高齢者における目標血圧のランダム化試験

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。

-文献名-
Zhang W, Zhang S, Deng Y,et al. Trial of Intensive Blood-Pressure Control in Older Patients with Hypertension. N Engl J Med. 2021;385(14):1268-1279.

-要約-
【背景】高齢の高血圧患者において、心血管リスクを低減するための適切な収縮期血圧の目標値は、依然として不明である。世界的な高齢化に伴い、恒例の高血圧患者における収縮期血圧の治療目標値を決定することは研究の争点となっているが、高齢者における収縮期血圧の目標値に関しては各国のガイドラインでは依然として移管していない。75歳以上の患者でもSPRINT試験において集中的な血圧コントロールにより心血管疾患の予防効果が観察されたほか、メタアナリシスでは収縮期血圧の目標値を130mmHgとすることで高リスク患者では心血管イベント及び死亡リスクが減少することが示された以峰で、高齢者における収縮期血圧の130mmHg未満への引き下げは慎重に行うべきだと示唆されている。
【方法】多施設共同無作為化比較試験(STEP試験:Strategy of Blood Pressure Intervation in the Elderly Hyper-tensive Patients)において,60~80歳の中国人高血圧患者を、収縮期血圧の目標値を110~130mmHg(集中治療)または130~150mmHg(標準治療)に無作為に割り付け、フォローアップ期間を4年と計画した。1、2、3カ月後にフォローアップの診察をうけ、その後は予定の48カ月までは3カ月毎で診察を受けることとした。薬剤調整は診察室血圧の測定に基づき行われた。一方で家庭血圧測定も実施し、スマートフォンアプリによる血圧管理効果も検証した。主要アウトカムは、脳卒中、急性冠症候群(急性心筋梗塞および不安定狭心症による入院)、急性虚血性心不全、冠動脈再灌流、心房細動、心血管系疾患が原因による死亡の複合とした。心血管疾患の10年リスクはFramingham Risk scoreを用いて推定した。

【結果】 対象となった9624例のうち、1113人(11.6%)が除外、8511例が試験に登録され、4243例が集中治療群に、4268例が標準治療群に無作為に割り付けられた。試験終了までに234例(2.7%)が追跡不能となった。患者のうち19.1%が糖尿病の既往があり、6.3%が心血管疾患の既往あり、64.8%がフラミンガムリスクスコア15%以上だった。1年後の平均収縮期血圧は、集中治療群で127.5mmHg、標準治療群で135.3mmHgであった。中央値3.34年の追跡期間中に、一次アウトカムイベントは集中治療群147例(3.5%)に対して、標準治療群196例(4.6%)に発生した(ハザード比,0.74;95%信頼区間[CI],0.60~0.92;P=0.007)。主要転帰の個々の要素についても、集中治療群が有利であった。脳卒中のハザード比は 0.67(95% CI,0.47~0.97)、急性冠症候群は 0.67(95% CI,0.47~0.97) であった。急性心不全 0.27(95% CI, 0.08~0.98) 、冠動脈再灌流 0.69(95% CI, 0.40~1.18) 、心房細動 0.96(95% CI, 0.55~1.68) 、心血管死 0.72(95% CI, 0.39~1.32 )であった。安全性および腎機能に関する転帰は,低血圧の発生率が集中治療群で高かった(3.4%vs2.6%、P=0.03)ことを除き,両群間に有意差はなかった。

【ディスカッション】高血圧の集中治療は、心血管ベントの発生を有意に減少させ、ほとんどの副次的転帰についても良好な結果が得られた。一方であらゆる原因による死亡リスクは有意差は無かった。STEP試験もSPRINT試験はともに集中的な血圧コントロールが心血管系疾患の予防に有効であったが、両試験に大きな相違点がある。SPRINTでは診察室血圧は自動化されたシステムで行われすべてのプロセスで試験担当者は立ち会わなかったが、STEPではオシロメトリック電子血圧計を使用し訓練を受けたスタッフが診察室で血圧測定した。またSPRINTでは糖尿病患者は除外されている(髙石注:50歳以上の心血管リスク因子を有する非糖尿病患者を対象に、強化療法(目標SBP<120mmHg)と標準療法(目標SBP<140mmHg)とを比較)。両試験は脳卒中既往者を除外している。STEP試験とSPRINT試験のあらゆる原因による死亡や心血管死亡リスクの差は、試験の意義と適格基準、血圧の目標値、地理的位置、試験集団の人種的・民族的背景の違いによって部分的に説明されるかもしれない。STEP試験はサンプルサイズが大きく、慢性疾患を併せ持つ多様な患者層、高い追跡調査率、家庭血圧のモニタリングの使用などが長所である。試験の限界は中国の人口の90%以上を占める漢民族のみを対象としていること。今後は民族による無作為化の層別化が課題だろう。またFramingham Risk scoreは博仁を対象に作成されており、中国人成人の心血管系リスクを過大評価する可能性がある。
【結論】高齢の高血圧患者において,収縮期血圧の目標値を110~130mmHg未する集中治療は,130~150mmHg未満とする標準治療よりも心血管イベントの発生率が低いことが示された。


Figure 1. Screening, Randomization, and Follow-up.
介入を中止した患者は,収縮期血圧の目標値や降圧剤に関連する副作用のため試験介入を中止したが,追跡調査には参加した。追跡不能となった患者は、連絡が途絶え、ある追跡訪問から試験終了まで主要アウトカムに関するデータが確認されなかったものである。データの解析はITTアプローチに基づいて行われた。追跡不能となった患者も解析に含め、データは最後の追跡訪問の時点で打ち切った。

Figure 2. OfficeSystolic Blood Pressure Measurements.
平均投薬回数は、患者1人あたりの各診察時に投与された血圧降下剤の数に基づいている。

Figure 3. Cumulative Incidence for the Primary Outcome.
主要転帰は,脳卒中,急性冠症候群,急性心不全,冠動脈再灌流,心房細動,心血管系原因による死亡の複合とした。Fine-Gray 分布ハザードモデルを用いて計算し,臨床施設を調整。挿入図は、同じデータを拡大したY軸である。

【開催日】2022年3月2日(水)

産後11週における母親の健康と仕事関連の要因

-文献名-
McGovern P, Dowd B, Gjerdingen D, Dagher R, Ukestad L, McCaffrey D, Lundberg U. Mothers’ health and work-related factors at 11 weeks postpartum. Ann Fam Med. 2007 Nov-Dec;5(6):519-27.

