リーダーシップと人との関係

―文献名―
ロナルド・A・ハイフェッツ/マーティ・リンスキー 著.竹中平蔵 監訳.第4章 政治的に考える in 「最前線のリーダーシップ」.p111-144.ファーストプレス.2007.

―この文献を選んだ背景―
 マネジメント・ケース・カンファレンスにおいて、リーダーには以下の2つのスキルが求められると感じた。問題の所在をあぶりだすスキルと、適応を推進するスキルである。適応を推進するのはリーダーにとっても危険を伴う行為である。このJournal Clubでは、リーダーがある程度のリスクヘッジをしながら適応を推進するために必要な5つの方法のうち、今回のケースにいくらか関連があると思われた「政治的に考える」という方法を紹介する。

―要約―
政治的に考えるうえでの6つの根本的な視点
 成功するリーダーに共通するすぐれた資質の1つは、人間関係の大切さを理解する力だろう。とくに選挙で選ばれる政治家にとっては、人間関係は空気と同じくらい大切なものだ。政治家にとって、ある主張がもたらす利益やそれを進めるための戦略は、判断要因の1つでしかない。彼らは人脈を最重視する。相談でき、ともに目の前の問題解決に取り組むことができる人々のネットワークをつくり、それを大きくすることに労力を注ぐ。リーダーシップを発揮する際に「政治的に考える」上での6つの根本的な視点がある。1つは、あなたの側にいる人々との関係からの視点、もう1つは、反対の立場の人々との関係からの視点。そして残る4つは、自分の立場を明らかにせず慎重になっている人々を動かすための視点である。

視点1:パートナーを見つける
●パートナーは、あなた自身とその活動を助けてくれる。論理的な主張や証拠に頼るだけではなく、政治的な力も築ける。パートナーの口から自分とは別の見解を聞くことは、アイデアの改善にもつながる。
●変えることが最も困難なグループのなかにいるパートナーこそが、最も重要な役割をもたらす。
●パートナーがどこまでなら協力してくれるのかを把握するためには、彼らがすでに持っている協力関係やその協力相手に対する責任感の度合いを知っておく必要がある。

視点2:反対派を遠ざけない
●リーダーシップを発揮しながら生き残り、なおかつ組織を変えることに成功するためには、支持者とともに作業するのと同じくらい緊密に、反対の立場の人々とも一緒に作業に取り組まなくてはならない。
●不安を抱きながらそれを無視して進むよりは、その不安を、自らの脆弱要因であるとともに、反対はグループにいかに強い脅威を与えているかを示すシグナルととらえるべき。それは、やがて直面する抵抗の端緒であり,放置しておけば自体は悪化してしまう。

視点3:自分が問題の一部であったことを認める
●もしあなたが組織で責任ある役割を担っており、その組織に問題が起きているとすれば、あなたにも問題が起こった責任の一端があり、問題が手つかずになっている理由の一部があなたにあることはほぼ明らかである。あなたがもたらそうとしている変革の障害になりうる部分が、あなたの行動や価値観の中にもあると知っておく必要がある。たとえ人々をよりよい場所に導こうとしているとしても、自分がいまの状況に何らかのかかわりがあることを理解し、その責任を認める必要がある。
●あなたが誰かを非難したり、だれかに自分がやりたくないことをやらせていたりするとき、彼らにとって最も簡単な選択肢は、あなたを排除することだ。その問題は「あなた対彼ら」という構図になってしまう。しかし、もし彼らと一緒に問題を直視し、その問題に関する責任の一部を引き受けるのであれば、あなたは自分が攻撃されるリスクを軽減できる。

視点4:喪失を認識する
●人々は理由がはっきりしているのであれば、犠牲をいとわない。犠牲を払うだけの価値があるのかどうかを知る必要がある。しかし、希望にあふれた未来を示すだけでは不十分であり、変化に伴ってだれが何を喪失するのかを明確にし、それをしっかりと認識する必要がある。
●あなたが人々に求めている変化は困難なもので、人々にあきらめるように求めているものには大きな価値があることを認識し、それを明確に示す必要がある。彼らとともに悲しみ、喪失を記憶する。あなたが本当に理解しているということを人々に納得させるには、たいていの場合、声明よりもより目に見える、公式の何かが必要となる。例えば、人々に求める行動を自分がモデルとなって示すことなど。

視点5:自らモデルになる(上記参照)

視点6:犠牲を受け入れる
●もし人々が変化に適応できなかったら、取り残されることになる。そして犠牲者となる。これは組織やコミュニティが大きな変革をけいけんするときには、事実上、避けられない。適応できないか、一緒に進もうとしない人々は必ずいる。あなたは、彼らを守り続けるか、彼らを犠牲にしても前進するかを選ばなければならない。犠牲者を出すことに耐え切れないほどの苦しみを覚える人々にとっては、このようなリーダーシップは大変なジレンマである。しかし、これはリーダーの仕事の1つなのだ。
●犠牲者を出すことを受け入れるかどうかは、あなたが本気で取り組もうとしているかどうかを示すシグナルとなる。もしあなたが犠牲を出したくないというシグナルを発するのであれば、それは、態度を決めかねている人々に対して、あなたの取り組みは無視してもらって結構と言っているようなものだ。現実の危機無くして、なぜ人々が何かを捨ててまでいままでのやり方を変えようとするだろうか。

―考察とディスカッション―
 リーダーシップは諸刃の剣であり、用いる人間にも危険が伴う。また、適応の障害は人々の中だけではなく、自分の中にもあることを、リーダーは認識しておかなければならない。今回扱った内容はリーダーシップの要所のうちのほんの一部ではあるが、今回扱ったここまでの内容について、自分にも思い当たることはあるだろうか?あるとすれば、そうした場面で自分はどのような行動をとっているだろうか?そこにはどんな難しさがあるだろうか?自分のリーダーシップを振り返るきっかけとして活用いただきたい。

【開催日】
2015年7月15日(水)












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