~対人関係療法(Interpersonal Psychotherapy)~

【文献名】
水島広子. 臨床家のための対人関係療法入門ガイド.創元社,2009.

【要約】
対人関係療法(Interpersonal Psychotherapy)とは
・「対人関係療法」は、KlermanやWeissmanによって1960年代末から開発され、1984年に定義づけられた。日本ではまだ認知度は低いが、現在、米国精神医学会などの治療ガイドラインにおいてもうつ病に対する治療法として位置づけられており、「認知行動療法」と双璧をなすエビデンスのある期間限定の短期精神療法として認識されている。

・対人関係療法は「対人関係が原因で病気が起こる」と一元的に考えられているわけではなく、従来のように遺伝的、人生経験、社会状況や個人的ストレスなどの「多源モデル」で考えられている。一方で、うつ病などの発症のきっかけとしてはほとんどが「対人関係上の状況」がある。「過労」であっても、一見対人関係とは無関係に見えるが、その人がなぜ過労に陥るほど仕事を抱え込んだのか、断ることはできなかったのか、などと考えると、これも1つの対人関係上の状況とみることができる。

・対人関係療法で目指すことは、抑うつ症状を減じることと対人関係機能・社会的機能を改善することである。つまり、「症状と対人関係問題の関連」を理解し、対人関係問題に対処する方法を患者自身が見つけることによって、症状に対処できるスキルを身につけられることである。

対人関係療法の特徴
(1)期間限定
 短期療法の場合も維持療法の場合も、もちろん必要がある場合には治療を継続して行うが、その場合も「期間限定の治療を再契約する」という形にする。期間限定にする利点としては以下のことがあげられる。
①目標を明確に取り組むことができる、②期限を意識することで治療の集中度が高まる、③決められた期間の中で計画的に治療を進めることによって、治療で得たものを振り返り本人のスキルとして定着させていくことができる、④終結があることが常に明確にされるため、依存や退行を防ぐことができる。

(2)焦点化
 患者が、対人関係の4つの問題領域:①悲哀(患者にとって重要な人の死)、②対人関係上の役割をめぐる不和・不一致、③役割の変化(生活上の変化)、④対人関係の欠如(社会的孤立)のうちどの領域に問題があるかを焦点化する。

(3)現在の対人関係に取り組む
 対人関係療法では、現在進行中の対人関係と症状の関連を扱う。過去の人間関係は、初期に聴取して認識するが、治療の焦点とはしない。

(4)精神内界ではなく対人関係が焦点
 精神分析など「治療者がそれをどう解釈したか」ということではなく、「実際に患者と相手との間で何が起こっているか」ということに焦点を当てる。相手は何と言ったのか、患者はそれについてどう感じたのか、その結果患者はどう行動したのか、それが相手にどう伝わったのか…ということに焦点を当てる。

(5)認知ではなく対人関係が焦点
 対人関係療法では、最終的には認知行動療法と同じように認知面への効果は大きいが、治療の焦点は患者の気持ちや感情に注目し、それを引き起こした対人関係上のやりとりそのものに焦点を当てる。「どのような認知がそのような感情を引き起こしたか」と考えるのではなく、「誰が何を言ったからそのような感情が起こったのか」ということを直接みる。

(6)パーソナリティは認識するが、治療焦点とはしない
 「対人関係」というと、すぐに「パーソナリティの問題」として片付ける人が多いが、対人関係療法ではパーソナリティを変えることを治療焦点とはしない。これはⅠ軸障害(臨床的な疾患)があると、Ⅱ軸障害(パーソナリティ障害にみえるもの)がしょうじることが多いためである。

対人関係療法のエビデンス
・対人関係療法はうつ病に対して三環系抗うつ薬と同等の効果を示すが、異なる領域に効果を発揮するため、併用により効果は高まる。治療終結後1年間のフォローアップで、対人関係療法を受けた群の心理社会機能が優位に改善した(Weissman et al.1979)・重度のうつ病に対しては対人関係療法は認知行動療法よりもすぐれた効果を示す(NIMH研究:Elkin et al.1989)
・対人関係療法のみで寛解に至った患者は、対人関係療法のみで2年間の寛解を維持できる可能性が高い。維持治療の効果は、月1回、月2回、週1回の受診間隔で変化はなかった(Frank et al.2007)
・維持治療が対人関係に焦点化されていた方が、再発までの期間が有意に長かった(Frank et al.1991)
※国際IPT学会(International Society for Interpersonal Psychotherapy)のサイトを参照:http://www.interpersonalpsychotherapy.org/

【開催日】
2010年12月29日(水)












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