小児アトピー性皮膚炎における頻繁な入浴と頻度の少ない入浴:無作為化臨床試験

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。
-文献名-
Cardona ID, Kempe EE, Lary C, Ginder JH, Jain N. Frequent Versus Infrequent Bathing in Pediatric Atopic Dermatitis: A Randomized Clinical Trial. J Allergy Clin Immunol Pract. 2020;8(3):1014-1021. doi:10.1016/j.jaip.2019.10.042

-要約-
Introduction:アトピー性皮膚炎(AD)は慢性の皮膚炎症で世界中のこどもの15~30%に影響を及ぼしている。アトピー性皮膚炎は皮膚バリア機能障害と免疫調整障害を特徴とする。その高い有病率にも関わらず、小児アトピー性皮膚炎に関する入浴頻度を含む最良の入浴方法を評価した研究はほとんどなく、その結果、アトピー性皮膚炎のガイドラインでは一貫した根拠はない状態である。アトピー性皮膚炎を持つ子供の親はしばしば矛盾する情報を受け取り、不満と混乱を生んでいる。プライマリケア医の50%以下しか毎日の入浴を進めていないのに対して、専門医(アレルギー専門医、免疫学者、小児皮膚科医)の50%以上が毎日の入浴を推奨しているというデータもある。
これらの研究からPCPsより専門医は毎日の入浴を推奨する傾向にあり、矛盾したアドバイスは混乱と不満をうむ原因となりうる。
中等度から重症のアトピー性皮膚炎の小児に対するwet-wrap therapy(WWT)による閉鎖療法は効果的であるとされている。Soak and smear(or Soak and Seal)(SS):少なくとも10〜15分バスタブに浸かって、すぐに乾かし、皮膚軟化剤で閉鎖をする方法も急性期に効果的であることが示されている。アトピー性皮膚炎の病態生理学に置いて皮膚の水分補給と経表皮水分喪失量の重要性を考慮し、SS入浴は局所薬剤の浸透を促進し、水分喪失を防ぐことによってWWTを模倣する可能性があることを考慮し、頻繁なSS入浴は小児のアトピー性皮膚炎において入浴を制限するよりも効果的であるかもしれないと仮定した。
我々の目的は重症のアトピー性皮膚炎に対して急性期の治療介入として、1日2回、15~20分、SS入浴すること(Wet method : WM)と、週2回、10分以下でSS入浴すること(dry method : DM)の効果を比較することである。また、水分補給状態やStaohylococcus aureusのコロニー形成する密度をWM、DM間で定量化した。

Method:どのような方法を用いたのか、特殊な方法であれば適宜解説を入れる。
アメリカのメイン州の病院関連のアレルギー免疫学診療所でシングルブラインドのクロスオーバー試験を使用したランダム化試験を実施した。対象者はSCORing Atopic Dermatitis(SCORAD)index*1で25以上(中等度〜重度)のアトピー性皮膚炎の6ヶ月〜11歳の小児に対する、頻繁に行うSS入浴と頻繁には行わないSS入浴の頻度を比較した。
2グループに1:1でランダム化した。
グループ1は週に2回、10分以下のSS入浴を2週間に渡る(DM)実施したのち、日に2回、15~20分のSS入浴を2週間に渡る(WM)実施した。グループ2はその反対の順番で実施した。
患者は同じ保湿剤、洗剤、低ランクの局所コルチコステロイド(TCS)を投与された。Primary outcomeはSCORing Atopic Dermatitis(SCORAD)indexを利用してADの重症度を評価した。
Secondary outcomeはアトピー性皮膚炎の重症度(アトピー性皮膚炎クイックスコア(ADQ)*2、QOL、staphylococcal aureusのコロニー形成密度、皮膚の水分補給状態、保湿剤、局所コルチコステロイドの使用量に関する評価された。

Results:
63人の小児をスクリーニングし、42人が基準を満たし、ランダム化された。(Figure1)
ADの重要度に関して、両群でWMのSCORADの平均変化がベースラインから大幅に減少していることがわかった。
WM、DM間のSCORAD治療効果のモデル推定値は21.2だった。[95%CI 14.9-27.6;P<.0001](table2 95%CI,14.9-27.6;P<.0001).SCORADの臨床的に重要な値の変化は8.7であり、この変化はその差を超えていた。
ある研究では症状の30%の減少が臨床的に重要であると見なされており、マクマネー検定で二次解析すると、WMで30%の改善を達成した患者は23人で、DMでは6人だった。WMはDMに対して大幅な改善を示していた(Figure 2: McNemar’sX2=8.83,df=1,P=.0030) 同様にWMはADQを5.8減少させ、(tableⅡ 95%CI,1.8-9.7)統計的に優位な改善を示した。さらにSCORADの変化はADQの変化と相関していた(図3r=0.66)しかし、ADQの解析ではSCORADと同様の傾向を示したが、優位性には達しなかった。(P=.061)
そのほかの二次解析では優位な変化は認めなかった

