アルツハイマー病患者の認知機能障害に対する抗認知症薬の効果

-文献名-
The effect of anti-dementia drugs on Alzheimer disease-induced cognitive impairment: A network meta-analysis.
Cui CC 1 , Sun Y, Wang XY, Zhang Y, Xing Y.
Medicine (Baltimore). 2019 Jul;98(27):e16091. doi: 10.1097/MD.0000000000016091.

-要約-
Introduction:
認知機能障害はアルツハイマー病の主症状である。アルツハイマー病治療のための臨床推奨を提供するためにネットワークメタアナリシスを実施して、
アルツハイマー病患者の認知機能障害に対する様々な抗認知症薬の効果を評価した

Method:
関連するランダム化比較試験はPubmed database, Web of Science, Clinical Trials, Embase,
Cohranne library, Chinese National Knowledge Infrastructure database, CBM databases,
Wanfangを介して見つけられた。合計33の論文が集められ、最も早く集められた論文は2017年2月に発刊された。
集められた論文は厳格なinclusion criteriaとexclusion criteriaによって論文の質をスクリーニングされた。
全ての分析は以前に発行された特定されていないデータに基づいている。それゆえ倫理的承認または患者の同意は必要なかった。
MMSEのスコアで33の論文を11の論文とプラセボ以外の12の薬を特色とした軽度の認知機能障害サブグループ、
17の論文とプラセボ以外に15の内服を特色とした中等度の任地機能障害サブグループ、5つの論文とプラセボ以外に3つの内服を特徴とする重度の認知機能障害サブグループに分類した。
Results:
ドネペジル(アリセプト)、ガランタミン(レミニール)、フペルジン(コグニアップ日本では未承認)は軽度の認知機能障害グループにおいて最も高い有効性を示した(それぞれ平均差5.2,2.5および2.4)。
ドネペジル、フペルジン、リバスチグミン(イクセロンパッチ/リバスタッチ)は中等度の認知機能障害グループにおいて最も有意な結果を示した(それぞれ平均差3.8.2.9および3.0)
重度のサブグループではドネペジルは明らかにメマンチンより優れていた。それ故ドネペジルは認知機能の程度に関わらずアルツハイマー病の認知機能障害に対して効果的であることがわかった。
Conclusion:
ネットワークメタアナリシスを用いた臨床的に一般的な抗認知症薬の評価はアルツハイマー病認知機能障害の緩和にコリンエステラーゼ阻害薬、特にドネペジルの有効性を確認した。
したがってこの研究は、アルツハイマー病の認知機能障害に対しての薬物的介入の選択に対して役立つ可能性がある

【開催日】2019年8月7日(水)

解釈的医療:プライマリ・ケア現場の変化の中、ジェネラリズムを支持する

-文献名-
Reeve, Joanne. “Interpretive medicine: supporting generalism in a changing primary care world.” Occasional Paper (Royal College of General Practitioners) 88 (2010): 1.

-要約-
患者中心性は総合診療の核となる価値である。それは、個々人の全人的なケアを支援する関係性のプロセスとして定義されている。今日まで、患者アウトカムと患者中心性の関連を示す努力は期待外れに終わっており、一方で現実的というよりは誇張した結果を示すいくつかの研究がある。患者背景の問題は、患者中心の医療面接の質とアウトカムに影響を与える。知識やエビデンスを合理的に活用する事は、最新の診療の視点を明確にし、患者中心性に影響をもたらす。
文献の批判的吟味、自分の実験的研究、診療実践からの振り返りに基づいて、 個別ケアを裏付ける知識の活用の最新モデルに対して、私は批判する。EBMや健康政策への適応を考えるSBM、
は診療経験の上に科学的知識をおく認識論的強調の観点から、最良のエビデンスを明確にする。
これは疾患の客観的な知識、そしてこの知識の確からしさの量的見積もりも含まれる。二次医療(臓器別専門医へ診断や治療のため紹介される患者)を考える際の“議論ある適切さ”に対して、
総合診療への(最新モデルの)応用は、診療で扱っている複雑でダイナミックで不確実な病体験の本質を考えると疑問が呈される。
私は、解釈的医療のモデルにより総合診療が記述されるのが望ましいと提唱する。解釈的医療とは、批判的で思慮深くプロファッショナルである適切な範囲の知識(個別の病体験のダイナミックで共有された探求や解釈に関する)の活用である。そしてこれらは、患者の日常生活を維持するための個人の創造的な能力を支援する。解釈的知識の発生は日々の総合診療の欠かせない一部であるが、その専門性は、うまくいっているか外的に判断できるような適切なフレームワークを持ってこなかった。解釈の質の認識に関連する理論や、質的研究から発生した知識を記述することで、ジェネラリストや解釈的臨床実践から発生した知識の質を評価するフレームワークを提唱する。私は、このモデルを更に発展させる研究の3つの優先順位(個人の創造的能力creative capacityの測定、個人のcreative capacityが上がることでのコミュニティの発展、暗黙知の信頼性の確立)を示す。またそのことで総合診療の規律の重要な要素を強調し維持するであろう。これは地域コミュニティの健康ニーズを促進し、支持する。

