~プライマリ・ケアでの高齢者の持続するめまいの原因~

【文献】
Ottto R. Maarsingh,MD: Causes of Persistent Dizziness in Elderly Patients in Primary Care. Annals of Family Medicine:196-204, 2010.

【要約】
《目的》
 めまいの患者の多くはプライマリ・ケアで診察を受けているが、ほとんどの研究は2次・3次医療機関のものである。我々の目的はプライマリ・ケアでの高齢者のめまいの亜型を明らかにし、めまいの原因を評価することであった。
《方法》
 2週間以上持続するめまいで家庭医に受診している高齢者で、横断研究を行った。
 全ての患者は包括的な評価を受けていた。
 患者のデータは、家庭医、老年科医、高齢者住宅の医師からなる委員会で再検討され、めまいの原因を結論づけた。
《結果》
2006年6月から2008年1月まで、65歳から95歳の417名の患者。
前失神(Presyncope)が最も多い亜型で69%であった。
その他認められた亜型は回転性めまい(vertigo,41%),平衡感覚の障害(disequilibrium,40%),その他のめまい(other dizziness,2%),不明(委員の意見の一致を見なかったもの:no consensus,4%)。
44%の患者において、めまいの症状が複数の亜型に属していた。
心血管疾患が最も多い原因で57%であった(表)。

100922

その次が末梢前庭疾患で14%、精神疾患は10%であった。
薬の副作用が原因と思われたものは23%であった。
62%の患者は複数の原因を合併していた。
《結論》
以前の多くの研究に反して、心血管疾患がプライマリ・ケアでの高齢者のめまいの最も多い原因となっていた。25%は薬の副作用が原因として考えられ、これも以前の研究で報告されているよりも多かった。

【開催日】
2010年9月22日(水)

~Motivational Interviewing(動機づけ面接法)とは?(その2)~

【文献】
ウイリアム・R・ミラー、ステファン・ロルニック 著 松島義博、後藤恵 訳
動機づけ面接法 基礎・実践編. 星和書店,2007.

【要約】
動機づけ面接法(Motivational Interviewing)の精神
もし動機づけ面接法が人とともに在る方法であるならば、その底に流れている精神は、人間の在り方を規定する人間性の本質を理解し、経験するところにある。人が面接の過程をどのように理解し考えるかは、面接の方法に大きな影響を与える。
(1) 協働性:動機づけ面接法の精神の、鍵となる構成要素の1つは、協働性である。動機づけ面接法は、勧告よりも探求を、説得や議論ではなく援助を提供する。動 機づけ面接法の人間関係は、希望や意志(これはたいていの場合、2人の間で異なる)の出会いであるともいえる。自分の意見や身に備わっているものに気がつ かないうちは、全貌の半分しか見えていないのである。
(2)喚起性:協働的な役割を維持するには、面接者が何かを与えるのではなく、当事者その人 の中に、知恵や洞察力、あるいは現実的経験を見出し、引き出すことが必要である。動機づけ面接法の過程は、教え込み・植えつけるのではなく、誘いだし・引 き出す。それは、個人の心の中にある「変化への動機」を見いだし、呼び覚まし、奮い立たせることである。
(3)自律性:問題行動を続けるか否か、 どういう行動を選択するかは、本来その人自身が責任をもって決めるべきことである。つまり動機づけ面接法は個人の自律性を尊重する。心の中にある動機を強 化し、外側から変化を強制するよりも、むしろ自分自身の目標と価値観に従って、内側から変わっていくように援助するのが、最終的な目標である。このよう に、動機づけ面接法が正しく行われると、カウンセラーではなく、クライアント自身が変化について話し始める。
4つの一般原理
(1) 共感を表現する:この共感の根底にある態度は、「受容」である。受容は同意や許可とは違う。個人の意見に同意や支持をせずに、その人を理解し受容すること は可能である。逆説的ではあるが、人をありのままに受容する態度は、その人を自由にして、変わる方向へ導く。一方、非受容的態度は、変化の過程で人を身動 きできなくさせる。行き詰った両価性の状態は、病的で有害な防衛ではなく、変化に当たって一般的な人間的経験とみなされる。

