敗血症の治療方針(Early goal-directed therapy:EGDT)は時代遅れなのか

―文献名―
Ling Zhang, Guijun Zhu, Li Han and Ping Fu .Early goal-directed therapy in the management of severe sepsis or septic shock in adults: a meta-analysis of randomized controlled trials:BMC Medicine (2015) 13:71

―要約―
【背景】
 The Surviving Sepsis Campaignガイドラインでは、early goal-directed therapy (EGDT) が、重症敗血症または敗血症性ショックの患者の致死率を下げる重要な戦略だとしている。しかしながら、その効果は不明である。

【方法】
 1966年1月から2014年10月までのMedline, Embase, the Cochrane Library, Google Scholar, Chinese database (SinoMed)といったデータベースにある文献を渉猟した。
重症敗血症または敗血症性ショックに対するEGDTに関する全てのランダム化比較試験について、システマティックレビューおよびメタアナリシスを行った。プライマリアウトカムとしては致死率、セカンダリーアウトカムとしてはICU滞在期間、入院期間、人工呼吸器管理、昇圧剤、輸液、輸血とした。Review Manager 5.2を用いて、相対リスク、95%信頼区間を算出した。

【結果】
 2011年~2014年までの10のRCT、4157人の患者を組み入れた。全ての研究で、EGDT群とコントロール群では致死率に有意差を認めなかった(RR 0.91, 95% CI: 0.79 to 1.04,P = 0.17)。異質性の検定ではχ2 = 23.65, I2 = 58%であった。サブグループ解析では、標準EGDT群(注1)は、修正EGDT群(注2)と違って、通常治療(注3)に比較して低い致死率だった(RR 0.84, 95% CI: 0.72 to 0.98, P = 0.03)。しかしながら、EGDT群は、早期に乳酸除去をした群と比較し、より高い致死率であった(RR 1.52, 95% CI: 1.06 to 2.18, P = 0.02)。最初の6時間で、EGDT群は通常治療に比較して、より昇圧剤が投与され、輸液され、輸血をされていた。ICU滞在期間、入院期間、気管挿管率、昇圧剤投与については有意差を認めなかった。

注1:標準EGDT…治療開始6時間以内のCVP8~12mmHg、平均血圧65~90mmHg、尿量0.5ml/kg/h以上、中心静脈酸素飽和度(ScvO2)70%以上を保つ方略
注2:修正EGDT…標準EGDTを簡素化したもの(CVP、ScvO2を計測しない)
注3:通常治療…元文献によるが、おおよそ輸液量、昇圧剤の使用量はEGDTに比べて少量

【結論】
 EGDTは、重症敗血症、敗血症性ショックの患者にとって生命予後を改善しないようである。EGDTは早期乳酸除去群と比較してより高い致死率であった。早期乳酸除去(※)をするEGDTについての、質の高いRCTが施行されることが望ましい。

※乳酸除去治療…おそらく持続的血液透析濾過治療(CHDF)のことを指す

【開催日】
2015年7月1日(水)

【EBMの学び】便秘への漢方

STEP1 臨床患者に即したPI(E)CO
【評価を行った日付】
 2015/ 06/05
【臨床状況のサマリー】
 日常診療において便秘で困る患者と出会うことは非常に多い。特に虚弱高齢者の便秘に対して、「とりあえず麻子仁丸」というイメージを漠然と持っていたが、実際にどれほどの効果があるのか調べたことはなかった。
 P;機能性便秘症の高齢者
 I(E);麻子仁丸内服
 C;プラセボ
 O;便秘が改善する

STEP2 検索して見つけた文献の名前
【見つけた論文】
 Chinese herbal medicine for functional constipation: a randomised controlled trial

STEP3 論文の評価
STEP3-1 論文のPECOは患者のPECOと合致するか?

