プライマリ・ケアでの家族性高コレステロール血症のスクリーニング

-文献名-
David S. Wald, et al. Child–Parent Familial Hypercholesterolemia Screening in Primary Care.N Engl J Med 2016;375:1628-37.

-要約-
押見先生の本(www.amazon.co.jp/dp/4758309604)にあった10のステップに沿ってみます。

Step1:結論を類推しながらタイトルを確認する
スクリーニングの推奨についての論文だろう

Step2:研究規模を知るために研究グループ名と著者の所属機関を確認する
松島先生図1
Wolfson Institute of Preventive Medicine, Barts and The London School of Medicine and Dentistry(http://www.wolfson.qmul.ac.uk/about-us)1991年設立
North East Thames Molecular Genetics Laboratory, Great Ormond Street Hospital(http://www.gosh.nhs.uk/)こども病院
どちらもイギリス、ロンドン

Step3:結論の真髄を見る(conclusion)
Child–parent screening was feasible in primary care practices at routine child immunization visits.
 プライマリ・ケア医をワクチンで受診したときにスクリーニングは可能
For every 1000 children screened, 8 persons (4 children and 4 parents) were identified as having positive screening results for familial hypercholesterolemia and were consequently at high risk for cardiovascular disease.
 1000人の子をスクリーニングして、4人の子と4人の親がFHと診断された。

Step4:Backgroundを見て研究の新規性・独自性を確認する
・What is known?
 FHは常染色体優性遺伝の疾患で、1000人に2人の頻度(BMJ2007より)。2007年のBMJのメタアナリシスで、FHのPopulation-Based child-parent screeningが提案されている。1-9歳児でコレステロールを測定し、高コレステロール血症があった場合に両親も測定する。20-39歳のFH患者は、同世代の健常者の100倍心血管イベントを起こしやすい。両親と、思春期になった子にはスタチンが勧められる。
 FHの診断は遺伝子検査で行うが、全ての遺伝子変異が同定されているわけではない。またFH変異があってもコレステロール値が高くない場合もある。以前のメタアナリシスの見積もりでは、総コレステロール(T-Chol)のカットオフは中央値の1.53倍(multiples of the median;MoM)≒99.9パーセンタイルで、1〜9歳児のFH患者を88%拾い上げられる
・What is unknown, Purpose of the study
 We assessed the efficacy and feasibility of such screening in primary care practice.

Step5:Methodsから研究方法を同定し、PICOを用いて仮説を検証する
・エビデンスピラミッドのどこに位置するのか
 診断の有益性を見る、横断研究?
・PICOは?
 なし

<Methods>
 2012年3月〜2015年3月 イギリスの92箇所のgeneral medical practicesでおよそ13か月で子供の予防接種で来院した時に、親にスクリーニングを受けるか確認
13097児の親のうち11010児の親(84%)が同意した。
 予防接種の時に、heel-stick capillary blood sampleを採取し、コレステロール値の測定とFH変異の有無を確認した。良好な検体は10118児で得られた。T-Chol, HDL, TGはthe Cholestech LDX point-of-care analyzer (Alere)で測定された。
coefficients of variation(変動係数)、、、
 LDLはthe Friedewald equationで計算。最終的に10095児が解析された。
 計測されたFH変異は、FH48という48種類のもの、c.10580G→A (p.Arg3527Gln) mutation in APOB、c.1120G→T (p.Asp374Tyr) mutation in PCSK9
 DNAはthe QuickGene-810 (AutoGen)で抽出されTaqMan single-nucleotide polymorphism (SNP) genotyping (Life Technologies) on the Fluidigm Biomark platformで測定された。FH48はないがTCが高値(230mg/dl以上)のものはthe BigDye Terminator, v. 3.1, Cycle Sequencing Kit (Applied Biosystems)を用いてSanger sequencing of LDLR (all exons, boundary and promoter regions), APOB (exon 26), and PCSK9 (exon 7)を調べた。それでも異常がない場合は、3か月以降経ってから再度コレステロール値を調べた。

 高コレステロールがありFH変異があるか、3か月以降に再度高かった場合をスクリーニング陽性とする。その親も同じ変異をもてば陽性とする。変異がない場合、両親のうち高コレステロールな方をスクリーニング陽性者とする。

Step6:比、信頼区間、P値を確認して結果を評価する
松島先生図2
(私見)
・心筋梗塞の家族歴がある率が、日本での実感と比べてかなり高い。
・母親の年齢の中央値が31歳、父親が34歳、英国も晩婚化しているのか。

松島先生図3
 FH+は全員ヘテロ型だった

松島先生図4
 FH変異+のうち1/3は正常値(1/6は正常中央値以下)

松島先生図5
 FHと診断された親はスタチン内服を開始した。
 診断についてネガティブな印象を持った親はいなかった。予防接種の妨げになることもなかった。

Step7:考察部分からパラグラフリーディングスキルを用いて結果の解釈と限界を同定する

・Summary of Main Findings
・Interpretation
 コレステロール値が高くない児でも遺伝子検査をおこなったことでわかったこと
  FH変異+のうち1/3は正常値(1/6は正常中央値以下)
  同じ変異を持っていてもコレステロール値には幅がある→高コレステロール血症の発言には他の因子が重要
   →ホモ型とヘテロ型の違い
   →家族性高コレステロール血症の定義自体が難しい:変異を重要視するのか、コレステロール値を重要視するのか
 その解決法として提案しているのは、FHを早発冠動脈疾患のリスク要因として捉えること。
 (例えばBRCA1の変異は、疾患でなく、乳がんや卵巣癌のリスクとして捉えられている)
 Figure4に示すpopulation-based screening policyによって、偶然の高コレステロール血症を除外でき、
 未知の変異も含んだ高コレステロール血症を拾い上げ、冠動脈疾患リスクを下げることができる。
・Generalizability
 この研究では全員に遺伝子検査を行ったが、実際は限られた人(1.35MoMの高コレステロール血症の人)しか適応にならない。
 Reflex DNA testing(http://www.lmsalpha.com/features/ReflexDNA)が出来れば、広まるかもしれない
・Conclusions
 このやり方が導入されるかどうかは不明だが、有用である。