(2) 矛盾を拡大する:当然ながら動機づけ面接法の目的は、人をあるがままに受けいれて、そのままであり続けさせるものではない。動機づけ面接法は古典的なクラ イアント中心カウンセリングと違う方法をとり、両価性を解決するという目的をもって、指示的に行われる。全面的に探索的な、クライアント中心のカウンセリ ングは、人生の悩みなどを解決するなどの目的に用いられる。
そのための原理が、クライアントの観点から現在の行動と幅広い目標や価値観の矛盾を創 り出し、拡大することである。相談に来る人の多くは、すでに現在起きていることと、起きてほしいと望むことの間の、重要な矛盾について認識している。しか し彼らは同時に両価的状態にあり、接近‐回避葛藤にとらわれている。動機づけ面接法の目標は、矛盾を利用し拡大して現状維持の惰性に打ち勝つまで深化させ ることである。これは個人の内側で達成することが重要で、外側からの強制や動機に頼らず、その人自身の内側で矛盾を理解し、変化を選ぶことを追求する。そ のために、現在の行動が妨げている個人の目標や価値観を同定し、明確にすることが重要である。

(3)抵抗に巻き込まれ転がりながら進む:変化を引 き起こすという観点から見て、最も好ましからざる状況は、カウンセラーが変化の必要性を提唱し、クライアントがそれに反対して議論する場合である。直接的 な議論は、クライアントを「変化の反対の立場」に立たせて話をさせ、防衛的に議論させることによって、実際に「変化と反対の方向」に押しやる。(カウンセ ラーが正論を言うと、両価性の立場にあるクライアントはどちらの有用性も感じているため、正論と反対側の立ち位置にならざるをえない)
クライアン トが抵抗を示した時は、カウンセラーが戦略を変えるべき時を示す信号であると考え、思考の枠組みを少し変えたり、ひっくり返したりすることによって、変化 へのはずみをつけることができる。動機づけ面接法では、個人は十分な洞察力と問題解決能力をもった自律的な人間であると想定されているため、抵抗に巻き込 まれながら転がるように進むことで、クライアントを問題解決の過程に積極的に巻き込んでゆくのである。

(4)自己効力感を援助する:カウンセラーが上記の3つの原理に従って面接をすれば、人は自分が大きな問題を抱えていると認識するであろう。しかし、変化の可能性や希望がないと思えば、どのような努力もせず、カウンセラーの努力は無駄に終わるであろう。
カ ウンセラーの変化に対する期待は、治療の結果に強力な効果を及ぼし現実になる。つまりカウンセラーがクライアントの変化する能力を信じていると、予測が的 中して現実になるのである。動機づけ面接法の4つ目の目標は、障害を乗り越えて変化を成し遂げる能力に対する、クライアントの自信を深めることにある。自 己効力感は、変化に対する個人の責任のもう片方の側面である。

【開催日】
2010年9月22日(水)

~認知症患者の介護に有用な「パーソンセンタードケア」①~

【文献】
Philip D Sloane, et al. Effect of Person-Centered Showering and the Towel Bath on Bathing-Associated Aggression, Agitation, and Discomfort in Nursing Home Residents with Dementia: A Randomized, Controlled Trial. J Am Geriatr Soc;52:1795-1804. 2004.

【要約】
《導入》
(認知症の)パーソンセンタードケアとは?
おおもとは、イギリスの心理学者のJ. キットウッドが提唱。
● パーソンセンタードケアのコンポーネント (参考文献より)
•人間性が失われたのではなくて、見えなくなっているだけとみなす。
•全てのケアの場面で、その人の人間らしい側面を重視する。
•環境やケアを個別化したものとする
•意志決定の共有(Shared-decision making)を提案する
•認知症の方の行動を、その方の視点にたって解釈する
•ケアのルーチンタスク(清拭など)と同等に、認知症の方との関係性に重きを置く。
● 今回の文献の中では以下の一連のアプローチを指している。
 ・居住者の快適さと好みを尊重する
 ・行動的症状は、ニーズが満たされていないため起こるとみなす
 ・居住者の認知機能に合わせたレベルのコミュニケーションを行う
 ・問題解決的アプローチを用いる
 ・居住者の快適さのために、環境の調節を図る
《目的》
●介護施設入所中の認知症患者の興奮状態や攻撃的行動を減らすための非薬物的介入(Person-centered showingまたは、Towel-bath)の効果を評価する。
【研究デザイン】
ランダム化比較試験 
【セッティング】
15の高齢者福祉施設(Nursing home)
【論文のPECO】
P;入浴介助時に興奮したり、攻撃的行動がみられた認知症利用者69人と介助する介護者37人
E;①person-centered showering
  ②the towel bath (a person-centered, in-bed bag-bath with no-rinse soap)  ①と②はクロスオーバー
C;通常通りのケア
O;AgitationとAggression、入浴時間・入浴が終えられるか、皮膚の状態、皮膚常在菌叢
 AgitationとAggressionは Care Recipient Behavior Assessment(CAREBA)というスコアで測定された。
 利用者の不快感についても、Discomfort Scale for Dementia of the Alzheimer Typeというスコアで測定された。

