2型糖尿病の内服治療アップデート

-文献名-
Type 2 Diabetes Mellitus: ACP Releases Updated Recommendations for Oral Pharmacologic Treatment

-要約-
Introduction:
2型糖尿病は糖尿病の95%を占める。一般的には生活習慣の改善(食事、運動)と薬物療法にて治療される。体重減少があった場合や生活習慣の改善でうまくいかなかった場合は薬物療法が行われる。American College of Physicians(ACP)は、2012年に2型糖尿病の安全かつ効果的な内服治療に関するガイドラインを発行した。その後、新たなエビデンスが出て、新たな薬も現れているため、ガイドラインがアップデートされた。

Reccomendations:
血糖コントロールを改善させる必要があるなら、メトホルミンを使うのが良い。効果的に血糖を下げることができ、体重減少に繋がり、低血糖が少なく、薬価も比較的安い。乳酸アシドーシスを起こす可能性のある患者(組織潅流が減少している、血行の不安定性、重篤な肝障害、アルコール乱用、不安定なうっ血性心不全など)には禁忌。
SU、チアゾリジン誘導体、SGLT-2阻害薬、DPP-4阻害薬の併用治療はメトホルミン単独よりも優れており、追加の内服が必要な時に検討する(薬物の選択についてはTable 1を参照)。
SUは薬価が安いが、低血糖と体重増加のリスクが高い。SGLT-2阻害薬は収縮期血圧や体重への影響でSUやDPP-4阻害薬より優れ、また心血管死亡率、HbA1c、心拍数に関してSUより優れている。DPP-4阻害薬は、長期にわたる全ての死亡、心血管死亡率、心血管罹患率についてSUより優れており、体重増加についてSUおよびチアゾリジン誘導体より優れている。
併用治療はメトホルミン単独よりも多くの副作用に関連する。SUは低血糖、チアゾリジン誘導体は心不全、SGLT-2阻害薬は性器の真菌感染症を起こす可能性がある。DPP-4阻害薬のサクサグリプチン(オングリザ)、アログリプチン(ネシーナ)は、心疾患や腎疾患を合併している患者では心不全のリスクが高くなる。
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【開催日】2017年12月20日(水)

健康の社会的決定要因に取り組むためのプライマリ・ケア能力を育てるフレームワーク

-文献名-
Andrew D. Pinto and Gary Bloch. Canadian Family Physician November 2017, 63 (11) e476-e482;

-要約-
<背景>
家庭医は個人や地域の健康に影響する社会的な要因についての理解を持っている。
しかし多くのプライマリ・ケア組織はそれらのSDOHへの取り組む能力を開発できないままでいる。

<プログラムの目的>
質の高いプライマリ・ケアの一部としてSDOHに取り組むための介入を支援し、組織文化を強化する。

<プログラムの詳細>
トロントの聖ミカエル病院(関連グループで4万5千人の患者;貧困が多くホームレスやホームレスリスクの患者を抱え、六つのクリニックを持つ)の学術家庭健康チーム;FHT(75名の医師と100名以上の多職種ですべてのプライマリ・ケアを提供している組織)がSDOHに焦点を当てた多職種チーム(医師8名、地域デザインの専門家1名、ナースプラクティショナー2名、看護師1名、ソーシャルワーカー1名、法律家1名などなど、レジデントや医学生も参加)と委員会活動(年9回の会議と年1回のリトリート)を立ち上げた。活動目標はBox1。委員会では患者への社会因子の影響を調査し、五つの介入についてそのアイディアからプログラムの計画と開発(実施プログラム、その研究費の確保、人材の採用、寄付の募集まで)を行った。