Discussion:今回の研究の限界、残された課題などを記載する。
中等度から重度のアトピー性皮膚炎の小児に対する、保湿剤やステロイド外用などの通常ケアに加え、入浴の頻度の影響を調べ、Wet methodはSCORADやADQで比較した場合に統計的、臨床的に優位に改善を示すことがわかった。これらのデータにより1日2度のSoak and seal入浴が中等度から重度のアトピー性皮膚炎の重症度を減らすことが示された。
今回の研究はsingle blind の前向き、クロスオーバーデザインのランダム化試験を使った、SSを組み合わせた入浴頻度に関する疑問における初めての研究である。SSと組み合わせて入浴頻度を評価する研究は数、サイズ、質、に制限があるが、我々の研究で見られたWMアプローチの有効性はこれまでの研究と一致している。
今回の研究の結果の説明として最も可能性の高いのはTCSの吸収の強化と潜在的なアレルゲンや刺激物の「洗い流し」が皮膚バリアの改善ではなく免疫調整不全を改善したことである。これまでのエビデンスでは乾燥している角質層より湿潤している角質層の方が局所薬はよく浸透することが示されている。その結果WMはwet wrap therapyの有効性を示されたメカニズムと同様に、TCSの有効性を高めることによりステロイドを節約することができるかもしれない。また、皮膚へのアレルゲンの暴露がアトピー性皮膚炎の炎症を引き起こしている可能性があり、WMはこの炎症の原因となる鱗屑、外皮、アレルゲン、刺激物をより効果的に除去する可能性がある。
小児ADの表現型は成人の慢性疾患とは実質的にことなると考えられており、今回は小児集団を研究しており、成人にそのまま適応することはできない。小児ADではTH2およびTH17/TH22応答の増加とTH1活性化およびINF-γ応答の低下を特徴とする。アトピー性の低い成人集団でこれらの結果が一貫しているかどうかはっきりしていない。
現実の世界で1日2回のSS入浴は手間がかかり、家族にとってはアドヒアランスが難しくなる可能性があると認識している。我々の研究では高いアドヒアランスだったが、入浴ログと患者への直接の電話連絡が必要なこともあり、これらのインセンティブは研究以外の環境では存在しない。我々の研究は患者が中等症から重症の場合に短期間(2週間)の急性治療介入であることを意味しており、1日に2回の入浴は家族により労力を強いることになるが、少ない入浴よりはより効果的であることを示した。また、中等度から重度程度の場合にウェットラップ両方を行う必要やより強力な局所ステロイドなしに、湿疹の重症度を改善する可能性を示した
ADの治療および予防におけるSS入浴頻度の役割を評価するには、より大規模な研究が必要である。 更なる研究により、TCSを使用しないWMアプローチが長期的にADのリスクを軽減できるかどうか判断される可能性があるが、中等度から重度のADの6ヶ月〜11歳の小児では、急性期治療としてWMアプローチを行うことが、標準治療のTCSへの介入として安全であり、ADの重症度を低下させ、ステロイドの節約効果がある可能性がある。

 

*1<アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2018より>
JC2020白水1

*2 ADQ
JC2020白水2

Carel K, Bratton DL, Miyazawa N, Gyorkos E, Kelsay K, Bender B, Strand M, Atkins D, Gelfand EW, Klinnert MD. The Atopic Dermatitis Quickscore (ADQ): validation of a new parent-administered atopic dermatitis scoring tool. Ann Allergy Asthma Immunol. 2008 Nov;101(5):500-7. doi: 10.1016/S1081-1206(10)60289-X. PMID: 19055204.

Figure 1
JC2020白水3

TableⅡ
JC2020白水4

Figure 2
JC2020白水5

Figure 3
JC2020白水6

【開催日】2020年12月9日(水)

喫煙に依存している成人における薬物治療の開始。米国胸部学会の公式臨床実践ガイドライン

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。

-文献名-
Leone FT, Am J Respir Crit Care Med. 2020;202(2) :e5. 
Initiating Pharmacologic Treatment in Tobacco-Dependent Adults. An Official American Thoracic Society Clinical
Practice Guideline.

-要約-
Introduction:
現在の喫煙治療ガイドラインは禁煙への介入の有効性を確立しているが、臨床で多く直面する一般的な実施に関する質問に対して、詳細なガイダンスは提供していない。
治療チームが日常的に直面するいくつかの薬物療法開始の質問に対して、根拠に基づくガイドラインが作成された。

Method:
臨床医にとって重要な質問と結果に優先順位をつけるために禁煙に関する多様な専門家たちが参加した
。エビデンス 作成チームはシステマティックレビューを行い、これらの質問に回答し推奨を提示した
。GRADE(Grading of Recommendations, Assessment, Development, and Evaluation)アプローチを用いて、効果の確実性と推奨の強さを示した。

Results:
ガイドラインでは薬物選択に関する5つの強い推奨と2つの条件付き推奨を策定した。
強い推奨事項にはニコチンパッチではなくバレニクリンの使用、ブプロピオン(日本未発売・抗うつ薬)ではなくバレニクリンの使用、精神疾患患者に対してニコチンパッチではなくバレニクリンの使用、禁煙の準備ができていない成人でのバレニクリンの開始、12週を超える延長治療期間の利用がある。
条件付きの推奨事項には、バレニクリンを単独で使用するのではなく、ニコチンパッチをバレニクリンと組み合わせたり、電子タバコではなくバレニクリンを使用したりすることが含まれる。

Discussion:
ガイドラインの推奨の数に制限があったため、全ての可能な薬物治療に対応できなかった。将来のガイドラインではバレニクリンが以前に失敗した患者、または以前にバレニクリン治療を拒否した患者に対する、最適なコントローラー戦略を検討する必要がある。

【開催日】2020年12月2日(水)

精神障害とその後の病状との関連

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。
-文献名-
N.C. Momen, etc. Association between Mental Disorders and Subsequent Medical Conditions. N Engl J Med.2020;382(18):1721–1731.