《結果》
Primary endopoint
興奮や攻撃的行動
Person centered showering: 53%減少(P<0.001) Towel bath:  60%減少 (P<0.001) Control:  減少なし 不快感スコア Person centered showering:  (P<0.001) Towel bath:  (P<0.001) Control:  減少なし Secondary endpoint 平均入浴時間は、Person-centered showeringのグループの方が、Towel bathのグループより有意に長かった。(3.3分) 体を洗った部分の多さや皮膚状態、皮膚細菌叢については差は見られなかった。 参 考;David Edvardsson, Bengt Winblad, PO Sandman. Person-centred care of people with severe Alzheimer’s disease: current status and ways forward: Lancet Neurol 2008; 7: 362-67 【開催日】 2010年9月15日(水)

~ジェネラリストの重要な役割であるコーディネーションの今後を考える~

【文献】
Stille CJ: Coordinating Care across Diseases, Settings, and Clinicians: A Key
Role for the Generalist in Practice. Ann Intern Med. 2005 Apr 19;142(8):700-8.

【要約】
《背景として》
コー ディネーションはプライマリケアの原則の一つであるが、アメリカにおける医療システムでは徐々に複雑化する医療の中で提供するのが難しくなってきている。 研究や臨床においてそれを推進していくためには、さらなるエビデンスが必要である。ジェネラリストはケアをコーディネートし、ほとんどの患者に対してのケ アのハブとして機能し、臨床医同士のコミュニケーションを改善し、チームアプローチを実施し、患者と家族の関係性を統合し、医療情報を統合するために診療 すべきである。ジェネラリストの診療において中心的要素であるが労力を要する。今後、コーディネーションの本質的要素を同定し、健康度を改善する上で有効 であることを示していく必要がある。
《方法》
5人の臨床医(総合内科医3名、家庭医1名、小児科医1名)によるボランティアグループを作り、コーディネーションについての文献をレビューし、recommendationを作成した。5度の電話会議と頻回のe-mailのやり取りを6カ月にわたり実施した。
その結果、ジェネラリスト診療の観点から以下の問いに対しての研究が選ばれた。
1.コーディネーションがヘルスケアを改善するエビデンスにはどのようなものがあるのか?
2.コーディネーションする際にジェネラリストの診療はどのような役割を果たすべきか?
3.ジェネラリストとスペシャリスト間の協働においてどのような改善をすればよいか?
4.最良のコーディネーションを提供するためにはどのようにチームを構成すればよいか?
5.コーディネーションにおいて患者とその家族はどのような役割を担うべきか?
6.医療情報はコーディネーションにおいてどのように役立つのか?
彼 らはレビュー後にrecommendationとさらなる研究の必要性を指摘した。その後2003年national grantees’ meentingにて100人以上のscholars,mentors,nationally achnowledged expertによって議論され、その内容も結果には盛り込んだ。
《結果》
Consensus Recommendations
1.健康を改善するためのコーディネーションは価値があるということを証明し、コーディネーションモデルにおいて最も有用な要素は何かを同定するために更なる研究が必要である。
2.ジェネラリストはほとんどの患者に対してコーディネーションの医療的側面から適切なハブとなる必要がある。
3.ジェネラリストとスペシャリストは適切なタイミングで、しっかりと計画立てられたケアを保証するためにより密接に協力しあい、コミュニケーションをとらなければならない。
4.ジェネラリストは患者やコミュニティに対して適切で見えやすいチームを構築しなければならない。そしてそのチームを維持しなければならない。
5.コーディネーションにおいて患者と家族の役割はヘルスケアシステムによって育て、盛り上げられなくてはならない。
6.ジェネラリストは知識量を増やすためのコミュニケーションとアクセスを良くするために合理的な情報活用システムを構築すべきである。

