Healthを尋ねる

―文献名―
Marian R, Stuart PhD and Joseph A, Lieberman Ⅲ MD, MPH.The Fifteen Minute Hour: Therapeutic Talk in Primary Care 4th  Edition.Chapter 8 Accenting the Positive: Putting an Affirmative Spin on the BATHE Technique.

―要約―
新しいBATHE法を理解するために、以下に例を示す。

 Eさんは、63歳の女性で、糖尿病、高血圧、軽度うつ、不眠があり、定期診察を受け、処方内容を調整することになっていた。彼女の日常の症状を聴取し、処方内容を見直した後で、Dr.Sは、「前回の診察から今日までで、最も良かったことはどんなことでしたか?」と尋ねた。Eさんは、怪訝そうにDr.Sを見つめたが、「何もいいことなんて無かったわ」と答えた。「OK、素晴らしいことは無かったかもしれませんね。ただこの数日で、ちょっと良いことはなかったですか?」するとEさんは笑顔を浮かべて、「そういえば…、孫から手紙が届いたわ。彼女は8歳なの。」「なるほど!それはどうして起こったんでしょうね。」とDr.Sが尋ねたところ「そうね、きっとあの子は私に連絡を取りたかったのよ。あの子は私のことが好きだから。」Eさんに笑顔が戻って来た。Dr.Sは、そのことに関して最も感謝していることを聞きたいと思った。すると、「私は、あの子のことを愛しています。とてもかわいい子なんです。あの子がいてくれることに感謝しています。息子夫婦がもっと近くに住んでくれればと思うけど…」とEさんは答えた。Dr.Sはどうやったら、Eさんがお孫さんとうまく関われるようになるかを尋ねた。「やっぱり、手紙と折々の電話、訪ねてみることかしら。」Dr.Sは「それは素晴らしいプランですね。こうしたことを話してくれて感謝しています」と答えた。そして、「それと、定期的な運動もしましょうね。最低30分程度のウォーキングがおすすめです。また、お孫さんと会う時には、何か体を動かすような遊びをされたらいいですね。」と付け加えた。Eさんは診察室を出る際、微笑をたたえていた。

長先生図5

 これまでのBATHE法(左表)は有効性がありながらも臨床家にとって、毎回持ち出す必要がないと考えられる嫌いがあった。そこで、毎回の診察室でもルーチンで用いられる新しい枠組み(ポジティブBATHE法(右表))が編み出された。
 ポジティブ心理学は、通常の人間の強さや善行に関する科学研究である。患者の人生におけるポジティブな側面に焦点を当てることが重要とされる。その焦点の当て方、エビデンスに基づいた枠組みとして、ポジティブBATHE法がある。ポジティブな感情つまり、感激、決心、ひらめきといったものは、健康や寿命に影響する。ポジティブな考え方は、免疫力を高め、抑うつ気分を振り払い、身体的、精神的健康を高めてくれる。ポジティブな感情な人は、ネガティブな感情の人よりも健康的な取り組みを行なうことが多い。
 感謝に関しての質問は、うまくいっていることに焦点を当てる技法である。うまくいっていることを発見し(Discover)、起こりえる最良のことを想像して(Dream)、戦略を立て(Design)、そしてポジティブな結果をもたらす(Deliver)。
 また、ポジティブBATHE法は治療手段の一つで、頻回受診の患者や、慢性疾患のある患者に推奨され、人生におけるポジティブな側面に焦点を当てる様に設計されている。BはBestであり、「今週(または、前回の診察から今日までで)最高に良いことがありましたか?」と尋ねる。AはAccountであり、「この良いことをどう説明しますか?」、TはThankfulnessを表し、「この良いことのどんなところに一番感謝しますか?」、HはHappenであり、「より頻回にこの良いことが起こるにはどうすればいいですか」、EはEmpathy, Empowermentを表し、「それは素晴らしい、あなたならできますよ」となる。
 人生において、よりポジティブな面に目を向けさせる一つの手法としては、毎日、3つよかったことを書き出すというものがある。感謝の気持ちはより健康状態を高める。患者は、自分自身の個性の長所を自己認識し、その長所を活かして行くように勧められる。
 赦し、つまり、過去の憤怒や妬みなどをやり過ごすことは、精神的、身体的に健康状態を改善する。患者は赦しの心境に達するように、プロセスを理解した方がよい。つまり、自分を傷つける者を特定し、想像の中で、彼と向き合い、なぜ不愉快な事が起こったかを理解し、相手の立場、自分の立場からそれぞれ対話させ、赦す決意をし、自身の苦悩・痛みをやり過ごすことができれば、人は赦しの境地に至り、精神的、身体的反応は変化して行く。個人の苦悩・痛みのポジティブな面とは、赦しの過程を導いてくれるということである。
 知足とは、様々な問題を解決しようとする中で常につきまとうストレスを軽減する手法として知られている。常に自身の振舞いや考え方の型を変化させて行く事の難しさは承知の通りである。しかし、ネガティブな結果はいつでも学びの糧となる。現実的楽観主義は、ポジティブな結果に至らしめ、健康の質を改善する。最後に、医師は希望を常に処方するべきである。

【開催日】
2015年1月14日(水)












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