-要約-
【背景】
 精神障害のある人は、精神障害の発症が無い人々よりも、他の精神障害や様々な疾患の発症リスクが高いと言われている。
【目的】
 精神障害と、精神障害発症後に発症した疾患との関連を包括的にまとめること。包括的な評価により、併存する精神障害と他疾患のスペクトル全体を比較することができる。また特定の期間にわたる精神障害の診断後のさまざまな疾患の相対的および絶対的リスクに関するデータは、臨床医および医療計画担当者が患者の主要な予防ニーズを特定するのに役立つ可能性がある(例えば、精神障害発症後の5~10年の間に循環器疾患が発症する可能性のある30歳のうつ病患者の割合など)。
【方法】
 1900年から2015年までにデンマークで生まれ、2000年から2016年に追跡された590万人以上のデータを含むデンマークの国家登録簿からの集団ベースのコホートを使用し、合計8390万人年の追跡を行なった。10タイプの精神障害と9種類の疾患(31個の特定の疾患を含む)を評価した。Cox回帰モデルを使用して、年齢、性別、暦時間、および精神障害の既往を調整した後、精神障害と疾患のペアの全体的なハザード比と時間依存ハザード比を計算した。絶対リスクは、競合リスク生存分析を使用して推定した。
【結果】
 5,940,299人(11.8%)のうち、698,874人が精神障害の診断を受けたことが確認された。全人口の年齢の中央値は、コホートへの参加時で32.1歳、最後のフォローアップ時で48.7歳だった。精神障害のある人は、90組の精神障害と疾患の組み合わせのうち、76組に関して精神障害がない人よりも疾患発症リスクが高かった。精神障害と疾患との関連のハザード比の中央値は1.37でした。最も低いハザード比は、器質性精神障害(身体疾患(ex.脳血管障害、甲状腺疾患、神経変性疾患、中枢性感染症既往)が原因で精神症状を来すもの)と多種類の癌で0.82(95%信頼区間[CI]、0.80から0.84)であり、最も高いハザード比は摂食障害と泌尿生殖器疾患で3.62であった(95%CI、3.11から4.22)。 いくつかの特定の精神障害と疾患の組み合わせでは、リスク低下を示した(ex.統合失調症と筋骨格系疾患)。精神障害の診断からの時間経過によってリスクは異なった(例えばFigure2に見られるように、いくつかの精神障害と疾患のペアではハザード比が精神障害の診断直後に高くその後数年にわたって低下したがそれでも上昇したままであったり、精神障害診断の最初の年にハザード比が高かったがその後急速に減少するなどのペアもあった)。精神障害の診断から15年以内の疾患の絶対リスクは、発達障害患者と泌尿生殖器疾患の組み合わせの0.6%から、器質性精神障害患者の循環器系疾患の組み合わせの54.1%まで変動した。
【ディスカッション】
 統合失調症患者は膠原病(ex関節リウマチ)のリスクが低いことを発見した。さらに癌の危険因子(喫煙、肥満、身体活動の低下など)は精神障害患者に多く見られる傾向があるが、精神障害によっては明らかに癌のリスクが低いという逆説的な発見があった。精神障害は、ライフスタイル、日常生活、社会経済的地位に影響を及ぼし、それがその後の疾患リスクを媒介する可能性がある。このレジストリベースの研究では、サンプルサイズが大きく、リコールまたは自己報告バイアスによって引き起こされる問題に対する感受性が限られていた。選択バイアスが最小限に抑えられた。またデンマーク国民は医療に自由で平等にアクセスできるため、民間保険を提供する能力または医療へのアクセスに関連する影響は減少した。
【結論】
 ほとんどの精神障害は、精神障害発症後の疾患発生リスク増加と関連していた。ハザード比は0.82から3.62の範囲であり、精神障害の診断からの経過時間によって変化した。
【限界】
 疾患を31種類に限定したが、事故・怪我・急性疾患は含まれていない。さらに精神障害と疾患の個々のペアを分析したが、患者が複数の精神障害と複数の病状を抱えている可能性があるため、共存する状態の全範囲を反映していないアプローチである。さらに、精神障害および疾患の完全な診断およびこれらの病状の正確な発症日に関して不確実性がある。発症日が精神障害および多くの疾患の実際の発症よりも遅い可能性があり、精神障害や疾患の誤った時間的順序につながった可能性がある。加えて精神障害の発生率は20~30代でピークに達するが、研究中の多くの非精神疾患のピークは人生の後半(高齢になり)に発生する。研究の絶対リスクの計算では入手可能なデータの制限があり、精神障害診断後の15年以内の疾患の診断が必要だった。この期間はすべての共存する精神障害と疾患の状態を把握する機関としては不十分だった可能性がある。また結果をデンマーク国外で一般化するには限界があり、共存する精神障害と疾患のパターンは、他国、特に医療や社会経済構造が異なる国では異なる場合がある。

補足付録(Figure S1~142.31の記載あり):
https://www.nejm.org/doi/suppl/10.1056/NEJMoa1915784/suppl_file/nejmoa1915784_appendix.pdf

Figure1:カテゴリ別の精神障害診断後の疾患リスク
各パネルは、精神障害(各パネルの上部)の診断後の疾患(グラフの左側)のペアワイズリスクを示している。推定値は、基礎となる時間スケールとして年齢を使用したCox比例ハザードモデルを使用して、性別と生年月日の調整後(モデルA)、および調査中の精神障害発症前に診断された別の精神障害をさらに調整した後(モデルB)に計算されました。単一性の線は、各プロットで破線として示されています。ハザード比は対数目盛で表示されます。𝙸バーは信頼区間を示します。
JC202011髙石1

Figure2:気分障害診断後の疾患発症リスク(気分障害診断時期別)
各パネルは、2つのモデルによる、気分障害診断後の病状の時間依存ハザード比を示しています。推定値は、基礎となる時間スケールとして年齢を使用したCox比例ハザードモデルを使用して、性別と生年月日の調整後(モデルA)、および気分障害発症前に診断された別の精神障害をさらに調整した後(モデルB)に計算されました。。単一性の線は、各プロットで破線として示されています。横軸は、気分障害診断からの期間を示しています。精神障害と病状の間の他のすべてのペアワイズ比較は、図S23からS62に示されています
JC202011髙石2

Figure3.性別および診断からの時間経過に応じた、気分障害診断後の疾患発症リスク
示されているのは、性別および病状のカテゴリーに応じた、気分障害の診断後の疾患リスク(100人あたりの累積発生率で測定)です。
パネルAは気分障害の診断からの時間に応じた研究に参加したすべての人の推定値を示しています。
パネルBは気分障害診断時の年齢に応じた循環器疾患のリスクを示し、横軸に気分障害の診断からの経過時間を示しています。95%信頼区間(曲線の周りの灰色の影付き領域で示されている)は非常に小さいため、パネルAは推定曲線によって隠され、パネルBは右端のグラフ(>80 Yr of Age)にのみ表示されます。他のすべての絶対リスク精神障害と病状のペアを図S63からS142に示します。
JC202011髙石3

【開催日】2020年11月11日(水)

2型糖尿病に対する血糖降下薬の有効性の比較

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。
-文献名-
Apostols Tsapas, et al. Comparative Effectiveness of Glucose-Lowerinng Drugs for Type 2 Diabetes. Annals of Internal Medicine. Vol.173 No.4 18 August 2020.

