患者中心のケアを患者の視点で測定するためのツール(Systematic Review)

【文献名】

Hudon C. Fortin M, et al. Measuring Patients’Perception of Patient-Centered Care: A Systematic Review of Tools for Family Medicine. Ann Fam Med 2011; 9:155-164.



【要約】

<目的>

患者中心のケアは家庭医療学において中核をなす価値観であることは広く認識されている。
このSystematic Reviewは家庭医療学における患者中心のケアを患者の視点で評価するための測定法、スケール、アイテムを見いだし、比較することを目的とした。



<方法>

MEDLINE、Embase、Cochrane database3つのデータベースを1980年から2009年4月までの期間で検索し、Systematic Reviewを行った。ハンドサーチと専門家からのアドバイスによりこれらの検索結果を補足した。以下の条件をすべて満たす文献を採択した。

(1)    患者中心の視点で患者中心のケアを測定する自記式のツールを使用

(2)    開発と妥当性の検証は量的またはpsychometric(精神測定)な結果で報告していること

(3)    家庭医療の外来診療というセッティングに応用可能であること
採択された文献はStandards for Reporting of Diagnostic Accuracyの修正版を用いて解析した。

それぞれの測定法は患者中心のケアの概念構造(Figure1)のコンポーネントの中にマッピングされた(Table3)。

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<結果>

検索された3045の文献のうち90の文献が詳細に検討され、26の文献が取り扱っていた13の測定方法がinclusion criteriaに合致していた。5つの文献で取り扱われている2つの測定法が患者中心のケア測定のために開発されていた(「the Patient Perception of Patient-Centeredness」と「the Consultation Care Measure」)。21の文献で取り扱われている11の測定法が利用可能な下位尺度、アイテムとして見いだされた。



<結論>

今回見いだされた2つの測定法は患者中心の中核となるコンポーネントをよく測定できるが、単回の外来を取り扱う測定法であり、慢性疾患のマネジメントのような時間をかけたケアのプロセスを研究する場合、その適用には限界がある。11の測定法は患者中心のケアの概念を部分的にはカバーしているが、患者中心のケアを特異的に評価するためにデザインされたものではなかった。



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今回採用された文献の一覧はTable 1.



PPPCは直近の家庭医療外来を患者の視点で評価する方法。4段階のリッカートスケールを用いた14の質問項目で構成されている(Cronbach’s α reliability = 0.71)。不快や不安からの回復・軽減、初回外来から2か月後の感覚的な健康観、不要な検査や専門医へのコンサルトの少なさとよく相関した。
CCMもPPPCと同様、直近の家庭医療外来を患者の視点で評価する方法。4段階のリッカートスケールを用いた21の質問項目(コミュニケーションとパートナーシップ、人間関係、ヘルスプロモーション、ポジティブで明快な問題へのアプローチ、人生・背活への影響に対する関心、の5つにグループ分けされている)で構成されている(Cronbach’s α reliability = 0.84-0.96)。患者満足度、Enablement、症状の軽減、不要な専門医へのコンサルトの減少と相関する。



【開催日】

2011年8月17日

アルツハイマー病患者のうつ症状にセルトラリン、ミルタザピンは無効かもしれない

【文献名】

Sertraline or mirtazapine for depression in dementia (HTA-SADD): a randomised, multicentre, double-blind, placebo-controlled trial. The Lancet, Volume 378, Issue 9789, Pages 403 – 411, 30 July 2011.



【要約】
うつ症状を示すアルツハイマー病患者に、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)のセルトラリン、ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)のミルタザピン、偽薬のいずれかを投与した無作為化試験の結果が、Lancet誌2011年7月18日号に掲載された。英London King’s CollegeのSube Banerjee氏らによると、13週後と39週後のうつ症状の変化において、どちらの抗うつ薬にも偽薬を上回る利益は見られず、有害事象発生率は高かった。

認知症患者の多くはうつ症状を示すが、適切な薬物療法を示した質の高いエビデンスはない。



現状では、主要学会は抗うつ薬の認知症患者への適用を支持しており、セルトラリンなどが第1選択として処方されている。高齢化が進む先進国では、認知症患者のうつは臨床的に重要な領域であると考えた英National Institute of Health Research (NIHR)は、著者らに臨床試験の実施を依頼した。



