験を行った。研究者を盲検化しランダム化を行い、8人の指導医と8人の専攻医がそれぞれ介入群予診票による診察を2回、コントロール群予診票による診察を2回、ビデオ撮影。合計64症例を解析した。介入群予診票にはQOLに関するケアの目標や訴えを聞く質問が含まれ(Table2)、コントロール群予診票は症状についてのみ訪ねるものであった。撮影されたビデオは診察中に患者のQOLに関するケアの目標について言及されたか、意志決定の歳に考慮されたかをチェックされた。患者と医師のコミュニケーションを評価・コード化するModified Flanders Interaction Analysis(Table1)、共感や参加,調和,敬意を測定するModified Carkhuff-Truax Scaleを用いてそれぞれの診察をスコア化することも行った。
山田先生図

【結果】
 患者はQOLに関するケアの目標や訴えを記述することができたが、64の診察中2つの診察でしかQOLに関する項目は言及されなかった。1例は患者側から、1例は医師側からである。どちらのケースにおいてもその情報が意志決定に反映されなかった。コントロール群予診票による診察の方が寄り医師側の共感が表出された(P=0.03)。

【結論】
 患者は紙面でQOLに関するケアの目標を表現することが出来たが、診察の過程や内容に変化させるよう患者自身または医師を動機づけとはなかった。それどころか、QOLに関する情報が与えられることにより患者の共感が減じられてしまった。

-考察とディスカッション-
 文献の考察によると予診票を診療に用いることがアウトカムの改善に繋がることは過去のエビデンスが示しており、この研究では従来型の診療に慣れている医師が予診票に記載されたQOLに関する情報の利用の仕方に慣れていないことがこのような結果となった要因の1つと分析されていた。
 ・皆さんのサイトでは予診票を使用していますか?それは何を目的としてどんなものを使用していますか?
 ・PCCMの要素を予診票に取り入れるとしたらどのような目的で、どんな内容の予診票をつくったら良いでしょうか?

【開催日】
 2016年8月24日(水)

日本のホスピス利用者における健康・病いの信念体系としての「体力」

―要約―
Ikumi Okamoto. Tairyoku as a belief system of health and illness: a study of cancer patients in Japan. Anthropology & Medicine. December, 2008, Vol.15, No.3, 239-249

―要約―
【背景】(※担当者要約)
筆者のホスピスにおけるフィールドワーク中の観察内容がきっかけになっている。ホスピス利用者はしばしば「体力」をつけるための活動を行ったり、「体力」という概念をもとに治療の意思決定をしているが、ホスピススタッフは必ずしもそれを理解・評価していないこともある。ホスピスでは、まず死が避けられないことを受け入れるからこそ残された時間を可能な限り意義深く送ることができるという「哲学」があり、実際に死を受け入れられるような働きかけが行われる。しかし、患者は必ずしもそのような哲学通りの生き方をしてはおらず、癌を治すような試みも自主的に行っている場面が見られる。
この研究では、日本のホスピスという文脈における「体力」の概念を明らかにして、死を目前にした患者の中ではどのように用いられているのかを探索し、更にはこの「体力」という概念を用いて、ホスピスにおけるスタッフと患者の治療に対する意見の違いに対する理解を深めることを目指す。

【方法】
・参与観察;札幌にある28床のホスピス、1999-2000年に11ヶ月実施し、89人の患者を観察した。データは、1. PCUの外来・回診・病状説明の場面への参加、2. 患者・家族・スタッフとの対話、3. 患者記録の検証 から集めた。

【「体力」の概念】
・辞書的には体力は、「防衛体力」と「行動体力」の二つの意味があるが、ホスピスの文脈では殆どが、前者の意味で使われる。
・「体力」は、中国語で言う「気」と非常に近い意味で使われている。
・患者の語りからは、「体力」は相互に密接に関連する4つの要素すなわち、gentle exercise、nutrition、rest、calm state of mindの影響を受けることが伺われる。この4要素の釣り合いが「体力」の維持に重要であると考えられている。これは過去の研究で指摘されている、日本的な健康・病気に対する考え方、「体のそれぞれの部分は全て相互に関係しており、さらに社会的・物理的環境の影響を受ける」を支持する概念とも言える。

