2歳以下の子供の急性中耳炎治療に対する抗菌薬の使用

【文献名】

Alejandro,et al. Treatment of Acute Otitis Media in Children under 2 Years of Age. N Engl J Med 2011; 364:105-115




【要約】
【背景】

2歳以下の乳幼児の急性中耳炎の治療における推奨に関してはImmediate antimicrobial treatmentとWatchfull waitingと様々な意見がある。

【方法】

従来よりも厳格なcriteriaで急性中耳炎と診断された生後6~23か月の乳幼児291人を無作為にアモキシシリン・クラブラン酸(以下ABx)投与群とプラセボ群に割り付け、10日間治療を行った。
厳格なcriteriaとは以下の3つを満たすものと定義した。

①48時間以内の発症

②AOM-SOS score 3点以上

③中耳の所見(中耳の浸出液and中等度もしくは重度の鼓膜膨隆or軽度の鼓膜膨隆と耳痛or鼓膜の著明な発赤)


除外基準

他の急性疾患あり/慢性疾患あり/アモキシシリンアレルギー

96時間以内に1つ以上の抗生剤内服歴あり/48時間以上の耳痛/鼓膜穿孔
 
※ AOM-SOS score(0~14点満点)

耳を引っ張る/泣く/不機嫌/寝つきが悪い/活動性低下/食欲低下/熱

各項目 いつもと比べて(none :0点 / a little:1点  / a lot:2点)で回答し合計する。



Primary Outcome

・症状がほぼ消失する(AOM-SOSスコアが0~1点となる)までの期間

・各群のAOM-SOSスコアの平均値の治療開始後7日間の推移



Secondary Outcome

全体的な効果、アセトアミノフェンの使用状況、有害事象の発生状況、鼻咽頭の常在化率

ヘルスケア資源の利用状況

【結果】

291名が2群に分けられ、ITT解析が行われた。

両群の患者層は同等であった。

(1)症状がほぼ消失する(AOM-SOSスコアが0~1点となる)までの期間

ABx群
2日目 20%  4日目 41%  7日目 67%

プラセボ投与群

2日目 14%  4日目 36%  7日目 53%

(2)各群のAOM-SOSスコアの平均値の治療開始後7日間の推移

ABx群が有意に低かった。(p=0.02)

治療修了時点の10-12日目時点でもスコアは平均0.87(95%CI 0.29-1.45,p=0.003)と有意に低かった。

(3)治療失敗率はABx群で優位に低かった。
治療途中の4,5日目 4% vs 23%(P<0.001)
 (4~5日目の失敗の定義: 症状の改善が認められない、耳鏡所見が悪化) 治療終了時の10~12日目 16% vs 51%(P<0.001)
 (10~12日目の失敗の定義: 症状が消失していない、耳鏡所見がほぼ完全に治癒していない) 
 乳様突起炎がプラセボ群で1例認められた。 
(4)10~12日目において、以下の場合に治療成績が有意に悪かった。 ・週に10時間以上、3人以上の子供と接触した(P=0.007)
 ・試験開始時のAOM-SOS scoreが悪い(8点以下と8点より上で分けた場合)(P=0.004) ・両側の中耳炎の場合(P=0.002)
 ・鼓膜がより膨隆している場合(P<0.001) 
(5)21~25日目における再燃または中耳の滲出液の持続
再燃
(10~12日目で臨床的に治療が成功したにもかかわらず、21~25日目で再発した症例) ABx群16%、プラセボ群19% (P=0.56)
 中耳に滲出液の貯留
 (10~12日目で治療失敗と評価された患者にはamoxicillin-clavulanateに加えcefiximeを投与された)
 ABx群50%、プラセボ群63% (P=0.05)
 (6)下痢、オムツ皮膚炎はABx投与群で多かった。
 (7)両群間でStreptococcus pneumoniaeの鼻咽頭の常在率に変化は見られなかった。 【Conclusion】 
急性中耳炎をもった生後6~23か月の乳幼児に対しては、10日間のアモキシシリン・クラブラン酸投与は症状を改善するための時間を短縮し、症状を軽減し、耳鏡検査の急性感染徴候の持続率を減らす。
 
【考察とディスカッション】 小児の中耳炎で抗生剤治療に悩むケースは比較的多い。重症例では確かに抗生剤投与を積極的に考えるが、軽症から中等症に関しては抗生剤を用いないケースもあった。
確かに、そのような場合、数日後の再診の際に抗生剤を開始しなければならないケースを経験することも少なくない。
今回の研究では、治療失敗例としてその割合などを具体的に明記してくれていたため、今までの臨床上の感覚的なものを数値化して捉える事が出来た。
この辺りのデータを提示することで、今後は結果的にどちらの選択になろうとも、今までよりも多い情報量の中で合意を得つつ治療していくことができそうである。

 【開催日】 2011年2月9日(水)












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