そこで著者らは、英国で最もよく処方されているセルトラリンとミルタザピンの有効性と安全性を偽薬と比較する、二重盲検の無作為化試験HTA-SADDを実施した。

イングランドの高齢者精神医療施設9カ所で、07年1月から09年12月まで、患者登録を実施。NINCDS-ADRDA基準に基づいてアルツハイマー病疑いまたは可能性例と判定された患者の中から、4週間以上うつ状態が続いており、Cornell認知症抑うつ尺度(CSDD)のスコアが8以上の人々を選んだ。臨床的に危険な状態(自殺リスクが高いなど)の患者などは除外した。

登録患者は、1対1対1の割合で、セルトラリン(目標用量は150mg、107人、平均年齢80歳)、ミルタザピン(同45mg、108人、79歳)、偽薬(111人、79歳)のいずれかに無作為に割り付けた。4週と8週の時点でCSDDスコアを調べ、いずれも4以上なら増量するとした。

主要アウトカム評価指標は、13週時点のCSDDスコアに基づくうつ状態の軽減とし、2次評価指標として39週時点のCSDDスコアなどを評価した。

39週までの脱落は、セルトラリン群が35%、ミルタザピン群が29%、偽薬群が24%だった。1日用量の平均は、登録患者全体ではセルトラリンが70mg、ミルタザピンが24mgで、脱落患者を除くとそれぞれ95mgと30mgになった。



どのグループでも、うつ症状はベースラインに比べ軽快化していた。13週時点でCSDDスコアの低下が最も大きかったのは偽薬群で、-5.6ポイント。セルトラリン群では-3.9ポイント、ミルタザピン群では-5.0ポイントだった。39週時点では、それぞれ-4.8ポイント、-4.0ポイント、-5.0ポイントだった。



線形回帰混合モデルを利用し、ベースラインのCSDDスコア、時間、施設で調整して平均差を求めた。ベースラインから13週までのうつスコアの低下レベルに有意差はなかった。セルトラリン群の偽薬群との平均差は1.17(95%信頼区間-0.23から2.58、P=0.10)、ミルタザピン群の偽薬群との平均差は0.01(-1.37から1.38、P=0.99)で、セルトラリン群をミルタザピン群と比較した場合の平均差は1.16(-0.25から2.57、P=0.11)だった。39週の時点でも結果は同様で、偽薬群との平均差は、セルトラリン群が0.37(-1.12から1.87、P=0.62)、ミルタザピン群は-0.66(-2.12から0.79、P=0.37)だった。



ベースラインのうつ病の程度で患者を層別化(CSDDのスコアが8~11か12以上か)して分析したが、やはりこれら2種類の抗うつ薬の有効性は認められなかった。

39週までの消化器症状、神経学的症状などの有害事象発生率を調べたところ、偽薬群は29人(26%)、セルトラリン群は46人(43%、P=0.010)、ミルタザピン群は44人(41%、P=0.031)だった。

この試験では、偽薬を上回る抗うつ薬の利益は見られず、有害事象のリスクは有意に高かった。著者らは、「得られた結果はネガティブだが臨床的には重要だ」という。この試験では、割り付けから13週時点で偽薬群のうつスコアにも改善が見られたことから、「うつ症状が見られてから3カ月程度は観察を継続し、変化が見られないケースにのみ抗うつ薬の使用を考慮した方が良いのではないか」と著者らは述べている。いずれにせよ、認知症患者のうつに対する第1選択としてこれらの薬剤を用いることについては、再考が必要だろう。



【開催日】

2011年8月10日

褥瘡を悪化させず介護負担軽減にも有用な「体位交換法」

【文献名】

大浦武彦,見て・考える褥瘡ケア 創面をみればすべてがわかる ここで差がつくテクニック,

中山書店:p106,2010年9月


【要約】
褥瘡の発生要因でもあり、治癒阻害要因であるものが「圧」と「ズレ」である。これらは治療で排除できる種類のものではなく、ケアこそがその役割を担うことになる。このために、褥瘡においてはケアが非常に重要で、ケアと治療が車の両輪のようにうまく機能してこそ、褥瘡は予防でき、また治癒させることができるのである。