【体の状態を知る目安としての「体力」】
・患者・家族は、体の状態を測る際に、体力の概念をしばしば用いる。より体力がある場合、より良い・強い状態だと感じるし、治療を受けることを選択する。
・また、医学的治療を選択する際には、短期的な体への影響や効果よりも長期的な体力への影響の方が重視される。

【治癒力としての「体力」】
・多くの患者が、体力があると治癒力があると考えており、治療不可能な癌があると知っていてもそれを伺わせる発言が多くある。体力は、何か内なるものと考えられており、癌が内臓まで至っていなければ体力への影響は小さく、食べることで体力を蓄えられると考えられている。
・上述の4要素のうち、栄養は最も重視されているようで、それは患者が、食事をとることが直接エネルギーを得るため、体力を蓄えるために最も効果的な方法だと捉えているからのようである。

【医学的介入による「体力」の向上】
・体力の低下は患者にとってはすなわち迫った死を意味するため、脅威である。患者・家族ははじめは非医学的な方法で体力を得ようとするが、手を尽くしてもうまくいかないとわかると体力を増やすための医学的支援を得ようとする。(末期がん患者がTPNで体重を保とうとする事例、意識がない患者の症状の原因が癌による多臓器不全よりむしろ食べられなくなったことと捉えていると推察される家族の事例の記述あり)

【「体力」と西洋医学】
・患者は西洋医学的治療は体力を消費し、病気(癌)と戦うための積極的な方法と捉えており、急性期で最も有効で、漢方などの代替医療は体力を温存し、健康を保つための回復的方法で健康促進で最も有用と捉えている。日本人は急激で重症な病状に対しては、迅速で悪い所に焦点を当てた治療を行うことで全体のバランスを取り戻すという考え方を持つことで、健康に対する「holistic」な考え方と西洋医学が整合性を持って存在している可能性がある。

【医療職の「体力」の概念に対するスタンス】
・ホスピスのスタッフは、患者が持っている体力の治癒的意味についてあまり好意的ではない。これは恐らくは、こうした患者・家族の振る舞いは現代医学では認められず、ホスピスは患者が癌と戦う場所ではないからであろう。またホスピススタッフにとってはホスピスに入所した患者は避けられない死を受け入れることが最初の優先事項となる。

【緩和ケアにおける「体力」の役割】
・こうしたホスピススタッフの意図に反して、ホスピスに入所した患者は快適さと鎮痛を得るため、状態が改善したと感じ、体力を蓄えるための行動に出ることがある。
・これはホスピススタッフの意図とは反しているが、この「体力」についての患者の物語は、死を受け入れる中で重要な役割を持っていると言える。つまり、様々な努力をしても体力が減っていく事実が人生の終末期を実感させるため、「体力」の物語はホスピス入所から死を完全に意識する状況までの橋渡しをしていると考えられ、「体力」の概念は患者が疾患の進行と死が迫ることに納得することを助けているのである。
・よって、体力を蓄えることに繋がる(と患者・家族が見なす)西洋医学的な介入はホスピススタッフからは無意味に思えても、患者・家族にとっては重要と言える。更に、患者・家族が体力をモニターできることは、患者の自律性を保つために重要である。「体力」という概念は、患者が自分らしく生きることの援助になっていると見なすことができる。

【開催日】
2014年12月17日(水)

検査が陰性でも患者は安心しない

―文献名―
Diagnostic testing does not reassure patients with low probability of serious disease. Systematic Review and Meta-analysis JAMA Intern Med. 2013;173(6):407-416

―この文献を選んだ背景―
 「頭痛なので脳腫瘍が心配」「咳が出るので肺癌が心配」などに代表される、臨床的に事前確率が低い状況における、重篤な疾患への懸念は医師が最も頻繁に経験するillnessのひとつであろう。研修医時代は検査で陰性を確認しても、時間が経つと同じ不安で受診する患者に閉口していた覚えがあるが、家庭医として研鑽を積むにつれ、患者のIllnessを深く理解する術を知ることで検査を行う以外のオプションで安心して頂いたり、対応する幅も広がっているが、その一方で検査をすれば簡単に解決するケースもあるのではないかという疑問があった。今回はそうした疑問に答えるタイトルのメタアナリシスを見つけたため、共有したい。