Step8:Editorial(編集後記)を使って研究領域での論文の価値を同定する
 両親世代は健診や医療機関受診が最も少ない時期なので、このchild-parentスクリーニングはよい機会になるかも。小児期(10歳)からスタチン治療することで、冠動脈疾患リスクを正常人と同等まで減らせるかもしれない。
 これまで行われているCascade screeningでは、高度の高コレステロール血症のある成人を機転に、家族にスクリーニングをかけていく方法で、コストパフォーマンスはよいが、すでに動脈硬化が進行していることも多い。Universal screeningが求められる。Pediatrics 2011にあったExpert panelの発表では、9-11歳と17-21歳でのスクリーニングを推奨しているが、より早い時期に行うことで漏れを少なくしたり早期からの生活指導や治療を始めることができる。

Step9:Correspondenceを使って関連する研究を評価する

Step10:Conference reportを使って論文が社会に与える影響を考える

【開催日】
2017年3月15日(水)

Healthy Communities 総論

―文献名-
Frumkin, Howard. Environmental Health, edited by Howard Frumkin, John Wiley & Sons, Incorporated, 2016. Chapter 15

-要約-
【Key Concepts】
 ご近所、町、都市の設計は、人々の健康に影響を与える。近代の公衆衛生は都市計画や土地利用施策と歴史的に結びついている(表15.1)。土地利用(図15.4)や交通手段の決定は、日頃の身体活動、空気のきれいさ、安全、人付き合い、精神的な健康、社会的な公平、他の健康を規定する要因を支持したり、阻んだりする。
“Smart growth principles(テクスト図15.6)” は人々の健康に恩恵をもたらし、環境の持続可能性や回復力を支える。”Health impact assessment”は提案した企画やプロジェクト、政策の潜在的な影響を熟慮した上での意思決定を助けるツールである。地域作りや公衆衛生の新しい研究や流行として、土地利用計画者と公衆衛生の専門家の間で協同が増えてきている。

佐藤先生図1

佐藤先生図2

佐藤先生図3

 上の文章はHealth impact assessmentのステップについて言及部分

佐藤先生図4

【開催日】
 2017年3月15日(水)

希釈リンゴジュースと電解質調整経口補液の軽度の胃腸炎小児に対する効果

―文献名―
Effect of dilute apple juice and prefered fluids vs electrolyte maintenance solution on treatment failure among children with mild gastroenteritis JAMA. 2016.5352.Published online April 30, 2016.

―要約―
【背景】
 胃腸炎は小児のコモンディジーズである。電解質調整補水液は脱水の治療と予防に推奨されている。軽症脱水小児での効果はよく分かっていない。

【目的】
 小児の軽症胃腸炎に対して、希釈リンゴジュース+好みの水分による経口補水が電解質調整補水液と比較して非劣性かどうかを評価する。

【デザイン、セッティング、患者】
 ランダム化比較試験で、単盲検・非劣性試験がカナダオンタリオ・トロントの小児の3次救急外来で2010年から2015年までに行われた。組み入れ患者は6-60か月(5歳)までの軽度の脱水を伴う胃腸炎患者。

【介入】
 患児は色調を合わせた半希釈のリンゴジュース+好みの水分群(n=323人)とリンゴ風味の電解質調整補水液(n=324人)に割り付けられた。経口補水治療は施設のプロトコールで行われた。退院後、半希釈のリンゴジュース+好みの水分群は飲みたいときに水分摂取し、電解質調整補水液群は電解質調整補水液で行われた。

【メインアウトカム】
 プライマリアウトカムは、7日以内の治療失敗の複合アウトカムで、点滴による脱水補正・入院・予定外受診・症状遷延・クロスオーバー・3%以上の体重減少・重症脱水の複合とした。
 セカンダリアウトカムは、点滴による脱水補正・入院・下痢や嘔吐回数が含まれた。非劣性マージンは7.5%と設定し、片側検定でα=0.25。

【結果】
 647人の小児(平均28.3か月、331男児、441女児、脱水徴候なし)が割り付けられ、644人(99.5%)がフォローアップされた。半希釈のリンゴジュース+好みの水分群の方が電解質調整補水群と比較して治療失敗が有意に少なかった(16.7% vs 25.0%、-8.3%:-∞ to -2.0%、非劣性かつ優越性あり)。半希釈のリンゴジュース+好みの水分群が有意に点滴による脱水補正を受ける群が少なかった(2.5% vs 9.0%, -6.5%:-11.6% to -1.8%)。入院率や下痢や嘔吐頻度は両群で差を認めなかった。
榎原先生図①

【結論】
 軽症胃腸炎の軽度脱水患者では、半希釈のリンゴジュース+好みの水分を投与することは、電解質調整補水と比較して、治療失敗が少ないことが明らかになった。多くの先進国小児の胃腸炎の脱水補正に対して半希釈のリンゴジュース+好みの水分を投与することは、代替方法になり得る。

【開催日】
 2017年3月1日(水)

Ambulatory care sensitive conditions(プライマリ・ケアの現場で適切にマネジメントすれば不要な入院を避けられる可能性のある状態)による入院と家庭医による継続性の関係

―文献名―
Isaac B, Adam S et al. Association between continuity of care in general practice and hospital admissions for ambulatory care sensitive conditions: cross sectional study of routinely collected, person level data. BMJ. 2016;356:j84.