-要約-
目的
 多くの母親は産後すぐに職場復帰をする。女性の出産後の回復や仕事と家庭の両立について要因の研究はあるが、産後の女性の健康との関連を調べた研究は少ない。また、社会的支援と女性の産後の健康状態の関連を経時的に調べた研究も少ない。本研究では、産後11週間の就業女性の産後の健康に関連する個人的および仕事上の要因について検討する。

 ★アメリカの産休・育休制度
 1993年に制定された連邦家族医療休暇法(FMLA)
  ・以下の条件を満たす場合は出産や養子縁組に関して12週間の休暇を取得する権利がある
    ①12ヶ月以上雇用されていること ②休暇開始までに1,250時間以上勤務していること ③勤務地から75マイル以内に住む従業員が50人以上いる職場で働いていること
   ・この法律での受給資格がない女性については、州の政策や個々の雇用主の政策が何らかの形で休暇給付金を提供する場合がある

方法
 前向きコホートデザインを用いて、2001年に出産で3カ所の市中病院に入院中のミネソタ州の母親817名を本研究に募集した。産後5週と11週に電話インタビューを実施した。対象者は18歳以上の有職者で,英語を話し,単胎児を出産し,もともと雇用されており、産後に復帰するつもりの女性であった。インタビュアーはバイアスのかからないインタビューをするためにトレーニングを受けた。フルインタビューは45分程度であったが、仕事を辞めた場合や時間が限られている場合は10分のミニインタビューとした。バイアス評価のために両方のインタビューを用いたが、多変量解析にはフルインタビューのみ使用した。身体的健康はSF-12の身体的な項目、精神的健康はSF-12の精神的な項目、症状は先行研究を参考に28項目を設定して評価した。これらの項目は4週間の期間内にあったかどうかを調査した。操作変数(2段階最小二乗法)を用いた多変量モデルを用いて、女性の心身の健康および産後症状に関連する個人的および雇用的特性を推定した。

結果
[table1]
 産後11週目に661名(登録者の81%)がインタビューを完了し、50%の参加者が職場に復帰していた。インタビューを完了した人としていない人の背景の差をtable1に示す。インタビューを完了した人は、より高年齢、白人が多く、大学卒業の学歴である割合が多かったが、身体的健康、精神的健康、貧困レベルに関しては差が無かった。

[table2]
 インタビューを完了した661人のcharacteristicsをtable2に示す。産後11週の時点で50%が仕事復帰していた。25~34歳のアメリカ女性のデータと比較して、身体的健康も精神的健康も有意に良かった。

[table3]
 産後の症状の頻度をtable3に示す。出産に関する症状は産後5週では平均6.2個であったが、11週では4.1個と有意に減っている。最も多い症状は5週でも11週でも倦怠感である。5週と11週で最も差があるのは母乳育児に関する症状である(11週の方が少ない)。休暇を得る母親より職場復帰する母親の方が母乳育児が少ないためと考えられる。

[table4]
 身体的健康、精神的健康、産後症状それぞれに関する多変量解析の 結果をtable4に示す。
・身体的健康
 産後の身体的健康の向上と有意に関連する要因は、妊娠前の一般的な健康状態の良さと、妊娠中の同僚からのサポートのレベルの高さであった。
・精神的健康
 産後の精神的健康の向上と有意に関連する因子として、妊娠前の一般的健康状態が良好であること、産前産後の気分の問題がないこと、家族や友人からの社会的支援が得られること、家庭や仕事の活動に対する管理意識が高いこと、仕事のストレス得点が低いことなどが挙げられた。
・産後症状
 産後症状の軽減と有意に関連する要因は、妊娠前の健康状態が良好であること、出産前の気分の問題がないこと、結婚しているかパートナーがいること(独身に対して)、非白人であること、夜泣きのない乳児を持つことであった。

 また、多変量解析の結果、健康の尺度に対する独立変数の効果は、一般に小さいか中程度であることがわかった。

議論
 症状としては疲労が多く、それ自体も問題となるが、疲労から精神的な不調などに繋がるためそういう意味でも重要である。
 今回の研究では産後5週から11週にかけて症状は減っていったが、先行研究においてそのパターンに当てはまらない症状として上気道症状が挙げられている。職場復帰による母児ともに環境変化(感染源への暴露、ストレスなど)で急性上気道炎が増えると考えられている。 
 母乳育児に関する症状が産後5週から11週にかけて減ったが、おそらく職場復帰に伴う母乳育児の減少(母乳育児は5週67%→11週で52%)が関連していると考えられる。ミネソタ州法では、母親が乳児に母乳を与えるために、毎日無給の休憩時間を提供することを雇用主に義務付けている。雇用主が休憩時間ををどの程度提供しているか、またはこの休憩時間を受けた女性が職場復帰後に母乳育児を継続する十分な動機となるかは、不明である。これらの問題に取り組む研究が必要である。
 産後の健康には妊娠前の健康状態が良いことが有意に関連することが分かった。つまり、女性を治療するすべての臨床医は、妊娠前の健康増進と健康管理に重要な役割を担っている。妊娠前に精神的または身体的な健康レベルが低い女性は、産後にもっと注意深く観察されるべきで、頻回の訪問などを検討すると良いだろう。
 limitationとしては、文化的背景などが異なる集団への適応。この研修は産後18ヶ月における健康状態の評価を目的とした前向き研究であり産後5週・11週はベースラインのデータとしても機能する。今後、今後の研究では、ケースコントロールデザインにより、就業中の産後女性と産後でない同様の女性とを比較し、両集団における症状の有病率に関する文献に情報を提供することが有益となるであろう。家族や友人からのソーシャルサポートを多面的に評価したが、父親に関する詳細なデータは集めなかった。
 今後は、この研究で示唆されたテーマを元に介入研究による評価が必要である。

