果物、野菜の消費量と死亡率の関係

―文献名―
Fruit and vegetable consumption and mortality from all causes, cardiovascular disease, and cancer: systematic review and dose-response meta-analysis of prospective cohort studies. BMJ. 2014 Jul 29;349:g4490.

―要約―
【背景】
果物や野菜の消費量を増やすと、心血管疾患やがんによる死亡リスクが低下することを示すエビデンスが増えている。しかし、結果は必ずしも一致していない。

【分析対象】
前向きコホート(全ての原因、心血管、癌での果物と野菜の消費量のレベルで死亡のリスクを推定した)

【結果】
16のコホート研究がこのメタ分析に適していた。4.6-26年のフォローアップ期間中、833234人の参加者の中で56423人が死亡(心血管11512人、癌16817人)を含む。果物や野菜の高い消費が全死因の死亡リスクの低さと関連していた。全死因における死亡率のプールハザード比は、1日1盛り(1皿)の果物と野菜の増加で0.95 (95%信頼区間0.92-0.98、P=0.001)、果物だけで0.94(95%信頼区間0.90-0.98、P=0.002)、野菜で0.95(95%信頼区間0.92-0.99、P=0.006)。敷居値は5盛り(5皿)の果物と野菜で、その後は全ての原因の死亡のリスクは下がらなかった。心血管死亡率は有意な逆相関が見られたが(1日に果物と野菜のそれぞれを追加したハザード比は0.96、95%信頼区間0.92-0.99)、一方で癌の死亡リスクは果物や野菜の消費量が高くても関連はなかった。※ 1盛り:野菜77g   果物80g

全死因による平均死亡リスクは、1日の果物や野菜消費量が1皿増えると5%低下し、心血管死のリスクは果物や野菜が1皿増えるごとに4%減少。

【考察・結論】
研究チームは「適切な量の果物や野菜を食べるアドバイスを提案するだけではなく、肥満・運動不足・喫煙・アルコール摂取量の多さががんのリスクに与える悪影響をさらに強調すべきだ」と示唆している。本研究結果は、健康と長寿を促進するために果物や野菜の消費を高める現在の勧告を支持するものである。

【開催日】
2014年8月20日(水)

家族歴の把握

―文献名―
Jon D. Emery, et al. Development and validation of a family history screening questionnaire in Australian primary care. Annals of family medicine. 2014, vol. 12, no. 3, p. 241-249. 

―要約―
【目的】
オーストラリアのプライマリ・ケアにおいて、乳癌、卵巣癌、大腸癌、前立腺癌、メラノーマ、虚血性心疾患、2型糖尿病のリスクが高い人を同定するための家族歴スクリーニング票の効果を実証することを目的とした。

【方法】
オーストラリア、パースにある6つの診療所にて前向きに調査を行った。対象者は、受診したことのある診療所から一通の招待状を受け取り、参加を表明した20~50歳代の526人の患者である。対象者は15項目からなる調査票に記入し、その後、調査票に書かれた内容を知らない遺伝カウンセラーにより参照基準となる3世代の家系情報を聴取される。この家系情報を基準(reference standard)として調査票の診断能について統計解析を行った。 

【結果】
7つの疾患いずれかのリスクが増加するかどうかを調べるためには、9つの質問の組み合わせが以下の診断能を有していた。Area under the receiver operating characteristic curve 84.6%(95%CI  81.2%-88.1%)、感度95%(92%-98%)、特異度54%(48%-60%)。男女別に5-6疾患のいずれかのリスクが増加するか調べるための質問の組み合わせでは、男性;感度92%(84%-99%)、特異度63%(28%-52%)、女性;感度96%(93%-99%)、特異度49%(42%-56%)。陽性予測値は男性;67%(56%-78%)、女性;68%(635-73%)、偽陽性率は男性;9%(0.5%-17%)、女性;9%(3%-15%)であった。

【結論】
家族歴があることで疾患のリスクが高くなる、プライマリ・ケア領域の患者を同定するために、簡単な家族歴スクリーニング票が有効であることがわかった。プライマリ・ケアにおいて個々人に合わせた疾病予防を行っていくための包括的アプローチの一部として活用できるだろう。

【開催日】
2014年8月20日(水)

ルシファー効果とは? ~普通の人がダークサイドへ堕ちるとき~

―文献名―
フィリップ・ジンバルド:普通の人がどうやって怪物や英雄に変貌するか. TED2008・23:16・Filmed Feb 2008 
著者はアメリカの心理学者で、スタンフォード大学の名誉教授。
 http://www.ted.com/talks/philip_zimbardo_on_the_psychology_of_evil?language=ja
 (内容理解のために、以下のジンバルド氏のインタビューサイトも参考にした。
  ・人が悪魔になる時――アブグレイブ虐待とスタンフォード監獄実験(1)~(2) )