―要約―
【背景と目的】
臨床医は、とある疾患の事前確率が低い状況でも、しばしばその疾患を除外して患者を安心させるために診断的検査を実施する。
そうした診断的検査が、重篤な疾患の事前確率が低い状況にある患者の疾患への懸念や、不安、症状の持続、その後の医療機関・医療資源の利用にどのような影響を与えるのかを調査した。

【エビデンスの調査方法】
システマティック・レビューとメタアナリシスを行った。目的に見合ったランダム化比較試験を探すために、MEDLINE, the Cochrane Central Register of Controlled Trials, EMBASE, PsychINFO, CINAHL, and ProQuest Dissertations electronic databasesを2011年12月31日分まで調査した。我々は別々に、研究を検索し、データを抽出した。(研究者間の)不一致があった場合は、議論によって解決した。Heterogeneityが低いあるいは中等度の場合(つまり、カイ二乗検定が50%以下)は、メタアナリシスを行った。

【結果】
14のRCTが見つかり、3828人の患者が参入基準に当てはまり、アウトカムを分析した。アウトカムは3ヶ月以内と3ヶ月以上に分けて分析した。3つの研究から、診断的検査は、疾患への懸念に影響がない(改善しない)ことが3つの研究から分かり(OR 0.87 95%CI, 0.55-1.39))、更に非特異的な不安への影響もないことが二つの研究から示された(standardized mean difference, 0.06 [-0.16 to 0.28])。10の研究から、症状の持続にも影響がないことがわかった(odds ratio, 0.99 [95% CI, 0.85-1.15])。11の研究がその後のプライマリケアの受診を評価していたが、研究間の異質性が高かった(I^2=80%)。外れ値である研究を取り除いて行ったメタアナリシスからは、わずかに受診回数が減ることが示唆された。

【結語】
重篤な疾患の事前確率が低い状況での診断的検査はその後の受診を減らす可能性はあるが、殆ど患者を安心させず、不安も解消せず、彼らの症状を改善させないことがわかった。医学的に必要な検査で得られる安心を最大限にし、検査で異常がある可能性が低い時に、検査をせずに患者をマネジメントする安全な戦略を開発するためには、更なる研究が必要である。

―考察とディスカッション―
「単純に患者の希望で検査をして陰性を伝えても、患者は結局安心しない」という自分の経験則に合致する研究結果であったが、それ以上に著者の考察は興味ぶかかった。

(考察より要約して引用)
 心理学的には、安心には①感情的な安心と②認知の変化による安心があり、前者は短期的な安心を作るが、長くはもたないため、長期的な安心を得るためには②が必要であると言われている。単純に検査を行い、その陰性を伝えるだけのアプローチは感情的な安心しか与えていないことになる。実際に、検査の陰性を伝えるだけでは数時間で患者の不安は再度出現するという結果を示した研究もある。長期的な症状に対する安心を患者に得てもらうためには、症状に対する患者の認知の枠組みそのものを変えていく必要があり、実際に検査結果が陰性であることの意味付けを患者により受け入れてもらうための心理的介入を追加することで、患者の安心が増したという研究も複数存在するとのことであった。(ここまで)

 つまり、著者は検査を行うか、行わないかだけでなく、行った時に、陰性の結果を患者の中で適切に意味付けしてもらうことが重要だと述べている。
 家庭医が日々の医療面接で用いているPatient centered clinical methodは、患者の症状への認知の構造をillnessという形で引き出し、検査が持つ意味を患者と共有するアプローチだが、これは言い換えれば、患者の症状に対する認知の枠組みを確認し、検査が陰性だった時に患者の認知の枠組みの変化を促すことに当てはまる。まさに、上記の②にあたる、認知の変化に基づく安心を促すために有用な手段の一つであると考えられる。
 「○●が心配なので検査してほしい」という患者、皆さんはどうアプローチしているでしょうか?

