訪問診療

【文献名】
著者名:和田忠志
文献タイトル:在宅医療
雑誌名・書籍名:臨床入門
発行年:2009年5月1日 第一版

【要約】
序論:現在の在宅医療
旧来の『往診』による在宅医療と『現在の在宅医療』
旧来の往診:急病に対する往診 現在の在宅医療:定期往診と24時間対応

<歴史的背景>
1970年まで:自宅での医療水準と外来での医療水準は同等
1970年以降:技術進歩により緊急に検査を駆使して行う「救急外来」が高水準の医療を提供
病院隆盛の時代となったがその一方で「スパゲティ症候群」「植物状態」「転院問題」「DNAR」
「転院先老人病院の治療および環境問題」など様々な問題が指摘された。
    1970-1980年代:
病院での治療が有効で無くなったがなお重い障害を持つ患者や治癒不能な癌患者に対応する医師
が全国各地に現れた。その時のスタイルが定期往診と24時間対応という現在の在宅医療の原形で
あり当初は病院から発祥し病院医療を補完する機能を有していた。
  そして近年高齢化(高齢障害者の増加と癌患者の増加)に伴い在宅医療が要請される時代となり、 
  国は在宅医療に対し並々ならぬ推進意欲を見せ、2006年に在宅療養支援診療所制度が発足した。
  
1在宅医療の導入
<初診の往診依頼に対する考え方>
・初診の急性期疾患に対する依頼があった場合往診はそれほど有用な技術ではないため基本は断る
・例外として往診を受けるメリットがデメリットを上回ればリスクを了承してもらった上で往診する
 <訪問診療導入面接>
 ・治療関係の明確化、大まかな治療方針の確認、病院からの事前情報収集

2.診察
 ・普段との比較が重要であるため普段からバイタルサインや意識状態はもとより、全身を良く見る
 ・自宅での動きを診ることの重要性、複数医師による診察のメリット

3.検査
 ・身体所見と血液検査を中心とした検査の有用性と限界を理解した上で在宅医療を実施すること
 ・新しく始める場合はポータブルレントゲン、腹部超音波、血液ガス検査装置は揃えなくても良い
 ・有力な連携病院をもち、必要に応じて在宅医療と病院を使い分けながら検査を行う方法をもつことが重要

4.家族のエンパワメント
 ・在宅医療は、家族介護力に依拠する医療形態であり、「家族を支える」ことは在宅医療の根幹に関わる技能である。指導するというニュアンスより、家族のポテンシャルを引き出すことが理想。
 ・家族の境遇、家族の方法論、家族の構造変化を知ることが大切

5.緩和ケア 主に癌患者を中心に
・患者は自分の治療やデータについて知っているが、自分の運命について認識が乏しい場合が多い
・対話を繰り返し患者の本心の希望を聞く、疾患が治癒しないことに患者と共に向き合うことが重要
・家族の忍びない気持ちや恐怖感、罪悪感、介護の疲労を理解し声かけを行う。

6.24時間対応
・有効な24時間対応は日中の医療水準によって決定される。
・あおぞら診療所(220-240名)の18時-9時までの臨時往診回数は月に8.9回
・電話を受ける手法:受け手をだれにするか?医師、留守電、事務当直、訪問看護

7.訪問看護師との連携
・医療機関から行う訪問看護と訪問看護ステーションから行う訪問看護
・中心静脈栄養、人工呼吸器、経管栄養、腎膀胱留置カテーテル、褥創などのケア指導は訪問看護師に積極的に行ってもらうと上手くいくことが多い
・訪問看護ステーションとの情報交換:直接的な電話、連携カンファレンス

8.薬局連携と処方
・かかりつけ薬局を持ってもらうことで、その薬局もお得意様として患者さんを長期にわたり大切にするという関係が築ける

9.歯科連携
・栄養状態や誤嚥性肺炎予防の観点から歯科の重要性
・どのような情報を提供する(診断名、血液媒介感染症情報、処方情報、抗生剤の使用について)

10.社会資源活用
・障害者福祉制度の活用:身体障害者交付のための診断書を記載できることが望ましい
・長期生活支援資金貸付制度:65才以上で土地評価額が1000万以上であり低所得世帯が対象

11.後継者を養成する
・学生に診療鞄を持たせることで患者さんが学生を傍観者ではなく、診療介助者として認識する
・学生にカルテを書かせる。メモをとるのは車内でおこなうようにしてもらう。
・振り返りを行う
・看護師同行診療、臨時往診研修(訪問看護に同行)、症状が安定した患者の診療(指導医が30分以内で駆けつけることが出来るようにする)

【開催日】
2012年6月13日