―要約―
【目的】
 家庭医によるケアの継続性がambulatory care sensitive conditions(※1;プライマリ・ケアの現場で適切にマネジメントすれば不要な入院を避けられる可能性のある状態)による入院と関連があるかを評価するため。

【デザイン】
 横断研究

【セッティング】
 英国Clinical Practice Research Datalinkに参加し接続しているプライマリ・ケアまたはセカンダリ・ケアの200の家庭医療の医療機関。

【参加者】
 2011年4月から2013年3月までの間に少なくとも2回家庭医を受診した62歳から82歳の人230,472名。

【主要評価項目】
 2011年4月から2013年3月までの期間の患者1人あたりのambulatory care sensitive conditions(家庭医が外来でマネジメント可能であると考えられる)による入院数。

【結果】
 usual provider of care index(UPC; ※2)を用いてケアの継続性を評価した。
 平均のUPCは0.61。ケアの継続性の高さによる3グループに分けても年齢・性別・社会経済的状態に違いはなかったが、ケアの継続性の低いグループではより頻回に受診する傾向が見られた(Table1)。また、医師数の多い医療機関ほどUPCは低い傾向にあった(大きな医療機関で0.59,小さな医療機関で0.70)(Table2)。
 平均すると研究機関において患者1人あたり0.16回のambulatory care sensitive conditionsによる入院を経験していた(Table1)。
山田先生図①

山田先生図②

 高齢なほど、専門医への紹介が多いほど、慢性疾患が多いほど、家庭医への受診が頻回なほどambulatory care sensitive conditionsによる入院は多い傾向にあった(Table3)。
山田先生図③

 こういった共変量を調整すると、UPCが高い患者ほどambulatory care sensitive conditionsによる入院は減る傾向にあった(Table4)。
山田先生図④

 モデル化し人口統計的・患者の臨床状況を調整した場合。全ての患者のUPCが0.2上昇すると入院は6.22%減少する(95%CI 4.87%-7.55%,Table5)。
 サブグループ解析ではプライマリ・ケアの頻回利用患者においてその関連性はより強固に現れた。頻回利用者程ambulatory care sensitive conditionsによる入院が増える傾向にあり(家庭医を研究期間に18回以上受診した患者1人あたり0.36回の入院、2-4回の患者1人あたり0.04回の入院)、UPCが0.2上昇するとambulatory care sensitive conditionsによる入院が有意に減少することが示された(Table5)。
山田先生図⑤

【結論】
 家庭医療におけるケアの継続性(この文献ではUPC)を改善すると2次医療のコストを削減できる可能性がある。とくに医療を頻回に利用する患者においてはそうである。
 ケアの継続性を促進することによって患者や家庭医療の現場で働くものの経験も改善する可能性がある。

【What is already known on this topic】
 予期せぬ入院を減らすために多くのヘルスケアシステムはプライマリ・ケアへのアクセスの迅速さと平等性に焦点を当ててきた。英国においてケアの継続性は低下の傾向にあり、それはおそらくアクセスの改善・促進と継続性の間にトレードオフがあるためであろう。ケアの継続性は患者と医師の満足度に関連しているが、入院との関連は明らかにされていなかった。

【What this study adds】
 ケアの継続性はプライマリ・ケアでマネジメント可能なAmbulatory care-sensitive conditionsによる入院を低下させる。家庭医の頻繁な利用者においてはケアの継続性とAmbulatory care-sensitive conditionsによる入院の関連が最も強く認められた。ケアの継続性を改善させる戦略はケアの質とコストを同時に改善させる可能性があるが、その方法については評価が必要である。

※1 Ambulatory care-sensitive conditions (ACSCs)
 以下のリンクを参照して下さい.
 http://fujinumayasuki.hatenablog.com/entry/2013/10/08/162442

※2 Usual provider of care index(UPC)
 UPC=numbers of visits with assigned provider/total visits
山田先生図⑥

【開催日】
2017年3月1日(水)

効果的な予防の優先度アップデート

―文献名―
Michael V. Maciosek,et al.Updated Priorities Among Effective Clinical Preventive Services.Ann Fam Med January/February 2017 vol. 15 no. 1 14-22

―要約―
【目的】
 プライマリケアセッティングにおいては人手や時間が限られている。結果として、どこに注力すべきかが重要となる。これは相対的な健康へのインパクトや費用対効果をアップデートするものである。

【方法】
 ■含めた予防サービス
  ・全住民に対してUSPSTFでgradeA,Bと考えられたサービス
  ・一般住民に対してAdvisory Committee on Immunization Practices予防接種諮問委員会が推奨しているサービス
  ・心血管疾患のハイリスク群と性感染症のハイリスク群に対してUSPSTFでgradeA,Bと考えられたサービス
 ■測定
  以下の2つに対してそれぞれ1~5点で採点され、トータルスコアが2~10点の範囲で評価した。
   ・臨床的な予防効果…米国の出生コホートで400万人に対して予防サービスが推奨されている年齢で推奨されている期間にわたって提供された
             として得られるQALYsとして定義
   ・費用対効果…QALYsあたりの費用(net cost純原価)を推定
  これらを推定するために新しいマイクロシミュレーションモデルを12の予防サービスにおいて最新の見積もりを出すために用い、スプレッドシート
 モデルを13の予防サービスに、ピアレビューで文献に基づいた推計を3つの予防サービスに用いた。
 ■評価項目
  ・28個のエビデンスに基づいた臨床的な予防サービスを評価した。