【開催日】
2010年9月15日(水)

~スティグマ 慢性疾患に対して個人や社会が与えるインパクト~

【文献】
アイリーン・モロフ・ラブキンら著.”第三章:スティグマ”.クロニックイルネス.医学書院,2007,p43-64

【要約】
《イントロダクション》
スティグマは社会的な”烙印”であり、負の価値判断を与え社会的アイデンテンティを損なわせるものである。
この概念に関して、私たち一人一人が自分の思いと行動を注意深く検討する必要がある
「正常な人々」は誰でも、故意にまたは別の方法で異なる人々をスティグマ化し、社会の中での自分の安定感を最大限に確保しながら自分たちの不安を最小限にする傾向を持つ
<社会的アイデンティティ>
社会的アイデンティティは以下の3つを含む ①身体活動②仕事上の役割③自己の概念
これらのどれかを変化させるものが個人のアイデンティティを変化させ、スティグマが生じる
<乖離としてのスティグマ>
期待される社会的アイデンティティと、現実の社会的アイデンティティの乖離や差異がスティグマとして定義される
  ・損なわれたアイデンティティ
   病気だけでなく、その病気が与える脅威、それに伴う罪や恥の意識がスティグマとなる
    例:アルコール依存症、AIDS患者、てんかん、ダウン症、高齢者でさえも
スティグマの存在下では個人の価値がスティグマの影響を強く受けるため、その疾患の持つ多様性も無視されてしまい、またその他の個人的な特徴も覆い隠されてしまう
  ・顕在型と潜在型
顕在型は目に見える手掛かりを伴う 潜在型ははっきりと欠陥が見えない
 <スティグマの類型>
① 身体的相違(身体障害者、高齢者など) ・・・期待と現実の身体的状態の差異
② 特徴的な欠点(AIDS、同性愛など)・・・社会的認識や文化からの派生
③ 偏見(女性、国籍など)・・・別カテゴリー・グループの特徴への歪んだ認識
これら3つは重複し、それぞれが強化される。また一度スティグマが付与されると、その原因が取り除かれたとしても、その歴史のみで永久にアイデンティティが損なわれる。
<スティグマとしての慢性疾患>
スティグマは社会の価値観と慢性疾患の現実の衝突から生じる。
また病因を特定できないという特徴は、多くの慢性疾患においてスティグマの一因になる。
スティグマは本人とその家族の不公平な治療に結びつく可能性がある。
《スティグマのインパクト》
<スティグマを付与されている人による他者への反応>
  無視、孤立、二次的利得、抵抗、素通り、偽装工作
<スティグマを付与されていない人々への、スティグマを付与されれている人々への反応>
  価値の値引き、ステレオタイプ、レッテル貼り
<保健医療職者のスティグマへの反応と態度>
  スティグマは学生時代の教員やスタッフに感化されやすく、また実際に出会ったクライエント
との出会いや相互作用で変化する
また医学生は自分の健康問題に付与される社会的スティグマを過度に認知し、それを開示する
ことで自分の専門職としての立場が危ぶまれるのではという深い懸念を持つ

《スティグマを付与された人へのインタベンション》
 <自己への反応:態度を変えること>新たなイデオロギーで認識信念パターンを変化させる
 <スティグマとサポートグループ>”同類”の人々に生き方とコミュニティを提供する
 <支援者グループの創出>”事情通”による繊細な理解と、恥を感じさせられることのない関係
 <アドボカシイ>権利擁護によるサポートと代理人機能はスティグマ払しょくの手段となる
 <障害の定義の変化>かけがえのない人として対応されたり、重要他者によって受け入れられたりすることで、スティグマを付与された人が自分の価値について認識を変える
 <専門職者の姿勢:治療とケア> スティグマの管理において①能動受動モデル、②指導協力モデル、③相互参加モデルのどれが適切かを決定することが重要。また医療職者に意識化されていないカテゴリー化やステレオタイプを明確にして修正するプログラムが必要。
  公衆の意識を高めるために”こんなことにならないように”というメッセージはスティグマを増強する作用を持つことを認識する
《スティグマに関するクライエントの望ましいアウトカム》
 心理社会的影響(例:孤立、自尊心の低下、関係の低下、落ち込み・引き籠り)を被らないこと

【開催日】
2010年9月8日(水)

~複雑性をどう評価するか?~

【文献】
Katerndabl DA, Wood R, Jaen CR. A Method for estimating relative complexity of ambulatory care. Ann fam med 2010;8(4):341-7.