結論
この結果から、産後の女性は、疲労レベルおよび精神的・身体的症状に関して評価される必要があることが示唆された。疲労や産後症状が日常的な役割を制限している女性は、医師に、仕事のストレスを減らし、職場や家庭での社会的支援を増やすための方法について相談し、家族・医療休暇の支援が症状のコントロールに役に立つことを保証することが有用であると思われる。

【開催日】2022年2月9日(水)

年齢別の甲状腺刺激ホルモンの参照は、ヨウ素過剰地域の高齢患者の甲状腺機能低下症の過剰診断を減少させる

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。
-文献名-
Yingchai Zhang, Yu Sun, Zhiwei He, Shuhang Xu, Chao Liu1, Yongze Li, Zhongyan Shan, Weiping Teng. Age‐specific thyrotropin references decrease over‐diagnosis of hypothyroidism in elderly patients in iodine‐excessive areas. Clinical Endocrinology. 2021;1–8.

-要約-
過去にも、JCで潜在性甲状腺機能低下症の文献が取り上げられている。
高齢者の潜在性甲状腺機能低下症(2017年) https://www.hcfm.jp/journal/?p=1318、レボチロキシンは80歳以上の潜在性甲状腺機能低下症のQOLを改善しない(2020年)https://www.hcfm.jp/journal/?p=1919 

目的:
過剰なヨウ素への急性または慢性の曝露は、甲状腺の生理機能に有害な影響を及ぼす。したがって、この研究は、過剰なヨウ素摂取に慢性的にさらされている地理的地域に居住する高齢者集団における顕性甲状腺機能低下症(OH)および潜在性甲状腺機能低下症(SCH)の有病率を決定し、寄与する危険因子を分析することを目的とした。

設計:
この横断的研究は、高ヨウ素摂取への慢性的な曝露を記録した江蘇省の地域で2016年から2017年に実施された。
対象者:
多段階の層化抽出法を使用して、2559人の成人参加者を登録した。

測定:
尿中ヨウ素濃度(UIC)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)レベル、およびその他の関連パラメーターを測定した(Table 1.ヨウ素過剰地域の研究参加者の特徴)。人口統計情報は、標準化された質問票を使用して記録された。年齢別のTSH参照は、米国臨床生化学会ガイドラインによって決定された(Table2.無病者の年齢別TSH参照, Table3. TIDE研究からのヨウ素が適切な地域の無病者の年齢別TSH参照, Figure1. 2つの異なる年齢層におけるTSH分布。点線:70歳以上の無病者。実線:70歳未満の無病の個人)。
単変量および多変量ロジスティック回帰分析を実行して、研究対象集団における甲状腺機能低下症の危険因子を特定した。

結果:
参加者のUICの中央値は307.3µg / L(四分位値:200.7、469.8 µg / L)だった。検査室の基準値を使用した70歳以上の被験者におけるOHの有病率は2.37%だった。ただし、年齢別の参照範囲を使用すると、1.78%に減少した。同様に、SCHの有病率も、年齢別の基準値を適用すると、29.59%から2.96%に大幅に低下した(Table 4.OHおよびSCHの有病率)。
単変量モデルと多変量モデルの両方で、甲状腺機能低下症の危険因子として、高齢、女性の性別、および高いUICが特定された(Table5. 甲状腺機能低下症の危険因子)。

限界:
まず、甲状腺疾患の病歴など、研究のいくつかのパラメーターは、長期の医療記録がない場合、参加者による想起バイアスの影響を受けている。第二に、食事中のヨウ素摂取量の推定では、食事中のヨウ素の重要な供給源でもある他の食品(卵など)を無視している。したがって、食事中のヨウ素摂取量を過小評価する可能性がある。第三に、この研究はヨウ素過剰地域で実施された。したがって、この研究集団から得られたTSH基準値は、生理学的に「正常」とは見なされない可能性がある。年齢別のTSH基準値は、ヨウ素が適切な領域の基準値よりも高く、甲状腺機能低下症の診断を過小評価している可能性がある。したがって、適切なヨウ素状態の領域での定期的なスクリーニングの基準範囲を決定することが最善である可能性がある。最後に、これは2016年から2017年までのデータが収集された横断研究だった。政府はその後2018年にこれらの地域の非ヨウ素化塩を承認したため、現在のシナリオは大幅に異なる可能性がある。私たちの知る限り、これらの地域での非ヨウ素添加塩の使用によってOHとSCHの有病率が変化したかどうかを調査した研究はまだない。したがって、これらのヨウ素過剰地域における非ヨウ素化塩法の影響を調査するために、5年間の追跡調査を開始する。

結論:
年齢別のTSH基準値を使用すると、研究対象集団におけるOHおよびSCHの有病率が大幅に低下し、不必要な過剰診断および過剰治療が防止された。

【開催日】
2022年2月2日(水)

多疾患併存のある中年者の日常生活:混合法システマテックレビュー

-文献名-
González-González, Ana Isabel, et al. “Everyday Lives of Middle-Aged Persons with Multimorbidity: A Mixed Methods Systematic Review.” International journal of environmental research and public health 19.1 (2022): 6