【開催日】
2014年6月11日(水)

第三版Patient-Centered Medicineのまとめ 臨床技法、教育、チームワークのPCM、その研究結果

―文献名―
Stewart, Brown, Weston, Mcwhinney. Patient-Centered Medicine Transforming the Clinical Method. Radcliffe Medical Press(2014)

―要約―
PCM第3版のまとめ~2版からの変更点~
1. コンポーネントが6つから4つに
「予防と健康増進」「現実的になる」の2つがなくなり、別のコンポーネントや章に組み直された。
またコンポーネント4「医師患者関係を深める」では”信頼””癒しと希望””自己認識の実践知”について加筆されている。

2. 第1のコンポーネントに”Health”の探索が加わった
DiseaseとIllnessの探索にHealthが加わった。
健康観や人生の意味を尋ねることの重要性がCassellの知見を基に大幅に加筆されている。

3. 第2版でのコンポーネント4「予防と健康増進」がコンポーネント1と3に組みいれられた
健康増進と疾病予防は”Health”の探索と同時に行い、その価値や信念について尋ねるプロセスとしてコンポーネント1に、また実際にそれをAgendaとして扱うプロセスはコンポーネント3にそれぞれ組みいれられた。

4. PCMの教育についてアップデートされつつ、カリキュラム作成についての章が消えた
チームワークの教え方やケースを使った教育、FeedbackのSNAPPSの枠組みなど加筆されている。

5. 第2版でのコンポーネント6「現実的になる」のTeamのところが新たな章『ヘルスケアのコンテクストと患者中心のケア』として昇格
新たな章:Part 4『The Health Care Context and Patient-Centered Care』としてTeam-Centered ApproachとHealth Care Costが加わった。
Teamの所では、患者中心の医療を実践するためにPCMの臨床と教育を並行して進めることは過去の方法で、新たにチームの機能を強調し、臨床・教育と同様のモデルでチーム医療について記述している。

6. PCM研究で具体的なPCMのエビデンスの集積が記載されている
これまでの研究結果から、ケアのプロセス、医療者の行動、患者のアドヒアランス、健康の質そのものの改善が詳述されている。

―考察とディスカッション―
後期研修目標の議論で中心として扱ったコンポーネント1.2.3.5がそのまま新しいコンポーネントになっていることは今までのHCFMの実践と教育と一致しており心強く感じた。

PCMの4つのコンポーネントが教育のみならずチームにも適応され、臨床と教育の2つを並行して扱うのみならず、臨床と教育とチームワークという3つを並行して扱うという書籍の構成は、ORSCなどでHCFMが扱っているテーマ・課題と一致しており今後の取り組みへのヒントになると感じた。

また教育面のアップデートについても後期研修会議などで指導医で共有し、今後のレジデンシー教育に反映していきたい。

【開催日】
2014年5月7日(水)

The effect of shared decision making on the screening of PSA

― Literature ―
 Paul K.J, et al. National Evidence on the Use of Shared Decision Making in Prostate-Specific Antigen Screening. Ann Fam Med July/August 2013 vol. 11 no. 4 306-314.

― Context for selection ―
 In our fellowship and residency of family medicine, we teach shared decision making in the most important of component 3 in PCCM and evaluate it through video review. We know some evidence about the impact of shared decision making on many health indexes. But more evidences are needed in the world of family medicine to explain its importance to various disciplines of medicine. This article attracted me so much.

― Summary ―
 PURPOSE Recent clinical practice guidelines on prostate cancer screening using the prostate-specific antigen (PSA) test (PSA screening) have recommended that clinicians practice shared decision making–a process involving clinician-patient discussion of the pros, cons, and uncertainties of screening. We undertook a study to determine the prevalence of shared decision making in both PSA screening and nonscreening, as well as patient characteristics associated with shared decision making.