【結果】
中川先生図①

・最も高得点であったのは、小児のワクチン接種、若年者における喫煙開始の予防を行うためのカウンセリング、成人に対する喫煙スクリーニングと
 簡単な禁煙に対する同意付け介入の3つで、それぞれ10点であった。
・費用対効果CEの最高点5点であったのは、小児のワクチン接種、若年者における喫煙開始の予防を行うためのカウンセリング、成人に対する喫煙スク
 リーニングと簡単な禁煙に対する同意付け介入、アルコーールのスクリーニングと簡易的な介入、CVDのハイリスク者への低用量アスピリン、梅毒
 スクリーニングの6つであった。
・CVDハイリスク者への食事指導、運動習慣指導、ならびに成人肥満者のスクリーニングは費用対効果は1点と悪かった。

中川先生図②

 トータルスコアが5点以上の項目について、90%以上のサービス利用率になったとした場合のQALYsの上昇がどの程度期待できるかを示したのがTable3である。ただし、血圧とコレステロールのスクリーニングはすでに高い割合で達成できているので除外した。高い費用が出ている項目はより高い利用率にしていくことで効果を期待できる項目である。多くの人々への健康改善は、大腸癌のスクリーニングとインフルエンザワクチンと同様に、たばこの使用、肥満関連行動、アルコールの乱用を予防的に対処するための施設利用を増やすことで得られる可能性がある。

中川先生図③

【まとめ】
 本研究は予防サービスの優先度を同定し、質改善の先導を切っていく上でどのサービスを強調していったらいいのかを選択していくのに役立つだろう。

【開催日】
 2017年2月15日(水)

【EBMの学び】単純ヘルペスに対する早期高用量短期間パラシクロピル療法

STEP1 臨床患者に即したPI(E)CO
【評価を行った日付】
 2017年2月1日
【臨床状況のサマリー】
 1年に10回程度、臀部の単純疱疹を繰り返している75歳女性。2週間前にも臀部ヘルペスを発症し、バルトレックス1000mg/day 分2 5日間の内服加療を行った。再び水疱が出現したため受診。臀部には水疱2つあり。
 これまでは毎回バルトレックス1000mg/day 分2 5日間で治療されている。
 既往:慢性C型肝炎抗ウイルス療法後、3日前に肺腺癌疑いと告知

  P;単純疱疹を繰り返している高齢女性において
  I(E);バルトレックスの内服加療 は
  C;経過観察 or 外用薬加療 と比較して
  O:皮疹の治癒を早めるか

STEP2 検索して見つけた文献の名前
 検索したエンジン;UpToDate®
 Treatment of herpes simplex virus type 1 infection in immunocompetent patients
【見つけた論文】
Spotswood LS, et al. High-dose, short-duration, early valacyclovir therapy for episodic treatment of cold sores: results of two randomized placebo-controlled, multicenter studies. Antimicrobial Agents and Chemotherapy, Mar. 2003, p1072–1080.

STEP3;論文の評価
STEP3-1.論文のPECOは患者のPECOと合致するか?

 P;12歳以上の、1年に3回以上口唇ヘルペスを繰り返している患者において
 I(E);早期にvalacyclovir <a: 2g/day 1日間>または<b: 2g/day 1日間+1g/day 1日間>で加療した群は
 C;プラセボを内服した群 と比較して
 O;皮疹の消失が早まったか / 皮疹の出現を予防・抑制できたか
→患者のPECOと (合致する ・ 多少異なるがOK ・ 大きく異なるため不適切)

STEP3-2 論文の研究デザインの評価;内的妥当性の評価
①研究方法がRCTになっているか?隠蔽化と盲検化はされているか?
 →ランダム割り付けが ( されている ・  されていない
 →隠蔽化が( されている ・  されていない ・ 不明 )
 →盲検化が( されている ・ 一部されている ・  されていない ・記載なし )
実際のTableで介入群と対照群は同じような集団になっているか?
 →人種・性別の割合は同等。年齢・再発頻度の中央値は同等。しかしリスク因子に関しては全く不明。除外基準は、HIV感染などの免疫低下宿主、
  腎障害。担癌患者などは不明。
② 解析方法はITT(intention to treat)か?
 →ITTが( されている ・ されていない )

STEP3-3 論文で見いだされた結果の評価
Outcomeについて、以下の値を確認する
【① 治療効果の有無; P値を確認する】1-day therapy / 2-day therapy
皮疹の消失が早まったか:study1: 0.001 / 0.009 study2:  皮疹の出現を予防できたか:study1: 0.096 / 0.061 study2:

【②治療効果の大きさ;比の指標と差の指標を確認する】
・皮疹の消失が早まったか(有意差あり)
  study1: -1.0日(median)、-1.1日(mean) /-0.5日(median)、-0.7日(mean)
  study2: -0.5日(median)、-1.0日(mean) /-0.5日(median)、-0.8日(mean)
 ただし、皮疹消失の時期がわからなかった症例は「15.0日」で計算されている。皮疹消失の時期がわからなかった症例が、各群で何人いたかは示されていない。
・皮疹の出現を予防できたか(有意差なし)
  study1: 6.4%(-1.8 to 14.5) / 8.5%(0.2 to 16.7)
  study2: 8.0%(-0.1 to 16.0) / 8.0%(0.3 to 15.8)
・ORを確認する:皮疹の出現を予防できたか(有意差なし)
  study1: 1.32(0.95 to 1.84) / 1.38(0.98 to 1.94)
  study2: 1.39(0.99 to 1.95) / 1.41(1.02 to 1.94)
・ARR(NNT)を計算する皮疹の出現を予防できたか(有意差なし)
  study1: 0.064(16) / 0.085%(12)
  study2: 0.08(13) / 0.08%(13)

【③治療効果のゆらぎ;信頼区間を確認する】
 ②の()に記載

STEP4 患者への適用
【①論文の患者と、目の前の患者が、結果が適用できないほど異なっていないか?】
 担癌患者であること、75歳であり対象の中でも最高齢クラスであること、すでに水疱を形成していること、臀部ヘルペスはHSV-1でない可能性があることから、結果は適応できない。

