電子タバコの方がニコチン代替療法よりも禁煙率が高い

-文献名-
Peter Hajek, Ph.D, et al. A Randomized Trial of E-Cigarettes versus Nicotine-Replacement Therapy. The New England Journal of Medicine. 2019;7(380):629-637.

-要約-
Background:
電子タバコは禁煙の試みとしてよく利用されるが、禁煙治療として認定されているニコチン代替療法と比べて、その効果についてのエビデンスは限られている。
タバコから電子タバコへの変更することで、健康上のリスクを減らすことが期待されている
ニコチン含有の電子タバコはニコチンの入っていない電子タバコとくらべて禁煙に効果があるとコクラン・レビューは示している
しかし、対面の診療を伴わない、ニコチンパッチと低用量のニコチンを含有している電子タバコによる治療を比較した研究では、いずれの治療法もあまり効果は高くなかった
Method:
イギリスのNHSによる禁煙プログラムに参加した成人を、最大3ヶ月間のニコチン代替療法(各々が選択した製品を利用、複数併用可能)か、電子タバコスターターパック(第2世代、詰替可能、1本あたり18mg/mlのニコチン含有)にランダムに割り付けた。詰替用の液体は、各々が好みの香りや強さのものを購入して良いと勧めている。治療には、少なくとも4週間、週1回の行動療法が行われる。プライマリ・アウトカムは、最終受診で生化学的に評価される1年間の継続的な禁煙とした。フォローから脱落した、あるいは最終的な生化学的な評価を受けなかった参加者は禁煙失敗と判断した。セカンダリー・アウトカムは、参加者の自己申告による治療の利用状況と呼吸器症状とした。
Two-group, pragmatic, multicenter, individually randomized, controlled trial
期間:May 2015-Feb 2018
NHSの禁煙プログラムは英国内では無料で提供されている
ソーシャル・メディアや広告で参加者を募る
事前に候補者をスクリーニングし、ベースラインのセッションに呼ぶ
書面で同意を得て、禁煙日を決める
禁煙日を決めてから、いずれかの治療法にランダムに割り付ける
ランダム化の後は、すぐに製品の利用を開始する
全ての参加者は行動療法的なサポートを受ける
医師による1対1のセッションで、CO濃度測定も行われる
参加者は26週と52週に、電話にて製品の使用状況と禁煙状況について報告する
52週の時点で禁煙あるいは50%以上の減煙ができているか参加者はCO濃度測定するよう勧められる(26$US支給あり)
ニコチン代替療法:パッチ、ガム、飴、鼻スプレー、口スプレー、mouth strip、吸入、microtabs)、併用療法が推奨されており、特にパッチと速攻型系抗生剤の組み合わせが多い。変更も可能。提供の仕方はサイトによって異なる。通常の治療の同様、最大3ヶ月まで利用可能。
電子タバコ:One Kitというスーターキットを提供される。電子タバコの詰替方法の指導あり。電子タバコの液体がなくなったら、ネットや店で詰替用を購入してもらう。ある製品が合わなければ別な製品へ変更しても良い。詰替用の液体は、異なる香りや強さを自由に試してみてよい。One Kit 26-40$。
ニコチン代替療法も電子タバコも、禁煙後4週間はもう一方へ変更してはダメ。
Results:
Figure 1, Table 1〜5参照
Conclusion:
行動的なサポートが行われている場合には、電子タバコはニコチン代替療法よりも禁煙に対する効果がある。
Discussion:
他の同じような研究と比べて禁煙率がとても高い。その原因として以前にも禁煙にトライしたことのある参加者が多いので、参加者のモチベーションが高かったか。あるいは対面のサポートがあったからか。詰替可能な電子タバコがよかったのか、自由に詰替用液体を選択できたからか。
これまでの研究では、電子タバコはタバコの離脱症状が軽く、禁煙率が高く、それぞれのニーズに合わせてニコチン量を選べることがニコチン代替療法よりも良い理由としている。
電子タバコの継続率はかなり高い。まだ知られていない健康上のリスクが長期使用で出てくる可能性がある。しかし、便秘や口内炎、体重増加といった禁煙の離脱症状を和らげる効果がある。ヘビースモーカーの再発予防のためには役立つかもしれない。
Limitation:製品は盲検化出来なかった。CO濃度は24時間以内の喫煙を検出するため偽陰性の可能性あり。脱落率が21%と高く、通常研究の妥当性に影響するとされるが、他の禁煙の研究でも同等。
By Dynamed:
禁煙率は人種によって異なる。今回の研究では、人種毎のデータがなく、人種によって調整された分析がされていない。
白人やヒスパニックでは禁煙率は高いが、アフリカン・アメリカンでは禁煙率は低い。

【開催日】2019年3月6日(水)