【要約】
《目的》
 外来の臨床診療における相対的な複雑性を計算する方法を明らかにする
《方法》
・ 複雑性の測定は、典型的な診察及び診察間の複雑性を反映させるべきである。もし、インプットを患者から医師への情報の流れとするならば、インプットには病 歴、身体診察、検査、診断、患者の属性が含まれる。アウトプットには処方薬や他の治療法(教育やカウンセリング、手技、紹介など)が含まれる。インプッ ト・アウトプットのそれぞれの複雑性は、一診察あたりの平均インプット/アウトプット量に対して診察間の多様性(可能性としての範囲)と変動性(診察毎の 変化)を加重平均したものと定義される。複雑系においては、インプット情報が直線的に増えれば、システムの複雑性は指数関数的に増大する。診察における複 雑性が医師に与えるインパクトを評価するために、我々は推定複雑性を診察時間で調整した。
《結果》
・ 2000年のNAMCSデータベースを用いて、3専門領域のインプットとアウトプットを計算した。構成概念上の妥当性は、今回の複雑性の相対順位を、他 (既存の)の複雑性測定法を利用した順位と比較することで確認した。総相対的複雑性は家庭医療(44.04±0.0024SE)、循環器 (42.78±0.0004SE)では類似しているが、診察時間で調整すると、家庭医療は単位時間あたりの複雑性密度が循環器や精神領域よりも非常に高 かった。(家庭医療167.33±0.0095SE、循環器125.4±0.0117SE、精神領域31.21±0.0027SE)
《結論》
・ この手法では、多様性と変動性を加重した、提供されるケアの量に基づく複雑性を推定している。この推定法は、経時的な利用に加えて、医師間での複雑性の比較などに幅広く活用できる。

【開催日】
2010年9月8日(水)

~プライマリ・ケアの外来における抗菌薬投与が与える抗菌薬耐性への影響~

【文献】
Ceille Costelloe, et.al.: Effect of antibiotic prescribing in primary care on antimicrobial resistance in individual patients: systematic review and meta-analysis. BMJ: volume340, pp2096, 2010.
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【要約】
《目的》
プライマリ・ケアセッティングにおいて抗菌薬を投与された患者に引き続いて起こる抗菌薬耐性に関する研究のsystematic review。可能ならmeta-analysisも実施する。
《デザイン》
Meta-analysisも実施したsystematic review
《Reviewの方法》
MEDLINEやEMBASE、Cochrane data baseを検索して得た4373の文献が対象。
2名の独立した評価者が文献を評価し、データを抽出した。
同様のアウトカムを使用している研究に関してmeta-analysisを実施した。
《結果》
24の研究がレビューに採用された。
22の研究が感染症患者を対象としたもの、2つの研究は健康なボランティアを対象としていた。
19の研究が観察研究(うち2つはprospective)で5つの研究がランダム化試験であった。
尿路感染症を対象とした8つの研究のうち、5つがmeta-analysisに足る研究であった。
抗菌薬による治療後2か月以内の耐性菌検出のオッズ比は2.5(95%CI 2.1 – 2.9)
12か月以内では1.33(95%CI 1.2 – 1.5)であった。
呼吸器感染症を対象とした9つの研究のうち、7つがmeta-analysisに含まれた。
抗菌薬による治療後2か月以内の耐性菌検出のオッズ比は2.4(95%CI1.4 – 3.9)
12か月以内では2.4(95%CI1.3-4.5)であった。
投与した抗菌薬の量についてレポートしている研究では抗菌薬投与期間が長いほど、また複数の抗菌薬を使用したときほど耐性菌検出の頻度が高かった。
抗菌薬による耐性菌検出の違いは今回のレビューでは傾向はつかめなかった。
期間による耐性菌検出の変化を追った研究が1例のみ認められた。
抗菌薬治療後1週間ではオッズ比が12.2(95%CI 6.8-22.1),1か月では6.1(同2.8-13.4),2か月では3.6(同2.2-6.0),6か月では2.2(同1.3-3.6)。
《結論》
呼吸器または尿路感染症にたいして抗菌薬の投与を受けた個人はその抗菌薬に対する耐性を獲得する。
その影響は抗菌薬による治療後の1か月以内がもっとも大きいが、12か月持続する可能性がある。
この影響はfirst lineの抗菌薬に対する耐性菌を地域内にまん延させるばかりでなく、second lineの抗菌薬使用をも増やしてしまう結果を生む。

【開催日】
2010年9月1日(水)

~発作性心房細動の手持ち薬による治療~

【文献】
A John Camm, Irina: PRACTICE Change page – Some patients with paroxysmal atrial fibrillation should carry flecainide or propafenone to self treat. BMJ Volume334, pp637, 2007.