METHODS A nationally representative sample of 3,427 men aged 50 to 74 years participating in the 2010 National Health Interview Survey responded to questions on the extent of shared decision making (past physician-patient discussion of advantages, disadvantages, and scientific uncertainty associated with PSA screening), PSA screening intensity (tests in past 5 years), and sociodemographic and health-related characteristics.

RESULTS Nearly two-thirds (64.3%) of men reported no past physician-patient discussion of advantages, disadvantages, or scientific uncertainty (no shared decision making); 27.8% reported discussion of 1 to 2 elements only (partial shared decision making); 8.0% reported discussion of all 3 elements (full shared decision making). Nearly one-half (44.2%) reported no PSA screening, 27.8% reported low-intensity (less-than-annual) screening, and 25.1% reported high-intensity (nearly annual) screening. Absence of shared decision making was more prevalent in men who were not screened; 88% (95% CI, 86.2%-90.1%) of nonscreened men reported no shared decision making compared with 39% (95% CI, 35.0%-43.3%) of men undergoing high-intensity screening. Extent of shared decision making was associated with black race, Hispanic ethnicity, higher education, health insurance, and physician recommendation. Screening intensity was associated with older age, higher education, usual source of medical care, and physician recommendation, as well as with partial vs. no or full shared decision making.

CONCLUSIONS Most US men report little shared decision making in PSA screening, and the lack of shared decision making is more prevalent in non-screened than in screened men. Screening intensity is greatest with partial shared decision making, and different elements of shared decision making are associated with distinct patient characteristics. Shared decision making needs to be improved in decisions for and against PSA screening.


― Discussion ―
 This article told us some important insights about shared decision making. First of all, shared decision making promotes screening effectively. The second, full shared decision making is associated with both non-screening and screening probably based on patients’ preferences and expectation about preventive care. The third, the definition of shared decision making is not yet established, so, we can explore best definition of shared decision making in future study. 
 It is often stated that the importance of family medicine is comprehensiveness, continuity and community-oriented care. But we cannot dismiss the importance of PCCM, especially component 3 “Finding common ground”. Japanese people have been often said to obey doctors’ opinion without their preference. But this comment gradually mismatches the reality of our practice. They also have their opinion and their preference and acknowledge the role of shared decision making. Don’t you think so? At that time, we can explore the style and role of shared decision making in Japanese medical culture. I am really interested in this theme. Let’s create evidence!

開催日:平成25年7月17日

内服薬に対する患者の期待の影響

【文献名】
著者名:Lisa Dolovich , et al.
文献タイトル: Do patients’ expectations influence their use of medications? Qualitative study. 
雑誌名・書籍名:Canadian Family Physician: Vol 54,
発行年:2008

【この文献を選んだ背景】
We always find a common ground with various patients in daily family medicine. There are many cases discussing a medication, what do you think this new drug start, how do you feel if the dose of this drug increase, doctor I want to reduce this drug if it possible and so on.
Through discussing them, I can catch some kind of patterns about FIFE of a medication and I’d like to know the patterns from medical literature. I picked up a simple designed qualitative study.

【要約】

<OBJECTIVE>
To investigate whether patients’ expectations influence how they take their medications by looking at the expectations patients have of their medications and the factors that affect these expectations.

<DESIGN>
Qualitative study using in-depth interviews and a grounded-theory approach.

<SETTING>
A large city in Ontario.

<PARTICIPANTS> 
A total of 18 community-dwelling adult patients taking medication for at least 6 months.

<METHOD>
Both purposive and convenience sampling techniques were used. The initial strategy comprised stratified, maximum variation, and typical case sampling. The research team developed a semistructured interview guide after a preliminary review of the literature. Individual, face-to-face, in-depth interviews were conducted and audiotaped. At the end of the interviews, basic demographic information was collected. Interviewers were debriefed following each interview and their comments on relevant contextual information, general impressions of the interview, and possible changes to the interview guide were audiotaped. Audiotapes of each interview, including the debriefing, were transcribed verbatim, cleaned, and given a unique identifying number. At least 2 team members participated in analyzing the data using an operational code book that was modified to accommodate emerging themes as analysis continued.

