Clinical Prediction Rules その特徴・弱点は?

【文献名】

Gavin Falk, clinical research fellow, Tom Fahey, professor of general practice.
Diagnosis in General Practice: Clinical prediction rules BMJ 2009;339:(Published 7 August 2009) 

【要約】

<Clinical Prediction Ruleとは何か?>

Clinical Prediction Ruleは、症状・徴候・診断的検査を組み合わせて点数化し、その結果から、対象となる疾患を持つ可能性に応じて、患者を層別化する。その際に注目されるアウトカムは多種多様で、診断・予後・治療全般に用いられる。



Clinical Prediction Ruleは一般的に臨床応用されるまでに3つの段階を踏む。

①ルールの開発;探索的因子(症状・徴候・診断的検査)の単独もしくは組み合わせでの影響を確認する段階。

②より狭いまたは広い範囲での妥当性確認;異なる集団での妥当性を調査する段階
③Impact analysis;RCTを用いてClinical Prediction Ruleが患者アウトカム・臨床家の行動・資源利用などに与える影響を調べる段階。例としては、CAGE questionnaireが挙げられる。



<どんな時に用いられるか?>
最もよく用いられるのは、疾患の存在する可能性をより洗練して見積もる段階においてである(下記Fig1参照)。適応するためには、ベイズの定理(事前確率を見積もり、尤度比から事後確率を導き出す)の考え方が必要である。例えばプライマリケアセッティングでは、疾患の除外を行ったり、注意深い経過観察が適切と考えるための根拠がほしい場面が多い。そのような状況では、感度が高く、NPV(陰性適中率)が低いRuleが適切である。
(Bayesの定理においてClinical Prediction Ruleを組み合わせた具体的な利用例がノモグラム併記で原文にあります。ご参照ください。)



<どんな時に誤りが起こるか?>
一般的な診断的検査と同様に、その妥当性や臨床上での適応性に影響を与えるバイアスに弱い。
ヒューリスティック※1は状況が単純であればうまくいくのだが、状況が複雑になってくると誤まった判断の原因となる。
しばしばルールの適応時に起こり得るエラーは、

①疾患の事前確率を見誤る場合
例;利用可能性バイアス 非常に強烈だったり、印象に残りやすい出来事、例えばまれだが記憶に残る疾患 の可能性を高く見積もってしまう)

②ルールの開発時の手法的問題によって誤りが起こる場合
例;ルールの正確性が確認された母集団と、ルールが適応された患者が臨床的に異なったスペクトラムを持っていた場合。(※発表者捕捉この場合はスペクトラムバイアスといって、診断的検査が持つ感度と特異度は変化してしまうため、ルール自体の性能が変わってしまう。) 通常はルールが開発された際の母集団の方が重症で進行した疾患であることが多いため、感度・特異度ともに実際よりも大きく見積もられがちになる。

③ルールにおける量的な見積もりが不正確な場合、そのルールからくる診断的・予後的・治療的な推奨はさらに不確かなものになってしまう。
プライマリケアセッティングにおけるPrediction Ruleの応用の難しさは、CRB-65スコア(肺炎の予後推定スコア)においてもわかる。プライマリケアセッティングで応用されたときに、スコアは低リスク群の患者を的確に導き出したが、では、どこで紹介を考慮すべきなのか、そしてそれがどの程度その後のマネージや生存率を変えるのかについてははっきりしなかったのである。



<どのようにして(弱点を)改善することができるのか?>

・Clinical Prediction Ruleの導入・報告のための、標準的な方法論が報告されている。STARD※2と呼ばれるフレームワークがおそらくはルールの開発・報告の質を上げるだろうし、特にスペクトラムバイアスや選択バイアスへの対策となるだろう。



・近日は、サンプルサイズを多くして、ルールの正確性を改善させようとする試みもなされている。例えば、
UKのプライマリケアでは咽頭痛に関する合併症を予測する臨床的な特徴を割り出すために18000人の咽頭痛患者を蓄積しての研究がおこなわれている。www.descarte.co.uk



