Top 20 POEMs of the Past 20 Years

―文献名―
Mark H. Ebell, et al. Top 20 POEMs of the Past 20 Years: A Survey of Practice-Changing Research for Family Physicians. ANNALS OF FAMILY MEDICINE. 2018; VOL. 16, NO. 5 SEPTEMBER/OCTOBER: p436-439.

―要約―
1994年に、Slawson, Shaughnessy, and Bennettにより発表された論文によって、the key concepts of “information mastery”が確立された。従来のevidence-based practiceでは、研究のinternal validityの評価が重要視され、relevanceやapplicationは置いていかれていた。Information masteryによってpatient-oriented outcomesに注目が集まった。relevant clinical questionについての研究で、patient-oriented outcomesを出してpracticeを変えうるような論文は、POEM(patient-oriented evidence that matters)と呼ばれるようになった。
1998年に、筆者らはPOEMの定義に当てはまる論文を同定するために毎月100以上のclinical medical journals を集めたsystematic reviewを始めた。それぞれの論文は、primary care expertによってフォーマットに従って要約され、簡潔なbottom-line recommendation for practiceを提供した。それらはEssential Evidence Plusの購読者にメールされたりAFPに掲載されたりポッドキャストで配信されたりした。1998〜2017の20年間で、5,664のPOEMs (mean=283/y, range=230-368)が集まった。20週年を記念して、各年のPOEMsを選んだ。

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They can be broadly divided into 3 groups:
(1) POEMs that recommend a novel, effective intervention,
(2) those that recommend abandoning an ineffective practice, and
(3) those that recommend abandoning a potentially harmful practice.

We observed greater challenges in choosing the best POEMs in recent years, largely because it is difficult to know whether a 3-year-old study will withstand the test of time and the rigors of replication in real-world settings. This judgment is even more difficult because of the increasing amount of industry-sponsored research published in journals and the relatively small amount of public funding for research to support the study of real-world problems in real-world settings.

It would be difficult for any clinician in any specialty or discipline to read all of the journals publishing studies of potential importance, not to mention critically evaluate the validity of individual relevant articles. Clinicians regularly reading POEMs can confidently change practice with the knowledge that they are using the very latest, most relevant, and valid information to provide for the very best care for their patients. The current POEMs are oriented toward primary care, including obstetrics and general hospitalists. We hope to encourage the development of POEMs for other specialties and disciplines in medicine, as well as such other health care disciplines as dentistry and veterinary medicine.

【開催日】2018年11月21日(水)

エダラボン(ラジカット®)のALS進行抑制効果

―文献名―
K.Abe. et al. Safety and efficacy of edaravone in well defined patients
with amyotrophic lateral sclerosis: a randomised,
double-blind, placebo-controlled trial. Lancet Neurol 2017; 16: 505–12

―要約―
★Introduction: ALSの原因はいまだ分かっていないが、フリーラジカルによる酸化ストレス(3-Nitrotyrosine、coenzyme Q10、8-hydroxydeoxyguanosine、4-Hydroxy-2,3-nonenal)が疾患の進行に関与しているとされている。エダラボンはフリーラジカルを消去する作用があり、動物実験では運動ニューロンの脱落を阻止することが分かっている。エダラボンはALSの進行を改善させる働きがあると予想され、対プラセボの第3相試験を行ったが、主要アウトカムであるALSFRS-Rスコアに有意差はみられなかった。エダラボンが疾患の進行を遅らせるのに効果があるかもしれない患者層があるかどうかを調べる目的で多重比較検定を行った。するとALSFRS-Rスコアが全項目2点以上、努力性肺活量80%以上、重症度分類1度、2度、罹病機関2年以内の条件がエダラボンの効果があることが示唆された。