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【開催日】2019年7月24日(水)

アカデミックコースセッションの授業の評価は、クッキーに影響される

-文献名-
Availability of cookies during an academic course session affects evaluation of teaching MEDICAL EDUCATION 2018 52 : 1064–1072

-要約―
背景と目的:
コース終了時の授業評価(SETs:student evaluations of teaching)の結果は、教員の採用や資金配分、カリキュラム変更のための基準として用いられている。しかし、コースの内容やそれが伝わっているのかを正確に測定できているかどうかには疑問がある。内容には関係のない介入としてチョコレートクッキーの提供がSETの結果に影響するかどうかを検討した。

方法:
ドイツのミュンスター大学の救急医学コースでのRCT
118人の医学生(3年生)を20のグループ(最大6人の小グループ)に無作為に割り当て、半分の10のグループにのみセッション中に500gのチョコレートクッキーを提供した。セッションの内容はACSについてのケースディスカッション。授業の内容と教材は両グループで同じとし、授業の終了後に38の質問(教員、コースの内容、学習環境、教材、学生の自己評価など)からなるアンケートで評価した。

講師は同じ内容で担当したことのある経験豊富な二人が選ばれ、これに学生が無作為に割り当てられた。授業は全て14−16時の間に実施。授業開始時に提供し「私はチョコレートビスケットを買ってきました」と言う。みんなが取りやすいようにまず講師が一つ食べて良い、というルールとした。

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(参考:カントリーマアムは1個10g 写真はイメージです)

結果:
112人(95%)の回答あり。グループ間の年齢(p=0.173)・性別(p=1.000)・体重(p=0.424)・BMI(p=0.895)に差はなかった。
→クッキーグループは対照グループよりも教員への評価が有意に優れていた。
(113.4±4.9 vs 109.2±7.3; p = 0.001, effect size 0.68)
学生がしたコメントを分析すると、54%のコメントがクッキー関連であった。クッキーグループの学生はコントロールグループと比較して有意に高評価をつけており、コース全体の合計スコアは有意差をもって優れていた。(224.5±12.5 vs 217.2±16.1; p = 0.008, effect size 0.51)。また、サブグループ解析では教師または教材に関する質問項目により良いと評価され有意さがあることが明らかになった(10.1±2.3 vs 8.4±2.8; p = 0.001, effect size 0.66)。

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重回帰分析の結果のまとめ:
質問の合計スコアのばらつきがどのくらい各項目(クッキーの有無、教師AorB、性別、BMI、年齢)に影響したかを示している。重回帰モデルは全ての質問において合計スコアの統計的に有意な差を予測した。標準化されていない係数の回帰係数、標準語さ、95%信頼区間を以下に示す。

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「クッキーの追加のみ」が評価結果の合計スコアの予測に寄与していると示されている。しかし、クッキーの提供の結果としてのグループの違いは、クッキーのチョコレートの内容かもしれない。チョコレートは血圧にプラスの影響としてだけでなく、体への効果、鎮痛効果、不安減少効果など、感情の変化を生じさせる。過去のRCTでは、口当たりの良いチョコレートの消費後の気分の即時効果を解説されている。

結論:
チョコレートクッキーの提供という単純な介入はコースの評価に大きな影響を与えた。
この影響の大部分がクッキー自体に起因するのか、もっと広い社会変数の相互関係に影響するのかは結論が出ない。
これらの調査結果は、SETの有効性とその利用に関しては疑問が残った。

【開催日】2019年7月24日(水)