災害時における家庭医の役割

-文献名-
JOHN R. FREEDY, M.D., PH.D., and WILLIAM M. SIMPSON, JR., M.D., Disaster-Related Physical and Mental Health: A Role for the Family Physician, Am Fam Physician. 2007 Mar 15;75(6):841-846.

-要約ー
Introduction
 米国赤十字は災害を100人以上巻き込んだもの、10人以上死亡者がでたもの、あるいは救援を養成されたものと定義している。限定的なものとしては自然災害(台風や地震等)、科学技術による災害(原子力や産業災害)、テロなどがあげられ、災害による例年の世界的衝撃は大きい。研究や実践によって災害に対する米国人の脆弱性についてコンセンサスが得られつつあるが、以下の要素が指摘されている。
 (1)災害は翼あるイベントであり、年間100万人に影響を与えている
 (2)災害の多い地域や技術的に発展したな複雑な地域に住んでいる多くの人において、災害の影響は今後数年間で増加することが予想される
 (3)災害は軽度で一過性のものから重大で慢性なものまで様々な身体的、心理的悪影響と関連している。
家庭医は被災者の心身の健康ニーズに対応するために適している。それはイベント後1年以内もしくは1年以上の期間において、被災者はプライマリヘルスケアの利用が増加するからである。さらに重要なのは、一般的に災害後に発生する急性および慢性の身体的・精神的健康問題は、家庭医の診療の範囲内ということである。

一般的な災害後の健康アウトカム
 身体的・精神的健康状態は、災害発生からの時間に応じて変化する:急性期(1ヶ月以内)、亜急性期(1-12ヶ月)、慢性期(12ヶ月以上)。また、災害による身体的・精神的健康への影響はしばしば共存する。いくつかの例では身体的な問題は精神的問題を増大させる可能性がある。例えば災害は鬱病の発症や増悪に寄与し、糖尿病やうっ血性心不全のような慢性の身体疾患を悪化させる。
・身体的健康アウトカム
 身体的健康問題は4つのカテゴリーに分けられる:①急性外傷、②急性疾患、③慢性疾患、④医学的に原因不明の身体疾患(表)
災害後急性期の健康問題の半分以上は、急性上気道炎や胃腸炎などの病気であり、また4分の1が切り傷や擦り傷、捻挫、骨折などの外傷である。そのほかの健康問題は処方や総称チェック、副子などの日常の処置が含まれる。
被災者は慢性的な健康問題(例えば糖尿病、高血圧、心不全)の管理に支援を必要とすることが一般的である。特に災害後の亜急性期から慢性期に、災害が社会インフラに影響を与えた度合いに応じて、そのような支援が部分的に必要になるかもしれない。
また医学的に問題のない身体的症状の訴えは災害後共通してみられる。これらの症状はまた、鬱病やPTSDおよびその他の不安障害など精神的問題と関連している。
・精神的健康アウトカム
 災害後の精神的問題をもつ多くの患者は、災害前に同様の問題を抱えている。そのような場合、家庭医の役割は処方すること、カウンセリングを行うこと、適切に専門家を紹介することなどがある。
災害後急性期の精神的苦痛は情緒不安定を含み、具体的には否定的な感情、認知の機能障害やゆがみ(例えば混乱、変わった記憶など)、身体的症状(頭痛、緊張、疲労、胃腸障害、食欲の変化など)、対人関係への影響(神経過敏、閉じこもりなど)などがある。多くの人は急性の心理的苦痛は数ヶ月に数週間以内に解決するが、1年ほど持続することがある。
より重度である新規発症の精神的問題は、明らかにわかりやすいものからわかりにくいものまで幅を持って現れる。最も一般的な災害後の精神的問題は、うつ病、PTSD、およびその他の不安障害であり、アルコールや薬物乱用、家庭等への暴力の増加も指摘されている。家庭医は、精神的問題、生命の脅威を感じているもの、重度の傷害をうけたもの、死を曝露されたものなどの災害弱者において一般的なスクリーニングを検討する必要がある。

災害対策
筆者は災害が発生したときに、家庭医が柔軟で着実な行動をとれるように4段階の災害準備計画を提案する。この計画には、①他組織との連携、②事前の準備、および③個人の準備、④教育が含まれる。
①教育
 家庭医は、災害に関連した身体的・精神的健康の脅威について自己学習する必要がある。すべての医師はバイオテロやテロリズムなど、多くの人に影響を与える可能性がある脅威について知っている必要がある。また、その地域に特有の自然災害について学んでおく必要がある。
②連携
 多くの災害は地域のヘルスケアの容量を超えることが多いため、家庭医は災害後の地域医療のニーズを満たすために必要とされる可能性が最も高い組織と連携しておくことが重要である。地域または州レベルで病院や地域医療群、災害対策チームなどがあり、また米国家庭医療学会、米国医師会CDCなど国家レベルでの組織や、国家をまたいだ団体もある。
③事前準備
 各組織(例えば、診療所、病院、地域保健センター)において、頻繁に使用されるもの(例えば一般的な身体的・精神的問題のための薬剤や、縫合糸、副子など)は準備されている必要である。災害後数週から1ヶ月間は外部からの援助が使用できないことも多いので、現地の医療資源は不可欠である。
④個人の準備
 被災した中での診療は、家庭医は二重の役割を持っている。被災者として、医師とその家族は、他の被害者が直面していることと同じ身体的・精神的健康問題に対して脆弱になる。一方で医師は利他的な理由のために自らの医療行為を続けることになる。自分自身や自身の家族のケアと患者のケアのバランスを追求することが重要となる。
家庭医は災害後の健康ニーズに対応するため、集団的負荷がかかった場合に共有できるコミュニティ内の他のヘルスケアの専門家と災害前から連携しておく必要がある。また、地域の医師は他の地域で災害が起こった場合に自ら手を差し伸べると同様に、地域の外のヘルスケアの専門家からの支援を受け入れられるよう準備しておくことが必要である。

【開催日】
 2016年6月15日(水)












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