~電子カルテ導入の影響について~

【文献】
Gradual Electronic Health Record Implementation: New Insights on Physician and Patient Adaptation. Ann of Fam Med ;2010;8:316-326.

【要約】
目的
電子カルテ導入が医師患者関係や患者の行動にどのような影響を与えているかを検証する。

方法
家庭医の外来診療所において、電子カルテの導入前5か月・移行期の10ヶ月間・導入後3または6か月後に以下の調査を行った。
①170人の患者について、外来を直接観察して、時間を計測した。
②出口で患者へ電子カルテを用いた外来についてインタビューを行った。
③診療所の看護師・看護助手・事務職員を集めてフォーカスグループディスカッションを行った。
④診療所の看護職員と医師に対して、観察(構造化されていない)とインタビューを行った。
 ※電子カルテ;Logicianという商品;血液・画像・病理・患者の地理的情報の結果が参照できる。

分析
Immersion-Crystallization discussionと代替仮説の検索を用いた。

インタビュー・FGDの結果の要約
①患者の評価
 ・導入前は、情報技術に対する不安の表出がみられたが、医師への信頼や医師患者関係の安全性を実感して、電子カルテに肯定的な意見が出るようになった。
②医師・医療従事者の評価
 ・導入後は、電子カルテの懸念事項への不安は解消され、電子カルテの利点が理解されるようになり、更には予想していなかった利点も見出された。
 ・特に、医師はコンピューターという第三者が外来に入るようになって、快適そうに見えた。仕事の能率化が実感されることで看護師や事務職員の電子カルテへの抵抗感も次第に改善した。
 ・予想していなかった利点として、その場で参照できる情報(薬の毒性や避妊法、検査のリマインダーなど)による作業の能率化や、医師が診察室から出る時間の減少が挙げられた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

結果の詳細
A導入前;この時点では、電子カルテに記載されるのは問題点リストと薬のリストのみであった。
①患者の視点
 ・ほとんどの患者が電子カルテがあることに気づいていなかった。
 ・患者の回答の殆どは紙でも電子カルテもどちらでもよいというスタンスだった。
 ・患者は電子カルテが導入されると、医師の仕事内容、筆跡、情報の蓄積と検索、信頼度、正確性、医師同士のコミュニケーションを改善し、外来中に医師が診察室を出ることが減ると予想した。
 ・患者はしばしば、セキュリティや技術上の問題を理由に、電子カルテの導入について中立的な意見であった。
②医療職種の意見
 ・事務職は、文字の判別性、データの正確性、カルテの捜索・ファイリングが必要なくなることを期待していた。
 ・医師が電子カルテ導入の障壁になると考えられていた。
 ・看護師は、タイピング能力不足や、子供が壊さないかなどを心配していた。また、移行期の仕事増大を懸念していた。

B移行期;医師のカルテ記載は、紙/電子カルテどちらでも可。看護師はバイタル・予診は紙と電子カルテ両方に記載した。
①患者の意見
 ・電子カルテの存在についてどれくらい気がつくかは人によってまちまちだった。
 ・スピードやそのアクセスの良さはいいと感じていた。その一方でセキュリティへの不安を感じていた。
 ・患者によっては、紙でも電子カルテでもどちらでもいいという姿勢を持つ人もいた。
②医療職種の意見
 ・看護師は記録の抜け落ちや重複があったが、時間がなかったり、やり方を知らないからであるという意見が出た。
 ・看護師は、医師のアイコンタクトや診察が減ることや、患者が医師の記載した内容を見ることによる悪影響や、守秘義務が守られない可能性(院内の他のスタッフがカルテをみる可能性など)、コンピューターの故障を心配していた。
 ・時間が節約できることや、リマインダーによって検査の漏れが防げる点を評価していた。
 ・また、、患者が診療により責任を持つようになる(データに興味を持ったりなどから)のではという予想があった。
 ・医師は、患者がみている中で患者の問題点を記載しないといけないことに不快さを感じていた。

C完全導入後;院内・院外のネットワークとつなぐことが可能となった。
①観察結果
 ・外来の時間は変化がなかった。情報を収集するために使う時間は少なくなった。
 ・医師はアイコンタクトが減る事を危惧しており、実際に電子カルテの時にカルテを見る時間の方が、紙カルテの時にカルテを見る時間よりも長かったがが、患者は医師のアイコンタクトや外来の質に満足していた。
②患者の意見
 ・安全性、情報へのアクセスの早さ、能率、情報共有、それから、「現代らしい」スタイルについて良く評価していた。
 ・セキュリティ面については評価が分かれていた。
③医療職種の意見
 ・看護師からは、作業の能率化、医師の記載が正確になった、データの参照が早くなった、新たなテンプレートのお陰で医師の入力が早くなった、医師のカルテ記載へのインセンティブにもなるという肯定的な意見が出た。
 ・患者がコンピューターの画面に興味を示すことで、より診療に積極的になる、と評価する者もいた。

D外来での医師の変化について
①診察室にコンピューターという第三者が入ることで患者とのコミュニケーションに変化が生じた。
 ・体とコンピューターの位置や、言葉でのコンピューターの説明、患者との情報の共有方法などを工夫していた。
 ・特に導入後は、モニターを患者にも見えるように配慮して、モニターとアイコンタクトを同時に行うようにしていた
 ・非言語的コミュニケーションがより多くなった。使っていない腕を患者の方へ伸ばしたり、足や膝だけ患者の方へ向けたり、診察台に寝ている時も、膝は患者に垂直に向かっていた。
 ・医師によっては、患者の言葉などをカルテにタイプして繰り返すようになったため、患者がより外来に集中し、自分の言葉を訂正する余裕が持てるようになった。
②医学的情報の共有が促進された。
 ・即座に情報が見れるため能率がまし、患者との情報の共有がよりなされるようになった。これに対して、紙カルテ時代に情報を患者と見ると言うことは殆どなかった。(移行期は情報を患者に見せる医師はまだ少なかった。)

【開催日】
2010年8月4日(水)












copyright© HCFM inc. all rights reserved.