―要約―
<善良な人が悪人に変貌することはいかに簡単かを理解すべきである>
 善悪の境界線は不動で、むこうとこちらには多きな隔たりがあると信じている人が多いが、その境界線は可変性があり、浸透性が存在する。エッシャーの素晴らしいだまし絵は、白に集中すると天使が見えるが、じっくり見ると悪魔が見える。
 神のお気に入りの天使はルシファーであったが、神に従わず権限への究極の抵抗を始め、天国から追放された。そしてルシファーはサタンとなり悪魔となった。いわば悪を保管する場所をつくったのは神である。この「天使から悪魔」の宇宙的変貌の物語には、普通の善良な人間が悪の根源へ変貌する人間性を理解するためのヒントがある。

<個人の属性帰属ではなく、外部要素にこそ悪に堕ちるシステムが存在する>
 「アブグレイブ事件(2004)の非公開写真」や「スタンフォード監獄実験(1972)」からの考察。アブグレイブ事件では普通のアメリカ兵が信じがたいような虐待を行っていた。また自分が過去に行ったスタンフォード監獄実験でも、瓜二つの減少があった。いずれからも立てた仮説は「関わった人は通常は善良な人で、原因は”腐った樽(環境)”」ということであった。決して「環境が正常で、”腐ったリンゴ”のような人間が混ざっていただけ」ということではない。
 アブグレイブ事件では、職務として多数の調査報告を読み、兵士の鑑定人として面会し精神鑑定を行った。そこでわかったことは、関わった兵士は、もともと本来の任務の訓練を受けておらず、虐待の場所が軍事情報の中心地にも関わらず情報が無いまま、周囲の取り調べの上官から「犯罪者の意思を砕け、尋問に備えるために弱らせて、自己制御をはずさせろ」と圧力をかけられ、一線を越えさせられてしまったこと。この複数の状況の力は時に強大で、感情移入や利他主義、道徳性が機能しなくなり、普通の人どころか善良な人までもが悪に手を染めてしまう。ただし、あくまでその状況下のみ。個人の属性帰属ではなく、外部要素にこそ悪に堕ちるシステムが存在する。

<ルシファー効果とは、普通の人にある複数の条件が揃ったときに恐るべき行動を取る仕組み>
 その中で発見した『ルシファー効果』は、善人が悪人に変貌する過程である。
●その悪が”(やむを得ない)強烈な状況の産物”であると証明されると、その状況の中にいる人間の自由な意志や責任能力が減退 [例:アブグレイブでは囚人の暴動が起き、手当たりしだいの拘束が始まり、収容所の人数も定員200名に1000名と看守たちの限界を超えていた]
●同時に強い恐怖やストレスがベースに持続していると意思決定能力と責任能力を喪失 [例:アブグレイブの周囲では砲撃戦が続き、働く兵士は皆、強い恐怖とストレスに晒され、また看守たちは12時間勤務で週7日休日なしの勤務であった]
●そのベースから(通常は制限されている行為が無条件となるように)ある制限が解除(一線を越えることが容認)されると人間性が喪失、情緒的な衰弱状態に転落 [例:犯罪の中核の看守はそうなる前には『精神に異常を来たしたもの、結核の患者、大人と子供が混ざっていて監獄の管理上どうか』と疑義を呈していたが、上官から『ここは戦地だ。自分の任務を果たすため、必要なことは何でもやれ』と命ぜられた。また『収容者の抵抗を打ち砕くために、通常は憲兵に許されていないことを実行する許可を与える』と言明された。]
●この傾向は、無力感を持った(苦痛を受けた)人間が、誰かを支配する(苦痛を与える)人間になるときに顕著
 [例:虐待した看守たちは任務ための特別な訓練を受けていない予備役であり、軍隊の最下層の集団として扱われており、自らも本当の兵士では無いと自覚している。無力感を持っている人間が、誰かを支配する力を握ったとき、その地位に値する人間であると証明するように力を乱用する。]

<悪を予防するための、悪と紙一重の英雄的な精神と想像力>
 予防や対処としては、現状が道徳的に間違っていると周囲と同意形成すること。(悪魔になる人も元々は英雄で)その英雄的な精神や英雄的な想像力を戻してもらう(我にかえる)ことが必要。
 英雄的行為も悪魔的行為と同様で、普通の人の非日常的な行為である。英雄的に振舞うことは、群衆から離れて異なったことをするということで追放のリスクが伴う。アブグレイブの虐待を止めた下等兵も告発後は3年間隠れないといけなかった。英雄は孤立するリスクを減らすため同意形成した複数人集まることが重要。
 状況には力があり、同じ状況が悪意の想像力をかきたて悪の加害者にすることもあれば、英雄的な想像力を刺激し英雄に押し上げることもある。違いは「1.周囲が受け身の時にこそ行動を起こす、2.常に自分中心ではなく社会中心に行動する」こと。

