長期療養患者に対する遠隔ヘルスケアの費用効率

- 文献名 -
 C. Henderson et al. Cost effectiveness of telehealth for patients with long term conditions (Whole Systems Demonstrator telehealth questionnaire study): nested economic evaluation in a pragmatic, cluster randomised controlled trial. BMJ 2013; 346:f1035

- この文献を選んだ背景 -
 先日、英国での家庭医療視察報告を聞き、電話での医療相談がごく一般的におこなわれていることを知った。適応を正しく定めれば、移動や待ち時間等の負担軽減や医療者の業務軽減、医療費削減につながる診療方法ではないかと感じた。そんな中、遠隔医療の費用効果を検証した研究を見つけたので、紹介する。

- 要約 -
【目的】
標準的な外来治療・支援と、それに遠隔ヘルスケア(電子ヘルスケア、telehealth)を加えた場合の費用/費用効果を検証する

【デザイン】
pragmatic, cluster randomised controlled trial に含まれた経済的評価

【セッティング】
英国の3つの地方自治体での、地域密着型遠隔ヘルスケアによる介入

【参加者】
3230 人の慢性疾患患者(心不全、COPD、糖尿病)が2008年5月から2009年12月までWhole Systems Demonstrator 遠隔ヘルスケア試験に採用された。 受容性、効果、費用効果を検証した同試験の参加者のうち、845人を遠隔医療、728人を通常医療に無作為に割り当てた。

【介入】
参加者は自分の地域で利用可能な標準的ヘルス/ソーシャルケアに加え、遠隔ヘルスケアの設備一式を受け取り、モニタリングサービスを12ヶ月間受ける。

【主要評価項目】
費用効果分析のプライマリ・アウトカムは、得られた質調整生存年(QALY)毎の増分費用効果とした。

【結果】
私達は、965人の参加者(534人が遠隔ヘルスケア、431人が通常のケアを受けていた)の費用とアウトカムの純利益分析から始めた。12ヶ月後の2群間のQUAYの調整平均差は0.012だった。介入前の3ヶ月間のヘルス/ソーシャルケアの総費用(介入の直接経費を含む)は、遠隔ヘルスケア群と通常医療群でそれぞれ、1390ポンド(1610ユーロ、2,150ドル)と1,596ポンドだった。費用効果の閾値分析(the analysis surrounding the value of the cost effectiveness threshold)における決断の不確実性を検証するため費用対効果受容曲線(cost-effectiveness acceptability curve)を算出した。一般的なケアに遠隔ヘルスケアを加えた時の質調整生存年(QALY)毎の増分費用効果は92,000ポンドだった。この値では、費用効果の可能性は低い。(支払いを希望する最高額が30,000ポンドの場合11%で、50%以上になるためには90,000ポンド以上にならなければならない。)装置の価格が80%低下するか遠隔ヘルスケアサービスを最大限に利用したと想定すれば、感度分析において遠隔ヘルスケアは通常ヘルスケアに比べわずかに高くなる(有意ではないが)。しかし、最も楽観的なシナリオ(装置の価格が80%低下し、遠隔ヘルスケアを最大限利用している)でも、この群の差異は示されなかった。(費用効率 12,000 £/QALY)

【結論】
 一般的ケアに加え遠隔ヘルスケアを使用した患者のQALYは一般的なケアのみを受けている患者と変わらず、遠隔ヘルスケアによる治療介入に関わる総費用はより高額だった。遠隔ヘルスケアを標準的な外来治療・支援に加えることに費用効果はなさそうである。

- 考察とディスカッション -
 これまでにも遠隔ヘルスケアに関する研究はいくつかおこなわれているが、アウトカムと費用の関連を検証した研究はほとんどなかった。費用軽減に繋がることを示唆する研究もあるが、質の高い研究デザインに基づいておこなわれていない。遠隔ヘルスケア利用により急性期ケア受診率が下がることを示した研究はあるが、プライマリケア外来における利用についての研究はほとんど無かった。本研究の結果は、筆者の予想に反し現時点での遠隔ヘルスケアの有用性を否定するものだったが、今後、遠隔ヘルスケアシステムの改良やコスト軽減が進むにつれこの結論が変化していく可能性はあると考える。

開催日:平成25年12月11日












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