 P;18歳から65歳の機能性便秘症患者
 I(E);麻子仁丸内服
 C;Placebo内服
 O;1週間当たりの自発排便が増加するかどうか
 →患者のPECOと (合致する ・ 多少異なるがOK ・ 大きく異なるため不適切)
 Pについて、臨床での疑問は麻子仁丸の処方対象として最も多いと感じていた虚弱高齢者。しかし高齢者についての論文は見つからなかった。I,C,Oについては、合致。Oについて、「便秘が改善する」とはどのように評価すべきか自分でもわからなかったが、この論文のOをみて、むしろこういう評価方法があるのかと納得。

STEP3-2 論文の研究デザインの評価;内的妥当性の評価
①研究方法がRCTになっているか?隠蔽化と盲検化はされているか?
 →ランダム割り付けが ( されている ・  されていない )
 →隠蔽化が      ( されている ・  されていない )
 →盲検化が      ( されている ・  されていない )
 実際のTableで介入群と対照群は同じような集団になっているか?
 →( なっている ・ なっていない;どう異なるか?)
②解析方法はITT(intention to treat)か?
 →ITTが (されている  ・  されていない)

STEP3-3論文で見いだされた結果の評価
 Outcomeについて、以下の値を確認する
【①治療効果の有無; P値を確認する】
 Responder rate:麻子仁丸群43.3%、対照群8.3%(P<0.001) 【②治療効果の大きさ;比の指標と差の指標を確認する】  ・RR(あるいはHR・OR)を確認する   RR 0.618  ・ARRとNNTを計算する    ARR 0.35    NNT 2.857 【③治療効果のゆらぎ;信頼区間を確認する】  参考:   麻子仁丸群の8週間内服終了後CSBM/weekの回数は、   麻子仁丸群の内服前と比べて優位に増加1.62回(95%CI 1.11-2.13)P<0.001   プラセボ群の8週間内服終了後と比べて優位に増加 P=0.003 STEP4患者への適応
【①論文の患者と、目の前の患者が、結果が適応できないほど異なっていないか?】
 知りたい対象は虚弱高齢者であったが、今回は18-65歳。この論文の結果が、施設入居などしている虚弱高齢者に適応できるかはわからない。
【②治療そのものは忠実に実行可能か?】
 麻子仁丸の用量は7.5g 1日2回で日本の一般的な用量の倍であり、この点も考慮が必要、保険適応はあり、投薬期間は8週間であり継続が難しい期間ではない。漢方薬自体の飲みづらさを感じない患者であれば、内服可能。
【③重要なアウトカムはコストや害を含めて全て評価されたか? 】
 副作用は腹痛、消化管の有痛性痙攣、下痢、浮腫、おならは麻子仁丸群で多かった。
【④患者の考え・嗜好はどうなのか?】
 今回はある個人症例についての疑問ではなかった。虚弱高齢者に麻子仁丸を処方して、特に抵抗を受けた経験はない。

150612

【開催日】
2015年6月10日(水)

上部消化管内視鏡時における音楽療法の緊張軽減効果について

―文献名―

Rudin D, et al. Music in the endoscopy suite: a meta-analysis of randomized controlled studies. Endoscopy. 2007, June; 39(6):507-510.

―要約―
【背景と研究目的】
 先行研究で音楽療法がストレス軽減と鎮痛を提供することが示唆されている。このメタ解析において我々は上部消化管内視鏡施行中の患者における音楽療法の効果に焦点を当てた。

【資料と方法】
 PubMedとコクラン•ライブラリのデータベースを利用した文献検索と手動検索によって上部消化管内視鏡施工中の患者における音楽療法の効果を調べた6つのランダム化コントロール試験を抽出した。
 データ抽出後にfour separate meta-analysesが実施された。薬物療法を使用しない3つの研究(グループA)において不安レベルが効果の尺度として使われた。薬物療法を使用した3つの研究(グループB)において鎮静剤と鎮痛剤の必要量と内視鏡施行時間が解析された。

【結果】
 合計641名の患者が解析に加えられた。グループAにおいて音楽療法を受けた患者はコントロール群と比較してより低い不安レベル(8.6%の減少、P0.004)を示した。グループBにおいて音楽療法を受けた患者はコントロール群と比較して統計学的に有意な鎮痛薬必要量の減少(29.7%の減少、P0.001)と内視鏡施行時間の減少(21%の減少、P0.002)とほぼ有意に近い鎮静薬必要量の減少(15%の減少、P0.055)を示した。

