~発売されたばかりの新薬。使う?使わない?~

【文献】
Pelger S. Underhill J.: Evaluating the safety and effdectiveness of new drugs. Am Fam Physician : 82(1)53-57, 2010.

【要約】
《はじめに》
発売されたばかりの新しい薬剤は既存の治療法のように幅広く研究されていなかったり、効果や安全性が十分検討されていないことが多い。
この問題に対処するためにSTEPSという語呂合わせがよりよい意志決定を行うために有用である。
《Safety: 安全性》
入院患者の約6.5%が薬剤の副作用によるものであるという報告がある。
新薬の安全性の問題は治験段階で明らかにならないこともあり、明らかになるのに長期間を要することも多い。米国では販売承認後に重大な副作用が明らかになる薬剤が10%もあり、新薬の重大な副作用が判明するまでの中央値が3年であるという報告もある。
こういった問題の背景には新薬の販売承認の決定が患者数1500人程度の短期間の臨床研究をよりどころとしていることがある。
《Tolerability: 忍容性》
多くの薬剤は症状を治療するためではなく未来に発生しうるイベントのリスクを避けるために処方される。こういった薬が患者の具合を悪くしてしまうのであれば、もはや継続することはできない。
《Effectiveness: 有効性》
97%の新薬は代用エンドポイントを設定した短期間のエビデンスをよりどころとしている。
短期間のエビデンスを元に発売され、その後有害であることが分かった薬剤も多い。
Milrinoneは心不全患者の心拍出量を増大させ運動耐容能を改善するというエビデンスをもとに発売になったがその後、死亡率を上昇させることが分かった。
新薬の採用について考えるとき、いつもこう問うべきである。
「この薬剤には既存の同様の薬剤と比較して私の患者の生命予後やQOLを改善するエビデンスがあるか?」

《Price: 価格》
新薬の価格はその薬剤を自身の治療オプションに加えるときに十分考慮すべきである。
例: ある疾患に対する治療薬Aは40%の治癒率で月20$かかる。治療薬Bは50%の治癒率で月50$かかる。印象ではより多くの患者を治療できるBを選ぶべ きであるように見えるが、仮にこの疾患に対して月10万$しか利用できないと仮定するとAは5000人の患者に投与することができ2000人の患者を救う ことができる。Bは2000人の患者に投与、1000人の患者しか救うことができない。
実際はもっと複雑であり、薬剤の相対的なメリットはその疾患に依存する。
《Simplicity: シンプルに》
投与期間の長い薬剤は1/3~1/2の薬剤が処方箋どおりに服用されていないと言われている。
できる限り単純な投薬スケジュールにすることが重要である、というのが常識であるが、1日1回の薬剤や合剤がadherenceを改善したというよいエビデンスはほとんどない。
ある質的研究では患者にとっては投薬の複雑さそのものよりも、投薬スケジュールを生活の中に取り込んでいくことが難しいようである。
《STEPSに加えて》
 ・ ARRかRRRか
 新薬のパンフレットや臨床研究の結果はARRよりもRRRで報告されることが多い。
このことは薬剤の効果を誇張しやすく、誤解の元となりやすい。
薬剤の効果はARR(NNT)で評価したい。
 ・ 既存の薬剤の新剤型には付加価値があるか?
近 年薬剤メーカーの間で既存の薬剤の新しい剤型(例:徐放性剤、プロドラッグなど)を発売するケースが多い。こういったケースが安全性や効果、 adhereanceを改善するのであれば、付加価値もあろうが、多くの場合ジェネリック薬品の登場に対抗して市場を守るためのものであることが多い。
合剤にも同様のことが言えるが、商品によっては処方を単純にする効果があるものもある。
 ・ 非劣性試験
新薬には監査機関に非劣性試験のエビデンスを提出することにより承認を得たものもある。
非 劣性試験は新薬が既存の標準的な治療薬と比較して劣っていないことをテストすることが目的である。本質的には限られた時間内に類似性を証明する。非劣性試 験は新薬のある疾患の治療における位置づけなどを検討せず薬剤の販売を許可することを目的に商業目的に行われることが多いため、こういった研究が倫理的で あるかが疑問視されている。
こういった薬剤は従来の薬剤に比較して優位であるどころか、効果や安全性の面で劣っている可能性もある。

【開催日】
2010年10月13日(水)

~複雑性をどう評価するか?~

【文献】
Katerndabl DA, Wood R, Jaen CR. A Method for estimating relative complexity of ambulatory care. Ann fam med 2010;8(4):341-7.

【要約】
《目的》
 外来の臨床診療における相対的な複雑性を計算する方法を明らかにする
《方法》
・ 複雑性の測定は、典型的な診察及び診察間の複雑性を反映させるべきである。もし、インプットを患者から医師への情報の流れとするならば、インプットには病 歴、身体診察、検査、診断、患者の属性が含まれる。アウトプットには処方薬や他の治療法(教育やカウンセリング、手技、紹介など)が含まれる。インプッ ト・アウトプットのそれぞれの複雑性は、一診察あたりの平均インプット/アウトプット量に対して診察間の多様性(可能性としての範囲)と変動性(診察毎の 変化)を加重平均したものと定義される。複雑系においては、インプット情報が直線的に増えれば、システムの複雑性は指数関数的に増大する。診察における複 雑性が医師に与えるインパクトを評価するために、我々は推定複雑性を診察時間で調整した。
《結果》
・ 2000年のNAMCSデータベースを用いて、3専門領域のインプットとアウトプットを計算した。構成概念上の妥当性は、今回の複雑性の相対順位を、他 (既存の)の複雑性測定法を利用した順位と比較することで確認した。総相対的複雑性は家庭医療(44.04±0.0024SE)、循環器 (42.78±0.0004SE)では類似しているが、診察時間で調整すると、家庭医療は単位時間あたりの複雑性密度が循環器や精神領域よりも非常に高 かった。(家庭医療167.33±0.0095SE、循環器125.4±0.0117SE、精神領域31.21±0.0027SE)
《結論》
・ この手法では、多様性と変動性を加重した、提供されるケアの量に基づく複雑性を推定している。この推定法は、経時的な利用に加えて、医師間での複雑性の比較などに幅広く活用できる。

【開催日】
2010年9月8日(水)












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