・内的妥当性の問題点は?
 Subjectの詳細(リスク因子など)が不明であること、resultの治癒期間の算定方法に疑問が残ることから、アウトカムの有意差は鵜呑みにはできない。

【②治療そのものは忠実に実行可能か?】
 帯状疱疹なら可能な投薬量。投薬期間は問題ない。
 ただし、前駆症状の段階での受診は稀であり、治療開始のタイミングは実現困難。
 論文のように、前駆症状がある患者に事前に渡しておくことは可能。

【③重要なアウトカムはコストや害を含めて全て評価されたか?】
 Subjectの詳細が不明であること、resultの治癒期間の算定方法に疑問が残ることから、アウトカムの有意差は鵜呑みにはできない。
 また、副作用として、頭痛が倍増しているのは確か。
 コスト:1錠188.8~405.6円。1-day: 755.2~1622.4円。2-day: 1132.8~2433.6円。

【④使う者の経験の視点】
・これまでのその治療に対する経験はどうか?:
  外用でも効いている印象。初めて内服を試してみたが、確かに水疱まではできなかった。ただ内服しなかったらどうだったかはわからないので、
 なんとも言えない(自分のケース)。
・自分の熟達度から実行は可能だろうか?:処方自体は可能

【⑤患者の考え・嗜好はどうなのか?】
 痛みや痒み、不快感などの症状はなかった。肺癌の精査が10日後に迫っており、それに影響が出ないか心配されていた。精査には影響がないこと、内服薬は不要であることを説明すると納得された。外用薬のみ処方した。

【開催日】
2017年2月8日(水)

【EBMの学び】急性下痢症に対する整腸剤の効果

STEP1 臨床患者に即したPI(E)CO
【評価を行った日付】
 2016年12月23日
【臨床状況のサマリー】
 11歳、男児。
 受診1日前から腹痛を自覚し、その後複数回の下痢あり。
 便の性状は水様性で、血便や黒色便はない。その他、悪心・嘔吐・発熱などの随伴症状はなし。
 周囲流行歴はなく、生ものなどの食事摂取はない。
 胃腸炎と診断し、整腸剤を処方する旨を伝えたところ、同伴した母親から「これ(整腸剤)を飲むと、下痢はすぐ良くなりますか?」「ヨーグルトも効果ありますか?」と質問があった。

  P;小児の急性胃腸炎に対し
  I(E);整腸剤を処方した場合 / 乳製品を摂取したときと
  C;内服しない / 摂取しないときと比較して
  O:下痢症状の期間短縮につながるか

STEP2 検索して見つけた文献の名前
【見つけた論文】
 Probiotics for treatment of acute diarrhoea in children randomised clinical trial of five different preparations

STEP3;論文の評価
STEP3-1.論文のPECOは患者のPECOと合致するか?
 P;小児(3-36ヶ月)の急性下痢症において
 I(E);5種類の整腸剤を追加した群と
 C;経口補液療法(ORT)のみの群を比べ
 O;下痢の期間や排便回数が縮小するか
→患者のPECOと (合致する ・ 多少異なるがOK ・ 大きく異なるため不適切)

STEP3-2 論文の研究デザインの評価;内的妥当性の評価
①研究方法がRCTになっているか?隠蔽化と盲検化はされているか?
 →ランダム割り付けが ( されている ・  されていない 
 →隠蔽化が( されている ・  されていない ・ 不明 )
 →盲検化が( されている ・ 一部されている ・  されていない ・記載なし )
実際のTableで介入群と対照群は同じような集団になっているか?
 →( なっている ・ なっていない ・ 記載なし )
② 解析方法はITT(intention to treat)か?
 →ITTが( されている ・ されていない )

STEP3-3 論文で見いだされた結果の評価
Outcomeについて、以下の値を確認する
【① 治療効果の有無; P値を確認する】
ひろむ先生図①

ひろむ先生図②

ひろむ先生図③

ひろむ先生図④

【②治療効果の大きさ;比の指標と差の指標を確認する】
●RR(あるいはHR・OR)を確認する
●ARRとNNTを計算する
※P値で有意差が出たものについて計算
→治療効果は計算できない

【③治療効果のゆらぎ;信頼区間を確認する】
→①参照

STEP4 患者への適用
【①論文の患者と、目の前の患者が、結果が適用できないほど異なっていないか?】
 除外基準である栄養失調や重篤な脱水、併存する感染症(髄膜炎、肺炎、sepsis)、免疫不全、食物アレルギー、研究開始3週以内の抗菌薬や止痢剤の使用等はない。
 但し、症例は11歳という学童期で、研究では3か月~3歳といった乳幼児が対象であり、対象年齢から外れている。学童期と乳幼児期の急性下痢症における発症経過や臨床経過、治癒過程などについての差異をはっきりとさせることができなかったため、この点において本症例への適応が可能かは不明である。

・内的妥当性の問題点は?
 研究はランダム化、隠蔽化、盲検化されている。割付された6つの群の特徴が記載されており、比較がなされている。

【②治療そのものは忠実に実行可能か?】
ひろむ先生図⑤

 上記表はある診療所での整腸剤の採用薬だが、どの整腸剤も6円前後であり、内服期間も短期間で内服管理は親が行うことが予想され、内服は実行可能と考えられる。
 投薬量については、整腸剤の菌種の表記が
  日本:製剤1錠/1g中に〇〇菌△mg含まれている
  海外:〇〇菌が10△CFU/dose(twice daily)
といったように記載に相違点があり、投薬量の換算は困難である。
 Group5は4種類の菌種が含まれているので、複数の菌種により今回の結果が出たのか、または複数の菌種のうちどれが効果を発揮したのかは不明である。

