プレゼンスマネジメント

― 文献名 ―
 コーチングのプロが教える プレッゼンスマネジメント 「仕事は外見で決まる!」    日経BP社 2009.06

― この文献を選んだ背景 ― 
 保有している認定コーチングの資格更新のために受けたアドバンストコーチングのテーマの一つに「プレゼンスマネジメント」のセッションがあり、その内容をもう少し深めたいということで手に取った書籍。家庭医の診療やそれ以外の仕事にも役立てられそうなためここで紹介します。

― 要約 ―

 本書でいうプレゼンスマネジメントとは人間としての「ハードウェア(見てくれ、顔の作り、背の高さなど)」ではなく、ノンバーバルと言われる「ソフトウェア(視線、声のトーン、人との距離など)」を指す。よって、当人の努力次第でいくらでも改善できる要素であることが重要である。その外見作りを「プレゼンスマネジメント」とします。例えば、現在のアメリカの多くのビジネスリーダー、政治家などは自分にプレゼンスマネジメント専門のコーチをつけているとされています。彼らはどのように自分をみせるかをトレーニングされています。
 我々には無限の時間があるわけではなく、多くの人に、限られた時間で、信頼を勝ち取りビジョンを示さねばならない、そのためにプレゼンスをマネジメントすることが必要とされます。リーダーは内面だけでなく外見をつくることにも責任をもつべきです。
 本書では全11パートのレッスンから成り立ちますのでその要素を要約して抜粋します。

(1)「あご」の位置をマネジメントする
  × ・・・ あごを挙げて横目でみる(あげる・・・偉そう ずらす ・・・ 隠し事あり の印象)
  ○ ・・・ あごを下げてまっすぐみる

(2)「眼」をコントロールする
ポイントは3つ
 ① 多数が相手なら5秒ずつ眼を合わせていく。
 ② 眼の表情を知る(自身の感情の動きと眼の癖を知り、「優しい眼」を意識的に作れるようにする)
 ③ まばたきを適正化する(多すぎると落ち着きなし、少なすぎると威圧的な印象を与える)
 
(3)声で自分の話をマーキングする
 大事なポイントを声で表現するコツは3つ。淡々とした流暢な話は耳に残らない。
 ① 大きな声のポイント
 ② ゆっくりな声のポイント
 ③ 低い声なポイント

(4)距離を武器にする
 まずは自身のパーソナルスペースを知ること(相手にどこに立っていて欲しいか 癖を読む)
 基本は相手のパーソナルスペースを超えないところで。しかし決定的な緊張をもって話したい時はあえて超えて話す技術もある。

(5)相手の警戒心を緩める
 表情と声と言葉が紹介されています。
 表情:ソフトアイ・・・要は「優しげな顔」を意図的に作る
 声:ペーシング・・・相手と波長を合わせた声のトーンとする
 言葉:前置きして断定表現を避ける ・・・警戒心を緩めるためには有効。

(6)最高の「聞き姿」をつくる
 皆さんは自分の「聞き姿」を意識していますか?ポイントは7つです。
 視線、まばたき、口元、うなづきの頻度、姿勢、足の位置、手足のうごき

(7)最高の「話しかけ方」で相手の心をつかむ
 話しかけ方は「3つの輪」をイメージして話すことが紹介されています。
 第1の輪:自身一人が入っている輪。要は独り言レベル。・・・良くも悪くも注目を浴びます。
 第2の輪:自身と相手が入っている輪。パーソナルな輪・・・「思い」を語る際に有効です
 第3の輪:自身と聴衆皆が入る大きな輪。・・・客観的な情報やルールを多数に伝えるのに有効。
 状況に応じて、この輪を自在に使い分けられるようにするとよい。特に皆さんはきちんと「第2の輪」を使いこなせていますか?

(8)本当に伝えたい「素材」を探してから話す
 相手を引き込む話をしたい場合は、自身が感動したポイントがどこなのかを「探すこと」そして、それをなるべく具体的に「描出」すること、この2点が相手の心を動かすために重要です。
  × ・・・「海がとってもきれい」
  ○ ・・・「海面から30m下の海底がはっきり見えるんです」

(9)相手の存在を承認する「まなざし」を身につける
 「承認」はもちろん大事なのですが、ここでは「まなざし」の作り方として、相手を複眼的にみることを推奨しています(全人的に扱うのは家庭医としては得意技ですよね!)

(10)最高のパフォーマンスを作り出すための「儀式」を用意する
最高の心身状態に入るための儀式は知らずに持っていることも。言語化してみましょう。
例)イチローが打席に入るときの特徴的なバットさばき など。

(11)自分の軸を確立する
 最も難しく最も大切なこと。「リーダーとして(ここは様々に変化)最も大切としたいことは何か?」という質問に答えられるかどうかが指標。これがぶれるとおのずとプレゼンスもぶれてしまうため、常に問いを持ってプレゼンスをつくること。

― 考察とディスカッション ―
 今回はコーチングの一環で読み始めた書籍だが、家庭医のパフォーマンスでも十分応用のきく内容が多く、自身の外来やスタッフへ対し方を振り返るきっかけになった。ビデオレビューではよくノンバーバルのフィードバックがかけられることも多いと思いますが、さらに深いフィードバックとして今回の知識も活かせるのではないでしょうか。
 さて、皆さんは自身のプレゼンスマネジメントで意識していることはありますか?

開催日:平成26年2月12日