・最後に、ルールを正確に想起し、適応するためのコンピューターによるシステム(clinical decision support systems)が開発されつつある。



【参考】

※1ヒューリスティック;人が複雑な物事を分析したり、解決したりするときに、暗黙で用いている簡便な解法や法則を指す。分類として、「代表性」、「利用可能性」、「固着性」といったものがある。

「代表性ヒューリスティック」;特定のカテゴリーに該当しやすいと思われる事柄の確率を過大に評価する。 消化性潰瘍=腹痛と、代表させてしまうと、腹痛がない患者において潰瘍の可能性を不適切に棄却してしまう。(実際には腹痛がない消化性潰瘍はかなりの割合で存在する)
一般的に診断が「難しい」とされる疾患群は「我々の代表的と思っている特徴」と「実際の特徴」のずれが大きいことが多いようです。(例;感染性心内膜炎、大動脈解離、肺血栓塞栓症)

「利用可能性ヒューリスティック」;上述。

「固着性ヒューリスティック」:アンカリング、ともいう。初めに「これだ!」と思ったものからなかなか離れられない。例;胸痛+ST上昇⇒MIと思ってしまうと、なかなか大動脈解離は思い浮かばない。



※2 STARD;http://www.bmj.com/content/326/7379/41.1.full.pdf ←を参照ください。


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Fig 1 Stages and strategies in arriving at a diagnosis



【開催日】

2011年9月28日

精神科・行動科学領域での事例の振り返りはレジデントに何をもたらすか

【文献名】
Cheri Bethune , Judith Belle Brown
Residents’ use of case-based reflection exercises.
Can Fam Physician Vol. 53, No. 3, March 2007, pp.470 – 476

【要約】
<OBJECTIVE>
Qualitative exploration of the experience of family practice residents in using semi structured case-based reflection exercises as a learning medium.

<DESIGN>
Qualitative study using in-depth interviews.

<SETTING>
Memorial University’s Family Medicine Residency Program in St John’s, Newfoundland.

<PARTICIPANTS>
Graduates of the residency program who had taken part in a pilot project that involved completion of case-based reflection exercises as a medium for enhancing learning.

<METHOD>
In-depth interviews were conducted with graduates who had used the reflection exercises during their postgraduate training. All participants were in active practice. All of the audiotaped interviews were transcribed verbatim. Thematic analysis continued until saturation was reached.

<MAIN FINDINGS>
Eight interviews were conducted that included 5 women and 3 men. Three themes emerged from the data analysis: effect on the learning process, effect on the patient-doctor relationship, and effect on the learner.

<CONCLUSION>
The experience of using the reflection exercises appeared to affect how family practice residents learned. Three major themes emerged: the reflection exercises as a continuing education process offered participants a strategy for future learning in practice; the exercises offered a different perspective on the patient-doctor interaction that had doctors looking forcues to deeper meaning; and the exercises engaged the learners in a reflective process that revealed qualities about themselves that gave them personal insight. These reflective strategies have relevance for all physicians in their attempts to incorporate new knowledge and understanding into their practices. Similar dimensions are articulated in the educational literature, and this study supports the usefulness of case-based reflection as a catalyst in the education of family physicians.

【開催日】
2011年2月9日

医学の専門的能力に関する認知学的な考察:理論とその適応

【文献名】

Schmidt HG, Norman GR, Boshuizen HP:  A cognitive perspective on medical expertise: theory and implication. Acad Med. 1990 Oct;65(10):611-21.