-要約-
要約に本文の内容を佐藤が補足して記載。
多疾患併存患者の健康管理に伴う負荷(定期内服の徹底、病状の自分での把握、食事療法、体重管理、規則正しい生活、身体活動の維持など)は、家族生活、余暇時間、就業に対して、否定的に影響しうる。この混合法システマテックレビューは、中年者(30-60歳)の日常生活に多疾患併存がどのように影響するか評価した研究を統合し、中年者が健康管理に伴う負荷を乗り越える助けとなるスキルや資源を同定する。2人の独立した研究者が、タイトル/要約/全文を7つのデータベースから調査し、データを抽出し、the Mixed Methods Appraisal Tool(MMAT)を用いてバイアスを評価した。我々は、44研究(49,519人)から知見を質的または量的に合成した。
半分以上の研究においては、対象者の代表性や反応バイアス*の評価についての情報は不十分であった。
*質問に対して回答者が不正確な回答や虚偽の回答をしてしまう幅広い傾向
2つの研究が全体的な機能を評価していた(15の調査された身体機能、18の心理社会的機能、28の仕事機能)。19の研究が多疾患併存に対処するためのスキルや資源を探索していた。多疾患併存のある中年は、ない人たちと比べて、全体的にも、身体的にもADL(歩行、入浴、食事、更衣、ベットからの起き上がり)の制限、IADL(家事困難48% 移動困難36% 内服困難5%)心理社会的にもより大きな障害を負っており(心理面:抑うつ、不安、怒り、苛立ち、不全感、恨み、孤独感、屈辱感。社会面:社会活動や余暇活動への参加や楽しむこと、家族関係や婚姻関係の解消)、さらに就業率(正規雇用率44%)と仕事の生産性もより低かった。
ある種のスキルや資源が、彼らの日常生活への対処を助けていた。
(スキル:ユーモアの維持、活動的であり自分のケアに責任を持つこと、社会支援を当てにすること、自分自身のためよりも家族のためにという認識で自らの健康管理をすること、仕事に取り組むことや日々のルーチンワークが正常であること感覚を保つのに寄与すること、意識として「自分をケアすること、医師の助言に従うこと、それを受け入れ、家族や友人を信頼すること」)スキルのタイプは、治療様式、診断からの期間、他の併存疾患、自己認識されている限界に影響を受けていた。
中年者のニーズにあった全体観的で機能的なヘルスケア計画が提供されるために、医療専門職は多疾患併存の対処の経験や関連する健康管理の負荷についてより深い理解が必要である。
(多疾患併存を抱えながら生活する経験とは、正しくない事を認識し、悪いことを行い、その後に自己管理下で行うことができ、生活とうまく折り合いをつけるというプロセスを経る。)

【開催日】
2022年2月2日(水)

安定した慢性心不全患者における利尿剤の休薬

-文献名-
Short term diuretic withdrawal in stable outpatients with mild heart failure and no fluid retention receiving optimal therapy Eur Heart J.2019;40(44):3605-3612

-要約-
【目的】
ループ利尿薬は心不全の治療に広く使用されているが,外来での利尿薬調整の指針となる最新のデータは少ない.
【方法】
ブラジルの11の心不全クリニックにおいて,安定した心不全外来患者に対する低用量フロセミドの休薬の安全性と忍容性を,前向き無作為化二重盲検プロトコールで検証した.
本試験では、2つの主要評価項目が盲検により評価された。(i) 4つの時期(ベースライン、15日目、45日目、90日目)で評価した視覚的アナログスケールによる呼吸困難スコアの曲線下面積(AUC)として定量化した症状評価、および (ii) 追跡期間中に利尿剤の再使用がなく維持される患者の割合.
188名の患者(女性25%、59±13歳、左室駆出率32±8%)を登録し、フロセミド休薬群(n=95)または維持群(n=93)に無作為に割り付けられた。
【結果】
第一の主要評価項目については、フロセミド休薬と継続投与の比較において、患者の呼吸困難の評価に有意差は認められなかった[AUC中央値1875(IQR383-3360)および1541(IQR474-3124)、それぞれ、P = 0.94]
第二の主要評価項目については、休薬群70人(75.3%)、維持群77人(83.7%)が、追跡期間中にフロセミドの再使用がなかった(休薬によるフロセミド追加使用のオッズ比1.69、95%信頼区間0.82-3.49、P = 0.16 )。心不全関連のイベント(入院、救急外来受診、死亡)は頻度が少なく、群間で差がなかった(P = 1.0)。
【結論】
利尿剤の休薬により、呼吸困難の自己認識やフロセミドの再使用の必要性が増加することはなかった。最適な薬物療法を受けている体液貯留の徴候のない安定した外来患者において、利尿剤の中止は検討に値すると思われる。

【limitation】
フロセミド中止による長期的な影響については不確実である。
呼吸困難VASを評価するために事前に定義されたサンプルサイズを達成できなかった。
比較的若いHF患者集団が登録されており、私たちの結果は非常に高齢者には当てはまらない可能性がある。

【開催日】
2022年1月12日(水)

OECD35カ国におけるプライマリ・ケアの測定

-文献名-
Stephen J. Zyzanski, et al. Measuring Primary Care Across 35 OECD Countries. Annals of Family Medicine. VOL. 19, NO. 6, NOVEMBER/DECEMBER 2021.

