ヘルスメンテナンスは必要か?

―文献名―
Lasse T Krogsbøll, Karsten Juhl Jørgensen, Christian Grønhøj Larsen et al.General health checks in adults for reducing morbidity and mortality from disease: Cochrane systematic review and meta-analysis.BMJ 2012;345:e7191

―この文献を選んだ背景―
2014年6月のBMJの、「Effect of screening and lifestyle counselling on incidence of ischaemic heart disease in general population: Inter99 randomized trial」という研究では、「一般市民に対する基本的なカウンセリングや生活指導は、心血管イベントの予防において何の効果もなかった」と結論づけられた。家庭医は、風邪で来院した患者にも、禁煙の取り組みをすすめたり、高血圧のスクリーニングを行なったりして生活介入する場面が多いが、こうした行為自体の意義を考える時期に来ているかもしれない。今回、血圧測定や血液検査といった、スクリーニングについて否定的な見解を示すコクラン・システマティック・レビューを把握し、改めてヘルスメンテナンス、健康増進について深める機会にしたいと考えたため。

―要約―
【目的】
主に、代理アウトカムよりも、合併症発症率や死亡率に注目して、一般的な成人に対する健康チェック(table3参照:血圧測定、血液検査、心電図検査など)の効果と弊害を評価する。
PICO
P:高齢者を除く成人(特に病気やリスク要因で選別していない)
I:健康チェックした群
C:健康チェックしなかった群
O:死亡率、合併症で違いがあるか

【方法】
・デザイン
 コクラン・システマティック・レビューとメタアナリシスである。死亡率については、変量効果モデルを用いて解析し、他のアウトカムについては、質的統合を行なった。
・データベース
MEDLINE EMBASE CENTRAL、CINAHL, EPOC register, ClinicalTrials.gov, and WHO ICTRP, supplemented by manual searches of reference lists of included studies, citation tracking (Web of Knowledge), and contacts with trialists
・データ抽出
2人の観察者が独立して、適応、抽出されたデータ、バイアスリスクを評価した。必要時には著者にも連絡をとった。

【結果】
今回の研究に合致するスタディが16件あり14件が利用できるデータであった(182880人の参加)。9件の試験が総死亡率について分析しており、相対リスクは、0.99(95%CI 0.95−1.03)であった。8件の試験において、心血管イベントによる死亡率について分析されており、相対リスクは1.03(95%CI 0.91−1.17)であった。また、8件の試験において、癌死における死亡率が分析されており、相対リスクは1.01(95%CI 0.92−1.12)であった。サブグループ解析、感度分析を行なっても、この結果は変わらなかった。一般的な健康チェックで、死亡率、入院率、機能不全、患者の心配、他院受診、欠勤などにおいて、何の効果もなかった。ただ、全ての試験においてこれらのアウトカムには言及されてはいない。1件の試験では、健康チェックをした群では、6年以上の追跡の中で、コントロール群に比較して、新しい診断名が20%増加しており、慢性疾患の状態を自己報告する患者の数が増えた。また1件の試験では、健康チェック群では、コントロール群と比較し、高血圧と高脂血症の有病率が増えたとしている。

140618

【結論】
一般的な健康チェックは合併症を減少させず、総死亡、心血管イベントによる死亡、癌死においても死亡率を下げる事はなかった。ヘルスチェックによって新たな診断名のついた患者が増えた。重大で害のある結果については、研究されていない、または言及されていないことが多かった。

―考察とディスカッション―
自身のプラクティスとして、米国予防医学専門委員会(USPSTF)のスクリーニング項目を参考に、健康増進を考えることが多い。今回の論文では、ヘルスチェックをされた時期が1970年代であり時代遅れであったり、介入方法、アウトカム設定がバラバラでフォロー期間も短いという点から、現在とマッチしていない可能性もあり限界もある。ただ、全体として、ヘルスチェックを行った場合に、あまり効果がないという結果や、Inter99といった現代的な手法でも、心血管イベントに対して、予防的な意味がないという結果を受けて、比較的高い妥当性がありそうな、「禁煙」に力を注ぐだけでいいとも考えられた。高齢者を除いた成人のヘルスメンテナンス、皆様ならどう考えられますか?

【開催日】
2014年6月18日(水)












copyright© HCFM inc. all rights reserved.