【要約】
<従来の仮説>

・臨床技能は状況と独立しており、獲得すると新しい問題ですら上手に解決することができる

・病歴/身体診察、データの解釈、診断、臨床推論、マネージメントなどから構成

○Content Specificity(内容の特異性)

・生物医学的な知識と問題解決のための経験則は、個々の問題のレベルになると関連性は低い

○専門性とデータの収集
・専門性が高まれば重要な臨床データの収集が増すという仮説は支持されない
 
→ 初心者(学生、レジデント)と同じぐらいの収集力

○基準の設定

・問題解決の基準を作成するのは想像されるほど明確なものではない

○中間効果
・学生がレジデントになったとき、一時的に臨床推論能力が低下することあり

・専門家はテストで評価することが困難な、ある種の特別な知識を獲得する

○臨床診断の過ち

・今までは、ショートカットの利用や詳細への不注意、明確な知識の欠如が原因と考えられていた

・実際は長い診察時間と関連していることが多い



<臨床推論の段階理論>

○以下の3つの想定に基づく
・医学における専門性の獲得に置いて、学習者はいくつかの移行段階を通過し、それは行動の基盤にある異なる知識基盤に特徴づけられる

・こうした知識の基盤は専門性の発達の中で衰えて駄目になることはなく、状況がそれを必要と
  するときは将来も活用できる

・経験のある医師は、ルーチンの症例を診断する際に、我々が「病気のスクリプト」と呼ぶ知識
  基盤を操作していく

○病気のスクリプト

・病態生理ではなく、疾患に関する臨床的に関連する豊富な情報、その結果、それが生じたコンテクストを含む


[Stage1:詳細な因果関係のネットワークの発展]

・医学部4回生までの本での知識・理論をネットワークでつなぎ、状況を説明する

[Stage2:詳細なネットワークの集合を要約する]
・繰り返しの経験を通じて、このネットワークを高いレベルの簡潔な因果関係モデルへと要約し
  症状や徴候を説明し、診断のラベルに組み込む

・これは実際の患者に遭遇する中で起きる変容である

[Stage3:病気スクリプトの出現]
・要約と同時に因果関係の知識構造が、「病気スクリプト」と呼ばれるリストのような構造へと
  変化していく
・多くの患者との遭遇の中で、学習者は病気の表現に多様性があることを感じる