<MAIN FINDINGS> 
Patients’ expectations were more realistic than idealistic. Many participants acted on their expectations by changing their medication regimens on their own or by seeking additional information on their medications. Expectations were affected by patients’ beliefs, past experiences with medications, relationships with their health care providers, other people’s beliefs, and the cost of medication. Patients actively engaged in strategies to confirm or modify their expectations of their medications.

<CONCLUSION>
A range of factors (most notably past experiences with medications and relationships with
health care providers) influenced patients’ expectations of their medications. More comprehensive discussion between patients and their health care providers about these factors could affect whether medications are used optimally.

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【開催日】
2012年4月25日

緩和ケアのアップデート

【文献名】
著者名:Keith M. Swetz, et al.
文献タイトル:In the Clinic: Palliative Care. 
雑誌名・書籍名:Annals of Internal Medicine: page ITC2-2~ITC2-16
発行年:2012.

【要約】

<緩和ケア vs. ホスピス>
緩和ケアとホスピスは関連しているが、はっきりと区別できる緩和医療の形である。これらは同義ではなく、今にも亡くなろうとしている患者のためだけに用意されるべきものではない。緩和ケアは深刻な病気を抱えた患者における症状の管理、QOL、治療の目標を描くことに焦点をあてるが、その一方で、目標が治療であれば、延命やQOL・機能の最大化に焦点を当てる。ホスピスは緩和ケアの特殊な型であり、予後が半年以内の方を対象にしている。重症な患者はすべて、治療目標を明らかにして症状の評価や管理をすべきである。治療目標が不明瞭なままで、症状の管理が難しいようであれば、緩和ケアの専門医への紹介が求められる。

・緩和ケアはホスピスとどのように違うのか?
・患者が緩和ケアを受ける時、どのような治療が禁止または許容されるのか?
・大半の保険によりどのように緩和ケアの費用が支払われ、またホスピスとはどのように違うのか?
・非常に重篤な患者における予後や生存予測にはどのようなツールがあるか?
・緩和ケアチームに不可欠なのは誰か?

<良くある症状の管理>
中等~重度の痛みは、とりわけ癌において、オピオイドで管理するのが最も良い。呼吸困難もまたオピオイドで治療することが効果的である。この両者の状況で、適切にモニターされ、選択され、用量調整されたオピオイドは、呼吸抑制に関しての重大な危険性がなく使用できる。想定される関係した神経伝達物質を個々の状況に合わせたとき、嘔気の治療は最も効果的である。不安は患者にとって解決が難しいものであるが、薬物的治療を開始する前に身体的あるいは非身体的なストレスの引き金になっているものを探索すべきである。終末期の事例におけるせん妄は一般的でかつ悩ましいが、早期に認識してベンゾジアゼピンより精神安定剤で治療すべきである。抑うつは重い病いの正常な部分ではなく、症状が持続するときは精神刺激薬あるいはSSRIでの治療が、たとえ終末期の状況においても求められる。拒食症や悪液質は多因子の神経ホルモンの作用であり、経口摂取を勧める努力は、患者の癒しや楽しみのために、中心静脈や経腸の栄養よりも、特に病気の末期では優先されるべきである。

・痛みはどのように評価し管理されるべきか?
・オピオイドの副作用はどのように管理すべきか?
・特定の原因による痛みにおいてどのような追加処置を考慮すべきか?
・呼吸困難の緩和のためにはどのような治療が効果的か?
・吐き気を訴える患者にどのように制吐剤を選択すべきか?
・興奮や悲嘆をどのように評価し治療すべきか?
・重病患者におけるせん妄の管理はどのようにすべきか?
・うつは重い病いの正常な部分であるのか?そしていつ治療されるべきか?
・重症患者における拒食症の治療について、ケア提供者はいつ、どのようにアプローチすべきか?
・人工栄養や補液は患者の症状を緩和し、生命予後を改善するか?