★Method:a randomized, double blind, parallel-group, placebo-controlled study
【選択基準】 20-75歳、ALS重症度分類1、2度、12週間の観察機関の間にALSFRS-Rスコア変化が-1~-4点、ALSFRS-Rスコア全項目2点以上、努力性肺活量80%以上、El Escoria改訂Airlie House診断基準で「Definite」「Probable」、罹患期間が2年以内
【除外基準】ALSFRS-Rが呼吸困難、起坐呼吸、呼吸不全で3点未満、ALS発症後の脊髄手術歴、クレアチニンクリアランス50ml/min以下 (既にリルゾールを内服していた患者は継続することができるが、観察期間後にリルゾールを追加することはできないとした)
【方法】ランダム化の前に12週間の観察期間を設けて選択基準を満たす被験者についてラジカット群、プラセボ群に二重盲検下で割り付け、24週間(6サイクル)の治療を行った。第1サイクルは14日間連日投与した後14日間休薬し、第2サイクル以降は14日間のうち10日間投与した後14日間休薬した。
【End point】
主要エンドポイント:開始から6サイクル終了後のALSFRS-Rスコアの変化
副次エンドポイント:努力性肺活量、Modified Norris Scale、ALSAQ-40スコア、ALS重症度、握力、つまむ力、死亡または一定の病勢進行までの期間

★Result:投与開始時と第6サイクル終了時のALSFRS-Rスコア変化量における最小二乗平均は2.49点でエダラボン群の方がプラセボ群よりスコアの低下が緩やかだった。(95%CI 0.99-3.98 p=0.0013)
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副次エンドポイントで有意差がでたのはModified Norris ScaleスコアとALSAQ-40スコアだった。少しでも副作用を起こした症例はエダラボン群で58症例(84%)、プラセボ群で57症例(84%)、重症副作用はエダラボン群で11症例(16%)(嚥下障害、呼吸障害、構音障害)、プラセボ群で16症例(24%)だった。

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【開催日】2018年11月21日(水)

家庭医療におけるポイントオブケア超音波検査(POCUS)

―文献名―
Paul Bornemann, Tyler Barreto. Point-of-Care Ultrasonography in Family Medicine. American Family Physician. 2018; 98(4): 200-202.

―要約―
論説 家庭医療におけるポイントオブケア超音波検査
ポイントオブケア超音波検査(POCUS)は、臨床医によってベッドサイドで行われる超音波検査プロトコル
POCUSプロトコルにより表1の問いに答えることができる。

比較的短いトレーニング期間の後に行うことができる
・家庭医レジデントを対象としたPOCUSの使用可能性(feasiblity)の研究
 ポータブルエコーを使用した16時間のトレーニング
 使用法の学習が容易で診断効率と精度が向上し、患者満足度が上がる
 参加者の86%が毎日の実践においてPOCUSを引き続き使用することに同意するか強く同意した

OCUSは医療費を削減する可能性を示すエビデンスが増えている
・救急における尿管結石疑いの評価でエコーとCTを比較した研究
 POCUSによる初期検査で転帰の変化なしに59%のCT検査数が減少
・静脈アクセス、胸腔鏡検査、関節症への手技などにおいて超音波検査が合併症を減らす。

POCUSは多くの場面で身体診察やレントゲン写真より優れている
・POCUSを使用する場合、ジェネラリストの左心室収縮機能の評価は循環器科医と同等に正確
 医学生でも診断精度を50%から75%に高めることができる。
・POCUSは、蜂窩織炎と膿瘍を鑑別するための身体検査よりも優れている
 マネジメントを14%~56%の症例で変更させる。
・POCUSは、胸水、肺水腫、肺炎および気胸を含む多くの肺の診断において、身体診察またはCXpより優れている。

POCUSはイメージングへのアクセスを迅速化し増やすことができる
・POCUSを用いた腹部大動脈瘤のスクリーニングは、感度99-100%。4分未満で完了できる。
・POCUSによる下肢DVTのスクリーニングは、感度95%、特異度96%。4分未満で完了できる。

POCUSには様々なベネフィットがあるため、家庭医療における使用への関心が高まっている
・プログラム責任者らへの2014年の調査
  POCUSの公式カリキュラムを取り入れたレジデントプログラムは2%しかなかったが、
  29%が(非公式の?)カリキュラムを前年度から開始しており、
  11%がカリキュラムを開始する準備をしていた。
・2016年、AAFP(American Academy of Family Physicians)代表者会議の決議
  すべての家庭医療プログラムがPOCUSを研修に組み入れることを推奨
  POCUS研修を組み入れた継続的な医学教育をAAFPが増やしていく
・AAFPにより、大学医学教育におけるPOCUSカリキュラムガイドラインが作成された(添付資料)