-要約-
【背景】
 2型糖尿病の治療薬にはいくつかの選択肢がある。
【目的】
 成人の2型糖尿病における血糖降下薬の有益性と有害性を比較する。
【データソース】
 開始から2019年12月18日までの複数のデータベースと、2020年4月10日のClinicalTrials.gov。
【試験の選択】
 少なくとも24週間の介入が行われ、死亡率、血糖値、血管アウトカムに対する血糖降下薬の効果を評価した英語による無作為化試験。
【データ抽出】
 ペアのレビュアーがデータを抽出し、バイアスのリスクを評価した。
【データ統合】
 9つの薬物クラスから21の糖尿病治療介入を評価した453試験が含まれた。介入には、単剤療法(134試験)、メトホルミン療法への追加(296試験)、単剤療法とメトホルミン療法への追加の比較(23試験)が含まれた。
心血管リスクが低く薬物療法を受けていない患者では、治療法によって死亡率や血管アウトカムに有意な差は認めなかった。
インスリン療法とGLP -1受容体作動薬のメトホルミン療法への追加で、HbA1cが最も低下した。(Fig.2 B)
心血管リスクが低くメトホルミン療法を受けている患者(298試験)では、死亡率と血管アウトカムに関して治療法間に有意な差は認めなかった。(Fig.2 D)
心血管系リスクが高くメトホルミン療法を受けている患者(21試験)では、経口セマグルチド(リベルザス®)、エンパグリフロジン(ジャディアンス®)、リラグルチド(ビクトーザ®)、徐放性エキセナチド(ビデュリオン®)、ダパグリフロジン(フォシーガ®)が全死亡率を減少させた。(Fig.2 C)
経口セマグリチド、エンパグリフロジン、リラグルチドは心血管死を減少させた。脳卒中のオッズは、皮下セマグルチド(オゼンピック®)とデュラグルチド(トルリシティ®)で低かった。SGLT-2阻害薬は心不全による入院と末期腎不全を減少させた。皮下セマグリドとカナグリフロジン(カナグル®)はそれぞれ糖尿病網膜症と下肢切断を増加させた。
【限界】
 心血管リスクの定義に一貫性がなく、心血管リスクが低い患者の一部の推定値の信頼性が低い。
【結論】
 心血管リスクが低い糖尿病患者では、どの治療法もプラセボと血管アウトカムに差はなかった。心血管リスクが高い患者でメトホルミン療法を受けている場合、特定のGLP-1作動薬とSGLT-2阻害薬は特定の心血管アウトカムに対して良好な効果を示した。
【主要な資金源】
 欧州糖尿病研究財団(European Foundation for the Study of Diabetes)、アストラゼネカからの無制限教育助成金の支援を受けている。

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【開催日】2020年11月4日(水)

慢性腎臓病の進行に対するアロプリノールの効果

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。

-文献名-
Badve SV, Pascoe EM, et al. Effects of Allopurinol on the Progression of Chronic Kidney Disease. N Engl J Med. 2020;382(26):2504.

-要約-
【背景】
血清尿酸値の上昇は慢性腎臓病の進行と関連している.アロプリノールによる尿酸降下療法が,進行リスクのある慢性腎臓病患者における推定糸球体濾過率(eGFR)の低下を減衰させることができるかどうかは不明である。

【研究のデザインと方法】このRCTは,オーストラリアとニュージーランドの31施設で行われた,二重盲検化,隠蔽化された試験である.痛風の既往がない,ステージ 3 または 4(eGFE15-59) のCKD患者であり,尿中アルブミン/クレアチニン比が 265 mg/gCr以上、または過去 1 年間のeGFR の低下幅が 3.0 ml/min/1.73m2以上である成人集団をアロプリノール(100~300 mg/日)投与郡とプラセボ投与群に無作為に割り付けた.主要アウトカムは,104週目(2年間)までのeGFRの変化.副次アウトカムは,「40%のEGFR低下・末期腎疾患・全死亡の複合アウトカム」,「30%のEGFR低下・末期腎疾患・全死亡の複合アウトカム」,「腎臓アウトカム」「血圧」「アルブミン尿」「血清尿酸値」,「QOLのスコア」,「安全性アウトカム」.

JC202014黒岩1

【結果】
予定していた登録数は620例だったが,登録数が伸びなかったため,369例で募集を終了し,アロプリノール投与群(185例)またはプラセボ投与群(184例)に無作為に割り付けた.1群あたり3人の患者が割り付け後すぐに辞退した。残った363例で主要アウトカムを評価した。(平均eGFRは31.7 ml/min/1.73m2、尿中アルブミン/クレアチニン比中央値は716.9mg/gCr、平均血清尿酸値は8.2mg/dL)
主要アウトカムであるeGFRの変化はアロプリノール群とプラセボ群で有意差は認められなかった(アロプリノール群は-3.33 ml/min/1.73m2[95%信頼区間{CI},-4.11~-2.55],プラセボ群は-3.23 ml/min/1.73m2[95%CI,-3.98~-2.47],平均差は-0.10 ml/min/1.73m2[95%信頼区間{CI},−1.18 ~0.97;P=0.85]であった)(FIG1)。

JC202010黒岩2

JC202010黒岩3

副次アウトカムについては,
「eGFRの40%低下、末期腎疾患、全死亡の複合アウトカム」は,アロプリノール群では63例(35%)、プラセボ群では51例(28 %)に認められた.(リスク比、1.23;95%CI、0.90~1.67;ハザード比、1.34;95%CI、0.92~1.9)であった。「GFRの40%低下、末期腎疾患、全死亡の複合アウトカム」についても似たような結果であった.(TABLE2)

JC202010黒岩4

ベースライン値を調整した場合の血清尿酸値の平均差は, -2.7mg/dLであった(95%CI、-3.0~-2.5)(Fig2A)。尿中アルブミン/クレアチニン比には有意な群間差は認められなかった(fig2B).収縮期血圧(平均差、-1.79mmHg;95%CI、-4.69~1.11)または拡張期血圧(平均差、-3.21mmHg;95%CI、-6.82~3.40)、またはQOLスコア(36項目の短命健康調査QOLサマリースコアの平均差、-4.4;95%CI、-10.5~1.6)においても有意な群間差は認められなかった.