<コミュニケーション、心理社会的、倫理的な課題>
ケアの目標や病気が進行した時に何を期待するかに関して、早期に、定期的な議論を医師、患者、家族の間で行うことは、重要であり、目標を設定する助けになり、希望を維持するのに役立つ。事前のケア計画や意思決定のための代理人としての潜在的な役割について議論することは重要である。治療の負担がその利益よりも大きくなると気付いたとしたら、その治療を取りやめることは、治療を決して始めないことと道徳的に同等である。

・臨床医は終末期の議論にどのようにアプローチすべきか?
・臨床医は事前指示を含めた、事前のケアの計画をどのように援助することが出来るか?
・生命を維持する治療をさし控えたり、撤回することと安楽死または自殺補助の間にある法的で倫理的な違いは何か?
・緩和的な鎮静は今までにも容認可能であったか?

<患者教育>
・緩和ケアに関して患者とその家族は何を知るべきか?
・緩和ケアに関して議論するには、いつが最も良い機会であるか?

<診療の質の改善>
・緩和ケアの質を評価するために、米国の利害関係者はどのような指標を使用しているか?
The Hospice PEACE set ; http://www.thecarolinascenter.org/default.aspx?pageid=46 
Covering all 8 domains of palliative care quality 
1. Structure and Process of Care
2. Physical Aspects of Care
3. Psychological and Psychiatric Aspects of Care,
4. Social Aspects of Care
5. Spiritual, Religious, and Existential Aspects of Care
6. Cultural Aspects of Care
7. Care of the Imminently Dying Patient
8. Ethical and Legal Aspects of Care
・緩和ケアの提供に関して専門組織は何を推奨しているか?
 The Center to Advance Palliative Care
 The Carolinas Center for Medical Excellence
 The :American College of Pysicians

<ツールキット>
PIER Modules, Patient Information, General Information.

<患者用情報>
・緩和とはどういう意味か?緩和ケアとは何か?
・緩和ケアの専門家は何をするのか?
・緩和ケアはホスピスと同じか?
・緩和ケアが助けになるかも知れない状況

【考察とディスカッション】
In The ClinicはUpToDateやDynamedと同様に、エビデンスに則った症候の総まとめに有用な2次文献資料であると感じた。症状や倫理的な問題への対応については、その他の文献や教科書でも載っている内容であり、目新しいものはないものの、プライマリケアの現場ですぐに使いやすい形でコンパクトにまとめられている印象である。たとえば、末期の胃がんの患者で「いらいら」で悩んだ事例が最近あり、その解決法が「興奮や悲嘆をどのように評価し治療すべきか?」の項目に記載されていて参考になった。このように、Q&A形式で臨床において重要なポイントを取り扱っており、大変勉強になる。(ちなみに皆さんは文献として何を参考に緩和ケア、終末期ケアを行っているでしょうか?)
また、日本語版のイン・ザ・クリニックhttp://www.amazon.co.jp/イン・ザ・クリニック–診療現場ですぐに役立つエビデンス–竹本-毅/dp/4895926958/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1335305467を参照すると、糖尿病、うつ病、心不全などの良く遭遇する臨床状況において、「診断」や「治療」のみならず、「スクリーニングと予防」「患者教育」、「診療の質の改善」、「患者用情報」という項目が、どのテーマでもある程度の共通した項目として挙げられており、今後、患者や家族とそのテーマについて話し合ったり、現在の自分の診療を振り返ったり、診療所でQI活動を行ったりする際に有用である。今回のテーマでいえば、診療の質改善の項目として、the Hospice PEACE set‐参考1)について、NICEのガイドライン‐参考2)と比較しながら診療所で取り組むことも一案である。
特に「診療改善」の項目については取り扱われるテーマによってはNICEよりも簡潔にまとまっているものもあり、各診療所における今後のCQIプロジェクトにおいての助けになると思われる。

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【開催日】
2012年4月25日

WONCA Europeの2011年版の家庭医療の新定義(6年ぶりの改定)