【③重要なアウトカムはコストや害を含めて全て評価されたか?】
 整腸剤の副作用に関しての評価はなかった。

【④使う者の経験の視点】
 胃腸炎に対して確固たる意味合いをもって整腸剤を処方していなかったと思しきところがある。しかし、整腸剤の菌種によっては、一般的に5日前後続く下痢の症状が、整腸剤を内服することで3日程度に期間を短縮できる可能性があると積極的に説明し処方することが出来そうだと考える。
 実臨床ではミヤBMを処方する傾向があり、今回の論文では酪酸菌は対象となっていなかったため、今後さらに検索する余地がありそう。

【⑤患者の考え・嗜好はどうなのか?】
 患児は小学校に通学中。内服期間も数日であり、通学中の昼分の内服程度であれば自己管理も可能そう。下痢というつらい症状を早く治したいという希望があり、処方しない根拠になるだけの根拠は無いのではと感じた。
 また「ヨーグルトも効果ありますか?」の問いに対しては、数多あるヨーグルト製品の中から、今回の論文でGroup2と5で使用された菌種を用いている下記のヨーグルトを参照に、お勧めできるかもしれない。(但し、菌株が異なるので、厳密に研究で使用された菌と同じかと言われると断言はできないと考えられる。)
ひろむ先生図⑥

※ビオフェルミン「錠」「散」について
 →剤型が異なると使用されている菌種が異なる別の薬になる。
  ただ、どちらも腸内細菌のバランスにおいて善玉菌である「ビフィズス菌」を優位にするという目的は一緒で、明確な使い分けの基準はない。

 

【開催日】
2017年1月11日(水)

【EBMの学び】ラメルテオンの効果

STEP1 臨床患者に即したPI(E)CO
【評価を行った日付】
 2016年12月11日
【臨床状況のサマリー】
 片側膝関節水腫によるADL低下のため訪問診療を開始したばかりの93歳女性。関節水腫は整形外科で診断・治療を受け、訪問リハビリテーションも行い独歩が可能な程度には回復傾向。認知症(詳細は未評価だが重度には相当)、脂質異常症、高血圧はあるが訪問開始時点で内服薬はなし。隣の家に住む娘が介護しながら独居で生活している。娘が監視カメラで様子を見守っているが、夜間不眠があり一晩中うろうろ動いていていることがあり、娘も心配で眠れないとのことで以前効果があったというレンドルミン処方を希望された。レンドルミンを開始したが効果がなかったため、睡眠リズムを整えるラメルテオンであれば転倒の大きなリスクにはならずに状況を改善できる可能性があるかと考え論文を調べた。

  P;高齢(65歳以上)の不眠症患者に
  I(E);ラメルテオンを投与すると
  C;プラセボ薬を投与したときと比べ
  O:睡眠時間は増えるか / 転倒など有害な副作用は増えるか

STEP2 検索して見つけた文献の名前
【見つけた論文】
A 2-night, 3-period, crossover study of ramelteon’s efficacy and safety in older adults with chronic insomnia

STEP3;論文の評価
STEP3-1.論文のPECOは患者のPECOと合致するか?

 P;65歳以上の高齢者に
  組み入れ基準…最低3か月続く週3-4晩の不眠を伴うDSM-Ⅳで診断される特発性不眠症患者で、不眠に起因する日中の障害や悩みを抱え、
         BMI18~34、自己申告の就寝時間が午後8:30~午前12時の者
  除外基準…1年以内に重大な精神または医学的疾患、5日以内に睡眠サイクルに影響しうる薬・サプリメントを服用、3週間以内に他に中枢神経に
       作用する薬を服用、3か月以内に睡眠に影響を及ぼしうる食事や運動や就労状況の著しい変化、7日以内に3回以上時差の境界線を越えた
 I(E);ラメルテオン4mgまたは8mgを投与すると、
 C;プラセボ薬を投与した場合に比べ、
 O;治療効果…入眠までにかかった時間、全睡眠時間、睡眠効率、中途覚醒の回数、睡眠開始から覚醒までの時間、自己申告の評価(sSL,sTST,sNAW,
       睡眠に戻るまでの困難さ、主観的睡眠の質)が改善するか
   副作用…残存薬理効果や副作用は増加するか
→患者のPECOと (合致する ・ 多少異なるがOK ・ 大きく異なるため不適切)

STEP3-2 論文の研究デザインの評価;内的妥当性の評価
①研究方法がRCTになっているか?隠蔽化と盲検化はされているか?
 →ランダム割り付けが ( されている ・  されていない )※ただし方法は記載なし
 →隠蔽化が( されている ・  されていない ・ 不明 )
 →盲検化が( されている ・ 一部されている ・  されていない ・記載なし )※ただし盲検の対象が何なのか記載なし
実際のTableで介入群と対照群は同じような集団になっているか?
 →( 介入群・対照群の検討なし )
② 解析方法はITT(intention to treat)か?
 →そもそも脱落者なし

STEP3-3 論文で見いだされた結果の評価
Outcomeについて、以下の値を確認する
【① 治療効果の有無; P値を確認する】
 治療効果…客観的指標のLPS:睡眠潜時、TST:睡眠時間、Sleep efficiency:睡眠効率のp値はいずれも<0.05、
      主観的指標のほとんど(ramelteon4mgのsSL以外)のp値は>0.05
 残存薬理効果、副作用…残存薬理効果に優位差はないとされているがp値はいずれも>0.05、副作用は統計学的な評価がされていない

【②治療効果の大きさ;比の指標と差の指標を確認する】
●RR(あるいはHR・OR)を確認する
●ARRとNNTを計算する
 ※P値で有意差が出たものについて計算
 治療効果は計算できない

【③治療効果のゆらぎ;信頼区間を確認する】
 信頼区間の記載なし

STEP4 患者への適用
【①論文の患者と、目の前の患者が、結果が適用できないほど異なっていないか?】
 睡眠リズムが大きく損なわれた超高齢認知症患者に対して効果があるかどうかは断言できないが、参考にはなる。

