~心不全へのβブロッカーの使用法~

【文献】
Wilson S C: Use of beta blockers in heart failure due to systolic dysfunction. UpToDate ONLINE18.1, 2009.

【要約】
● 収縮不全による心不全の患者にβブロッカーを使用する場合には、特にカルベジロール、酒石酸メトプロロール、ビソプロロールがHFによる入院を減らし、生存率を改善するエビデンスが出ている。
● βブロッカーの使用はある特定の患者;虚血性と非虚血性のいづれの心筋炎、安定したⅣ度の心不全、女性、黒人、糖尿病のある患者、高齢者にも有用であるというエビデンスがある。
●  最近、または以前に心不全があり、LVEF<40の患者には、βブロッカーによる治療が推奨される。(Grade 1A) 臨床医はrandomized trialsで有用性(全ての原因における死亡率を減らすことを含む)が証明されているβブロッカー(カルベジロール、酒石酸メトプロロール、ビソプロ ロール)を選択するべきである。
● 治療を開始する前に、患者には浮腫がないか、あっても軽度の状態でなければならない。βブロッカーの治療は、退院する前の安定した患者に使用すべきである。
● βブロッカーの治療はACE阻害薬やARB、アルドステロン拮抗薬と併用することにより、ますます有効性が増す。
● 一般的にはβブロッカーが導入される前に、ACE阻害薬が先に導入されている。βブロッカーが先に導入されている文献は限られている。
● 治療はごく少量から始め、目的の量までもしくは症状に限界がくるまで(心不全症状の悪化、症候性の低血圧、50回/分以下の徐脈)、決まった期間で倍量にしていかなければならない。(2週もしくは3週毎など)開始量と目標量は以下のとおり。
● カルベジロール(アーチスト)では開始量3.125mg2x、目標量が25~50mg2x(最大量は体重85kg以上の人が適応)
● 酒石酸メトプロロール(セロケン、ロプレソール)は開始量12.5mg1xまたは25mg1xで、目標量は200mg/日
● ビソプロロール(メインテート)は開始量1.25mg1x、目標量が5~10mg1x
● 治療目標量に到達するために全ての努力を行わなければならない。しかし、最良ではないにしても、低用量でも利益があるようなので、高用量が使えない場合でも投与されるべきである

【開催日】
2010年5月26日