後藤先生図1

腹部大動脈瘤スクリーニング
 ・瘤はあるか?
心臓
 ・左室収縮機能障害はあるか?  ・左室肥大はあるか?
 ・心嚢液はあるか?  ・体液量過剰ではないか?
DVT
 ・DVTはあるか?
肝胆道
 ・胆石はあるか?  ・胆嚢炎はあるか?  ・肝脾腫はあるか?
 ・脂肪肝はあるか?  ・腹水はあるか?
筋骨格
 ・骨折はあるか?  ・靭帯あるいは腱の病変はあるか?
 ・関節液はあるか?  ・手根管症候群を示唆する正中神経腫大はあるか?
産科
 ・子宮内妊娠はあるか?  ・胎位は正常か?
 ・胎児心拍はあるか?  ・妊娠期間は?
眼科
 ・網膜剥離はあるか?  ・硝子体出血はあるか?
 ・頭蓋内圧亢進を示唆する視神経腫大はあるか?
手技の際のガイド
 ・針、カテーテル、気管内チューブは適切な場所にあるか?

 ・気胸はあるか?  ・肺炎の所見はあるか?
 ・胸水はあるか?  ・肺水腫の所見はあるか?
皮膚軟部組織感染症
 ・膿瘍はあるか?
甲状腺
 ・甲状腺に病変はあるか?
泌尿器科
 ・水腎症あるいは腎結石の所見はあるか?残尿はどれくらいか?

【開催日】
 2018年11月8日(水)

アドバンス・ケア・プランニングの効用

―文献名―
Karen M. Detering The impact of advance care planning on end of life care in elderly patients: randomised controlled trial. BMJ. 2010; 340: c1345.

―要約―
【目的】
 高齢患者に対する人生の最終段階におけるケアに対するアドバンス・ケア・プランニングの影響を調べること

【方法】
 デザイン:Prospective randomised controlled trial.
 セッティング:オーストラリアメルボルン大学の単一施設研究
 参加者:80歳以上の医療入院患者309名を対象とし6ヶ月もしくは死亡するまで追跡調査した
 介入 :参加者は通常ケアか通常ケア+アドバンス・ケア・プランニング(the Respecting Patient Choices model 文献12のトレーニングを受けた
     看護師またはヘルスケアワーカーが主治医などの協力のもと実施)を受けるため無作為に割り付けられた。アドバンス・ケア・プランニング
     は患者が患者の目的、価値観、信念を将来の治療選択の考慮と代理意思決定者の任命と希望の文章化に反映することのサポートを目的として
     いる。
 アウトカム測定:主要アウトカムは患者の人生の最終段階における希望が知られており尊重されているかどうかであった。他の結果には、入院患者
         および家族の満足度、および死亡した患者の親族におけるストレス、不安、うつ病のレベルが含まれていた。
 
【結果】
 309名のうち154名が介入群に無作為に割り付けられた。125名(81%)にアドバンス・ケア・プランニングが実施され、108名(84%)が希望を表明したか代理意思決定者を指名した。6ヶ月で死亡した56名のうち介入群(25/29,86%)はコントロール群(8/27,30%;P<0.001)に比べ人生の最終段階における希望がより知られ、従われる傾向にあった。介入群では亡くなった患者家族のストレス(介入群5、コントロール群15、P<0.001)、心配(介入群0、対照群3、P=0.02)、抑うつ(介入群0、対照群5、P=0.002)がコントロール群と比較して有意に少なかった。患者と家族の満足度は介入群と比較してより高かった。
 
【結論】
 調整されたアドバンス・ケア・プランニングは人生の最終段階におけるケアを改善する。アドバンス・ケア・プランニングは遺族の不安、抑うつ、心的外傷後ストレスを軽減する。アドバンス・ケア・プランニングは入院後の患者と家族の満足度を改善する。
 
【Discussion】
 ・意思表示能力がない患者(認知症など)のアドバンス・ケア・プランニングについては評価していない
 ・単一施設研究のため地域の文化的、システム的な影響があるかもしれない
 ・6ヶ月以内での追跡は出来たがそれ以降の追跡は出来ていない

村井先生図1

村井先生図2

村井先生図3

村井先生図4

村井先生図5

【開催日】
2018年11月7日(水)