後期高齢者の厳格降圧は有効か?

―文献名―
Intensive vs Standard Blood Pressure Control and Cardiovascular Disease Outcomes in Adults Aged ≥75 Years: A Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2016 Jun 28;315(24):2673-82.

―要約―
【重要性】
 高血圧を有する高齢者の適切な収縮期血圧(SBP)の目標値は明らかではない。

【目標】
 高血圧を有するが糖尿病がない75歳以上の高齢者において厳格降圧薬(120mmHg未満)と標準降圧(140mmHg未満)の効果を比較する。

【デザイン、セッティング、参加者】
 SPRINT試験(米国50歳以上、血圧130〜180mmHgで非糖尿病かつ心血管リスクが高い患者が対象※1)に参加した75歳以上の患者の多施設、無作為化試験。2010年10月20日から登録を開始し、2015年8月20日までフォローアップした。
 ※1脳卒中を除いた症候性・無症候性の心血管疾患の既往、CKD、フラミンガムリスクスコア15%以上

【介入】
 参加者をSBP<120を目標とする群(厳格降圧群、n1317)とSBP<140を目標とする群(標準降圧群、n1319)に無作為に割り付けた。

【主要評価項目】
 主要評価項目は、非致死性心筋梗塞、不安定狭心症、非致死性脳梗塞、非致死性急性非代償性心不全、心血管死である。全死亡は副次評価項目である。

【結果】
 2636例(平均年齢79.7歳、女性37.9%)のうち、2510例(95.2%)で完全にフォローアップした。フォローアップ期間の中央値は3.14年で主要評価項目(102イベントvs148イベント、HR0.66、95%CI:0.51-0.85)と全死亡(73例vs107例、HR0.67、95%CI:0.49-0.91)は有意に厳格降圧群で低かった。
 重大な有害事象に群間差はなかった。(48.4%vs48.3%、HR0.99、95%CI:0.89-1.11)
 低血圧の発生は厳格降圧群2.4%、標準降圧群1.4%(HR1.71、95%CI:0.97-3.09)、失神はそれぞれ3.0%と2.4%(HR1.23 95%CI:0.76-2.00)、電解質異常はそれぞれ4.0%と2.7%(HR1.51、95%CI:0.99-2.33)、急性腎障害は5.5%と4.0%(HR1.41、95%CI:0.98-2.04)、転倒による外傷はそれぞれ4.9%と5.5%(HR0.91、95%CI:0.65-1.29)であった。

【結論】
 75歳以上の歩行可能な高齢者では、厳格降圧群で標準降圧群と比較し、致死性心血管イベント、非致死性心血管イベント、全死亡が有意に少なかった。


P:糖尿病を除く心血管リスクを有する75歳以上の高血圧患者
I:SBP<120mmHgを目標にコントロールする(厳格降圧群)
C:SBP<140mmHgを目標にコントロールする(標準降圧群)
O:非致死性心筋梗塞、不安定狭心症、非致死性脳梗塞、非致死性急性非代償性心不全、心血管死の複合エンドポイント

inclusion criteria:心血管リスク(脳卒中を除いた心血管疾患の既往、CKD、フラミンガムリスクスコア≧15%、75歳以上)
exclusion criteria:2型糖尿病、脳梗塞の既往、6ヶ月以内の症候性心不全、EF<35%、認知症、生命予後3年未満、6ヶ月以内の故意でない10%以上の体重減少、SBP110mmHg未満(起立1分後)

・無作為化:記載あり(方法の記載なし)
・隠蔽化:記載なし
・盲検化:試験の性質上、患者と治療介入者は盲検化できない。outcome評価者は盲検化されている。
・介入群と対照群の背景(table1参照)
  アスピリン使用とfrailty index(スコアの範囲は0−1で値が高いほどfrailtyは高い)で群間差あり
  厳格降圧群でアスピリン使用が多い、厳格降圧群でfrail indexが高い
・解析:ITT解析
・結果
  複合エンドポイントのうち心不全のみ厳格降圧群で有意に減少している、NNT63(table3)
  内服薬は厳格降圧群で1剤多く、標準降圧薬に比べるとACE、利尿剤、βブロッカーの使用割合が高い(etable2)
  失神、電解質異常、腎障害は厳格降圧群で多い傾向(etable3)
  frail indexが高いほど重大な合併症が多い傾向(etable3)

村井先生図①

村井先生図②

村井先生図③

村井先生図④

村井先生図⑤

村井先生図⑥

 

―考察とディスカッション―
【考察】
 結果からは外来通院可能なADL(認知症や施設患者は含んでいない)で非糖尿病の心血管リスクが高い75歳以上の高齢者を対象に120mmHg前後に降圧することで心不全が減少することが示された。しかし厳格降圧群ではACE阻害薬/ARB、利尿剤、βブロッカーの処方が多く、それが心不全を抑制した可能性がある。また有意差はつかなかったが厳格降圧群で腎不全、電解質異常などの副作用が多く出る傾向があった。また同様に厳格降圧群ではfrailな患者ほど重大な合併症を起こしやすい傾向があった。

【開催日】
 2016年12月21日(水)












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