【結論】
 上部消化管内視鏡を実施する患者において音楽療法はストレスの軽減と鎮痛に効果的なツールである。

【開催日】
2015年3月18日(水)

医療アシスタントによる健康に関するコーチングは低所得層の患者の糖尿病,高血圧,高脂血症を改善する(ランダム化比較試験)

―文献名―

Rachel Willard-Grace, et al. Health Coaching by Medical Assistants to Improve Control of Diabetes, Hypertension, and Hyperlipidemia in Low-Income Patients: A Randomized Controlled Trial.Ann Fam Med. 2015;13:130-138.

―要約―
【目的】
 医療職ではない医療アシスタントによる健康に関するコーチングがもし効果的ならば、プライマリ・ケアの現場におけるセルフケア支援の実現可能なモデルとなり得る。著者らは医療アシスタントがクリニック内で行う健康に関するコーチングが、通常のケアと比較して心血管系または代謝系のリスク因子の改善に寄与するかどうかを調査した。

【方法】
 カリフォルニア州サンフランシスコの2つのセーフティネットプライマリ・ケアクリニックにおいて、441の患者による12か月間のランダム化比較試験を行った。患者は、40時間のトレーニングを受け修了証書を持つ医療アシスタントによる健康に関するコーチングを受ける群:Table 1と、通常ケア(通常の医師の診察、糖尿病教育担当者、管理栄養士によるケア、慢性疾患認定看護師など)を受ける群に分けられた。
 調査開始時に十分コントロールされていなかったヘモグロビンA1c、収縮期血圧、LDLコレステロール値が12か月後に少なくとも3つのうち1つが目標値を達成したか、という複合アウトカムを主要アウトカムとして設定した。データはカイ2乗検定と線形回帰モデルにて解析した。

【結果】
 コーチングをうけたグループは、コントロール群と比較してより多くの患者が主要アウトカムを達成した(46.4% vs 34.3%, p=0.02)。全ての数値が目標値を達成したという2次複合アウトカムも同様の結果であった(34.0% vs 24.7%, p=0.05)。ヘモグロビンA1cは約2倍の目標達成率であった(48.6% vs 27.6%, p=0.01)。規模の大きいクリニックでは、コーチングを受けた患者はLDLの目標達成率が高かった(41.8% vs 25.4%, p=0.04)。収縮期血圧の目標値を達成した患者は、2グループ間では違いは認められなかった。

【結論】
 クリニック内の健康に関するコーチとして務める医療アシスタントは、通常のケアと比較してヘモグロビンA1c、LDLコレステロールを改善するが、血圧は改善しなかった。この結果は患者の臨床的な状態と介入、遂行における背景的な側面のもつ関係性への理解が必要なことを強調している。

【開催日】
2015年3月11日(水)

最適な収縮期血圧目標

―文献名―
Xu W, Goldberg SI, Shubina M, Turchin A.Optimal systolic blood pressure target, time to intensification, and time to follow-up in treatment of hypertension:population based retrospective cohort study.BMJ. 2015 Feb 5;350

―要約―
【目的】
新しい降圧薬を加えるか、既に処方されている薬の量を増やすかについて、最適な収縮期血圧目標を調査することと、治療強化やフォローアップの遅れと心血管イベントあるいは死亡のリスクとの間の関係を明らかにすること。

【デザイン】
後ろ向きコホート研究。

【セッティング】
英国のプライマリ・ケア診療所で、1986年から2010年まで。

【参加者】
健康改善ネットワークの全国のプライマリ・ケア研究データベースから88,756人の高血圧の成人患者。

【主なアウトカム評価】
異なる治療戦略の患者における急性冠動脈疾患イベントの発症率とあらゆる原因の死亡率。治療戦略は10年間の治療評価期間における収縮期の治療強化閾値、強化までに要した時間、フォローアップまでの時間で定義された。年齢、性別、喫煙の状況、社会経済的貧困、糖尿病の病歴、冠動脈疾患もしくは慢性腎臓病、チャールソンの併存疾患指数、BMI、薬物所持率、そして、ベースラインの血圧で調整した。

