薬剤による疾病予防の真のコストの検討

【文献名】

Teppo Jarvinen and colleagues. The true cost of pharmacological disease prevention. BMJ 2011;342:d2175 doi: 10.1136/bmj.d2175

【要約】

ランダム化試験の結果と実際の現場における臨床上の意義との間には相違がある。このことは臨床疫学のパイオニア、Archie Cochraneにより明らかにされている。

<efficacy, effectiveness, cost-effectiveness>

あらゆるヘルスケアに関する介入を研究現実の世界に適用する前に要するエビデンスには序列(hierarcy)が存在する。(Table)

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3つのシンプルな質問がCochrane氏の考え方を分かりやすく示してくれる。
「役立ちそうか?(efficacy)」「実際に役立つか?(effectiveness)」「やる価値があるか?(cost-effectiveness)」。

<Efficacy と effectiveness>

effeicayに関するエビデンスはあるヘルスケアに関する介入が広く臨床現場に応用するのに適切かどうかを評価するプロセスの第一段階に過ぎない。研究の中ではその介入がうまくいったとしても、臨床現場においても同様にうまくいくとは限らない。ある介入のコミュニティにおけるeffectivenessは少なくとも介入を受ける人口、診断の正確さ、介入する側のコンプライアンス、患者のアドヒアランス、健康保険のカバーする範囲といった5つの要素によって影響を受ける。

<予防薬のeffectiveness>

大腿骨頚部骨折の予防に関するビスフォスフォネート製剤のエビデンスは非常に限定的である(fig1)。
Fig 1 Meta-analysis of the efficacy of bisphosphonates for preventing hip fracture based on data from randomised trials.

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12の研究が骨粗鬆症、まはた骨折の既往のある65歳から80歳の女性という限定された患者層において大腿骨頚部骨を折著明に減少させたことを示したが、頚部骨折に苦しむ典型的な患者は80歳以上でナーシングホームに入居している人であり、そういった人たちは含まれていない。
仮にビスフォスフォネート製剤により頚部骨折の発生が32%減少することができるとして(fig1)、50歳以上のすべての市民(2003年時186万人)にビスフォスフォネート製剤を服用させても343の骨折しか予防することができないのである。

<政策決定について>

いくつかのefficacyに関する研究を元に治療により50%の骨折のリスク軽減が得られるという楽観的な推定をしたとしたら、1年で1名の骨折を予防するために(頚部骨折の10年危険率を推定するHealth Organization fracture risk calculatorによる)3%危険群の667名に投薬を行わなければならない。これにはもっとも安価な薬剤で4万8千ドル、もっとも高価な薬剤で521万ドルかかる。大腿骨頚部骨折1例にかかるコストは2万7500ドルであり、多くの薬剤はジェネリック薬品でなければcost-effectivenessであるとは言えない。予防的介入が政府による補償とともに広く現場に応用される前の段階でcost-effectivenessに関するデータがあるかどうか明らかにする責任があるということを、ヘルスケアに関わるすべての人(医師、患者、患者団体、製薬会社、政府規制機関)は認識すべきである。


【開催日】

2011年5月11日












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