JC202010黒岩5

重篤な有害事象が報告されたのは,アロプリノール群で182例中84例(46%),プラセボ群では181例中79例(44%)であった(Table3).
重篤な有害事象は両群で同程度の頻度で発生した(アロプリノール群では84人[46%]の参加者で170件、プラセボ群では79人[44%]の参加者で167件)(表3および表S6)。発疹を含む非重篤な副作用のリスクには有意差はなかった。
JC202010黒岩6

【Discussion】
CKDで進行リスクの高い患者において,アロプリノールによる尿酸降下療法は,プラセボと比較してeGFRの低下を遅らせることはできなかった。
今回の結果は、血清尿酸値がCKDの進行に因果関係があるという見解を支持するものではないようである。観察研究から得られた証拠は、尿酸値と慢性腎臓病の進行との間に関連性があるだけで、因果関係はないことを示している。

【今回の研究の限界】
・登録が不完全であったために検出力が不十分であったこと
・試験レジメンを中止した患者の割合が高かったこと
・eGFRの計算に血清クレアチニンベースの式を使用していたこと
・代替アウトカムの使用

【開催日】2020年10月14日(水)

75歳以上の成人にがん検診の中止について話し合うためのプライマリ・ケア医の準備戦略

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。

-文献名-
Mara AS, et al. A strategy to Prepare Primary Care Clinicians for Discussing Stopping Cancer Screening With Adults Older Than 75years. Innovation in Aging. 2020; Vol4(4): 1-12.

-要約-
【背景と目的】
75歳以上の高齢者,特に余命が10年未満の人ではがんが過剰にスクリーニングされている.本研究は、プライマリ・ケア・プロバイダー(PCP)にマンモグラフィや大腸がん(CRC)検診の中止について話し合うためのスクリプト(台本.参考文献18の研究で開発されたもの)を提供し、さらに患者の10年後の余命に関する情報を提供することが、患者のこれらのがん検診受診意向に与える影響を調べることを目的とした。

【研究のデザインと方法】
ボストン周辺の7箇所の施設(クリニック,地域の健康センター,大学病院など)に勤務するPCPを対象に実施した.PCPの予約記録から選定された参加者(患者)は受診前後にアンケートに記入した。PCPには、診察前にスクリーニングの中止について話し合うためのスクリプトと患者の10年後の平均余命に関する情報が提供され,研究終了時にアンケートに記入した。質問内容はがん検診の中止について話し合うことと患者の余命についてである。診察前後の患者のスクリーニングに対する意志(1-15のリッカート尺度;スコアが低いほど意図が低いことを示唆する)をWilcoxonの符号付き順位検定を使用して比較した。

【結果】
45のPCPから75歳以上の患者90人(電話で依頼した対象患者の47%)が参加した。 患者の平均年齢は80.0歳(SD = 2.9)、43人(48%)が女性、平均寿命は9.7年(SD = 2.4)であった。37人のPCP(12人が地域密着型)が質問票に記載した。PCP32人(89%)はスクリプトが有用であると考えており、29人(81%)が頻繁に使用すると考えていた。また,35人(97%)のPCPが患者の余命に関する情報が役立つと考えていた。しかし、患者の余命について話し合うことに安心感を感じていると答えたPCPは8人(22%)にとどまった。大腸癌のスクリーニングおよびマンモグラフィ検査を希望する意志を表す患者は受診前から受診後にかけて減少した(大腸癌: 9.0 [SD = 5.3]~6.5 [SD = 6.0]、p < 0.0001,マンモグラフィー: 12.9 [SD = 3.0]~11.7 [SD = 4.9]、p = 0.08,大腸癌で有意に減少)。診察前に患者の63%(54/86)がPCPと余命について話し合うことに興味を持っていたが,診察後では56%(47/84)であった。

【ディスカッション】
研究に参加したPCPはがん検診の中止について話し合うためのスクリプトや患者の余命に関する情報が有用であると考えた。結果として,75歳以上の患者はCRC検診を受けようとする意識が低かった可能性がある。
【Translational Significance(現場に適用できる本研究の意義)】
ガイドラインでは、平均余命が10年未満の高齢者にはがん検診を行わないことが推奨されているが、患者にとって有害性が有益性を著しく上回るためである。しかしながら、PCPが高齢者とがん検診の中止について話し合うことはほとんどない。この研究では、PCPが高齢患者の10年後の余命に関する情報およびがん検診の中止について話し合うためのスクリプト(台本)が有用であることが明らかになり、この介入を使用することで、余命が短く、有益な可能性がほとんどない高齢者ががん検診を受けようとすることが少なくなる可能性があることが明らかになった。さらに、本研究では、56%の高齢者が10年後の余命についてPCPと話し合うことに興味を持っていることが明らかになった;しかしながら、10年後の余命について高齢者と話し合うことに快感を感じているPCPはほとんどいなかった。

 

【開催日】2020年10月7日(水)

肺癌スクリーニングによる死亡率の低下

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。

―文献名-
H.J. de Koning. Reduced Lung-Cancer Mortality with Volume CT Screening in a Randomized Trial. NEJM. 2020 Feb 6; 382(6): 503-513.

―要約-
Introduction
肺癌は癌による死亡の主要な原因であり、診断の時点で約70%進行癌、5年生存率は15%と低い。喫煙率は低下しているものの、いまだに成人の17-28%は喫煙者で、タバコ関連疾患の問題は深刻である。
NLST(米国の肺スクリーニング試験)では、肺癌の高リスク者においてXpとCTによる肺癌クリーニングを比較したところ、CT群で肺癌死亡率が20%低いことがわかっているが、その他に肺癌スクリーニングと死亡率の関連を示す研究はない。
2000年に開始されたNELSON試験(オランダ・ベルギーの肺癌スクリーニング試験)は、高リスク者を10年間追跡した低線量・ボリュームスキャンCTによるスクリーニングが肺癌発生率・死亡率などを減少させるかを調べた研究である。
Method
研究はエラスムス大学医療センター、グローニンゲン大学医療センターが行っており、スクリーニングの参加機関は4つの大学や医療センター(UMCG, University Medical Center Utrecht, Spaarne Gasthuis, and University Hospital Leuven)である。
参加者は喫煙が15本x25年以上もしくは10本x30年以上とした。
Current smoker;2週間以内の喫煙歴がある人
Former smoker;過去10年以内に禁煙した人
除外基準は中等症〜重症の基礎疾患があり2階へあがれないような人、体重140kg以上、過去の腎癌・悪性黒色腫・乳癌、過去5年以内の肺癌の診断・治療、過去1年のCT検査を受けた人である。
女性で上記の基準を満たす参加者は少なく男性に焦点を当てる研究となった。
50歳から74歳までの合計13,195人の男性(一次分析)と2594人の女性(サブグループ分析)が無作為に割り当てられた。→table1
2004年1月から2012年12月までの間で、4回の低線量CTスクリーニング(開始時、1年目、3年目、および5.5年目)を受けた人と、スクリーニングを受けなかった人とを比較した。