【結果】
治療戦略評価期間の後、フォローアップの中央値は37.4か月で、その間に9,985人(11.3%)が急性冠動脈イベントを起こしたか、あるいは死亡した。治療強化の閾値が130-150mmHgではアウトカムのリスクに違いはなかった。150mmHg以上では、リスクの増加と関連していた(ハザード比1.21、95%CI 1.13-1.3、160mmHg以上ではp<0.001)。アウトカムのリスクは治療強化までの時間が短い(0-1.4か月)と長いときと比べて1/5になった(ハザード比1.12、95%CI 1.05-1.20、1.4-4.7か月ではp=0.09)。降圧療法を強化して以降、最初に患者が受診するまでの期間が2.7か月を超えると、リスクが上昇することもわかった(ハザード比1.18、 95%CI 1.11-1.25、p<0.001)。 【結論】 心血管イベント・全死亡リスク上昇には、収縮期血圧が150mmHgを超えていること、降圧療法の強化が1.4か月以上遅れること、治療強化後のフォローアップが2.7か月以上遅れることが関連することがわかった。この結果は高血圧の治療でタイムリーな医学管理とフォローアップの重要性を支持するものである。 【開催日】 2015年3月11日(水)

市中肺炎におけるプレドニゾンの追加治療は有効か?

―文献名―

①Djillali Annane: Corticosteroids and pneumonia: time to change practice.The Lancet,Published online: January 18, 2015
②Claudine Angela Blum: Adjunct prednisone therapy for patients with community-acquired pneumonia: a multicentre, double-blind, randomised, placebo-controlled trial.The Lancet,January 18, 2015

―要約―
Background:
 全身性ステロイドを市中肺炎の治療に追加することについては、未だ議論がある。今回入院市中肺炎の患者に対し、短期ステロイド治療が臨床的安定に至るまでの期間を短縮するかの検討を行った。

Methods:
 この二重盲検多施設共同ランダム化プラセボ対照試験において、18歳以上の支柱肺炎の患者をスイスの7つの3次医業機関から登録した。患者はランダムに1:1にプレドニゾン 50mg/日あるいはプラセボを7日間投与する群に割り付けられた。プライマリエンドポイントとして臨床的な安定(バイタルサインが少なくとも24時間安定)までの日数とした。

Findings:
 2009年12月1日から2014年5月21日までの間、2911人の患者が登録され、785人がランダム化された。392人がプレドニゾン群、393人がプラセボ群。臨床的に安定するまでの期間の中央値はプレドニゾン群の方が有意にに短かった(プレドニゾン群 3.0 days, IQR 2.5-3.4、プラセボ群 4.4 days, 4.0-5.0; hazard ratio[HR] 1.33, 95% CI 1.15-1.50, p<0.0001)(Table 2)。  30日目までの肺炎関連合併症については両群とも差はみられなかった(11 [3%] in the prednisone group and 22 [6%] in the placebo group; odds ratio [OR] 0.49 [95% CI 0.23-1.02]; p=0.056)(Table 3)。  プレドニゾン群はインスリンを要する入院中の高血糖の頻度が有意に多かった(プレドニゾン群 76 [19%] vs 43 [11%]; OR 1.96, 95% CI 1.31-2.93, p=0.0010)(Table 3)。  ステイロイドによるその他の有害事象はまれであり、両群とも差はみられなかった(Table 3)。 Limitation:  入院患者としたため、外来患者全体への一般化の限界あり。  死亡数が少ないので検討するにはパワー不足。  Primary endpointにおいていくつかのパラメーターが存在していること。しかし、筆者としては、これは現実に即していると考えている。 Interpretation:  入院を要する市中肺炎の患者に対する7日間のプレドニゾン治療は合併症を増加させることなく臨床的な安定までの期間を短縮する。この結果は患者の利益、医療の費用、効率性からは切実なものであると言える。 【開催日】 2015年3月4日(水)

Rivaroxabanについて

―文献名―
1) Manesh R. Patel, et al, Rivaroxaban versus warfarin in nonvalvular atrial fibrillation, N Engl J Med. 2011 Sep 8;365(10):883-91. doi: 10.1056/NEJMoa1009638. Epub 2011 Aug 10.
2) Masatsugu Hori, et al, Rivaroxaban vs. warfarin in Japanese patients with atrial fibrillation – the J-ROCKET AF study -, Circ J. 2012;76(9):2104-11. Epub 2012 Jun 5.
3) Masatsugu Hori, et al, Safety and efficacy of adjusted dose of rivaroxaban in Japanese patients with non-valvular atrial fibrillation: subanalysis of J-ROCKET AF for patients with moderate renal impairment, Circ J. 2013;77(3):632-8. Epub 2012 Dec 8.

