「心房細動+安定した冠動脈疾患=抗凝固薬+抗血小板薬」が適切とは限らない

―文献名―
Morten lamberts, et al. Antiplatelet Therapy for Stable Coronary Artery Disease in Atrial Fibrillation Patients Taking an Oral Anticoagulant; A Nationwide Cohort Study. Circulation. 2014;129:1577-1585.

―この文献を選んだ背景―
 プライマリケアのセッティングにおいて、冠動脈ステント後で抗血小板薬内服中の患者を紹介され長期間フォローするケースは比較的多い。さらに、AFを合併した場合には抗凝固薬の適応となり、以前から併用されている場合もあれば、我々が新規導入する場合も少なくない。しかし、高齢・胃潰瘍既往・NSAIDS内服・腎機能障害など他の出血リスクを合併している患者も多く、漫然と抗凝固薬と抗血小板薬を併用することの有用性について疑問を感じていたところ、ある医学雑誌の記事に本問題に関する特集があり元文献を読んでみた。

―要約―
【背景】
 安定した冠動脈疾患(stable CAD:MI発症またはPCI後12ヶ月以上経過)を合併したAF患者に対する適切な抗血栓治療については明らかにされておらず、一般的に抗凝固薬に抗血小板薬1剤が追加される。本研究ではstable CADを合併したAF患者に対して、ビタミンK拮抗薬(VKA:ワルファリン等)に抗血小板薬を追加することの有効性と安全性を調査した。

【方法】
 デンマークの国内データベースを用いた観察研究。2002-2011年の間にstable CADを合併したAF患者8,700人(平均74.2歳/女性38%)を追跡し、心血管イベントと重篤な出血イベントのリスクについて修正Cox回帰モデルを用いて解析した。

【結果】
 平均3.3年間の追跡で、MI/心血管死・血栓塞栓症・入院を要する重篤な出血の発生率はそれぞれ7.2・3.8・4.0(/100人年)だった。VKA単剤と比較し、VKA+アスピリン(HR 1.12[95%CI 0.94-1.34])またはVKA+クロピドグレル(HR 1.53[95%CI 0.93-2.52])のMI/心血管死リスクは同等であった。血栓塞栓症リスクもVKAを含むすべてのレジメンで同等であった。一方で、出血リスクはVKA単剤と比較し、VKA+アスピリン(HR 1.50[95%CI 1.23-1.82])またはVKA+クロピドグレル(HR 1.84[95%CI 1.11-3.06])で増加した。

【結論】
 stable CADを合併したAF患者に対して、VKAに抗血小板薬を追加することは、心血管イベントや血栓塞栓症の再発リスク減少とは関連せず、一方で出血リスクを有意に増加した。

【研究の限界】
 介入研究ではない。ステントの種類に関してはデータの登録がなく不明である。

【参考】
 本研究の結果を受けて、2014年のヨーロッパ心臓病学会ガイドライン(European Heart Journal. 2014;35:3155-3179)では、AF患者がCADを合併(ACS発症またはPCI施行)した場合、CHA2DS2-VASc score(血栓塞栓症リスク)やHAS-BLED score(出血リスク)の値に関わらず、1年間以降は抗凝固薬単剤を推奨している。

―考察とディスカッション―
 欧米での研究ではあるが、日本人は欧米人に比べ一般的に出血リスクが高いことを考えると、同様に1年後以降はVKA単剤でも良いのではと思った。もちろん抗血小板薬中止の際には、患者の個別性を踏まえた丁寧な医学的評価とコミュニケーションが必要である。なお、NOACは本研究で扱われていないため注意を要する。

<ディスカッション>
 ① これまで本問題に対してどのような対応を行ってきましたか?
 ② 本研究の結果を受けて、今後のプラクティスはどのように変わり得るでしょうか?

【開催日】
 2016年2月17日(水)












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