-要約-
【目的】
Person-Centered Primary Care Measure(PCPCM)の心理測定特性とスコアを28言語,OECD(経済協力開発機構)加盟35カ国において検討した。
PCPCMについて(本文より)
11項目の患者報告式の測定法で、プライマリケアの幅広い範囲と統合的、包括的な性質を評価(アクセス性、支援、コミュニティの状況、包括性、継続性、調整、家族の状況、目標指向のケア、健康増進、統合、関係)。何百人もの患者、臨床家、保険者が、プライマリ・ケアにおいて重要であると言うことに基づいて開発。本研究は、PCPCMを多様な言語や国で使用できるようにし、将来の研究で検討できる国ごとの違いに関する予備的仮説を刺激し、各国の医療へのアプローチの自然実験に基づく政策や実践を導くことを目的としている。
【方法】
有料のオンラインサンプリングサービスを利用し、各国の成人360人の年齢と性別を代表するサンプルを依頼した。プライマリケアについて患者や臨床医が最も重要であるとする意見に基づいて開発され、既に検証済みの11項目の患者報告式測定法であるPCPCMを実施した。また、人口統計、Patient-Enablement Instrument(注:患者の対処能力、理解、健康への自信度などの評価尺度)
、プライマリ・ケア医や診療所にかかっている年数、医師が結果を知ることでケアが向上すると思うかどうか、アンケートに答えるのが大変だったかどうかとの関連から構成妥当性を評価した。我々は、各国におけるPCPCMの心理測定特性を評価し、各国におけるPCPCMの総得点と項目別得点を報告した。
【結果】
PCPCMはすべての言語と国において確かな心理測定学的特性を示し,クロンバックのアルファは0.88から0.95,修正項目総相関は0.47から0.81,大多数の国で0.50台前半から0.70台後半であった.複数回の分析により、並行妥当性の強い証拠が示された。1点から4点までの範囲で、全体の平均点は2.74点であり、標準偏差は0.19点であった。(Table 1)
PCPCMの平均点は、最も低いスウェーデン(2.28)から最も高いトルコ(3.08)までであり、ドイツが2位(3.01)、米国が3位(2.99)であった。(Table 2)
【結論】
PCPCMの複数国にわたる内部一貫性と同時検証は、患者や臨床医が重要だと言うプライマリ・ケア機能の幅の一貫性を強く証明するものである。また、各国における総得点と項目別得点の多様性は、各国の政策、慣行、人口統計、文化がプライマリ・ケアに与える影響について興味深い仮説を生み出し、PCPCMを用いた生態学的分析と個人データ分析をさらに進める強い動機となる。

Q1=私の診療所は、私がケアを受けることを容易にしてくれる
Q2=私の診療所は、私のケアのほとんどを提供することができる
Q3=私のケアにおいて、医師は私の健康に影響するすべての要素を考慮している
Q4=私の診療所は、私が複数の場所から受けるケアを調整している
Q5=私の医師または診療所は私を人間として理解してくれている
Q6=私の医師と私は一緒に多くのことを経験してきた
Q7=私の医師または診療所は私の味方をしてくれる
Q8=私の受けるケアは私の家族に関する知識を考慮している
Q9=この診療所で受けるケアは地域に関する知識に基づいている
Q10=長期にわたって、私の診療所は私の健康維持に役立つ
Q11=長期にわたって、私の診療所は私の目標を達成するために役立つ

【開催日】
2022年1月12日(水)

ACP話し合い開始のタイミングに影響する患者の好みと要因:異文化間のmixed-method study

-文献名-
Jun Miyashita1,2 , Ayako Kohno3, Shao-Yi Cheng4, Su-Hsuan Hsu5, Yosuke Yamamoto2, Sayaka Shimizu2, Wei-Sheng Huang4 , Motohiro Kashiwazaki6, Noriki Kamihiro6, Kaoru Okawa7,
Masami Fujisaki8, Jaw-Shiun Tsai4 and Shunichi Fukuhara1,2

-要約-
<背景>
 ACPの話し合いは世界的に受け入れられつつあるが、その理想的なタイミングは不明であり、文化的な要因も関係していると考えられる。

<目的>
 日本と台湾の成人患者を対象に、事前ケア計画の話し合いを開始する時期とそれに影響する要因を評価する。

<デザイン>
 混合法による質問紙調査により、健康な状態から病気であることが明らかな状態までの4つの段階において、事前のケアプランに関する話し合いを開始したいと考えている患者の割合を定量的に測定し、望ましいタイミングの基盤となる質的な認識を明らかにした。

<セッティング/参加者>
 日本の4つの病院と台湾の2つの病院の外来を訪れる40~75歳の患者を無作為に募集した。

<結果>
 全体(700人中)では、日本では72%(365人中)、台湾では84%(335人中)が病前の話し合いを受け入れた(p<0.001)。病前の話し合いに積極的な要因は、日本では若年層、生命維持治療の拒否、台湾では高齢層、社会的支援の強さ、生命維持治療の拒否であった。考え方は大きく4つに分類され、最も多かったのは「賢明な予防策として話し合いを歓迎する」で、「終末期が近づくまで話し合いを延期する」「死は普遍的に避けられないものと受け止める」「医療者主導で話し合いを行う」を上回った。

<結論>
大多数の患者は、健康状態が著しく悪化する前に話し合いを開始することを望んでいるが、約5人に1人の患者は、明らかに死に直面するまで話し合いを開始したくないと考えている。事前介護計画を促進するためには、医療従事者は患者の嗜好や、事前介護計画の開始を受け入れるか否かに関連する要因に留意しなければならない。

<既知のこと>
・A C P話し合いに対して予想される、または実際にある、患者のネガティブな反応を考えると、医療従事者はその話題に触れることに躊躇いを感じる。患者は希望を失うかもしれないし、時期を誤ったACPは医師患者関係を悪化させるかもしれないからである。
・患者がいつACP話し合いへの心理的な準備ができるのかを知る手がかりとなる研究はほとんどない。