【開催日】
2014年8月13日(水)

高齢者における低い機能的健康リテラシーと死亡率の関連:縦断的コホート研究

―文献名―
Sophie Bostock, Andrew Steptoe, Association between low functional health literacy and ortality in older adults: longitudinal cohort study, BMJ, 2012;344:e162

―要約―
Objective 
 To investigate the association between low functional health literacy (ability to read and understand basic health related information) and mortality in older adults.

Design 
 Population based longitudinal cohort study based on a stratified random sample of households.

Setting
 England.

Participants
 7857 adults aged 52 or more who participated in the second wave (2004-5) of the English Longitudinal Study of Ageing and survived more than 12 months after interview. Participants completed a brief four item test of functional health literacy, which assessed understanding of written instructions for taking an aspirin tablet.

Main outcome measure
 Time to death, based on all cause mortality through October 2009.

Results
 Health literacy was categorised as high (maximum score, 67.2%), medium (one error, 20.3%), or low (more than one error, 12.5%). During follow-up (mean 5.3 years) 621 deaths occurred: 321 (6.1%) in
the high health literacy category, 143 (9.0%) in the medium category, and 157 (16.0%) in the low category. After adjusting for personal characteristics, socioeconomic position, baseline health, and health behaviours, the hazard ratio for all cause mortality for participants with low health literacy was 1.40 (95% confidence interval 1.15 to 1.72) and with medium health literacy was 1.15 (0.94 to 1.41) compared with participants with high health literacy. Further adjustment for cognitive ability reduced the hazard ratio for low health literacy to 1.26 (1.02 to 1.55).

Conclusions
 A third of older adults in England have difficulties reading and understanding basic health related written information. Poorer understanding is associated with higher mortality. The limited health
literacy capabilities within this population have implications for the design and delivery of health related services for older adults in England.

【開催日】
2014年8月13日(水)

ソーシャルキャピタルとは

―文献名―
イチロー・カワチ 「命の格差は止められるか ハーバード日本人教授の世界が注目する授業」小学館 2013年8月

―この文献を選んだ背景―
地域包括ケアは、介護・医療・福祉レベルで、診療所が主語の場合考えられることが多い。ただ民の生活や暮らしを考えると、コミュニティにおける「社会関係資本=ソーシャルキャピタル」が重要となる。また家族という形式が、今後多様になるにつれて、地域のネットワークとしてのーシャルキャピタルも鍵を握ることが考えられ、一度、ソーシャルキャピタルについての自分の立ち位置を整理したく本テキストを読んでみた。

―要約―
ソーシャルキャピタル=社会関係資本
平たく言うと、「社会における人々の結束により得られるもの」のこと。例えば「人々の絆」「お互い様の文化」「地域の結束力」「情けは人のためならず」「遠くの親戚より近くの他人」により皆さんが生活の中で得ているもの。
地域や人との信頼感をもとに、ひとが他人を思いやる協調的な行動をとり、それが地域全体や自分の財産になるという考え方に根ざしている。

第4章 健康に欠かせない「人間関係」の話
 アメリカにおける自殺、他殺、事故で亡くなる可能性をみてみると、人との繋がりが薄い人–つまり、
結婚していなかったり、親族がいなかったり、教会に通っていなかったりすると、死亡リスクが2倍以上になることが分かった。なぜ人との繋がりが強いと、健康になるのか?
メカニズム①:人とのつながりが、その人の行動を決める
   ・毎週たべる野菜の量は、男女ともに結婚すると増え、離婚もしくは伴侶が死別すると減る。
   ・飲酒:男性は離婚や死別による飲酒量が増える、女性は飲酒量が減る。
メカニズム②:人と交わるだけで健康になる
   ・人との交わりで保たれる身体の能力や機能があり、健康でいられる(DSへ通い出した方)
   ・家に閉じこもりの高齢者は、ADL低下や認知機能低下を来しやすい。
メカニズム③:つながりから生まれる支援の力
   ・家族、親戚、友人、同僚、上司、遊び仲間、サークルなどの組織からのサポートのこと。
     「もの」お金や本の貸し借り、直接的、物理的な支援
     「情報」口コミでよい病院を知る、おいしいパン屋、運動できる場所、サークル
     「感情的サポート」慰めたり、励ましたり
マイナスの影響もある:肥満の友人は肥満などの研究あり

