~虚血性心疾患の一次予防としてアスピリンは使わない~

【文献】
Barnett H, Burrill P, Iheanacho I: Don`t use aspirin for primary prevention of cardiovascular disease. BMJ; 340 920-922, 2010. (PRACTICE – Change Page)

【要約】
総括
 現在1次予防としてアスピリンを内服している全ての患者に対して、治療が正当化されるかを再考するべく、個別に評価するべきである。

アスピリンの1次予防効果を検証するMetaanalysis 2009 LANCET
・ 6つのRCTで95000名の参加者
・ アスピリンは重篤なIHD発症を0.07%/年の減少させる(I:0.51% v.s. C:0.57%)
・ そのほとんどは、非致死的なMIの発症率低下の貢献
 絶対リスク減少 0.05% (I:0.18% v.s. C:0.23%  NNT:2000)
・しかし、重大なGI出血や頭蓋外出血のリスクは、0.03%上昇(I:0.10% v.s. C:0.07%  NNT:3300)
・ 全死亡率、IHDによる死亡率、脳卒中については両群間で差異はなし
・ また、リスク低下の程度は年齢・性別・血圧、DM歴、IHDリスクには関係しない

他のSystematic Review 2004~2010年に発表
・ HT患者で抗血小板薬を1次や2次予防として内服しているケース → プラセボと比較して、脳卒中や「全虚血性疾患発症率」を低下させない
・ DM患者においてアスピリンの予防効果を検証したReviewでは、主要な心血管イベントや全死亡率の低下をもたらすことはなかった
・ 効果を示すreviewでもGI出血のリスクと相殺されている

結論
・ 1次予防としてのアスピリンの効果は、致命的な心血管イベントの絶対リスク減少に関して、小さいもしくは重度な頭蓋内や頭蓋外出血のリスクと相殺されると考えられる。
・ 現在入手可能な研究では、健康成人に対する1次予防としてのアスピリンのルーチン使用を正当化するようには考えられず、これは、性別・年齢・血圧・心血管系リスク・DMの有無にかかわらない。

変化への抵抗
・ 2005~2008年に発行されたいくつかの診療ガイドラインは心血管系リスクの高い患者やDM患者へのアスピリンの1次予防としての使用を推奨している
・ ガイドラインを変更した学会もあったが、残念ながら最近イギリス高血圧学会は推奨の姿勢を変えずに示した

どのようにして実践を変えるべきか?
・ 現在1次予防としてアスピリンを内服している患者については、一人一人を再評価し、中止あるいは継続の判断を、十分に患者へこのようなエビデンスを説明した後に、実施すべきである。

【開催日】
2010年6月9日