■健康格差についての詳細な社会地理的なデータの収集と分析
・FHTを受診する患者の収入、住宅環境、ジェンダー、その他の鍵となるSDOHを収集し電子カルテに記入
・これらのデータベースを活動と計画のもとにした
■収入保障と健康増進サービスの試験的取り組み
・FHTの中に2名の収入保障・健康増進の専門家を置く
・収入を増やすため、浪費を減らすため、家計のリテラシーを高めるためのプログラムを実施
・実施した内容のカルテレビューや当事者のインタビューから質的研究を実施し、プログラムを改善
■医学と法律の連携の確立
・数年来の取り組みから、常勤の法律家を配置し、三つの活動目標を設定
・一つは社会的危機の予防や、危機による被害への早期介入のための法的な助言
・もう一つは医療システムを扱う力の改善と、弁護士の介入を受けずに法的な問題を同定し対応する
・そして全体的な法的な問題を同定し、SDOHに取り組むための法律の改定や代弁の強化
■診療所単位での子供の健康リテラシー向上プログラム
・アメリカで始まった小児への早期の健康リテラシー向上の取り組み(Reach Out and Read);クリニックの待合室をリテラシー・リッチ(具体的な記述なし)にする、受診毎の助言や本のプレゼント、をもとにした
・トロントの公立図書館への支援、子供への図書バンク、ファーストブックの活動を行なった。
■正規職への就労支援
・診療所と就労支援センターとの連携で開始
これらの介入は厳格な評価計画と実施や効果の測定を含み、次の段階としては開発された方法を社会格差の是正のための社会的に上方の活動に持っていくことである。

<フレームワークの紹介>
Figure1に紹介、このフレームワークはcommunity-oriented primary careの考え方と、Devoeのフレームを組み合わせて開発した。まず四つの視点での情報収集、そしてそれに取り組むための組織開発や五つのStepが述べられている。

【開催日】2017年12月20日(水)

妊娠中のアセトアミノフェン使用と 小児期の問題行動との関係

-文献名-
Association of Acetaminophen Use During Pregnancy With Behavioral Problems in Childhood: Evidence Against Confounding. JAMA Pediatr. 2016 Oct 1;170(10):964-970.

-要約-
Introduction:
アセトアミノフェンは一般的な鎮痛薬の一つであり、妊娠中の全ての段階で安全であると考えられ、解熱・鎮痛の第一選択になっている。
妊娠中のアセトアミノフェンの使用は、多動障害およびADHD様リスクと関連している。 いくつかの研究で報告されている。以前の研究では多くの潜在的な交絡因子が説明されていたが、まだ認識されていない交絡の可能性がある。測定されていない家族性の交絡が考慮される必要があり、
母体の出生前の曝露と母体の出生後の曝露の比較、妊娠中のパートナーの曝露がある。

Method:
2015年2月から2016年3月までに、ALSPAC(Avon Longitudinal Study of Parents and Children)から得たデータを分析した。前向きの出生コホート。
1991-1992年の間にALSPACに登録された7796人のお母さんが対象で、子供とパートナーも調査対象となった。
(ALSPACには、出生前からの子どもと両親の長期にわたる個人情報が、遺伝子研究資源とリンクされて保管されている。)

母親は、妊娠18ヶ月と32ヶ月時に、前3ヶ月間にアセトアミノフェンを使用したかを尋ねられた。
子供が61ヶ月時点で、同様の質問を、母親とパートナーに質問した。また、筋骨格系の問題、感染症、片頭痛あるいは頭痛が同時期にあったかどうかも質問された。投与量や期間などについては詳細に確認をしていない。
子供が7歳になったときの母親から報告で、Strength and Difficulties Questionnaire(SDQ)を測定した。

Results:表やグラフがあれば適宜紹介する。
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妊娠18週および32週でのアセトアミノフェン使用は、行為障害、多動障害と
妊娠32週でのアセトアミノフェン使用は、感情的な症状やSDQ total difficulties と関連していた。

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出生後の母親、パートナーのアセトアミノフェンは関連なし

Discussion:今回の研究の限界、残された課題などを記載する。
胎児期にアセトアミノフェンに曝露した小児は、複数の行動障害のリスクが増加し、アセトアミノフェンと関連した未知の社会的要因や行動要因によっては説明できないようである。
この結果は、公衆衛生上のアドバイスに影響を及ぼす可能性がある。更なる研究により結果が再現され、機序が明らかになることも必要である。
Limitation:
頭痛・筋骨格系の問題・感染症など一般的な使用理由は調整されたが、アセトアミノフェンの適応の情報がない。
妊娠中の母親の健康に対する交絡や胎児への影響の可能性は除外できない。
アセトアミノフェンの用量や期間の情報がない(毎日使用していたのは0.1%)

【開催日】2017年12月6日(水)

組織内での影響力をどう高めるか? 〜7つのスキル〜

-文献名-
Franko, J. P. How to Lead Up in Your Organization. Family Practice Management, 2017, 24.6: 6-9.