ソーシャルキャピタルの測定方法:周りの人への信頼感についての質問を行う(以下が例)
   ・この地域の人を信頼できますか
   ・近所の人が困っていた時、手伝いますか
   ・ここは周りの人とのつながりが密な地域ですか
   ・近所同士は仲がよいですか
   ・たいていの人はチャンスがあれば、つけ込もうとすると思いますか   
これらを踏まえた取り組み
 人との繋がりを人工的につくっても結果はでない(医療者による定期訪問やグループセラピー)
 人間関係のつながりは長い時間をかけて自然につくられるものである。
 入院後のサポートというよりは、入院前からの人とのつながりが大事なのではないか
まとめ
 資本主義社会において、格差をゼロにすることは不可能。しかしソーシャルキャピタルは、地域の結束力や人との絆を高める事で、自然災害や貧困など不利な状況にもかかわらず、住民の安全と健康を保てる可能性を示している。

―考察とディスカッション―
上記下線部についての、自然と納得する感覚は、日本人の間でも大小はあると思われるが、他国からみるとそのような考え方に対して「わかるわかる」というような感覚が特殊にうつるのであろうと感じた(この理由は稲作などの関連して本文内で考察しているが)。

SCが豊かな人は、更に多くの選択肢が広がる一方、SCが乏しい人は、更に孤立化していく・・・というSCの格差もあり、カルテのPL内に#独居➡ではなく#乏しいソーシャルキャピタル、などと記載していくのがよいかと感じた。更にそこから、地域・コミュニティ志向型ケアの考え方で、上記患者さんの乏しいSCをどう開発できるか、どのような繋がりが地域にあれば、乏しいソーシャルキャピタルは解決されるのか・・・という発想で、地域作りの視点をもっていくこともよいだろう。
また地域で家庭医として「暮らす」中で、自分自身が、趣味活動や子ども繋がりPTA、近所同士のやりとり、雪かき、地域のお祭りなど積極的にソーシャルキャピタルを豊かにしていく中で、患者さんに対しても選択肢を提示したり、ソーシャルキャピタルのハブとして機能できる可能性を感じた。
身近な行動としては、徒歩通勤中の、すれ違う人たちへの挨拶から・・・ですかね。

サイト単位の考察としては、栄町のコミュニティルームなど、診療所自体がソーシャルキャピタルの場を提供していくこと、夜カフェなどのアウトリーチ、地域アセッツとの共同による活動、祭りの参加など診療所自体がSCとして機能するような戦略もありだと思う。

【開催日】
2014年8月6日(水)

立位排尿と座位排尿が前立腺肥大の患者に与える影響

―文献名―
Ype de Jong ,et. al. Urinating Standing versus Sitting: Position Is of Influence in Men with Prostate Enlargement. A Systematic Review and Meta-Analysis. uly 22, 2014 DOI journal.pone.0101320

―要約―
【背景】
これは、排尿時の姿勢が薬理学的介入に近づく程度に下部尿路症状(LUTS)を有する患者における尿力学パラメータに影響を与えることができることが示唆される。
この論文では、健康な男性とLUTSを有する男性において排尿時の姿勢が排尿中の最大尿流率(Qmaxを)、時間排尿(TQ)と排尿後の残存量(PVR)に与える影響をシステマティックレビューとメタ解析で分析した。

【証拠収集(方法)】
14の医療データベースによって体系的な検索がされた。
立位と座位での尿力学パロメーターを比較した研究はインクルージョンされた。
参加者の男性は健康状態によって層別化された:健常またはLUTSを有する患者。
LUTSと健常人および患者:研究が含まれ、男性参加者の健康状態に応じて層別化した。
Qmax、TQ、PVRの標準平均差は、ランダム効果モデルにプールされた。

【結果】
11個の論文が採用された。LUTSを有する男性において座位姿勢の方が立位姿勢と比較して明らかに残尿量(PVR)が低かった。(-24.96 ml; 95%CI -48.70 to -1.23)
さらに、座位姿勢での排尿において有意差は出なかったが最大尿流率(Qmax)は増加(1.23 ml/s; 95%CI 21.02 to 3.48)、時間排尿(TQ)は低下(20.62 s; 95%CI 21.66 to 0.42)を認めた。
健常人においてはQmax (0.18 ml/s; 95% CI -1.67 to 2.02)、TQ (0.49 s; 95%CI -3.30 to 4.27)、PVR (0.43 ml;95%CI -0.79 to 1,65)と立位と座位では近似していた。

【結論】
健常男性では尿力学パラメーターの違いを認めなかった。LUTSを有する患者においては、座位姿勢が尿力学の改善にリンクしていた。

【開催日】
2014年8月6日(水)












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