<この論文で追加されたもの>
・日本では72%、台湾では84%の回答者が、健康状態が悪化する前にACP話し合いを始めたいと考えている
・しかし、少数派だが20%の人々は、このような議論を人生の終わりが近づくまで延期したいと考えている
・アジア人の意識は均一ではなく、日本人よりも台湾人の方が、死は避けられないものであり、ACP話し合いは常識であると考える患者が多い。日本の患者は台湾の患者よりもACP話し合いに対して受動的な態度をとり、医療者主導でACP話し合いが行われることを好む

<実践、理論、政策への示唆>
・日本や台湾の患者の多くは、健康状態が大きく損なわれる前に話し合いを始めようとするが、明らかに終末期を迎えるまで話し合いに応じない人もいる
・したがって、ACPを推進するためには、医療従事者は、患者の好みの多様性やACPを受け入れるか否かに関連する文化的要因に留意する必要がある。

転ばぬ先の杖(賢明な予防策)
 将来、体が不自由になった時に備えて自分の意思を伝えておくべきだ
終末期までのACPの延期
 終末期が近づいていることを受け入れるまで、話し合いを始めるべきではない
終末期の普遍的な必然性
 人は誰でも死を免れないので、将来の医療について話し合う必要がある
医療従事者主導でのACP話し合い
 医療従事者が主導権を握れば、患者は迷わず話し合いに応じる

【開催日】
2021年12月8日(水)

血圧を下げると糖尿病の新規発症が予防できる!?

―文献名―
Milad Nazarzadeh, et al. Blood pressure lowering and risk of new-onset type 2 diabetes: an individual participant data meta-analysis. Lancet 2021; 398: 1803–10

―要約―
背景
血圧の低下は、糖尿病の微小血管および大血管合併症を予防するための確立された戦略であるが、糖尿病そのものの発症予防における役割ははっきりしていない。我々は、主要な無作為化対照試験の個人参加者データを用いて、血圧低下そのものの糖尿病発症への効果を報告した無作為化試験のメタアナリシスを検討することを目的とした。

方法
無作為化対照試験の大規模な個人参加者データを用い,データをプールして血圧低下自体が新規2型糖尿病のリスクに及ぼす影響を調べた。また,5つの主要な降圧薬の新規発症2型糖尿病リスクに対する効果の違いを調べるために,個人参加者データによるネットワークメタ分析を行った。全体として、1973年から2008年の間に実施された22件の試験のデータを、Blood Pressure Lowering Treatment Trialists’ Collaboration(オックスフォード大学、英国・オックスフォード)が入手した。
・特定のクラスの降圧剤とプラセボまたは他のクラスの血圧降下剤を比較した一次予防および二次予防試験で、無作為に割り振られた各群で少なくとも1000人年の追跡調査が行われたすべての試験を対象とした。
・ベースライン時に糖尿病と診断された参加者、および糖尿病が蔓延している患者を対象とした試験は除外した。
・参加者は介入治療群と比較治療群に分けられた。プラセボ対照試験では、プラセボ群を比較対照とし、有効群を介入群とした。また、2種類以上の薬剤を比較したhead to head試験では、収縮期血圧の低下が大きい方を介入群とし、もう一方を比較群とした。
・メタ解析では、Kaplan Meier生存曲線を用いて、追跡期間中の生存確率を比較した。
・BMIによる効果の不均一性を評価するために、サブグループ分析を行った。尤度比検定を用いて、ベースライン時のBMIのサブグループ間における治療効果の不均一性を検証した。
・すべての試験からデータを取得できないことが取得バイアスにつながるかどうかを確認するために、funnel plotとEgger’s regression testを用いた。各試験のバイアスのリスクは,改訂版コクラン・リスクオブバイアス・ツールで評価し,以前の研究でも報告。
・調査結果の頑健性を確認するために,いくつかの感度分析と補足分析を行いました。各試験で報告された異なる糖尿病確認方法による層別解析を行い,確認方法の違いによる所見の一貫性を評価した。
・さらに、ランダム効果項を含み、複数レベルの潜在的交絡因子を調整した1ステージのCox比例ハザードモデルを報告した。絶対的なリスク減少は、治療効果を絶対的な尺度で示すために、IDリンクを用いたポアソン回帰モデルを用いて算出した。最後に、補完的な分析として、自然に無作為化された遺伝的変異を用いて血圧降下治療効果を模倣する独立した枠組みとして、メンデリアンランダム化による血圧降下効果を再評価しました
・1段階の個人参加者データのメタ解析では、層別Cox比例ハザードモデルを用い、個人参加者データのネットワークメタ解析では、ロジスティック回帰モデルを用いて、薬剤クラス比較の相対リスク(RR)を算出した。
結果
19の無作為化対照試験から得られた145,939人(男性88,500人[60-6%]、女性57,429人[39-4%])が、1段階の個人参加者データのメタ分析に含まれた。22試験が個人参加者データネットワークメタ分析に含まれた。中央値4~5年(IQR 2~0)の追跡調査の結果,9883人が新たに2型糖尿病と診断された。
・収縮期血圧を5mmHg下げることで、すべての試験で2型糖尿病のリスクが11%減少した(ハザード比0-89[95%CI 0-84-0-95])。
・主要な5種類の降圧薬の効果を検討した結果、プラセボと比較して、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(RR 0-84 [95% 0-76-0-93])とアンジオテンシンII受容体拮抗薬(RR 0-84 [0-76-0-92])は、新規発症の2型糖尿病のリスクを低減した。
・しかし、βブロッカー(RR 1-48 [1-27-1-72])とサイアザイド系利尿薬(RR 1-20 [1-07-1-35])の使用はこのリスクを増加させ、カルシウム拮抗薬(RR 1-02 [0-92-1-13])には重要な効果は認められなかった。