 すなわち、褥瘡ケアの質は、いかに「圧」と「ズレ」を排除できるかにかかってくる。



○想像以上に大きい「圧」と「ズレ」

背上げや体位変換時に生じた「圧」と「ズレ」は、想像以上に大きい。背上げをしただけでも「圧」と「ズレ」は背中と殿部に滞留する。そこで、背上げや体位交換時には必ず「背抜き」を行わなければならない。



○背抜き

健常者が姿勢を変えた時、例えば椅子で座位姿勢を変える時、無意識ながら、最後に必ず少し腰を浮かして姿勢を整えるが、背抜きでは、その動作をケアで行うことをイメージすればよい。健常者が無意識に行うその動作が障害をもつと容易にできなくなるので、それを支援するということである。

 姿勢を変えた時、「圧」と「ズレ」が過剰にかかる部分を少し浮かせるようにして、そこに手のひらをさっと通す。この時’マルチグローブ’などを用いると、適切に確実に「圧」と「ズレ」を排除できる。



○褥瘡と患者に優しい体位交換

背抜きを行うことは前述の通りであるが、体位交換の方法そのものを工夫することも必要である。’マルチグローブ’をはめた両腕を、患者の身体の下(特に仙骨部の突出した部分)をくぐらせるようにして、そのまま患者の身体(特に褥瘡部位)を両上腕にのせたままスライドさせるように体位交換を行うと、「圧」と「ズレ」の発生を大幅に減らすことができる。
 この場合、両腕をスライドさせるのであって、患者をもち上げない。
 

参考動画:http://www.youtube.com/watch?v=yYAG4AE7ys8



【開催日】

2011年8月3日

スタチンを実際に使用して、副作用はどの程度起こるか? UKでのProspective コホート研究より

【文献名】

Julia Hippisley-Cox : Unintended effects of statins in men and women in England and Wales: population based cohort study using the QResearch database(¶1)  BMJ 2010;340:c2197



【要約】

<Objective>

To quantify the unintended effects of statins according to type, dose, and duration of use.



<Design>

Prospective open cohort study using routinely collected data. 



<Setting>
368 general practices in England and Wales supplying data to the QResearch database. 【Participants】 2 004 692 patients aged 30-84 years of whom 225 922 (10.7%) were new users of statins: 159 790 (70.7%) were prescribed simvastatin(訳注;リポバスR), 50 328 (22.3%) atorvastatin(訳注;リピトールR), 8103 (3.6%) pravastatin(訳注;メバロチンR), 4497 (1.9%) rosuvastatin(訳注;クレストールR), and 3204 (1.4%) fluvastatin(訳注;ローコール).



<Methods>

Cox proportional hazards models were used to estimate effects of statin type, dose, and duration of use. The number needed to treat (NNT) or number needed to harm (NNH) were calculated and numbers of additional or fewer cases estimated for 10 000 treated patients.



<Main outcome measure>

First recorded occurrence of cardiovascular disease, moderate or serious myopathic events, moderate or serious liver dysfunction, acute renal failure, venous thromboembolism, Parkinson’s disease,dementia, rheumatoid arthritis, cataract, osteoporotic fracture, gastric cancer, oesophageal cancer, colon cancer, lung cancer, melanoma, renal cancer, breast cancer, or prostate cancer.



<Results>

(To help reading, I added the number to the original article. See Table6 in original article.)

1.Individual statins were not significantly associated with risk of Parkinson’s disease, rheumatoid arthritis, venous thromboembolism, dementia, osteoporotic fracture, gastric cancer, colon cancer, lung cancer, melanoma, renal cancer, breast cancer, or prostate cancer. 

2.Statin use was associated with decreased risks of oesophageal cancer but increased risks of moderate or serious liver dysfunction, acute renal failure, moderate or serious myopathy, and cataract. 

3. Adverse effects were similar across statin types for each outcome except liver dysfunction where risks were highest for fluvastatin. A dose-response effect was apparent for acute renal failure and liver dysfunction. All increased risks persisted during treatment and were highest in the first year. After stopping treatment the risk of cataract returned to normal within a year in men and women. Risk of oesophageal cancer returned to normal within a year in women and within 1-3 years in men. Risk of acute renal failure returned to normal within 1-3 years in men and women, and liver dysfunction within 1-3 years in women and from three years in men.