【要約】
《臨床的問題》
 発作性心房細動による、動悸、めまい、倦怠感、胸痛がある患者に、
プロパフェノン(プロノン;クラス1c群)またはフレカイニド(タンボコール;クラス1c群)の内服による自己治療’ポケットに薬’のアプローチ法を提案す る。最近のNational Institute for Health and Clinical Excellenceや国際的なガイドラインで提案されている。
《エビデンス》
 この自己治療の方法を行った212のケースで、厳重な管理のもと経口プロパフェノンにて安全に除細動された場合、病院外での自己治療でも十分に治療に反応することが示された。
実 現可能性を示すキーとなる研究では、病院にて発作性心房細動に対し、経口のフレカイニドまたはプロパフェノンの投与で治療に成功した210の患者が、頻脈 に気づいたら5分以内に一回量を内服するよう適切な薬を渡された。症状が穏やかで比較的心房細動の発作が少なく(病歴12年以下)、発作開始が明確な患者 が選ばれた。さらに48時間以内に不整脈が始まり、平均脈拍数が70回/分以上、収縮期血圧が100mmHg以上の者に限って選ばれた。重度の心疾患が背 景にある患者、予防的抗不整脈薬が投与されている患者、電解質異常がある患者は除かれた。これらの210の患者は、各々の過去のコントロールデータと比較 された。心房細動発作の発生する回数は、それ以前とさほど変わりがなかったが(54.5回v59.8回/1ヵ月)、救急外来を受診する回数は減少した (4.9回v45.6回/1ヵ月、P<0.001)。観察期間中の入院回数も著しく減少した。(1.6回v15回、P<0.001) 《変化への障害》 プロパフェノンもフレカイニドも、患者が発作時に自己治療で使用することは認められていない。自己治療は、左室肥大を伴わない穏やかな心血管疾患の患者や、 心筋梗塞の発症がないよくコントロールされた虚血性心疾患の患者に拡大適用できる。しかし予防的に抗不整脈薬を使ってはいけないし、CHADS score(C=congestive cardiac failure 1点;H=hypertention 1点;A=angina 1点;D=diabetes 1点;S=stroke 2点)が2以上の場合には長期間の抗凝固薬が必要とされる。この治療を勧めるかどうかは心臓専門医次第である。病院におけるこの種の治療のエビデンスは信 用のおけるものだが、過去をコントロールとした一つの研究が、病院外で行うこのテクニックを立証している。 《診療をどのように変えるか?》 ・選択された発作性心房細動の患者に、一回内服分のフレカイニド(300mg)またはプロパフェノン(600mg)を携帯し、動悸がひどくなった場合に自己治療できるという情報提供をすべきである。 ・ 適する患者としては、構造的な心疾患がなく、心房細動のエピソードで症状を経験しているが、発作は頻回ではないこと(一年に3~4回まで)。発作が6時間 以上続くこと、血行動態が安定しており収縮期血圧が100mmHg以上で安静時脈拍が70回/分以上であること。患者がいつ、どのように薬を内服するのか が理解できる必要がある。 ・薬の選択は、以前に病院の管理下で治療に成功したものでなければならない。そのため、フレカイニドまたはプロパフェノンは、救急外来での発作性心房細動の治療のプロトコールの一部となっていなければならない。 ・治療は動悸が30分程度を超えて持続するようなら開始すべきである。薬を内服した後は、発作が止まるまで、又は4時間は座っているか、横になっていてもらう。もし、脈拍が明らかに速くなったり、めまいや失神が起こる場合にはすぐに病院にきてもらう。 ・もし自己治療が失敗した場合は、抗不整脈薬の予防的投与やカテーテルアブレーションなど他の方法を考え、自己治療のアプローチはあきらめる。 【開催日】 2010年9月1日(水)












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