【②治療そのものは忠実に実行可能か?】
 生活指導は困難
 服薬管理は娘が行っており内服可能

【③重要なアウトカムはコストや害を含めて全て評価されたか?】
 コスト:ラメルテオン8mg82.5円/錠と比較的高価(一般的な睡眠薬の内マイスリー以外は1錠20円台以下が多い
     Ex. レンドルミン0.25mg27.5円/錠、マイスリー5mg49.6円/錠)
 副作用:検討が不十分。本患者で重要と思われる転倒リスク、長期間服用した場合のリスクも検討されていない。

【④患者の考え・嗜好はどうなのか?】
 統計的に客観的睡眠を改善するとしてもその効果自体は小さく、最も意味のある主観的睡眠はほとんど改善しない。
残存薬理効果や副作用は十分検討されているとはいいがたいが、処方しない根拠になるほど大きなリスクはなさそう。
ただし本症例の真のアウトカムは「娘の心配や睡眠時間の改善」かもしれないので、多少なりとも客観的睡眠を改善するのであれば投与を試す意義はあると思われる。

*略語
 LPS(Latency to Onset of Persistent Sleep):睡眠潜時…寝入りまでの時間
 TST(Total Sleep Time):全睡眠時間
 Sleep efficiency:睡眠効率…就床時間中の睡眠時間の割合
 WASO(Waking After Sleep Onset):中途覚醒時間
 SL(Sleep Time):入眠潜時…就床から入眠までの時間

【開催日】
2016年12月14日(水)

嚥下機能低下ととろみ剤

-文献名-
ROBBINS, JoAnne, et al. Comparison of 2 Interventions for Liquid Aspiration on Pneumonia Incidence A Randomized Trial. Annals of internal medicine, 2008; 148(7): 509-518.

-この文献を選んだ背景-
・60歳代、80歳代の嚥下機能が低下した認知症患者に対しとろみ剤を使用する症例が最近あった。その内一例はムセが続いたためさらにとろみを
 足すか相談した。
・また脳梗塞後遺症で嚥下機能が低下した認知症のない80歳男性を嚥下造影検査(VF)など精査目的に紹介し、とろみ剤使用を指導されたが、
 本人が好まずとろみ剤は使用していない。とろみ剤は美味しくなくなると聞くし、仕方がないかな〜と感じた。その後そもそもどれほどの
 効果があるのか気になった。
・PubMedで「Thickened Fluid」「dysphagia」「aspiration」を組み合わせ検索するなかで見つけ読んでみた。

-要約-
【Introduction】
 誤嚥性肺炎は嚥下障害のある虚弱高齢者において良くあることで、多くの人が嚥下障害による栄養失調・脱水症・肺炎・QOL低下のためケアを必要としている。これらの患者の誤嚥防止のための介入は日常的に用いられているが、その介入の有効性についてはほとんど知られていない。

【Method】
 ランダム化並行群間比較試験。期間は1998年6月9日から2005年9月19日までのうちの3ヶ月間。
 47の急性期病院および79の亜急性期住居施設(subacute residential facilities)の515人で、スプーン3mlのサラサラな液体を嚥下するとき、あるいは、嚥下造影検査時や嚥下時に 特に介入なしに誤嚥をみとめられた際に研究へ登録された。誤嚥は、声帯下に観察されたバリウムとして定義された。顎を引いた姿勢でサラサラ液体、ニュートラルな頭位でネクター様の液体、ニュートラルな頭位でハチミツ様の液体の3群にラムダムに割り当つけられた。
貴島先生図1

Inclusion criteria:50歳〜95歳の認知症あるいはパーキンソン病患者。
Exclusion criteria:過去一年の喫煙、現在のアルコール乱用、頭頸部癌の既往、20年以上のインスリン依存性の糖尿病、経鼻胃管、
         進行性や感染性の神経疾患、6週以内の肺炎。

参加者は、誤嚥が疑われた場合、嚥下造影検査を受けた。

一時アウトカム:明らかな肺炎(胸部レントゲンによる診断、あるいは38度以上の持続する発熱、聴診所見、白血球を認める痰のグラム染色、
        呼吸器病原菌を認める痰培養の4つのうち3つ以上を満たすもの)
        疑わしい肺炎とは、上記の胸部レントゲンでの診断以外の4つのうち2つ満たすものと定義。
二次アウトカム:明らかな肺炎あるいは死亡

【Result】
 対象者:515人がランダム割り付けされ顎を引いた姿勢でサラサラ液体259名、とろみ液体は256名でその内訳はネクター様の液体133名、
     ハチミツ様の液体123名です。

貴島先生図2

貴島先生図3
Figure 2 顎を引いた姿勢ととろみ液体による肺炎の累積罹患率

貴島先生図4

一次アウトカム:カプランマイヤー曲線で三ヶ月間の肺炎の累積罹患率は、
 顎を引く姿勢0.098(24事例)、とろみ液体0.116(28事例)(hazard ratio [HR], 0.84 [95% CI, 0.49 to 1.45]; P = 0.53)
とろみ液体のネクターとハチミツ様とでも比較しているが、
 ネクター様液体0.084(10事例)、ハチミツ様液体0.150(18事例)( [HR], 0.50 [95% CI, 0.23 to 1.09]; P = 0.083)

二次アウトカム:カプランマイヤー曲線で三ヶ月間の肺炎あるいは死亡の累積罹患率は、
 顎を引く姿勢0.180(46事例)、とろみ液体0.183(46事例)(HR, 0.98 [95%CI, 0.65 to 1.48]; P = 0.94)
とろみ液体のネクターとハチミツ様とでも比較しているが、カプランマイヤー曲線で三ヶ月間の肺炎あるいは死亡の累積罹患率は、
 ネクター様液体0.163(21事例)、ハチミツ様液体0.205(25事例)(HR, 0.76 [CI, 0.43 to 1.36]; P = 0.36)

