困難な学習者へのアプローチ

―文献名―
AMEE2015におけるワークショップ“Managing Trainees in Difficulty”より
Managing Trainees in Difficulty (version 3) -Practical Advice for Educational and Clinical Supervisors- Oct 2013 NACT UK: Supporting Excellence in Medical Education

―この文献を選んだ背景―
 「困難な学習者」はいつの時代も世界のどこでも、教育実践をする者にとって、最も困惑させ、最も教育的である。今回、AMEE2015で「Managing Trainees in Difficulty」というWSを受講し、アプローチとして学ぶべき点が多くあった。今回この学びを共有させていただき、教育経験豊富な指導医陣から、実戦的な対応方法についての交流できたらと考えた。

―要約―
General Principles
1)早期の問題の同定と介入が必要不可欠である
患者の安全や教育担当者の脅威になるような案件を取り上げる事は、指導医とそのチームの責任である。

使い勝手のよい「早期の警告サイン」は「Understanding doctors’ performance」から引用している。
  1.The “ disappearing act”:コールに出ない、姿を消す、遅刻する、病欠する
  2.Low work rate:段取り(患者に赴き、説明し、決定する)が遅い。早く出勤し、帰宅も遅いわりに、納得できる仕事量をこなしていない
  3.Ward rage:感情の爆発、相手を怒鳴る、現実ないし想像での軽蔑
  4.Rigidity:不確実性に耐えられない、妥協を許さない、優先順位をつけられない、不適切な「内部告発」をする
  5.Bypass syndrome:後輩や看護師が、当事者の意見やヘルプを避けている
  6.Career problem:試験に受からない、キャリア選択が曖昧、医学へ幻滅している
  7.Insight failure:建設的批判を拒絶する、自己防御する、言い返す
  8.Lack of engagement in educational processes:評価できない、事例から学ぶ事が遅い、ポートフォリオ作成にモチベーションが低い、
   振り返りが乏しい

  9.Lack of initiative/appropriate professional engagement:確固たるヒエラルキーのある文化で医学教育を受けてきたような学習者に
   よくみられる。そのような学習者は、上級医が決めた患者のマネジメントについて疑問を投げかけることや、健全な自己主張をしない

  10.Inappropriate attitudes:男性主導型の文化的背景があり、学習者は女性と同等の立場で働く事に慣れていない

2)環境や事実を出来るだけ素早く明らかにし、多くの情報を取り寄せる
 多くの案件は早期に、教育担当者と学習者の間で、現実的な学習プランを作成する中で、述べられている。オープンで支援的な文化であれば、臨床チームは、学習者のスキルを伸ばすように教育するし、改善すべきパフォーマンスや現状の困難さに建設的なフィードバックをするだろう。
 全ての情報を集めて照合し、判断を形成する。
 患者や当事者の安全に関わる問題は他の全てに優先する

3)パフォーマンスが低いのは症候であって、診断ではない。その根本の原因を探索する事が必要不可欠である
 1.臨床能力の問題(知識、技術、コミュニケーション技量)
 2.個人的、人格的、行動上の問題(プロフェッショナリズム、モチベーション、文化的宗教的背景も含む)
 3.病気(個人もしくは家族のストレス、キャリアに対する不満、経済的問題)
 4.環境の問題(組織、業務負担量、ハラスメント)

4)確実で詳細な診断によって、効果的な再教育ができる:異なる問題は異なる解決方法がある
 糖尿病やメンタルヘルスの問題を抱えた医師は、個人の力量や洞察力が欠けている医師とはまた違ったアプローチが必要である。前者は、産業医や総合診療医の助けが必要になる。後者は、支援的なモニタリング、頻回の臨床的アドバイス、望ましくない行動の裏にある信念を変えるフィードバックが必要であろう。

5)明文化する
 学習者に対する全ての議論や介入は、文書化され、学習者とキーパーソン(信頼、学校長ないしGMC)とのコミュニケーションツールとなる。また教育担当者、プログラム責任者、学校長のような重責のある者にフォローアップされ、このプロセスが適切に管理できているか、きちんと結論づけられるかを確認する必要がある。

6)不安は伝えるべきである、記録はつけるべきである、改善策を探るべきである
 問題が解決されるまで進化は止まったままであろう

銘記する事:適切で同時並行の文書化は必要不可欠である。

宮地&長図

―考察とディスカッション―
考察
 このワークショップでは、実際に、このフレームワークを用いて、困難な学習者とおぼしき4名が例示され、その学習者が本当に困難な学習者なのか診断の後で、困難な学習者について「非公式なおしゃべり」「360度評価」「患者からの苦情」「MiniCEX」などの様々な情報が提示され、対応策を考えるものであった。情報の中には、同僚医師からの妬みを表現しているものも含まれており、多様な情報を集めることが重要だというtake home messageもあった。また記録をし続けることも重要だと説明された。

ディスカッションポイント
 ・早期発見において10の警告サインがありますが、自身の直感・経験を踏まえて、納得できる点と納得できない点はありましたか?
 ・対応経験とフローチャートのフレームワークを比べて、うまくいっていたところ、こうすればよりよかったと感じるところはありますか?

【開催日】
2016年1月20日(水)












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