―要約―
1) Rivaroxaban versus warfarin in nonvalvular atrial fibrillation
BACKGROUND:
The use of warfarin reduces the rate of ischemic stroke in patients with atrial fibrillation but requires frequent monitoring and dose adjustment. Rivaroxaban, an oral factor Xa inhibitor, may provide more consistent and predictable anticoagulation than warfarin.

METHODS:
In a double-blind trial, we randomly assigned 14,264 patients with nonvalvular atrial fibrillation who were at increased risk for stroke to receive either rivaroxaban (at a daily dose of 20 mg) or dose-adjusted warfarin. The per-protocol, as-treated primary analysis was designed to determine whether rivaroxaban was noninferior to warfarin for the primary end point of stroke or systemic embolism.

RESULTS:
In the primary analysis, the primary end point occurred in 188 patients in the rivaroxaban group (1.7% per year) and in 241 in the warfarin group (2.2% per year) (hazard ratio in the rivaroxaban group, 0.79; 95% confidence interval [CI], 0.66 to 0.96; P<0.001 for noninferiority). In the intention-to-treat analysis, the primary end point occurred in 269 patients in the rivaroxaban group (2.1% per year) and in 306 patients in the warfarin group (2.4% per year) (hazard ratio, 0.88; 95% CI, 0.74 to 1.03; P<0.001 for noninferiority; P=0.12 for superiority). Major and nonmajor clinically relevant bleeding occurred in 1475 patients in the rivaroxaban group (14.9% per year) and in 1449 in the warfarin group (14.5% per year) (hazard ratio, 1.03; 95% CI, 0.96 to 1.11; P=0.44), with significant reductions in intracranial hemorrhage (0.5% vs. 0.7%, P=0.02) and fatal bleeding (0.2% vs. 0.5%, P=0.003) in the rivaroxaban group. CONCLUSIONS: In patients with atrial fibrillation, rivaroxaban was noninferior to warfarin for the prevention of stroke or systemic embolism. There was no significant between-group difference in the risk of major bleeding, although intracranial and fatal bleeding occurred less frequently in the rivaroxaban group. (Funded by Johnson & Johnson and Bayer; ROCKET AF ClinicalTrials.gov number, NCT00403767.) 2) Rivaroxaban vs. warfarin in Japanese patients with atrial fibrillation - the J-ROCKET AF study - BACKGROUND: The global ROCKET AF study evaluated once-daily rivaroxaban vs. warfarin for stroke and systemic embolism prevention in patients with atrial fibrillation (AF). A separate trial, J-ROCKET AF, compared the safety of a Japan-specific rivaroxaban dose with warfarin administered according to Japanese guidelines in Japanese patients with AF. METHODS AND RESULTS: J-ROCKET AF was a prospective, randomized, double-blind, phase III trial. Patients (n=1,280) with non-valvular AF at increased risk for stroke were randomized to receive 15 mg once-daily rivaroxaban or warfarin dose-adjusted according to Japanese guidelines. The primary objective was to determine non-inferiority of rivaroxaban against warfarin for the principal safety outcome of major and non-major clinically relevant bleeding, in the on-treatment safety population. The primary efficacy endpoint was the composite of stroke and systemic embolism. Non-inferiority of rivaroxaban to warfarin was confirmed; the rate of the principal safety outcome was 18.04% per year in rivaroxaban-treated patients and 16.42% per year in warfarin-treated patients (hazard ratio [HR] 1.11; 95% confidence interval 0.87-1.42; P<0.001 [non-inferiority]). Intracranial hemorrhage rates were 0.8% with rivaroxaban and 1.6% with warfarin. There was a strong trend for a reduction in the rate of stroke/systemic embolism with rivaroxaban vs. warfarin (HR, 0.49; P=0.050). CONCLUSIONS: J-ROCKET AF demonstrated the safety of a Japan-specific rivaroxaban dose and supports bridging the global ROCKET AF results into Japanese clinical practice. 3) Safety and efficacy of adjusted dose of rivaroxaban in Japanese patients with non-valvular atrial fibrillation: subanalysis of J-ROCKET AF for patients with moderate renal impairment BACKGROUND: In the Japanese Rivaroxaban Once-daily oral direct factor Xa inhibition Compared with vitamin K antagonism for prevention of stroke and Embolism Trial in Atrial Fibrillation (J-ROCKET AF) study, rivaroxaban 15 mg once daily was given to patients with creatinine clearance (CrCl) ≥ 50 ml/min (preserved renal function), and was reduced to 10mg once daily in patients with CrCl 30-49 ml/min (moderate renal impairment). The aim of this subanalysis was to assess the safety and efficacy of the adjusted dose of rivaroxaban compared with warfarin in a cohort with moderate renal impairment. METHODS AND RESULTS: Compared with patients with preserved renal function, those with moderate renal impairment (22.2% of all randomized patients) had higher rates of bleeding and stroke events irrespective of study treatment. Among those with moderate renal impairment, the principal safety endpoint occurred at 27.76%/year with rivaroxaban vs. 22.85%/year with warfarin (hazard ratio [HR], 1.22; 95% confidence interval [CI]: 0.78-1.91) and the rate of the primary efficacy endpoint was 2.77%/year vs. 3.34%/year (HR, 0.82; 95% CI: 0.25-2.69), respectively. There were no significant interactions between renal function and study treatment in the principal safety and the primary efficacy endpoints (P=0.628, 0.279 for both interactions, respectively). CONCLUSIONS: The safety and efficacy of rivaroxaban vs. warfarin were consistent in patients with moderate renal impairment and preserved renal function. 【開催日】 2014年11月19日(水)

