認知症患者の予定されていない入院後の予後:前向きコホート研究

<文献名>
 Elizabeth L. Sampson, et al,Survival of people with dementia after unplanned acute hospital admission: a prospective cohort study, International Journal of Geriatric psychiatry, 21 December 2012.

<要約>

【目的】
 入院後の長期生存に関する認知症の影響を調べ,どのような認知症が死亡率の独立した予測因子となるのかを評価することである.この情報は,適切なケアの提供のために不可欠である.

【方法】
 この研究は,ある大都市の急性期総合病院における予定しない入院となった616人の患者(70歳以上)についての前向きコホート研究である.主要な曝露因子は,DSM-Ⅳにおける認知症で,一次アウトカムは死亡リスクであった.認知症の重症度は,FAST(Functional Assessment Staging scale)で評価を行った.また,変数の範囲については,急性の生理学的変化(Acute Physiology and Chronic Health Evaluation),慢性の併存疾患(Charlson Comorbidity Index, CCI),褥瘡リスク(Waterlow score)で検討した.

【結果】
 全集団の42.4%は認知症だった.半分近く(48.3%)の認知症患者は入院後12ヵ月で死亡した.(認知症ではない人々の生存期間中央値2.7年に対して1.1年だった.)

 調整していない認知症患者の死亡率についてのハザード比は,1.66(95%信頼区間 1.35-2.04)で,中等症から重症の認知症患者の場合は,2.01(95%信頼区間 1.57-2.57)であった.年齢,性別,Acute Physiology and Chronic Health Evaluation,Charlson Comorbidity Index, Waterlow scoreで調整した後では,認知症の死亡リスクは,1.24(95%信頼区間 0.95-1.60)で,中等症から重症の認知症では,1.33(95%信頼区間 0.97-1.84)であった.

【結論】
 認知症である人々の生存期間は,認知症ではない人々の半分である.死亡率における認知症の影響は,特に虚弱性のマーカーのひとつであるWaterlow scoreによる調整後に減少した.

 1年の生存期間中央値は,臨床医に対して救急病院に入院した中等症から重症の認知症の高齢患者のケアにおいて,支持的なアプローチを取り入れることを検討すべきであることを示唆する.

開催日:平成25年5月22日