血圧は左右で測るべきか?

【文献名】
著者名:Clark CE.et al. 
文献タイトル:Association of a difference in systolic blood pressure between arms with vascular disease and mortality: a systematic review and meta-analysis.
雑誌名・書籍名:Lancet. 
発行年:2012 Mar 10;379(9819):905-14.

【要約】
<背景>
両腕の収縮期血圧の差が10mmHgもしくは15mmHg以上あることは末梢血管障害と鎖骨下動脈狭窄と関連がある。本研究はこの血圧の差と中枢性もしくは末梢性血管障害、ならびに死亡率との間の関連性について調査したものである。
European Society of hypertension、European Society of Cardiologyのガイドラインでは上腕血圧の左右差は末梢血管障害に起因するということをいっており、まずはじめに確認するようにという推奨があるが、それらを正当化するエビデンスに欠けていた。(この点がnovelであり、かつrelevantな点だと思われます。)

<方法>
2011年7月以前に出版されたMedline, Embase, Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literature, Cochrane, and Medline In Process databasesから、左右上腕の収縮期血圧の差について記されたもので、かつ鎖骨下動脈狭窄、末梢血管障害、脳血管障害、心血管障害、もしくは生存率についてデータがあるものを検索した。左右の上腕間の収縮期血圧とそれぞれの結果の間にある関連性を統合するために変量効果モデル※(random-effect model)を用いた。

※個々の研究における問題設定は異なっているものの、類似した問題設定をもつ研究が密接に関連する一群をなすと想定。各々の研究は、ある問題に関する全ての研究のランダム抽出されたサンプルとして取り扱う。

<結果>
28の研究が同定され、うち20に対してメタアナリシスを実施した。
侵襲的な研究では
○血管造影を用い、鎖骨下動脈狭窄(50%以上の狭窄)を証明するためには、左右の収縮期血圧の差の平均が36?9 mm Hg (95% CI 35?4-38?4)であった。
○左右差が10mmHg以上では鎖骨下動脈狭窄(50%以上の狭窄)と強い関連性があった。(risk ratio [RR] 8?8, 95% CI 3?6-21?2、P<0.0001)。 ○冠動脈造影結果と血圧左右差には有意な相関はなかった。(RR1.1, 95% CI 0.8-1.6、P=0.64) 非侵襲的な研究において、 ○冠動脈疾患の既往と血圧左右差の相関はない(figure2) ○15mmHg以上の左右差と各疾患との関連は以下の通りであった。 末梢血管障害(9cohorts; RR2?5,95% CI 1?6-3?8; sensitivity 15%,9-23;specificity96%, 94-98) (figure4.A)   脳血管障害の既往 (5 cohorts; RR 1?6, 1?1-2?4; sensitivity 8%, 2-26; specificity 93%, 86-97) (figure3)     ただし、10mmHg以上だと有意な相関なし、 15mmHg以上でも同時測定法だと有意差なし/同時ではない測定法だと有意差あり(上記)   心血管疾患による死亡率 (4 cohorts; hazard ratio [HR] 1?7, 95% CI 1?1-2?5) (figure5)   総死亡率 (4 cohorts; HR 1?6, 95%CI 1?1-2?3) (figure5) ○10mmHg以上の左右差と各疾患との関連は以下の通りであった。   末梢血管障害 (5 studies; RR 2?4, 1?5-3?9; sensitivity 32%, 23-41; specificity 91%, 86-94)(figure4.A) <解釈> 上腕の収縮期血圧左右差が10mmHg以上、もしくは15mmHg以上により、さらなる血管評価が必要な患者の同定に役立つ。15mmHg以上の左右差は血管疾患や死亡のリスクの有用な指標になりうる。 【開催日】 2012年7月4日