閉経前女性における中間尿培養と急性膀胱炎

―文献名―
Voided Midstream Urine Culture and Acute Cystitis in Premenopausal Women engl j med 369;20 nejm.org november 14, 2013

―要約―
【背景】
急性単純性膀胱炎の原因は、自然排尿中間尿の培養に基づいて判断されるが、培養結果について、とくにグラム陽性菌の増殖が認められる場合に解釈の指針となるデータはほとんどない。

【方法】
膀胱炎の症状を呈する 18~49 歳の女性に中間尿検体を提出してもらい、その後尿道カテーテルを挿入して培養用の尿(カテーテル尿)を採取した。これらのペア検体において、菌種とコロニー数を比較した。主要評価項目は、中間尿中細菌の陽性適中率および陰性適中率の比較とし、カテーテル尿中の細菌の有無を対照に用いた。

【結果】
女性226例の膀胱炎エピソード236件を解析した、評価しえたのは中間尿とカテーテル尿のペア検体 202 組であった。培養で尿路感染症の起因菌が認められたのは、カテーテル尿142検体(70%)、中間尿157検体(78%)であり、カテーテル尿4 検体では尿路感染症の起因菌が 1 種類以上認められた。間尿における大腸菌(Escherichia coli)の存在は、ごく少数であっても膀胱内細菌尿の強い予測因子であり、102 コロニー形成単位(CFU)/mL の陽性適中率は 93%(Spearman の r=0.944)であった。これに対して、中間尿における腸球菌(培養の 10%)と B 群連鎖球菌(培養の 12%)からは、コロニー数を問わず、膀胱内細菌尿は予測されなかった(Spearman のr=0.322 [腸球菌],0.272 [B 群連鎖球菌])。中間尿中に腸球菌、B 群連鎖球菌、あるいはその両方が検出された 41 件のエピソードのうち、カテーテル尿の培養により大腸菌の増殖が認められたのは61%であった。