解釈
血圧の低下は,新規発症の2型糖尿病の予防に有効な戦略である。しかし、確立された薬理学的介入は、オフターゲット効果の違いにより、糖尿病に対する効果が質的にも量的にも異なっており、アンジオテンシン変換酵素阻害薬とアンジオテンシンII受容体拮抗薬が最も良好な結果を示した。このエビデンスは、糖尿病予防のために選択されたクラスの降圧剤の適応を支持するものであり、個人の臨床的な糖尿病リスクに応じた薬剤選択がさらに洗練される可能性がある。

ディスカッションより抜粋
・血圧の上昇が2型糖尿病の発症を引き起こす正確な生物学的経路は不明ですが、いくつかの潜在的なメカニズムが報告されています。例えば、インスリン抵抗性は、代謝経路と心血管経路のクロストークにおいて中心的な役割を果たしている可能性があります。また、交感神経系の活性化や内皮機能障害につながる慢性炎症など、その他の経路も高血圧と糖尿病リスクとの関連性が示唆されている。例えば、レニン・アンジオテンシン阻害薬は、血圧降下作用とは別に、炎症マーカーの濃度を低下させることが示されており、これが糖尿病予防効果を高める可能性がある。)
(www.DeepL.com/Translator(無料版)で翻訳し、一部加筆)

【開催日】
2021年12月8日(水)

変形性膝・股関節症へのNSAIDs、オピオイド治療の有効性と安全性

―文献名―
Bruno R da Costa. Effectiveness and safety of non-steroidal anti-inflammatory drugs and opioid treatment for knee and hip osteoarthritis: network meta-analysis. BMJ 2021;375:n2321: published 12 October 2021.

―要約―
Introduction:
 変形性関節症は痛みにより、身体機能とQOLが低下し、全ての原因による死亡リスクが高まる。局所または経口NSAID、パラセタモール(アセトアミノフェン)、オピオイドが一次薬物療法となる。これまでのエビデンスでは、痛みと身体機能の改善がオピオイドとNSAIDで似通っている可能性を示唆しているが、オピオイドは多くの有害事象を引き起こす。オピオイドによる悪心・嘔吐、眠気などの副作用に加えて、慢性的な使用により骨折、心血管イベント、オピオイド依存、死亡リスクの増加と関連している。カナダでは2000年から2017年の間に、オピオイド関連の死亡率が593%増加した。にも関わらず、オピオイドは英国、米国、カナダ、オーストラリアで変形性関節症の痛みに対して最も処方されている薬の一つとなっている。
 以前のシステマティックレビューでは、変形性関節症の痛みに対するNSAIDとオピオイドの有効性が報告されている。一方、これまでのレビューでは、薬剤の有効量の中で最低用量を処方する、という推奨事項を実施するのに十分なエビデンスは得られていない。詳細なエビデンスを提示し、より安全な処方を可能にするために、膝と股関節の変形性関節症の痛みと身体機能に対するNSAIDs、オピオイド、パラセタモールの様々な製剤と用量の有効性と安全性を評価した。
Method:
システマティックレビューとメタアナリシスガイドラインの優先レポート項目に従い、膝または股関節の変形性関節症の患者の大規模ランダム化試験を検討した。NSAID、オピオイド、パラセタモール、またはプラセボ。膝または股関節以外の関節炎を含む試験は、患者の75%以上が膝または股関節の変形性関節症を確認した場合にのみ含まれた。

Results:
102 829人の参加者からなる192件の試験で、90種類の有効な製剤または用量が検討された(NSAIDでは68、オピオイドでは19、パラセタモールでは3)。5つの経口製剤(ジクロフェナク150 mg /日、エトリコキシブ60および90 mg /日、ロフェコキシブ25および50 mg /日)は、臨床的に関連する最小限の痛みの軽減よりも治療効果が大きくなる確率が99%以上だった。局所ジクロフェナク(70-81および140-160mg /日)の確率は92.3%以上であり、すべてのオピオイドは、臨床的に関連する最小限の痛みの軽減よりも治療効果が大きくなる確率が53%以下だった。経口NSAID、局所NSAID、およびオピオイドのそれぞれ18.5%、0%、83.3%は、有害事象による脱落のリスクが増加していた。経口NSAID、局所NSAID、およびオピオイドのそれぞれ29.8%、0%、および89.5%で、有害事象のリスクが増加した。

Discussion:
エトリコキシブ60mg /日とジクロフェナク150mg /日は、変形性関節症患者の痛みと機能に最も効果的な経口NSAIDであるよう。ただし、これらの治療法は、有害事象のリスクがわずかに増加するため、併存症のある患者や長期使用にはおそらく適切ではない。さらに、有害事象による脱落のリスクの増加は、ジクロフェナク150mg /日で多くみられた。局所ジクロフェナク70-81mg /日は、全身曝露の減少と低用量のため、効果的で、一般的に安全であり、変形性膝関節症の第一選択の薬理学的治療として考慮されるべきである。オピオイド治療の臨床的利点は、準備や投与量に関係なく、変形性関節症の患者に引き起こす可能性のある害を上回っていない。


Fig2:変形性関節症の痛みに対する治療効果の大きさに従って順序付けられた、経口プラセボと比較した有害事象による変形性関節症の痛みおよび脱落に対する治療効果。青:経口非ステロイド性抗炎症薬; 緑:局所非ステロイド性抗炎症薬; オレンジ:オピオイド。


Fig3:図2の続き。変形性関節症の痛みに対する治療効果の大きさに従って順序付けられた、経口プラセボと比較した有害事象による変形性関節症の痛みおよび脱落に対する治療効果。青:経口非ステロイド性抗炎症薬; 緑:局所非ステロイド性抗炎症薬; オレンジ:オピオイド; ピンク:パラセタモール; 黒:プラセボ。


Fig4:経口プラセボと比較して臨床的に重要な差異が最小である薬剤の確率と、有害事象のために参加者が治療を中断する確率を示す2次元グラフ。有害事象により経口プラセボが脱落する確率は5%。MID =グループ間の臨床的に重要な最小の差。

【開催日】
2021年12月1日(水)

パーキンソン病における緩和ケアとホスピスへの紹介ガイドライン

※この時期のUpToDateにある”What’s new in family medicine”のTopicで参考にされている文献です。

―文献名―
J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2021 Mar 31;92(6):629-636.