【文献名】

THE EUROPEAN DEFINITION OF GENERAL PRACTICE / FAMILY MEDICINE
WONCA EUROPE 2011 Edition

【背景】

2011年12月号の日経メディカルの葛西先生(福島県立医大)と草場理事長の対談記事で、”欧州各国の家庭医療学会が加盟するWONCA(World Organization of Family Doctors)Europeの家庭医療の定義(2011年改訂版)は「個人、家族、地域を志向する人間中心のアプローチを展開する」「地域の健康への独自の責任を持つ」「患者のエンパワーメントを促進する」など12項目の専門的特徴を掲げています。
これらの専門性は時代の変化に応じて変わってきました。”とあり、2005年と比較して何が変わったのか早速ダウンロードして読みこんでみた。

【要約】

WONCA欧州の定義する家庭医の6つのコアコンピテンシーとそれに付属する家庭医の12の特徴、特徴に合わせた能力は以下のとおりである。
2005年と比較しての変化については下線で記した。

1) Primary Care Management:プライマリケアを提供するためのマネジメント
(a) 全ての健康問題を扱う際に、ヘルスケアシステム中でまず最初に医学的な出会いをする場であり、そのために利用者にとって開かれていて制限を受けないアクセスが提供されている
(b) 協調されたケア、プライマリケアの場での多職種との協働、そして患者が必要とした時に擁護者としての役割として他の職種との仲介を行い、ヘルスケアの資源の効果的な利用を図る

2) Person-centered Care:人間個人を中心としたケア
(a) 患者個人、そしてその家族や地域に基づいて人間個人を中心にしたアプローチを発展させ提供する
(b) 患者の持つ力を強める (2005年には無かった特徴)
家庭医療は患者の持つ潜在的な力や自己管理能力を強めるという目的を促進するための戦略的な立場にある。
長期間のケア、多職種協働での関わり、独特な外来プロセスと信頼に基づいた強固な関係性、人間個人を中心にした医療、
これらは患者の持つ力を強めるための持続的かつ教育的なプロセスの始発点となる。
(c) 医師患者間の効果的なコミュニケーションを通して長期間の関係性を構築するという独特の外来プロセスを持つ
(d) 長期間のケアの継続性のための準備や対策に責任を持つ

3) Specific Problem Solving Skills:家庭医特有の問題への解決スキル
(a) 地域の疾患の有病率や罹患率に基づいた臨床推論と意思決定を行う
(b) 疾患の初期の未分化な状態にも対応する

4) Comprehensive Approach:包括的なアプローチ
(a) 患者個人の急性と慢性の健康問題に同時に対応する
(b) 適切かつ効果的な関わりによって健康と福利(幸福と利益)の両方を促進する

5) Community Orientation:地域志向
(a) 地域の健康に対する特有の責任を持つ

6) Holistic Modeling: 全体論的な表現の実践
(a) 健康問題は身体的・精神的・社会的・文化的・実存的な多次元の中で扱われる
2005年ではHolistic Approachであったが、2011年ではHolistic Modelingと変更(図のみ)

これに加えて、上記の能力を教育したり学んだり、また家庭医療の実践の中で発揮するための家庭医の三つのアプリケーション機能が示されれている

1. 背景的側面:医師自身やその職業的な環境という背景についての理解
-勤務している地域への影響について理解する
-患者へのケアの仕事量とそのケアを役立てるための医療機関に対する仕事量の全体の影響に気づく
-臨床で必要な経済的・法的なフレームワークについて理解する
-医師の個人住宅や職場環境が提供するケアに及ぼす影響について理解する

2. 態度的側面:医師のプロフェッショナルとしての能力、価値観、感情や倫理観に基づく
-自身の能力や価値観について気付く
-自身について気付く
-個人的な倫理観を正しくし、明確にする
-仕事とプライベートの相互の影響に気づき、それらの良いバランスを取ろうと努力する

3. 科学的側面:批判的かつ研究を基盤としたアプローチに適用する。それは生涯学習と質改善を通して実践し維持する
-科学的研究の一般原理、方法論概念、基本的戦略についてたしなむ
-病理学、症候論、治療学、臨床疫学、意思決定理論、仮説形成・問題解決の理論や予防医学についての知識を持つ
-医学情報を読み批判的に吟味するためのアクセスを容易にしておく
-生涯学習と質改善の力を発展させ維持する

【開催日】
2012年2月29日