・そして、病気が生じる背景にあるコンテクストの因子に注意を払い始め、スクリプトが生じる
 
☆illness script:diseaseとillness/contextが一体となって記憶される症例のまとまり

○通常の症例では、スクリプトを探し、選択し、検証することとなる

・病気スクリプトは、連続的な構造を持つことがポイント
・異なる医師は同じ疾患に対しても全く異なるスクリプトを開発することとなる

[Stage4:即席のスクリプトとして患者との出会いを蓄積]
・多様な経験を積むことで、多くのスクリプトを蓄積するプロセスが専門性の獲得

・似たようなスクリプトを適用することで多くの症例に対応することが可能になる
 
→ パターン認識はショートカットではなく、不可欠な技能である



○こうした段階は徐々に獲得されていくが、専門家は前の段階に戻ることは可能であり、状況によって使い分けることができる

○専門家は「深いレベルの情報処理」で働いているのではなく、経験と以前の教育から
 生じた様々な形態の知識の表現を自由に使いこなすことと関連していると言える



<教育への適応>
・問題の数、カリキュラムの中での連続性、それぞれから引き出される情報が極めて重要となる

・どれぐらいの数の問題を解決していけばよいかは不明


<学習者の評価>

・2層に分けて実施する方法
 
1.まず簡単な最低限の情報を持つ多様な状況を提示し解決に至ることを求める
2.正解にたどり着かなければ、問題をより詳しく、追加情報を用いて解決していくこととなる


【考察とディスカッション】
・ 多くの医学生は疾患(disease)経験の多様さ、多さを追い求める傾向にある。私たち指導医はそのような学生にこのような疾患の経験を追い求めるだけ ではなく、患者中心の医療の方法における「病い(illness」」の側面も探求するように働きかけることができる。このことにより学生に 「Illness script」が形成されることになるだろう。
・ 同時に学習者のステージについても注意を払う必要がある。臨床推論「Stage theory」でいうStage2における単純化された因果モデルを高いレベルで学んでいない場合、患者の背景(context)の重要性を強調すること により学習者圧倒されてしまうであろう。指導医はこの点において間違いを犯しやすいと考えており、「Illness script」の学びは卒後3~4年くらい、stage3の「Emergence of illness script」に入る痛ある段階が望ましいと思われる。
・ 改めてIllness script形成が自分の診療のコアにあると痛感する。家庭医の診断能力を他の領域の医師に説明する際に、こうした認知論的観点から「包括的ケア」の妥当性が満たされることを示すのも一つの方法であろう。
・ こうした教育研究も是非HCFMの一研究領域としていきたいものである。その際は、やはり医学部教育ではなく、現場の臨床経験に基づき生涯学習に連動するようなテーマが良いだろう。

【開催日】
2011年2月2日(水)

~新しいCSR(カルテを利用したケースレビュー・振り返り)のワークシート~

【文献名】
Shirley Schipper : Structured teaching and assessment; A new chart-stimulated recall worksheet for family medicine residents: Can Fam Physician 56(9) 958 – 959, 2010.

【要約】
Evidence and Best Practice
・CSRは、診療の強みと弱みを同定するツールとして効果があり信頼性がある。
・CSRの信頼性と妥当性は家庭医療学の分野とそのほかの専門家、リハビリの領域で発展してきた。
・CSRの最もよい利点はFeedbackをすぐにかけることができる評価ツールであることである。
・学習評価のためのレジデント教育へのCSRの適用は、論理的Stepがある。
・今までのCSRではPatient centered careの評価が弱かったため今回再作成した。またCanMEDS-FMの役割(2009年提唱のカナダの家庭医の役割)に則って質問を再構成した。
・新しいCSRの私たちの使用経験では全てのレベルの学習者に有用であり、特にハイレベルに機能していて外来でのFeedbackが少なくなりがちな優秀な学習者に役に立つことがわかった。また困難を抱えている学習者にとってもCSRワークシートは、知識のギャップを表面化し、臨床推論スキルを評価し、共通の理解基盤に立つための問題点を同定するために有効であった。

Using the CSR tools
・学習者は課題の準備をする。指導医は学習者にカルテをレビューし事例についてディスカッションを行うことを知らせる。
・学習者はこれが教育セッションであることを知らされ、学習者はカルテ記載やカルテレビューでFeedbackを受けることを知らされる。
・レビューのためのカルテが選定される。
・指導医、学習者でカルテ記載をみて、カルテ記載についてのFeedbackをワークシートのBoxAに書く。
・質問リストから、患者中心のケアや家庭医の役割について切実なものを選んで議論のガイドとする。
・議論に対するFeedbackをワークシートのBoxBに記入する。
・Feedbackを学習者に渡し、ポートフォリオにはさんでもらう。

Conclusion
・CSRは各プログラムや自身のニーズに合わせて使用される。
・コンピテンシーに基づくシステムの一部として、また困難を抱える学習者について、有用性を更に調査中である。

*CSRワークシートの使用説明書・質問集の和訳、CSRワークシートのVer1.0は添付文章参照。

【開催日】
2010年12月8日(水)

~家庭医療の発展におけるメンターシップの重要性~

【文献】
Hajar Kadivar: The Importance of Mentorship for Success in Family Medicine. Ann of Fam Med 2010 8:374-375.

