慢性腎臓病の進行に対するアロプリノールの効果

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。

-文献名-
Badve SV, Pascoe EM, et al. Effects of Allopurinol on the Progression of Chronic Kidney Disease. N Engl J Med. 2020;382(26):2504.

-要約-
【背景】
血清尿酸値の上昇は慢性腎臓病の進行と関連している.アロプリノールによる尿酸降下療法が,進行リスクのある慢性腎臓病患者における推定糸球体濾過率(eGFR)の低下を減衰させることができるかどうかは不明である。

【研究のデザインと方法】このRCTは,オーストラリアとニュージーランドの31施設で行われた,二重盲検化,隠蔽化された試験である.痛風の既往がない,ステージ 3 または 4(eGFE15-59) のCKD患者であり,尿中アルブミン/クレアチニン比が 265 mg/gCr以上、または過去 1 年間のeGFR の低下幅が 3.0 ml/min/1.73m2以上である成人集団をアロプリノール(100~300 mg/日)投与郡とプラセボ投与群に無作為に割り付けた.主要アウトカムは,104週目(2年間)までのeGFRの変化.副次アウトカムは,「40%のEGFR低下・末期腎疾患・全死亡の複合アウトカム」,「30%のEGFR低下・末期腎疾患・全死亡の複合アウトカム」,「腎臓アウトカム」「血圧」「アルブミン尿」「血清尿酸値」,「QOLのスコア」,「安全性アウトカム」.

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【結果】
予定していた登録数は620例だったが,登録数が伸びなかったため,369例で募集を終了し,アロプリノール投与群(185例)またはプラセボ投与群(184例)に無作為に割り付けた.1群あたり3人の患者が割り付け後すぐに辞退した。残った363例で主要アウトカムを評価した。(平均eGFRは31.7 ml/min/1.73m2、尿中アルブミン/クレアチニン比中央値は716.9mg/gCr、平均血清尿酸値は8.2mg/dL)
主要アウトカムであるeGFRの変化はアロプリノール群とプラセボ群で有意差は認められなかった(アロプリノール群は-3.33 ml/min/1.73m2[95%信頼区間{CI},-4.11~-2.55],プラセボ群は-3.23 ml/min/1.73m2[95%CI,-3.98~-2.47],平均差は-0.10 ml/min/1.73m2[95%信頼区間{CI},−1.18 ~0.97;P=0.85]であった)(FIG1)。

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副次アウトカムについては,
「eGFRの40%低下、末期腎疾患、全死亡の複合アウトカム」は,アロプリノール群では63例(35%)、プラセボ群では51例(28 %)に認められた.(リスク比、1.23;95%CI、0.90~1.67;ハザード比、1.34;95%CI、0.92~1.9)であった。「GFRの40%低下、末期腎疾患、全死亡の複合アウトカム」についても似たような結果であった.(TABLE2)

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ベースライン値を調整した場合の血清尿酸値の平均差は, -2.7mg/dLであった(95%CI、-3.0~-2.5)(Fig2A)。尿中アルブミン/クレアチニン比には有意な群間差は認められなかった(fig2B).収縮期血圧(平均差、-1.79mmHg;95%CI、-4.69~1.11)または拡張期血圧(平均差、-3.21mmHg;95%CI、-6.82~3.40)、またはQOLスコア(36項目の短命健康調査QOLサマリースコアの平均差、-4.4;95%CI、-10.5~1.6)においても有意な群間差は認められなかった.

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重篤な有害事象が報告されたのは,アロプリノール群で182例中84例(46%),プラセボ群では181例中79例(44%)であった(Table3).
重篤な有害事象は両群で同程度の頻度で発生した(アロプリノール群では84人[46%]の参加者で170件、プラセボ群では79人[44%]の参加者で167件)(表3および表S6)。発疹を含む非重篤な副作用のリスクには有意差はなかった。
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【Discussion】
CKDで進行リスクの高い患者において,アロプリノールによる尿酸降下療法は,プラセボと比較してeGFRの低下を遅らせることはできなかった。
今回の結果は、血清尿酸値がCKDの進行に因果関係があるという見解を支持するものではないようである。観察研究から得られた証拠は、尿酸値と慢性腎臓病の進行との間に関連性があるだけで、因果関係はないことを示している。

【今回の研究の限界】
・登録が不完全であったために検出力が不十分であったこと
・試験レジメンを中止した患者の割合が高かったこと
・eGFRの計算に血清クレアチニンベースの式を使用していたこと
・代替アウトカムの使用

【開催日】2020年10月14日(水)