【結論】
急性単純性膀胱炎を起こした健常閉経前女性において、自然排尿中間尿の培養により、膀胱内の大腸菌が正確に証明されたが、腸球菌や B 群連鎖球菌は証明されなかった。腸球菌や B 型連鎖球菌は大腸菌とともに分離されることが多いが、それら自体が膀胱炎を引き起こすことはまれであると考えられる。(米国国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所から研究助成を受けた。)

【開催日】
2014年11月5日(水)

慢性肝炎の肝細胞スクリーニング システマチックレビュー

―文献名―
Devan Kansagara, MD et al. Screening for Hepatocellular Carcinoma in Chronic Liver Disease A Systematic Review

―要約―
【Background】
ガイドラインではハイリスク患者の肝細胞癌の定期的なスクリーニングを推奨しているが、そのエビデンスレベルは不透明である。

【Purpose】
慢性肝炎患者のHCCスクリーニングついての有益性と有害性についてレビューすること。

【Data Sources】
MEDLINE, PsycINFO, and ClinicalTrials.gov に関しては検索可能な時期から2014年4月まで
Cochrane databasesに関しては検索可能な時期から2013年6月まで

【Study Selection】 
英語の研究で観察研究、スクリーニング群と非スクリーニング群の比較研究、有害事象の研究、スクリーニングの間隔に関する比較研究

【Data Extraction】
最も重視したものは死亡と有害事象である。
個々の研究の質とエビデンスの強さをパブリッシュされているクライテリア(文献16参照)を用いて2人でレビューした。

【Data Synthesis】
13,801から22の研究がinclusionされた。
総じてスクリーニングの効果におけるエビデンスは非常に低かった。
一つの大規模研究で定期的な超音波スクリーニングにおけるHCC死亡率が低い結果であった。 (83.2 vs. 131.5 per 100,000 person-years ;rate ratio, 0.63 [95% CI, 0.41 to 0.98]) しかし、この研究では方法論的限界があった。(baseline characteristicsが不透明、ランダム化作業が不透明、死亡のみがアウトカムであり追跡率に差があるなどの問題あり)
他の研究ではB型肝炎患者の定期的なAFP検査で生存に関する有益性は認めなかった。全死亡/100人年が1.84 vs 1.79 (P=NS)であった。
18個の観察研究ではHCCの診断に至った段階でスクリーニングされていた患者群では、臨床的に診断された群よりも早期のステージであった。しかし、リードタイム・バイアス、レングスタイム・バイアスが交絡していた。
2つのスクリーニングの間隔に関する研究では、短い間隔(3~4か月)と長い間隔(6~12か月)で生存率に差が出なかった。
有害事象に関しては良質な研究がなかった。(確証的検査であるCT、MRI、肝生検のリスクを扱ったものはあった。)

【Limitations】 
英語研究のみであったこと。このエビデンスは方法論的な問題と研究数が少ないことで研究限界があった。

【Conclusion】
慢性肝炎患者のHCCスクリーニングによる死亡率に対する効果は非常に弱いエビデンスしかなかった。
スクリーニングは早期肝細胞癌を同定できる可能性はあるが、現段階では臨床的な診断よりもシステム化されたスクリーニングが生存の上で有利かどうかは定かではない。

<参考①>
(lead time bias)
検診発見がんと外来発見がんとの間で生存率を比較する際に問題となる偏り。がんの発生から死亡までの時間が検診発見群と外来発見群の両群で等しい(すなわち検診の効果がない)場合でも、検診で早期診断された時間の分(リードタイム)だけ、検診発見がん患者の生存時間は見かけ上長いことになり、したがって見かけ上の生存率も上がることになるという偏り。生存期間の始点が早期発見の分だけずれるという意味から、ゼロタイム・シフトとも呼ばれる。

(length time bias)
 スクリーニングで診断される疾患は、通常の診療で診断される場合よりも緩徐に進行する病変が多いかもしれない。というのも、進行が速い病変はスクリーニング受ける間もなく、症状が顕在化し受診して病変を発見されることになる。緩徐進行性の病変は長く体内に病変が存在しているのでスクリーニングで発見されやすい。スクリーニングが実際よりも有効であるように見えてしまう。