【要約】
メ ンターシップは家庭医の個人的な成長やキャリア形成の上で非常に重要な役割を持っている。家庭医療学において学術、研究の領域で適切なフィールドを構築す るためにも必要となる。この記事ではメンターシップの重要性と、主要な要素なコンポーネントを見出し、メンターシップの個人や施設における障壁を同定し、 それらを乗り越えるステップとしたい。

メンターシップは医学の専門性発展のための重要なformal social supportである。このサポートは以下の4つに分類される。
(1) emotional support・・・共感や信頼を提供
(2) instrumental support・・・具体的な支援を提供
(3) informational support・・・アドバイスや情報を提供
(4) appraisal support(評価)・・・形成的なフィードバックと激励をする
こ れらは重要であるが、一人のメンターが全てを提供する必要はない。たいていの人には複数のメンターがいて、彼らが相補的に支援してくれていることが多い。 メンターはメンティーが研修を受けている際には提供されるものであるが、研修早期からずっとメンタリングを受け続けることが重要である。

学術的な分野にいる医師は十分な経験や時間がないと感じているため、メンターシップを提供することに抵抗を感じることもある。メンティーは多種多様な経験レベルのメンターを必要とし、それぞれのレベルのメンターから様々な学びを得る。

メ ンターシップはたいてい個人レベルに対して提供されるが、その利益は個人と組織の双方に認められる。それゆえ、施設間の障壁が取り除かれ、メンターシップ に対する動機づけがなされることで組織は変化する。特に家庭医療が研究の分野での成功を収めるためには重要となる。家庭医が小児科医や内科医と同様にメン ターシップを受けたとしても、フェローシップ終了後のメンターシップはほとんど受けることができず、臨床家や研究者としてのファカルティのポジションもあ まりなく、ほとんど論文も出てこないだろう。よって、研究分野において家庭医療をもっとアピールし、研究、論文を増やしていくことが望まれるのであれば、 新しい研究者に対するメンターシップ制度の構築は不可欠である。

North American Primary Care Research Group (NAPCRG)は、地域においてメンターがいないprotégésのためにメンターシップを提供するワークショップやプログラムの開発を行っている。こ のプログラムの目標は、家庭医療におけるリサーチメンターの数、質、効率、そして生産性の向上にある。Grant generating project(STFM、AAFP、NAPCRGの共同出資)は研究活動に対して支援者がない新人の研究者に対して教育とメンターシップを提供する機会 を与えている。

【開催日】
2010年10月20日(水)

~カルテを利用した教育方法についての検討~

【文献】
Warren Rubenstein:Medical Teaching in Ambulatory Care 2nd Ed:P66-72, 2003

【要約】
TEACHING STRATEGIES
・患者:ケースディスカッション、ケースレビュー、直接観察
・カルテ:カルテレビュー、カルテを素にした再想起、標準化されたカルテcheck(今回はここ)
・教育技術:ロールプレイ・シュミレーション、短く教訓的なプレゼン

カルテを利用したもの
カルテレビュー
1説明:
 カルテごとに病歴、所見、検査、治療の記載について順に見て、必要なときに議論をする。
 同時に読みやすさ、フォーマット、長さ、徹底具合も見ることが出来る。
2適応:
 外来を一人でこなせるが、外来後にはレビューが求められる程度の学習者に適応がある。
学生や初期のレジデントの場合では内容をカルテの書き方にのみ集中するほうが良い。
3利点:
 指導医のcheckによるケアの安全性の確保
 書かれたカルテの質を保証する
 言葉だけの報告に依存し難い
 事例を議論や教育の資源とすることができる
 カルテの書き方や電子カルテの使い方の指導が可能となる
4限界:
 研修医のカルテ記載の質と量に依存する
 問診や身体診察のスキルは評価できない
5手間:
 通常業務への妨げは最小限
 患者を診終わってからの時間を設定
6例示:省略
7コツ:
 教育的好機を常に意識しておく
 この方法を利用するということは診療カルテを重視しているというメッセージを発している
 質の保証のための大切なツールになる

