高齢者救急入院に対するCGAは死亡率と在宅復帰率を改善する

【文献名】
著者名:Graham Ellis et al
文献タイトル:Comprehensive geriatric assessment for older adults admitted to hospital: meta-analysis of randomized controlled trials. 
雑誌名・書籍名:BMJ 2011;343:d6553 doi: 10.1136/bmj.d6553
発行年:2011

【要約】
<OBJECTIVE>
高齢者救急入院におけるCGAの効果を評価する

<PECO of Meta-analysis>
P=高齢者で救急入院した者
・高齢者とは65歳以上、救急入院とは計画や予約がない急性の状態による入院
E=CGA(Selection criteria参照) 
C=通常ケア=一般内科への入院で、Geriatric specialistではない医師によるケア
O;1次アウトカムは在宅生活
2次アウトカムは死亡率、施設入所、依存状態、状態の悪化(機能の)、死亡or依存状態、死亡or状態の悪化、ADL、認知脳、再入院、入院期間、資源の利用量、とした。
Search strategy 研究者がEPOC Register, Cochrane’s Controlled Trials Register, the Database of Abstracts of Reviews of Effects (DARE), Medline, Embase, CINAHL, AARP Ageline, and handsearched high yield journalsを検索した。更に、掲載可能性が高い雑誌、カンファレンスプロシーディング、関連したレビューの参考文献リストを直接調査した。

<Selection criteria> 
CGAの効果と通常のケアを比較したRCTであること(病棟(Ward※1)固定の研究か、それとも院内で移動可能なチーム(Team※1)かは問わない)。CGAとは、多職種による多面的な評価プロセスで、医学的・心理学的・機能的な能力を虚弱高齢者において評価し、協働的で、統合された計画を治療と長期フォローアップについてたてるものである。
除外基準として、ある特定の疾患に対する組織だったケアを評価した研究は除外し、入院セッティングでない場合も除外した。

<Data collection and analysis>
3人の独立した評価者が、個々の研究が適格かどうかと、その質を評価し、出版されたデータを抽出した。さらに二人の評価者が調整を行った。

<Results>6か国で10315人を評価した22の研究が見つかった。一次アウトカムである在宅での生活については、フォローアップ期間の最後の時点において、通常のケアを受けた患者より、CGAを受けた患者の方がより自宅で生活していた。(フォロー中央値が12か月の場合はOR 1.16 (95%CI 1.05 to 1.28; P=0.003; NNT 33)、中央値が6か月の場合は1.25 (1.11 to 1.42; P<0.001; NNT 17)  更に、CGAを受けた患者においては入所になった者がより少なかった。(0.78, 0.69 to 0.88; P<0.001).  サブグループ解析においては、「Ward」と「Team」で行った場合に、前者の方が結果が良好であった(※2)。また、CGAを受けた患者の方が、死亡と機能低下の合計の発生はより少なく(0.76, 0.64 to 0.90; P=0.001)、認知機能の改善はより多かった(standardised mean difference 0.08, 0.01 to 0.15; P=0.02) <Conclusions> CGAは救急入院した患者において、自宅での生存率を改善した。特にこれは病棟全体がCGAを行えるように組織された場合に実現すると思われ、そして通常の医学的ケアと比べてコスト削減とも関連があると思われた。 【考察とディスカッション】  今までCGAについては特定の状況でのエビデンスがあることは知っていたが、このように一般化して救急入院の形で効果が示されたことは大きい。アウトカムの設定の仕方も「在宅生存」であり、ただの「生存」としていないことも注目に値する。(通常の生存については有意差なし。)  日本では老年医学の専門家は非常に稀有で、CGAを中心とした高齢者アプローチの教育の主軸は家庭医や病棟総合医が担っているといってもよい状況である。そうした中で、我々家庭医が担うべき役割として、  ①郡部サイト・僻地で入院施設がある場合は現場での実践 が挙げられるし、入院をもたない都市部サイトであっても  ②家庭医診療所に見学に来た研修医や病棟勤務医に対する教育  ③医学生に対する教育  ④コメディカルに対する教育  ⑤開放病床へのアプローチ・連携 が挙げられると考えられた。将来的には我々プライマリケア医と病棟勤務医の連携によるアプローチ(文献中のTeamアプローチに近いものになるであろう)が可能な仕組みを提案したり、CGAを実践できる病棟勤務医を多く育てることで高齢者ケアの質の改善に貢献できると思われた。 【参考】 ※1この文献におけるWardとTeam ‘Ward’CGAを病棟でケアする際には二つの主流な方法があり、病棟全体をCGA病棟として運営する方法と、移動可能なチームを病院内で形成し、必要な患者を訪れて担当の医師やスタッフに指示する方法がある。前者を’Wards’、後者を’Mobile team’とこのStudyでは呼んでいる。前者にはacute care for elders (ACE units), geriatric evaluation and management units (GEMU), or rehabilitation wardsなどと名前がついているようである。後者はICTやNSTのようなスタイルであろう。 ※2TeamとWardで違いが出たのは?  ・過去にも似たような現象はあり。Strokeなど。  ・理由としては①Wardの方が、高齢者ケアの時間がながく、スタッフの学習を促し、技術と専門的知識をより発達させた可能性がある。また、グループで多職種がより近い場所で働くため、より能率的で効果的な多職種業務が行え、チームビルディングが高まった可能性がある。②Teamの場合だと直接患者に関わるスタッフや専門家の行動を修正することが難しかった可能性がある。結局治療に対する推奨が守られていないという結果となる。そしてこのプロセスをコントロールすることでよりよいアウトカムを見いだせる可能性はある。また、ある状況に対するプロトコールの開発なども影響している可能性がある。 【開催日】 2012年5月23日












copyright© HCFM inc. all rights reserved.