追跡期間は5, 7, 10-11年で行った。
肺癌特異的な死亡率を特定するために、死因を特定する臨床専門家委員会が設立され、専門家委員会の認証によって死亡が肺癌であることが結論づけられた。ランダム割付時から肺癌の診断、肺癌による死亡、その他の原因よる死亡を記録した。

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Results
参加者は前述table1(下記)へ。群間の特性には有意差なし。男性参加者は計13195人で、6538人のスクリーニング群と6612人の対照群に割り当てられている。
CTの実施率は平均90%程度。Indeterminate test(不確実な検査?)では追加検査を行い、55%の結節が解決、最終的に2.1%が検査陽性となった。呼吸器科での精密検査にて合計203件が肺癌と診断され、スクリーニングの陽性率は43.5%であった。
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Fig.1 Aは追跡期間および試験グループごとの肺がんの累積発生率であり、10年間でスクリーニング群で5.58例/1000人年、対照群で4.91例/1000人年であった。
Table3より、スクリーニング群ではstage1A/1Bが58.6%と多かったことに比較して、対照群では13.5%だった。Stage4の肺癌はほぼ半数の参加者で診断されているが、スクリーニングで検出されたのは9.4%であった。ほとんどが腺癌だった。
Fig.1Bは10年間での累積死亡率であるが、10年間のフォローアップでの肺癌による死亡はスクリーニング群で156人(2.50人/1000人年)、対照群で206人(3.30人/1000人年)であり、10年後の肺がんによる累積死亡率は、対照群と比較してスクリーニング群で0.76(95%信頼区間[CI]、0.61〜0.94; P=0.01)であった。
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Discussion
本試験では、スクリーニング間隔が時間経過とともに伸びているにもかかわらず、高リスク喫煙者の肺癌死亡率が大幅に低下する結果となった。スクリーニングの受診率は高く、男性の87.6%が3回のスクリーニング検査を受けた。また、発見時の肺癌の多くが初期段階であったため、外科的治療などの根治術の適応が増えた。
女性を対象としたサブグループ分析でもCTによるスクリーニングは肺癌死亡率に対して良好な結果が得られた。
大量のサンプルサイズを要するため、全死因では有意差を示すことはできなかったが、肺癌以外の死因に関してはスクリーニング群と対照群で有意差はなかった。
肺癌スクリーニングにおける過剰診断は課題の一つである。10年で19.7%の過剰診断がみられた。
 将来的にはスクリーニングの適応になる高リスク患者の選択がより洗練されることで、CTによる肺癌スクリーニングのメリットが増すであろう。

【開催日】2020年9月23日(水)

2段階うつ病スクリーニング戦略 (2020年6月)

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。

―文献名-
Levis B, Sun Y, He C, et al. Accuracy of the PHQ-2 Alone and in Combination With the PHQ-9 for Screening to Detect Major Depression: Systematic Review and Meta-analysis. JAMA. 2020;323(22):2290.

―要約-
重要性:
Patient Health Questionnaire depression module(PHQ-9)は、うつ病の検出と重症度の評価に使用される9項目の自己記入式検査である。Patient Health Questionnaire-2(PHQ-2)はPHQ-9の最初の2項目(抑うつ気分と無気力の頻度を評価する)で構成されており、PHQ-9の評価を受ける患者を特定する最初のステップとして使用することができる(Table1)。

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目的:
大うつ病を検出するためのPHQ-2単独およびPHQ-9との併用の精度を評価する。DATA SOURCES MEDLINE、MEDLINE In-Process & Other Non-Indexed Citations、PsycINFO、Web of Science(2000年1月~2018年5月)。DATA SOURCES MEDLINE、MEDLINE In-Process & Other Non-Indexed Citations、PsycINFO、Web of Science(2000年1月~2018年5月)。

研究選択:
対象となるデータセットは、PHQ-2スコアと有効な診断面接による大うつ病診断とを比較した。

データの抽出と解析:
半構造化面接、完全構造化面接、ミニ国際神経精神科面接を用いた研究におけるPHQ-2単独、PHQ-9と組み合わせたPHQ-2に対して、半構造化面接を用いた研究のPHQ-9単独の感度と特異度を推定するために、二変量ランダム効果メタアナリシスを行った。 PHQ-2のスコアは0~6、PHQ-9のスコアは0〜27であった。

結果:
対象となる136件の研究のうち100件(44 318人、大うつ病患者4572人(10%)、平均年齢49 [17]歳、女性59%)から参加者の個人データを得た(Figure1、Table2)。

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半構造化面接を用いた研究では、PHQ-2の感度と特異度(95%CI)は、カットオフスコアが2以上で0.91(0.88-0.94)と0.67(0.64-0.71)、3以上で0.72(0.67-0.77)と0.85(0.83-0.87)であった。感度は、半構造化面接と完全構造化面接で有意に高かった。特異性は面接の種類によって有意差はなかった。ROC曲線の下面積(AUC)は、半構造化面接では0.88(0.0-0.89)、完全構造化面接では0.82(0.81-0.84)、MINIでは0.87(0.85-0.88)であった。サブグループ間に有意差は認められなかった(Table3)。

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半構造化面接では、PHQ-2が2点以上、PHQ-9が10点以上の感度(0.82 [0.76-0.86])は、PHQ-9が10点以上の単独面接(0.86 [0.80-0.90])と比較して有意差はなかったが、特異度は有意ではあったがわずかに高かった(0.87 [0.84-0.89] vs 0.85 [0.82-0.87])。AUCは0.90(0.89-0.91)であった。この組み合わせにより、PHQ-9の全項目を完了する必要のある参加者数を57%(56%-58%)減少させることが推定された(Table4)。

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本研究の強みは、サンプル数が多いこと、すべての研究(発表された研究だけではなく)のすべてのカットオフ値の結果が一致していること、PHQ-2の精度を基準値と参加者のサブグループ別に分けて評価していること、そして、これまでメタアナリシスでは行われていなかったPHQ-2とPHQ-9の組み合わせの評価などである。