貴島先生図5

貴島先生図6

貴島先生図7

Table2は 顎引き姿勢、とろみ(ネクター様・ハチミツ様)液体のそれぞれの群での有害事象、入院、死亡をまとめた表です。
少なくとも1回の脱水、尿路感染、発熱を発症した患者は、とろみ群で顎を引く群よりも多く9%対5%([CI, 0.3 to 9 %]; P = 0.055))であった。

【Discussion】
・老人ホームの脳卒中・認知症・パーキンソン病における罹患率は20〜40%ですが、登録患者全員の3ヶ月肺炎の累積罹患率は11%と低かった。
 無治療群のサンプルがないため、介入の結果が表しているこの低い比率か他のケアがもたらす変化かどうか判断できない。
・肺炎の罹患率ですが、ネクター様液体0.084(10事例)、ハチミツ様液体0.150(18事例)( [HR], 0.50 [95% CI, 0.23 to 1.09]; P = 0.083)
 ハチミツ様液体の患者の肺炎時入院期間の中央値がより長く、ネクター様液体はハチミツ様液体より気道からの除去が容易であるかもしれない。
 液体が粘性であればあるほどより安全に摂取するという前提はベッドサイドや嚥下造影検査に基づいている。(目の前で誤嚥を生じていないだけ。
 粘度が高ければ、目の前で誤嚥しないよね。しかし、ゆっくり誤嚥しているよね。ってことを言っている?)
・嚥下障害があっても、サラサラな液体で味や食感を楽しめる顎を引いた姿勢は選択肢になる。
 あるいは嚥下プロセスのトレーニングや監視を要さないネクター様の液体も合理的な選択である。

【開催日】
 2017年2月1日(水)

Association Between Socioeconomic Status and Mortality, Cardiovascular Disease, and Cancer in Patients With Type 2 Diabetes

-文献名-
Rawshani, Araz, et al. “Association between socioeconomic status and mortality, cardiovascular disease, and cancer in patients with type 2 diabetes.” JAMA Internal Medicine 176.8 (2016): 1146-1154.

-要約―
※前提:スウェーデンは医療へのアクセスや利用について、社会経済的側面でほぼ間違いなく世界で最も公平な国のうちの一つである。

研究の重要性:
 2型糖尿病患者において、医療への公平なアクセスがあり重要な交絡因子を調整したうえで、社会経済的状態と全死因死亡、心血管関連死、糖尿病関連死、癌死亡率との間に関連があるかは、検討されたことがない。

目的:
 2型糖尿病患者において、所得、教育水準、婚姻状況、出生地が、全死因死亡、心血管死、糖尿病関連死、癌死亡と独立して関連しているかどうかを評価する。

デザイン、設定、参加者:
 Sweden National Diabetes Register(2003年1月1日から2010年12月31日まで)に登録された70歳以下の2型糖尿病患者217364人を調査対象とした。イベント発生まで平均5.6年間追跡した。最大17の共変量を有するCOX比例ハザード回帰モデルを用いて解析した。

メインアウトカム:
 全死因死亡、心血管死、糖尿病死、癌死亡率

結果:
 217364人は平均年齢58.3歳、男性60.2%。19105人が死亡し、そのうち11423人(59.8%)が心血管死、6984人(36.6%)が糖尿病関連死、6438人(33.7%)が癌による死亡だった。完全調整モデルを用いた既婚者の(独身者に対する)ハザード比は全死因死亡0.73(95% CI, 0.70-0.77), 心血管死0.67 (95% CI, 0.63-0.71), 糖尿病関連死0.62 (95% CI, 0.57-0.67)だった。婚姻状況は全癌死亡には関連していなかったが、既婚者の男性は独身男性に比べて前立腺癌の死亡率が低かった(ハザード比0.67 (95% CI, 0.50-0.90))。収入の五分位の最低位は最高位と比べたハザード比は全死因死亡1.71 (95% CI, 1.60-1.83), 心血管死1.87 (95% CI, 1.72-2.05), 糖尿病関連死1.80 (95% CI, 1.61-2.01), 癌死亡率1.28 (95% CI, 1.14-1.44)だった。非西洋移民の全死亡死因、心血管死、糖尿病関連死、癌死亡率はネイティブスウェディッシュと比べて、それぞれ0.55(95%CI、0.48-0.63)、0.46(95%CI、0.38-0.56)、0.38 95%CI、0.29-0.49)、および0.72(95%CI、0.58-0.88)だった。大学の学位を持ってる者は教育年数が9年(スウェーデンの義務教育年数)以下のものと比べて全死亡者数、CV、糖尿病関連死亡率、癌死亡率のハザード比は、それぞれ0.85(95%CI、0.80-0.90)、0.84(95%CI、0.78-0.91)および0.84(95%CI、 0.93)だった。

結論:
 社会経済的状態は全死因死亡、心血管死の強力な予測因子だった。

ディスカッション:
 リスクファクターと共変量を調整しても社会経済的状態の影響を排除できなかったという事実は、リスクファクターのコントロールがこれらの較差を縮小することに効果がないことを意味するわけではない。
 社会経済的状態が悪いことは、心理社会的ストレス、失業、財政難、不健康な習慣、健康上の障害、危険な地域に住む、社会的支援の欠如、不十分な結束と結びついている。
 非西部から西部へ移住する個人は、母国では選択された強力なサブグループであるため、スウェーデン出身者より結果が良かったと考える。

Limitation:
 アルコール消費についてのデータを得られなかった。喫煙は吸うか吸わないか二分変数での評価だった。

【開催日】
 2017年2月1日(水)

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