<参考②>
AASLD米国肝臓病学会ガイドライン
recommendation…半年ごとの腹部エコー(1年毎ではなく)
   期間として3カ月と6か月でどう違うか?
   局所病変の検出に差なし
10㎜以下の病変の検出率は3カ月で有利だが、
HCC発生累積数、代償不全、肝移植、生存率に関して差なし
not recommend…
腹部エコーとAFPの組み合わせ(コスト高と疑陽性↑)
   AFP単独(感度、特異度が低い)
   CT(疑陽性↑、コスト高、放射線量の問題)

<日本癌治療学会> http://jsco-cpg.jp/item/02/intro_03.html

【開催日】
2014年10月15日(水)

診療所での弁膜症評価

―文献名―
Yukio Abe, MD, Makoto Ito, MD, Chiharu Tanaka, M.  A novel  and simple method using pocket-sized echocardiography to screen for aorticstenosis.  J Am Soc Echocardiogr. 2013;26: 589-596

―要約―
【背景】
大動脈弁狭窄症(以下、AS)は最もありふれた弁膜症であり、加齢変性による石灰化が現代のASの一番の要因となっている。ASは通常、収縮期駆出性雑音(以下、SEM)を機に発見される。50歳以上の50%近くにSEMを聴取することから、すべての人に最上位機種の心臓エコー検査を行うことは時間もかかり、経済的負担にもなる。そこで重大なASを発見するための簡便な方法が必要とされている。
 ポケットエコーでの心臓エコー検査はその一つに位置づけられるかもしれない。この研究ではポケットエコーをASのスクリーニングに使用する価値についての評価する目的で行われた。

【方法】
継続診療を受ける20歳以上の2度以上のSEMか既知のAS患者147名を集め、大阪市立総合病院で心臓エコー検査を行った。経験豊富な循環器内科医による身体所見ののち、熟達した技師によるポケットエコーで大動脈弁の解放を視覚的にスコア化した(0=制限なし、1=制限あり、2=重度に制限)。その合計値をVisual AS scoreと定義した。最上位機種での心臓エコー検査結果に基づき、大動脈弁高面積指標(Aortic Valve Area Index以下、AVAI)が0.6cm2/m2と0.6~0.85 cm2/m2 をそれぞれ重度ASと中等度ASを示すものとみなした。

【結果】
147名のなかで51名がASの診断を受けており、51名が何らかの症状を有していた。検査困難だったり、他の弁膜症性疾患による雑音だったものなどを除外し、130名の患者が残った。そのうち55名が男性で、平均年齢は74±10歳だった。重度ASと診断されたのは27名で、中等度ASと診断されたのは30名だった。
Visual AS scoreとAVAIとは強い関連が見られた(R=-0.89, P<.0001 ; Figure2)。重度ASを診断するうえで頸動脈へのSEMの放散とSEMのピークが後方にずれることと頸動脈波の緩徐な立ち上がりが最も高い感度(93%;95%CI; 76%-99%)を示し、Ⅱ音の消失が最も特異度が高かった(94%; 95%CI;88-98%)。Visual AS scoreが4点以上をカットオフとすると重度ASを診断するうえで感度85%、特異度89%だった。中等度~重度ASと診断するうえでは頸動脈への放散が最も感度が高く(91 %;95%CI;81%-97%)、頸動脈波の振動が最も特異度が高かった(99%;95%CI;93%-100%)。Visual AS score3点以上をカットオフとすると感度は84%、特異度は90%となった。 ポケットエコーでのVisual AS scoreの観察者間の再検査信頼性はκ値が0.78と評価された。ポケットエコーを用いた評価では125±39秒を要した。 【結論】  今回、私たちが提唱するVisual AS scoreは、重要なASの存在を判断するうえで熟達した身体所見と同等の正確さが認められた。Visual AS score3点未満では中等度から重度ASの否定につながり、4点以上では重度ASの確定に役立つ。ポケットエコーはASの素早い診断につながり、数多くのSEMを認める患者に対してさらなる精査を行うかどうかの判断を手助けしてくれるだろう。 【開催日】 2014年10月8日(水)