4. Based on the 20% threshold for cardiovascular risk, for women the NNT with any statin to prevent one case of cardiovascular disease over five years was 37 (95% confidence interval 27 to 64) and for oesophageal cancer was 1266 (850 to 3460) and for men the respective values were 33 (24 to 57) and 1082 (711 to 2807).

5. In women the NNH for an additional case of acute renal failure over five years was 434 (284 to 783), of moderate or severe myopathy was 259 (186 to 375), of moderate or severe liver dysfunction was 136 (109 to 175), and of cataract was 33 (28 to 38). Overall, the NNHs and NNTs for men were similar to those for women, except for myopathy where the NNH was 91 (74 to 112).



<Conclusions>

Claims of unintended benefits of statins, except for oesophageal cancer, remain unsubstantiated, although potential adverse effects at population level were confirmed and quantified. Further studies are needed to develop utilities to individualise the risks so that patients at highest risk of adverse events can be monitored closely.

【開催日】

2011年8月3日

プラザキサの費用対効果はどれくらいか?

【文献名】

Shimoli V. Shah and Brian F. Gage. Cost-Effectiveness of Dabigatran for Stroke Prophylaxis in Atrial Fibrillation. (Circulation. 2011;123:2562-2570.)



【要約】

<Background>

Recent studies have investigated alternatives to warfarin for stroke prophylaxis in patients with atrial fibrillation (AF), but whether these alternatives are cost-effective is unknown.



<Methods and Results>

On the basis of the results from Randomized Evaluation of Long Term Anticoagulation Therapy
(RE-LY) and other trials, we developed a decision-analysis model to compare the cost and quality-adjusted survival of various antithrombotic therapies. We ran our Markov model in a hypothetical cohort of 70-year-old patients with AF using a cost-effectiveness threshold of $50 000/quality-adjusted life-year. We estimated the cost of dabigatran as US $9 a day. For a patient with an average risk of major hemorrhage (3%/y), the most cost-effective therapy depended on stroke risk. For patients with the lowest stroke rate (CHADS 2 stroke score of 0), only aspirin was cost-effective. For patients with a moderate stroke rate (CHADS 2 score of 1 or 2), warfarin was cost-effective unless the risk of hemorrhage was high or quality of international normalized ratio control was poor (time in the therapeutic range 57.1%). For patients with a high stroke risk (CHADS 2 stroke score 3), dabigatran 150 mg (twice daily) was cost-effective unless international normalized ratio control was excellent (time in the therapeutic range  72.6%). Neither dabigatran 110 mg nor dual therapy (aspirin and clopidogrel) was cost-effective.



<Conclusions>

Dabigatran 150 mg (twice daily) was cost-effective in AF populations at high risk of hemorrhage or high risk of stroke unless international normalized ratio control with warfarin was excellent. Warfarin was cost-effective in moderate-risk AF populations unless international normalized ratio control was poor.



【開催日】

2011年7月26日

THE GEOGRAPHY OF THOUGHT~木を見る西洋人 森を見る東洋人

【文献名】

木を見る西洋人 森を見る東洋人~思考の違いはいかにして生まれるか
リチャード・E・ニスベット著 ダイヤモンド社2004年



【この文献を選んだ背景】

7月に来日していたフリーマン先生と、患者中心の医療の考え方について話していた。その時に共同研究の話になり、東洋的な思考も交えるとまた違ったものができるかもねという話になり、私も実は今こんな本を読んでいるんだ!と紹介を受けた本。日本語訳も出ていることを知り今回読んでみたので共有する。



【要約】

東洋と西洋の考え方に優劣はない。単に異なる、ということが大事である。ただ異なる文化の人々のものの考え方について学ぶことは自分自身のものの考え方を向上することにつながるはずである。



<古代ギリシア人:主体性>

国土は山岳地帯が多く、狩猟・牧畜・漁・貿易に適しており、他者との協力をあまり必要としない。
これはの経済活動は、共同体に定住していなくても行うことができる。
都市国家であり、民会で合理的な議論を行っていた。
自分の人生を自分で選択したまま生きる。
幸せの定義は、制約から解き放たれた人生を謳歌するという意味。
ギリシア哲学:周囲から切り離された対象物それ自体を単独で観察し分析する。→「自然」の発見。
対象物に規則を適応するには、まず分類する必要がある。
世界は不動不変である。



