ルシファー効果とは? ~普通の人がダークサイドへ堕ちるとき~

―文献名―
フィリップ・ジンバルド:普通の人がどうやって怪物や英雄に変貌するか. TED2008・23:16・Filmed Feb 2008 
著者はアメリカの心理学者で、スタンフォード大学の名誉教授。
 http://www.ted.com/talks/philip_zimbardo_on_the_psychology_of_evil?language=ja
 (内容理解のために、以下のジンバルド氏のインタビューサイトも参考にした。
  ・人が悪魔になる時――アブグレイブ虐待とスタンフォード監獄実験(1)~(2) )

―要約―
<善良な人が悪人に変貌することはいかに簡単かを理解すべきである>
 善悪の境界線は不動で、むこうとこちらには多きな隔たりがあると信じている人が多いが、その境界線は可変性があり、浸透性が存在する。エッシャーの素晴らしいだまし絵は、白に集中すると天使が見えるが、じっくり見ると悪魔が見える。
 神のお気に入りの天使はルシファーであったが、神に従わず権限への究極の抵抗を始め、天国から追放された。そしてルシファーはサタンとなり悪魔となった。いわば悪を保管する場所をつくったのは神である。この「天使から悪魔」の宇宙的変貌の物語には、普通の善良な人間が悪の根源へ変貌する人間性を理解するためのヒントがある。

<個人の属性帰属ではなく、外部要素にこそ悪に堕ちるシステムが存在する>
 「アブグレイブ事件(2004)の非公開写真」や「スタンフォード監獄実験(1972)」からの考察。アブグレイブ事件では普通のアメリカ兵が信じがたいような虐待を行っていた。また自分が過去に行ったスタンフォード監獄実験でも、瓜二つの減少があった。いずれからも立てた仮説は「関わった人は通常は善良な人で、原因は”腐った樽(環境)”」ということであった。決して「環境が正常で、”腐ったリンゴ”のような人間が混ざっていただけ」ということではない。
 アブグレイブ事件では、職務として多数の調査報告を読み、兵士の鑑定人として面会し精神鑑定を行った。そこでわかったことは、関わった兵士は、もともと本来の任務の訓練を受けておらず、虐待の場所が軍事情報の中心地にも関わらず情報が無いまま、周囲の取り調べの上官から「犯罪者の意思を砕け、尋問に備えるために弱らせて、自己制御をはずさせろ」と圧力をかけられ、一線を越えさせられてしまったこと。この複数の状況の力は時に強大で、感情移入や利他主義、道徳性が機能しなくなり、普通の人どころか善良な人までもが悪に手を染めてしまう。ただし、あくまでその状況下のみ。個人の属性帰属ではなく、外部要素にこそ悪に堕ちるシステムが存在する。

<ルシファー効果とは、普通の人にある複数の条件が揃ったときに恐るべき行動を取る仕組み>
 その中で発見した『ルシファー効果』は、善人が悪人に変貌する過程である。
●その悪が”(やむを得ない)強烈な状況の産物”であると証明されると、その状況の中にいる人間の自由な意志や責任能力が減退 [例:アブグレイブでは囚人の暴動が起き、手当たりしだいの拘束が始まり、収容所の人数も定員200名に1000名と看守たちの限界を超えていた]
●同時に強い恐怖やストレスがベースに持続していると意思決定能力と責任能力を喪失 [例:アブグレイブの周囲では砲撃戦が続き、働く兵士は皆、強い恐怖とストレスに晒され、また看守たちは12時間勤務で週7日休日なしの勤務であった]
●そのベースから(通常は制限されている行為が無条件となるように)ある制限が解除(一線を越えることが容認)されると人間性が喪失、情緒的な衰弱状態に転落 [例:犯罪の中核の看守はそうなる前には『精神に異常を来たしたもの、結核の患者、大人と子供が混ざっていて監獄の管理上どうか』と疑義を呈していたが、上官から『ここは戦地だ。自分の任務を果たすため、必要なことは何でもやれ』と命ぜられた。また『収容者の抵抗を打ち砕くために、通常は憲兵に許されていないことを実行する許可を与える』と言明された。]
●この傾向は、無力感を持った(苦痛を受けた)人間が、誰かを支配する(苦痛を与える)人間になるときに顕著
 [例:虐待した看守たちは任務ための特別な訓練を受けていない予備役であり、軍隊の最下層の集団として扱われており、自らも本当の兵士では無いと自覚している。無力感を持っている人間が、誰かを支配する力を握ったとき、その地位に値する人間であると証明するように力を乱用する。]

<悪を予防するための、悪と紙一重の英雄的な精神と想像力>
 予防や対処としては、現状が道徳的に間違っていると周囲と同意形成すること。(悪魔になる人も元々は英雄で)その英雄的な精神や英雄的な想像力を戻してもらう(我にかえる)ことが必要。
 英雄的行為も悪魔的行為と同様で、普通の人の非日常的な行為である。英雄的に振舞うことは、群衆から離れて異なったことをするということで追放のリスクが伴う。アブグレイブの虐待を止めた下等兵も告発後は3年間隠れないといけなかった。英雄は孤立するリスクを減らすため同意形成した複数人集まることが重要。
 状況には力があり、同じ状況が悪意の想像力をかきたて悪の加害者にすることもあれば、英雄的な想像力を刺激し英雄に押し上げることもある。違いは「1.周囲が受け身の時にこそ行動を起こす、2.常に自分中心ではなく社会中心に行動する」こと。

【開催日】
2014年8月13日(水)












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