Limitation:
第一に、公表されている131件の適格データセットのうち36件(27%)の一次データが含まれていないことである。第二に、サブグループを考慮するとほとんどの場合で改善されたが、研究間では中程度の不均一性があった。これは、精神科以外の医学的診断の有無に関するデータが40%の参加者では得られず、特定の診断についてはより高い割合で欠落していたためであり、また、多くの国や言語を代表する一次研究が少なかったためである。第三に、多くの研究では、すでにうつ病と診断されているか治療を受けている可能性のある参加者を明示的に除外していないが、現在診断されていないか治療を受けていないことが確認された参加者の分析と、これらの情報がない参加者を含むすべての参加者の分析では、統計的に有意な差はなかった。第四に、個々の参加者データのメタアナリシスにおける研究は、実施された面接に基づいて分類されているが、面接が必ずしも意図した方法で使用されているとは限らない可能性がある。半構造化面接を使用した48件の研究のうち、典型的な基準を満たさない面接官を使用した研究が3件、不明確と評価された研究が11件であった。資格のない面接官を使用したことで、基準となる基準カテゴリー間の精度推定値の差が減少した可能性がある。第5に、QUADAS-2のすべての領域においてバイアスのリスクが低いと評価された研究はほとんどなかったため、すべての評価が低い研究のみを用いた感度分析は実施されなかった。

結論と関連性:
PHQスコアと大うつ病診断を比較した研究の参加者データのメタ解析では、PHQ-2(カットオフ2)とPHQ-9(カットオフ210)の組み合わせは、PHQ-9のカットオフスコアが10以上の単独の場合と比較して、感度は同等であったが特異度は高かった。この組み合わせによるスクリーニングの臨床的・研究的価値を理解するためには、さらなる研究が必要である。
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【開催日】2020年9月2日(水)

COVID-19の母体の経過(2020年6月)

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。

-文献名-
Sascha Ellington, et al.
Characteristics of Women of Reproductive Age with Laboratory-Confirmed SARS-CoV-2 Infection by Pregnancy Status — United States, January 22–June 7, 2020
Centers for Disease Control and Prevention MMWR June 26, 2020;Vol.69 :No.25

-要約-
Introduction:
2020年6月16日現在、COVID-19のパンデミックにより、米国では2,104,346人発症し、116,140人が死亡している。妊娠中、女性は免疫学的・生理的な変化を経験する。その変化により、呼吸器感染症による重症化のリスクを高める可能性がある(1,2)。これまでのところ、米国の妊娠中の女性におけるCOVID-19の有病率と重症度を評価するためのデータや、妊婦と非妊婦の間で徴候や症状が異なるかどうかを判断するためのデータは限られている。
Objective:
2020年1月22日から6月7日までに、COVID-19のサーベイランスの一環として、CDCに届け出られた、生殖可能年齢(15~44歳)の女性326,335人を対象とした。全員、COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2の検査結果が陽性であった。妊娠に関するデータを得られた人を対象とした。
Method:
観察研究。検査で陽性または疑いとなったCOVID-19患者は電子的にCDCに届け出られる。2020年1月22日から6月7日までに届け出られたものを解析した。50の州とコロンビア、ニューヨークからの報告が含まれる。データとして、人口統計学的特徴、妊娠状態、基礎疾患、臨床的徴候と症状、および転帰(入院、ICU 入院、機械的人工呼吸器の使用、死亡)を収集した。 データが欠落しているアウトカムは、起こっていないアウトカムであると仮定した。
Results:
 妊娠状況に関するデータは、91,412人(28.0%)で得られた。妊婦は8,207人(9.0%)であった(Table 1)。
 症状は、妊婦の65.2%、非妊婦の90.0%で報告された。症状の報告があったもののうち、妊婦の97.1%、非妊婦の96.9%で症状を認めた。妊婦と非妊婦の間で、咳嗽(51.8%、53.7%)、呼吸苦(30.1%、30.3%)は同頻度であった。妊婦は、頭痛(40.6%、52.2%)、筋肉痛(38.1%、47.2%)発熱(34.3%、42.1%)、悪寒(28.5%、35.6%%)、下痢(14.3%、23.1%)が少なかった。
 慢性の基礎疾患があるのは、妊婦で22.9%、非妊婦で35.0%であった。慢性肺疾患(21.8%、10.3%),糖尿病(15.3%、6.4%), 心血管疾患(14.0%、7.1%)が多かった。
 入院は、妊婦31.5%、非妊婦5.8%だった。ICU入室は1.5%、0.9%、人工呼吸は0.5%、0.3%。死亡は0.2%、0.2%であった。

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Discussion:
 15~44歳の方の5%が妊娠していたことになるが、この割合は予想以上に高くなっている。これは、以下のような可能性がある。
病気のリスク増加に関連しているとも考えられるが、妊婦は非妊婦と比較して医療機関に頻繁に受診するため、検査を受ける割合が高かったかもしれない。 ヒスパニック系および黒人の女性は,妊娠中に SARS-CoV-2 感染の影響を不均衡に受ける可能性がある。さらに、妊娠による入院の違いは、妊婦であるがために入院の閾値が低くなっているだけかもしれない。
 最近のスウェーデンでの研究では、COVID-19を持つ妊婦は、5倍の確率でICUに入院し、4倍の確率で人工呼吸管理を行われていた。死亡リスクは妊娠中と非妊娠中で同じであった。
生殖年齢の女性のインフルエンザ感染における妊婦・非妊婦の違いをみた最近のメタアナリシスでは、妊娠は入院のリスクが7倍高いが、ICU入院のリスクは低く、死亡リスクの増加はなかった。
 この報告書の所見には、少なくとも4つの制限がある。第一に、4分の3の患者で妊娠の有無が不明であったこと。妊娠状態、人種/民族、症状に関するデータ、基礎となる条件、およびアウトカムがかなりの割合で欠損していた。このような状況は、いくつかの特性の過大評価または過小評価につながる可能性がある。第二に、情報を確認して報告するためには、追加の時間が必要かもしれない。ICU 入院、機械的人工呼吸などのアウトカムの有病率を過小評価している可能性がある。第三に、妊娠週数は感染した時期や入院に関連しているかどうかがわからない。COVID-19の病気のためではなく、妊娠中の状態のために入院した可能性がある。最後に、ルーチンの症例サーベイランスでは、妊娠や出産のアウトカムは確認できていない。

【開催日】2020年8月12日(水)

高齢者の降圧剤の減薬について

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。

-文献名-
James P. Sheppard, et al. Effect of Antihypertensive Medication Reduction vs Usual Care on Short-term Blood Pressure Control in Patients With Hypertension Aged 80 Years and Older. JAMA. 2020;323(20):2039.

