サルコペニアと嚥下障害

―文献名―
Ichiro Fujishima. Sarcopenia and dysphasia. Sarcopenia and dysphagia. 2019; Jan 9.

―要約―
Introduction:
 サルコペニアと嚥下障害については学会や研究会で話題に上がることが多い。しかし、明確な基準や定義はまだ定まっておらず。今後のさらなる研究の発展のためにも、現時点でわかっていることをまとめる必要があると考えられた。メカニズム・診断・治療・今後の展望について統一見解を出すことを目的とする。(日本摂食嚥下リハビリテーション学会、日本サルコペニア・フレイル学会、日本リハビリテーション栄養学会、日本嚥下医学会の4学会合同で作成)

 サルコペニアは1989年に提案された概念で、骨格筋量の低下に伴う筋力低下による身体機能低下を示している。診断基準は未だまちまちで、骨格筋量は必須項目であるものの、筋肉の機能の評価には筋力低下(握力)と身体機能低下(歩行速度)の両者もしくはいずれかを採択するのかで意見は分かれている。嚥下機能との関連については2012年に最初の報告があり、その後は本邦を中心に研究が重ねられている。サルコペニアの概念は、老化に伴う生理的なもの(内的要因)と運動不足・栄養摂取不足といった外的要因の両者が誘因となって生じる筋萎縮を示しており、原因には中枢神経、筋繊維自体の変化、ホルモンや栄養、生活習慣などが関与している。嚥下筋のサルコペニアについては未だ議論中で、嚥下筋の廃用とサルコペニアの違いや、栄養改善と訓練によって回復可能性があるのかどうかについてさらなる研究が必要である。
 サルコペニアによる摂食嚥下障害のリスク因子としては、サルコペニアそのもの、低栄養、低ADLがあり、予防にはリハビリテーションや栄養管理が有用ではないかと考えられている。
現在、サルコペニアに伴う嚥下障害は2017年に診断フローチャート(Fig.1)があり、嚥下関連筋の筋肉量を評価せずに診断が可能である。これにより、「サルコペニアの嚥下障害とは、全身と嚥下筋関連のサルコペニアによる摂食障害である。全身のサルコペニアをみとめない場合、神経筋疾患によるサルコペニアは除外。加齢・活動低下・低栄養・疾患による二次性サルコペニアは含む。」定義されている。嚥下関連筋の筋肉量はCTやエコーで評価可能と言われており、特にオトガイ舌骨筋のエコーでの筋肉量・輝度による評価が有用と言われており、サルコペニアの診断基準案(Table.1参照)を提示した。
 治療によってサルコペニアによる摂食嚥下障害が改善されたという報告は3例。いずれも摂食嚥下リハビリと同時に35kcal/kg(理想体重)を目標とした栄養管理を行っている。リハビリテーションと栄養改善の併用がやはり重要と言える。

 嚥下筋にサルコペニアが生じた場合の嚥下障害の判定方法は未だ不明瞭。両者の関係性についても引き続き議論を要する。予防や治療については、栄養改善を目指した栄養管理がどこまで予防・治療に効果を及ぼすのかを明らかにしていきたいところ。健常高齢者や加齢に伴う変化を評価していくことや、薬物療法の開発も今後の課題の一つである。

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CC:下腿最大径、DXA:二重エネルギー X 線吸収測定法、BIA:生体インピーダンス法
DXAは全身測定用のものが必要のため、骨密度測定に一般に使われているものは不適切
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【開催日】2019年2月6日(水)

禁煙による体重増加の影響

―文献名―
Yang Hu. et al. Smoking Cessation, Weight Change, Type 2 Diabetes, and Mortality. N Engl J Med 2018; 379:623-632.

―要約―
Introduction:
禁煙後の体重増加によって、禁煙による健康上の利益が減少するかどうかは明らかにされていない。
Method:
米国の男女を対象とした3つのコホート研究で、禁煙した人を特定し、禁煙状況と体重の変化を前向きに評価した。禁煙者における2型糖尿病・心血管疾患による死亡・全死因死亡のリスクを禁煙後の体重の変化量別に評価した。
Results:
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最近(禁煙2〜6年間)禁煙した人は、現在の喫煙者よりも、2型糖尿病のリスクが高く、HR:1.22 (95%CI:1.12-1.32)。
しかし、心血管疾患による死亡のHRは現在の喫煙者と比較して、体重増加の程度を問わず最近の喫煙者および長期間(>6年間)の禁煙者ともに低下した。
2型糖尿病のリスクは、体重の増加量に正比例しており、体重増加がない・0.1〜5kg増ではリスク上昇の有意差はなかった。
禁煙した人では、禁煙後の体重変化にかかわらず、死亡率に一時的な上昇は認められなかった。現在の喫煙者と比較して、心血管疾患による死亡のHRは、最近の禁煙者のうち、体重が増加しなかった群で0.69(95%CI:0.54~0.88)、0.1~5.0 kg増加の群で0.47(95%CI:0.35~0.63)、5.1~10.0 kg増加の群で 0.25(95%CI:0.15~0.42)、>10.0 kg増加の群で0.33(95%CI:0.18~0.60)、また、長期禁煙者で0.50(95%CI:0.46~0.55)であった。全死因死亡についても同様の関連が認められた。

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Fig1
図A:2型糖尿病のリスクは禁煙後5〜7年でピークとなり、その後減少する。
図B:体重増加を伴わない最近の禁煙者の2型糖尿病のリスクは、体重が増加した禁煙者におけるリスクよりも、喫煙をしたことがない人のリスクに早く近づいた。

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Fig2
図A:心血管系死亡率は禁煙後に大幅に減少し、10〜15年で最低に達し、その後ゆっくり上昇しましたが、現在の喫煙者のレベルには到達しなかった
図B:層別分析では、このような関連パターンがすべての体重増加群で観察されたが、体重増加なしの群の中では、心血管死亡率は5〜10年間禁煙した後減少し、その後上昇傾向なしに横ばいになった
図C:全死因死亡率は5〜7年の中止で単調な減少を示し、その後横ばい状態になった
図D:このパターンは、体重増加なしの禁煙者が禁煙後に直線的なリスク減少を示したことを除いて、すべての体重変化群で観察された

CONCLUSIONS:
大幅な体重増加を伴った禁煙は、2型糖尿病の短期的なリスクの上昇に関連したが、心血管死亡と全死因死亡の減少に対する禁煙の利益を減少させなかった。

[開催日]2019年2月6日(水)












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