カルテを素にした再想起
1説明:
 1対1の教育セッションであり、少なくとも30分は必要となる。
 いくつかの患者のカルテを学習者に選んでもらい、ランダムに二つほど選ぶ。
 カルテを一冊選んで渡し、段階を追った形式で患者を思い起こしレビューするよう依頼する。
 カルテは、何が起こったか詳細に思い出すためだけでなく、その外来中にどのような思考状態だったのかという想起も刺激する。以下のように聞いてみる。
 「この時点でどう考えていましたか?」「なぜこれらの質問をしたのですか?」
「どうしてそう決めたのですか?」「なぜそこで止まったのですか?」
「他に考えていたことは?」「この時点でのもっともらしい診断は?」
「このオプションを選んだのはなぜ?」
これらを診察(病歴、診察、鑑別診断、重症度、疫学、アクションプラン、検査の選択、治療)のそれぞれの段階で行い、次の段階に行く前に思考過程を問うことを続ける。想起を支援し続けることが必要で、責めてはいけない。
2適応:
 学習者の臨床的な根拠と意思決定プロセスを理解し、改善するための評価や支援に利用できる。
 特にマネージメント不足、一歩遅れてしまう、安定した意思決定が出来ないように見えるなどの患者のケアに困難を抱えた学習者には有用である。
3利点:
 意思決定プロセスをレビューするための強力な教育方略となる。
 カルテそのもので「実際に何が起きたのか?」を詳細に知るための手がかりとなる 
4限界:
 時間が必要
 通常のカルテレビューとは異なった特別な時間を必要とする
 (記憶の問題で)診療後48時間以内には行ったほうが良い
 学習者に不安を与える得る方略なので、指導医-学習者の信頼関係が必要とされる
5手間:
 通常の患者ケアのcheck以外の余計な時間が必要なる
 時間は通常診療もしくは個人の時間が消費される
6例示:
 ここ二日で診た印象的な患者さんを4例選んでもらう。そこから2例選ぶ。学習者の仮説を評価しながら、次回は仮説意外での短い議論となるための準備をする。
7コツ:
 偶然のバイアスが入るが、2週間に一回以上は行わないようにする
 問題のある学習者のみならず、高いレベルの学習者にも意思決定プロセスを教えるため利用される時にはビデオレビューと並行して開催することができる

標準化されたカルテcheck
1説明:
 カルテレビューを完成させるもう一つの方法。
 自分のペースで行うカルテのオーディットで15-30分あれば可能である。
 事前に後日開催することを説明し、checkリストの基準を作って、カルテのどこをcheckするのかを案内しておく。十分で包括的な病歴聴取が出来ているのかの有効で信頼性のある方法となる。
 そのために自分の診療所で良質なcheckリストをつくる事は良いプロジェクトとなるし、カルテレビューの際に、どんな情報を重視しているのかを伝える方法となる。
2適応:
 通常業務内に顔のあわす機会が少ない場合の教育方法
 余分な時間に学習者がいなくても、学習者の仕事ぶりをレビューすることができる
3利点:
 指導医のcheckによるケアの安全性の確保
 書かれたカルテの質を保証するものとなる
 時間を選ばない
 Checkリストは、教育者が行うべき特定のcheckの備忘録として機能する
 記載された情報によって、学習者のケアのマネージメントやカルテの記載を支援してくれる
 学年のすすんだシニアレジデントに対して、自律して働いた後で評価をすることを可能にする
 直接観察よりは時間が短くてすむ、しかし教えるべき修正点の情報を集める必要がある
4限界:
 教育者による精密な吟味と、レビューの結果をまとめて伝える機会で、カルテレビューよりは時間がかかる。
 学習者のカルテ量に依存する
 問診や身体診察のスキルは評価できない
5手間:
 Checkリストの考慮と準備の時間、実際のレビューの時間が必要となる。
6例示:省略
7コツ:
 もととなるCheckリストを事前に渡しておく。
 不意な評価ではなく、計画された学習経験とする。

【日付】
2010年7月21日(水)

~早期臨床実習の有効性~

【文献】
 Little S, Ypinazar V, et al: Early practical experience and the social responsiveness of clinical education: systematic review. BMJ, Aug 2005; 331: 387 – 391