-要約-
多くの医師は勤務医であり,大きな組織の中で何らかの役割を担っている。
「Leading Up」とは、Michael Useemの著書にある概念で、組織の中の(特に直属の)上司が行う意思決定に影響を及ぼす能力のことを指す。上司のリーダーシップに不安や不満を持つことは往々にしてある。なぜなら彼らはリーダーシップだけで今の立場に立っているわけではないから。上司の欠点を指摘するのは簡単だが、たいてい有効・健全ではない。代わりに、7つのスキルを用いて自分たちのリーダーシップを高めることで組織に良い影響をもたらすことができる。

1. Develop emotional intelligence(EI)
天性のものもあるが、EIは努力して高めることができる。EIとは、自分と他者の感情をモニターし、感情の違いを認識し、適切にラベリングし、思考や行動に応用することの能力である。特に自分の感情をモニターすることは重要である。感情のままに突っ走ってしまうと大抵問題が起こる。感情的反応を抑制するためにはself-awarenessを高めることが大事で、どんな時に自分の感情のボタンが押されるのかを知っておくとよい。そして、反応が起こりそうな時には「停止ボタン」を押す。例えば、深呼吸をする、唇をタップする、他の人に「もっと教えて」と言う、など。

2. Use power and politics for good
「power:権力」や「politics:決まりごと」は良くも悪くも組織内の関係性に影響を与える。個々人のもつpower、politics、関係性を正確に評価する必要がある。

3. Choose being effective over being right
医師は、正しくあろうとする特徴がある。しかしこれが組織への影響力を弱めることがある。「正しいこと」を証明しようとして多くの争いが起こっている。勝った方は満足するが、人間関係は悪化する。正しさと影響力を天秤にかけて考える必要がある。また、「正しいこと」の基準は人によって異なる。意見の相違に直面したときは、論争を始めるのではなく、体を向けて好奇心を持ち、他者の見方と価値観を理解するための質問をしていく。それによって、問題よりも関係性を重要視していることが伝わり、事態を収束に向かわせる。こういうことを行っていると、上司からは「bridge builder」や「positive cintributor」として見られることになる。

4. Be intentional and prepared
組織内での影響力を増すには、心の中のゴールを意識し目的を持って自分の言葉や感情を用いることが大事である。また会議やプレゼンの前には十分に準備をする。

5. Help your supervisor
まずは上司のauthorityとpowerのリミットを理解する。上司の意思決定能力や指示能力を過剰評価することは珍しくはない。上司はしばしば様々な制限を受けているのだが、それに気づかずフラストレーションを溜めてしまうことがある。次に、上司のニーズとゴールを理解する。そして自分の問題を上司目線で捉えてみる。上司を飛ばしてさらに上司にアプローチするのはやめたほうがいい。

6. Disagree without being disagreeable(感じよく反対する)
聞き飽きた表現かもしれないが、win-winの解決策を探ることは重要である。コモングラウンドが見つからない場合、無理して結論を出さずに意見の違いを認め合うのがよい。また、人を避難するのではなく物事を問題と捉えるよう心がける。

7. Don’t expect credit
自分のアイデアが全員からの賞賛を得ることを期待するとうまくいかない。アイデアをシェアすることで蒔いた種は、上司や他のリーダーが取り込んだときのみ芽を出す。そしてしばしば上司やチームのアイデアとして示される。そんなときは自分の手柄にこだわるのではなく、アイデアが走り出したことを幸せに感じるのがよい。

【開催日】2017年12月6日(水)