-要約-
Introduction
高血圧症は心血管疾患の危険因子の第一位であり、多臓器合併症の高齢者では最も一般的な併存疾患である。降圧剤による治療は脳卒中や心血管疾患を予防し、80歳以上の患者の約半数が降圧剤を処方されている。しかし、過去の観察研究では、複数の降圧剤処方による血圧低下が複数の疾病を有する一部の高齢者において有害である可能性を示唆している。
ガイドラインでは、虚弱高齢患者に降圧剤を処方する際には個別の臨床的判断を行うことが推奨されているが、これらのガイドラインは減薬への手順は曖昧であり、エビデンス自体が不足しているため、この分野での研究の必要性が強調されていた。
この試験では、2種類以上の降圧剤を処方されている複数の疾病を有し、収縮期血圧管理が良好な高血圧症の高齢者を対象に、降圧剤の減量に対する構造化されたアプローチを実施した。この試験は、12週間の追跡調査で臨床的な変化(血圧管理不良、虚弱性、QOL、副作用、重篤な有害事象)なしに、部分的にでも降圧剤の減薬が可能であるかどうかを検証することが目的の研究である。

Method
本研究はイングランド南部と中部のプライマリ・ケア施設で実施されたものである。対象となる参加者は80歳以上で、ベースラインの収縮期血圧が150mmHg未満で、2つ以上の降圧剤を12ヶ月以上処方されている方である。対象者の募集を行ったプライマリ・ケア医には、最新のガイドラインやエビデンスについての学習を事前に実施した。参加者はポリファーマシー、併存疾患、薬のアドヒアランスが悪い、虚弱体質などの特徴が一つ以上あり、投薬の中止で恩恵を受ける可能性が高い患者のみが研究に登録された。過去12ヵ月間に左室機能障害による心不全、心筋梗塞または脳卒中の既往歴のある患者、二次性高血圧、また同意能力のない患者は研究から除外された。
参加者は、降圧剤の減薬(介入群)と通常のケア(対照群)に無作為に割り付けられ、研究者と参加者へ隠蔽化された。非盲検化のデザインをとっており、事前に定められた統計解析は、参加者の割り付けとは無関係に実施された。
介入群の減薬後は、プライマリ・ケア医により4週間後の時点で評価され、収縮期血圧が150mmHg以上、または拡張期血圧が90mmHg以上の状態が1週間以上続いた場合、有害事象が発生した場合、または血圧上昇の兆候が見られた場合には、降圧剤の治療再開を行った。対照群に無作為に割り付けられた参加者は、処方された通りにすべての降圧剤を服用し、薬の変更を強制されることなく、通常の臨床ケアに従い、すべての患者は12週間の時点でフォローアップされた。
Primary outcomeは12週間の追跡調査における収縮期血圧コントロールの群間の相対リスクである。血圧測定は、臨床的に検証された血圧計を用いて測定され、測定値は参加者が少なくとも5分間座って安静にした後、適切なサイズのカフを使用して左腕で測定された。Secondary outcomeには、虚弱性、QOL、副作用、重篤な有害事象、収縮期血圧と拡張期血圧の12週間の変化における群間差であった。虚弱性は、Frailty index、Electronic Frailty Index、およびMorley FRAILスケールを用いて定義した。QOLはEQ-5D-5Lを用いて測定され、副作用は、高血圧症に対するRevised Illness Perception Questionnaireを用いて24の項目から発生がないか確認した。重篤な有害事象には、死亡または生命を脅かすものと定義され、入院を必要としたものまたは既存の入院を長期化させたもの、持続的もしくは重大な障害をもたらしたもの、または前述のいずれかのリスクにさらすか、または発生を防止するための介入を必要なものとした。

Result
Primary outcomeは12週目の追跡時の収縮期血圧が150mmHg未満であったのは、減薬群229例(86.4%)、通常ケア群236例(87.7%)であり、降圧剤の減薬は通常のケアと比べて劣らないことを示していた。
Secondary outcomeは12週目の収縮期血圧は、介入群の方が3.4 mmHg高く、虚弱性、QOL、副作用、重篤な有害事象については統計学的に有意な差は見られなかった(以下表参照)。

Discussion
複数の降圧剤を処方されている高齢者を対象とした本非劣性無作為化臨床試験では、通常の治療と比較して降圧薬の減量は、12週間後の収縮期血圧が150mmHg未満の患者の割合に関して非劣性が示された。しかし本研究にはいくつかの限界が示唆される。
第一に、研究の参加者は減薬の恩恵を受ける可能性があるというプライマリ・ケア医の見解に基づいて選択され登録され、ウェブベースの無作為化アルゴリズムと隠蔽化でバイアスを最小限に抑えるように設計されているが、適切にプライマリ・ケア現場の一般集団を示しているか定かではない。
第二に、非盲検化のデザインであることである。しかし、血圧測定は自動血圧計を用いて行われ、医師の介入は最小限で済むため、主要アウトカムの確認におけるバイアスの可能性は低いと考えられる。
第三に、降圧剤減薬群の参加者は、通常のケアと比較して、フォローアップ期間中に少なくとも1回の追加フォロー(4週間後)があるため、受診頻度の増加につながり、有害事象の発生率増加につながっている可能性がある。
第四に、通常ケア群の参加者のうち13人が追跡期間中に降圧剤の減薬を行ったことが、結果に影響を与えた可能性があること。
第五に、フォローアップ期間が短い(12週間)試験のデザインを決定したのは、より長いフォローアップ期間を持つ大規模研究に着手する前に、血圧と有害事象に対する薬物減量の短期的な効果を実証するためという倫理的な理由からである。このため、この研究では群間の有害事象の信頼性の高い比較を行うには力不足であり、その結果、降圧薬の減量による長期的な有益性と有害性は不明のままである。
第六に、非劣性マージンは、医師と患者の治療合意に意義があることに基づいて決定されたものであり、事前のエビデンスに基づいて決定されたものではないことである。
以上の結果から,長期的な臨床結果を評価するためには、今後さらなる研究が必要であるが,一部の高齢の高血圧患者においては,血圧コントロールに大きな変化を伴わずに降圧薬の減量が可能であることが示された。

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【開催日】2020年8月5日(水)