―要約―

【Introduction】
パーキンソン病およびその関連疾患(PDRD)は、2番目に多い神経変性疾患であり、死亡原因の上位を占めている。しかし、PDRD患者が終末期の緩和ケア(ホスピス)を受ける機会は、他の神経疾患を含む疾患に比べて少ない。

米国では、ホスピスケアは余命6ヶ月の人に対する緩和ケアと定義されており、米国のメディケアのホスピス給付は、2人の医師によって予後6カ月以下と認定され、延命治療ではなく安楽に重点を置いた医療を選択した患者が対象となる。PDRDは主要な死因の一つであるにもかかわらず、PDRDに対する終末期緩和ケア/ホスピスのガイドラインは存在しない。関連する可能性のあるガイドラインとしては、認知症、ALS、成人の食欲不振などがある。(Table 1)

PDRD患者の死亡率に関連する要因はいくつか知られているが、全体的な「予後不良」の一般的な予測因子と、人生の最後の数週間または数ヶ月を示唆する特定の予測因子との区別はほとんどされていない。PDRDの死亡率の予測因子を特定することで、適切でタイムリーな紹介を増やすことができるかもしれない。
そこでホスピス/終末期緩和ケアの紹介に関する指針を得るために、PDRDの死因と死亡予測因子に関する文献を系統的にレビューする。

【Method】
MEDLINE、PubMed、EMBASE、CINAHLデータベース(1970-2020年)から、PDRDの死亡率、予後、死因に関連する診療記録、行政データ、調査回答から得られた患者レベル、医療者レベル、介護者レベルのデータを用いたオリジナルの定量的研究を検索した。PRISMAガイドラインに従って調査し、組み入れ基準を満たしているかどうかは2名の研究者によって独立して確認された。
主要評価項目は、PDRD患者の死亡率の全体的な定量的予測因子と死亡6ヵ月前の死亡率の予測因子とし、調査結果はパーキンソン財団の支援を受けたPDと緩和ケアに関する国際ワーキンググループによってレビューされた。

【Result】
1183の研究論文のうち、42の研究が組み入れ基準を満たした。(Figure 1)
PDRDの死亡率に関連する要因として、(1)人口統計学的および臨床的マーカー(年齢、性別、肥満度、併存疾患)、(2)運動機能障害および全身性障害、(3)転倒および感染症、(4)非運動症状の4つの主要な領域があることがわかった。(Table 2)

【Discussion】
今回のレビューに基づいて、終末期の緩和ケア/ホスピスを紹介するために終末期に差し掛かっている可能性のあるPDRD患者を特定することについて、医療従事者への提言を行う。(Table 3、和訳したものが下記)

PDRDに対するホスピスガイダンス:以下の3つの基準のうち1つを満たす
1. A、B、Cのいずれかの基準で示される進行した疾患の証拠を示す。
A. 前年の重篤な栄養障害:
十分な水分・カロリー摂取ができず脱水症状を起こしている、
またはBMIが18未満である、
または6ヶ月以上の体重減少が10%以上あり、人工栄養法を拒否している
B. 前年の生命を脅かす合併症:誤嚥性肺炎の再発、骨折を伴う転倒、敗血症の再発、ステージ3または4の褥瘡
C. ドーパミン作動薬への反応が悪い、または許容できない副作用のためにドーパミン作動薬では治療できず、セルフケア能力に著しい障害をもたらす運動症状がある。
2. 急激または加速する運動機能障害(歩行や平衡感覚を含む)、
または非運動性疾患の進行(重度の認知症、嚥下障害、膀胱機能障害、喘鳴(MSAの場合)を含む)があり、以下の障害を有する:ベッドや椅子に縛られた状態、意味不明の会話、ピューレ状の食事が必要、ADLに大きな支援が必要
3. 進行した認知症であり、以下に基づくホスピス紹介基準を満たしている。
メディケアの認知症基準、
Advanced Dementia Prognostic Toolの基準、
Minimum Data Set-Changes in Health, End-stage disease and Symptoms and Signs Scoreの基準

本レビューの強みは、緩和ケアと運動障害の専門家で構成された国際ワーキンググループの参加を含む、体系的なアプローチをとったことである。

研究の制限:
すべてのデータベースを検索対象とせず、英語以外の論文は除外した。
この分野で利用可能な知識をすべて提示するために、以下の理由から品質評価を実施しなかった。(1)この分野では限られたデータしか得られていないこと、(2)掲載基準を制限すると論文の数がさらに減ること、(3)厳密に除外すると著しい偏りのある特定の論文だけを掲載することになる可能性があること。

PDRD患者がタイムリーに緩和ケアやホスピスサービスを受けられるようにすることで残された生活の質を最大限に高めるという観点からは、今回の提言の有効性を判断するためにはさらなる研究が必要である。緩和ケアと疾病管理を統合的に行うことで、予後が短い患者に限らず、患者ができるだけ長く元気に暮らせるように両方のケアを行うことができるようになると考える。
PDRD患者が人生の最後の数ヶ月を迎える時期を特定することに焦点を当てた予後研究は限られている。この分野の研究と、PDRD患者への必要に応じた緩和ケアを支援する政策がさらに必要とされる。

【開催日】
2021年12月1日(水)