<同時代の中国人:調和>

稲作はお互いに協力して土地を耕す必要があるため、調和はとりわけ重要である。
個人は何よりもまず、氏族や村落、家族といった「集合体の一員」であった。
幸せの定義は、調和のとれた人間関係の輪の中で平凡ながら満ち足りた田舎生活を送ることだった。
世界は絶え間なく変化し、また矛盾に満ちている。また万物は互いに影響しあう。


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【考察とディスカッション】

医学部教育など自然科学的、西洋的な思考で教育されてきていると思われる。その中で今回、西洋社会のコンテクストを多少なりとも知れたことは興味深い。患者中心の医療の方法は、私たち日本人が考えている以上に、カナダで開発されたインパクトは大きいのかもしれない。各コンポーネントを統合したり包括したり、関係性の中で物事をとらえたり、といったいわば東洋的な思考の要素が多くある。
Common groundの立ち方であるケンブリッジモデル(トレードしていくようなイメージ)などは、西洋的であり、東洋ではまた違ったプロセスが医師患者関係の間に働いているような気がする。
ただ教育方略として、抽象化してカテゴリー化するのは有効である。また日本オリジナル(東洋ワールド版)の患者中心の医療の方法、の可能性もありそうだと感じた。



【開催日】

2011年7月26日

ソーシャルメディアのリスクマネージメントをどうしていますか?

【文献名】

Moubarak G, Guiot A, Benhamou Y, et al. Facebook activitiy of residents and fellows and its impact on the doctor-patients relationship. J Med Ethics 2011;37: 101-104



【要約】

<目的>

FacebookがSNSとして人気を博している。研修医とフェローのFacebookの活動と、医師患者関係におけるFacebookのインパクトに関する意見について記述することを目的とする。



<方法>

2009年10月にフランスのルーアン大学病院の405名のレジデントとフェローに匿名の質問票をメールで送った。



<結果>


202名(50%)の参加者から返答が得られた。147名(73%)がFacebookのProfileを持っていた。その解答者の中で138人(99%)がプロフィールに実名を表示しており、136人(97%)が誕生日を表示、128名(91%)が個人的な写真を表示、83名(59%)が現在の大学、76名(55%)が現在の立場を表示していた。プライバシーの初期設定を61%のユーザーが変更しており、登録して1年以上している人が優位に多く(P=0.02)変更していた。もし患者が友達のリクエストをしたとしたら、152名(85%)の参加者が自動的にリクエストを拒絶するつもりであり、26名(15%)が個々人の基準によって決めるつもりで、自動的にリクエストを受け入れるつもりの人は一人もいなかった。医師がFacebookアカウントを持っていることを患者が発見したら、88名(48%)が医師患者関係が変わり得ると信じている。しかし139名(76%)が医師のProfileにオープンアクセスがある場合にのみ、その内容とは独立してその関係が変化しうると考えている。



<結論>

研修医とフェローはFacebookを使用しており、個人情報を自分のProfileに表示している。不十分なプライバシーの保護が医師患者関係に影響を与えるかもしれない。



【考察とディスカッション】

上記以外にもBMAの指針のKey pointとして

・保守的なプライバシーのセッティングを適応するよう考えるべき。web上では全ての情報が守られているわけではない。

・患者を守るための倫理的、法律的な義務が、その他のメディアと同様に適応される

・公開されたネット討論会の場で患者や同僚に対しての非公式の、個人的な、侮蔑的なコメントを投稿するのは不適切である

・ネットへ投稿する医師や医学生は、インターネットでの論争に対する立場表明をする倫理的な責任を負う

・個人あるいは専門科の能力でなされたweb上のコメントに対して名誉棄損の法律が適応される
といった項目が挙げられていた。

医師患者関係を考えた時には、患者からも見られているかもしれないという意識をもって、FacebookのProfileの設定について慎重な吟味が必要と思われた。

上記のような指針は今後日本でも出てくるかもしれず、確かに慎重になる必要を感じる。しかしその一方で家庭医仲間によるFacebook上の議論から得られる利点も日々感じている。(この論文自体もFacebookで知った。)
逆にFacebookを利用しての、良好な医師患者関係を促進できるアイデア・取り組みをされている方がいれば、是非具体的な方法を聞いてみたいと思った。



【開催日】

2011年7月19日