臨床推論を教える

【文献名】 
著者名:Kassirer, Jerome P. MD  
文献タイトル:Teaching Clinical Reasoning: Case-Based and Coached Academic medicine 
雑誌名・書籍名:Volume 85 – Issue 7 – pp 1118-1124
発行年:July 2010

【要約】
最善の臨床ケアは、正確な診断技術と最も適切な治療をすすめる臨床医の技術にかかっている。そして臨床推論の技術の習得はどのレベルの医学教育においてもキーとなる必要条件である。臨床推論を教えることは、教育理論のいくつかの基本的な原則に基づいている。成人教育理論によると、学習とは、繰り返し実際の症例に意識的に暴露されることで熟達していく。実際の症例とは、臨床推論の様々な側面から選択された物であるべきで、指導医の参加が教育的経験の価値を高める。成人学習理論は、臨床医学と臨床推論のストラテジーの記憶は、情報や判断や推論のエラーが直ちに指摘されたときに高められるとしている。記憶から作られた人工の症例より、実際の症例の方が、現実の臨床資源の失敗や多相性をしばしば反映するので、そちらが選ばれる。

これらの概念は診断プロセスを教えることと学ぶことを助長する。診断的検査や治療と、臨床推論における認知エラーのリスクとベネフィットはtrade offである。臨床推論を教えることは、学習者が解剖学と病理学を全部理解するまで遅らせる必要もないしそうすべきでない。推論の生成、パターン認識、背景の整理、診断的検査の解釈、鑑別診断、診断的確証といった概念は臨床的問題解決(clinical problem solving)の言語と方法で教えられる。専門的技術はそれに到達する正確なメカニズムを知らなくても到達できる。

Teaching Clinical Reasoning 2010
30人以下の学習者で症例ベースのカンファレンスする方法を提示。

●まず:アウトラインを提示。(List1)

●症例選択:臨床推論を幅広く理解するために、症例はランダムでなく、慎重に選択する必要がある。学習者がList1にある様々な側面を持った症例を持ってくることは推奨される。また学習者のレベルに応じて選ぶ。誰かの記憶で構成された以前の症例よりも、現在進行中の症例で、不確実で矛盾してて完全でなく、複雑で、臨床データが曖昧な症例がいい。認知エラーやニヤミスがどう起きるかを説明するためには、欠点のある推論と素晴らしい推論のケースとあった方が良い。学習者があまり知らない症例が良い。

● 症例の情報のまとめ方:症例のNarrativeは、患者のillnessだけでなく、患者の判断や行動も含まれるべきである。症例は、臨床推論のための統合されたテンプレートという機能だけでなく、臨床医学や臨床推論を学ぶためのバイアスとしての機能もある。なので可能であれば、実際の時間の流れで症例をまとめる。患者の年齢、性別、主訴などから初めても良いが、患者が医師に語った問題から初めても良い。つまりゴールに応じて症例を選び、プレゼンテーションを仕立てるべきである。

● 指導者の役割:指導者の機能は、指導者も学習者と同様に症例についての知らない状態であり、同じ情報から検討しなければいけないときにもっともよくなる。指導者は学習者の疑問と反応とコメントの妥当性正確性をモニタリングする。診断と治療における推論と同様に、患者の医学的側面についての特別な問題は、同時に扱うことが可能である。指導者は学習者になぜその情報を求めたのかをたずね、その答えを得たら何がわかるのかを説明させる。Problem solvingセッションでのこの相互のやり取りのポイントは、症例に関する情報が全て出そろってからディスカッションするより、検査データが出そろった時、診断や治療プランができてきた時など途中途中で検討することで、即座にフィードバックできることである。
  指導者は、参加者のセッションへの積極的に参加するよう努力する。知的にチャレンジングで、楽しくて、脅すことのないセッションにしなければならない。これは常にストレスのないセッションにするという訳でなく、ストレスが記憶に残る要因ともなる。指導者は時に闇に迷い込み、ミスをして、判断を誤り、不適切な仮説を立てるなどするかもしれない。重要なことは何が学ばれるのかということであり、全ての症例に最終的な答えがある訳ではないことである。また指導医は症例の全ての面をカバーしなければならないと感じるべきでない。

● 認知エラーを回避する:最近の臨床推論では、メタ認知が認知エラーの回避に効果的な方法かもしれないとしている。

以下メモ
教育方法は科学的根拠に乏しい。ここ数十年の人間の認知に関する理解は深まっているが、教育方法はいまだ専門科の意見に大部分を頼っている。

ジョンドゥーイJohn Dewey:学習には最善の経験が必要。教育は興味の刺激、自主性、表現の自由が欠かせない。

現在の教育理論は、教育者は知識を与えるのでなく、学習をファシリテートし、自発性を推奨し、互いに探求することを保証する。実際の状況で新しい知識の適応という文脈にいるときに最も効果的に新しい知識や技術を学ぶことができる。

【考察とディスカッション】
フェローシップで学んだ教育理論や、PCCMであつかうillnessなどの内容も含まれた文献であり、参考になった。また普段何となく実施してるケースカンファレンスも概ねこのやり方に則っていたのでバックボーンが得られた。メタ認知は主に医師患者関係の考察に対して使用していたが、臨床推論の世界でもエラーを防ぐためにメタ認知が注目されていることがわかり、実践してみたいと考えた。

【開催日】
2012年10月17日












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