【要約】
<目的>
 地域での早期臨床体験(医学部1-2年生)がいかに医学教育に影響を及ぼすかを知る。また、そのエビデンスのレベルや限界を認識する。
<デザイン>
 1992-2001の10年間に報告された論文(経験的な研究全てが対象。各論文のデザインや方法は問わない)のエビデンスレベルと重要性をランク付けしたsystematic review。

<結果>
 早期臨床体験は、医療の行き届かない住民のために働くプライマリ・ケア医を募ることを目的としたため、地域でなされることが多かった。
 そのためこの体験は、プライマリ・ケアのレジデントを増加させた。
 また、自己認識と病人に対する共感的態度を育み、自信を持たせ、動機付けをし、満足感を与え、職業人としての自覚を促した。
 人間関係のスキルを伸ばすことにより、臨床実習の際のストレスを減らした。
 そして、自分の職業が果たす役割や責任、そしてヘルスケアシステムや住民の健康ニーズを学びやすくした。
 生物医学的・行動学的・社会科学的をより関連付け学びやすくした。
 教官や患者を動機付け、カリキュラムを良いものにした。
 ある国々では、低学年の学生が予防的なヘルスケア活動を住民に対し行っていた。
<結論>
 早期臨床体験は医学生の学びを促し、彼らの学びや将来の仕事に対する適切な態度を育み、医学教育カリキュラムを社会ニーズに向けさせた。
 この利点は介入研究のエビデンスとしては得られそうにないが、それでもより多くの医学校が導入するだろう。

【開催日】
 2010年5月19日

~家庭医療の教育者のキャリアについて~

【文献名】
Understanding the Careers of Physician Educators in Family Medicine . Academic Medicine Vol.76 No3 march 2001, 259-265.

【要約】
目的:
家庭医療の臨床-教育家(以下PE)のキャリアの変動についての質的研究。キャリアの決定に影響したもの、PEとしてのバイタリティの資源についての調査が目的。
方法:
STFM のメンバー500名に仕事への満足と教育への貢献を評価する葉書をランダムに送り、返信のあった399名から除外規定(仕事への満足度、家庭医療教育への 貢献度、教育に携わっている期間、教育に割く時間)を設けて24名に絞った。「どの様に仕事を決定したか」「教育者としてのバイタリティをどう維持してい るか」などの半構造化した電話インタビューを行った。録音記録からメモ用紙を使ってテーマを抽出し、カテゴリー分類した。
結果:
(PEのコアな価値観)
キャリアの決定と行動は”ヘルスケアの向上、研修の質と量の改善、未来への遺産を渡すことを通してよりよい世界にしたい”という価値観・信念に基づいていた。
(価値観と一致した地位やプロジェクトの選定)
挑戦的で多彩で刺激的な地位が、インパクトを持ち、彼らの価値観と調和しているときに選定していた
(キャリアパス)
13人はもとから教育に興味/価値を持っていた。15人は自分の挑戦や特質として教育に関わったと考えていた。5人はセレンディピティが鍵だった。1人はミッションステートメントで計画していた。
(教育者としてのバイタリティの資源)
人との関連に関する「学習者(11人)、同僚(メンターやロールモデルを含む:8人)、患者(4人)」という3つの主要なバイタリティの資源が同定された。その次の資源は「変化」であった。
(プロとして、と自分としての生活のバランスへの努力)
私的な生活と専門家としての生活とのバランスに持続的な努力を要していた。
(結語)
この研究は、時に脱線し時にサポートをされながら、教育指導に引き寄せられ、バイタリティを維持し、そして専門的かつ私的な挑戦についての鍵となる変動のハイライトである。この情報はリクルート、発展、成功しつつ生産的な家庭医療のPEの維持に利用できうる。
*この研究は満足度の高い人でインタビューに答えたい人だけで行ったという限界がある。

【日付】
2010年4月16日(金)

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