
【医師による勉強会「Journal Club」の情報提供目的の掲載です。病気や症状など診療に関するお問い合わせ、当センター内のクリニックへのご意見・お問い合わせはお受けできませんのでご了承下さい。】
2012年01月24日
【文献名】
Bogner HR, et al. Integrated Management of Type2 Diabetes Mellitus and Depression Treatment to Improve Medication Adherence: A Randomized Controlled Trial. Ann Fam Med. 2012;10(1):15-22.
【この文献を選んだ背景】
日常診療でもうつ病とDMを併発するケースは時折遭遇し、相互に影響することで治療に難渋することが少なくない。今回、統合ケアをテーマに日常良く遭遇するDM/うつ病に取り組んだRCTということで、日常診療に活かせる印象が強いと同時に、今後取り組みたい臨床研究の枠組みとしても関心があったので選択した。
【要約】
<目的>
うつ病は糖尿病と併発することが多く、内服治療へのコンプライアンスが低下し、罹患や死亡のリスクも上昇する。この研究では、うつ病と2型糖尿病に対する単純で簡潔な統合アプローチによって、経口血糖降下薬や抗うつ薬へのコンプライアンス改善、更には、血糖コントロール改善、プライマリ・ケア患者におけるうつ病の改善がもたらされるかどうかを検証した。
<セッティング>
3つの家庭医療クリニック
<方法>
プライマリ・ケアの現場で2型糖尿病とうつ病に対して薬物治療を実施している180名の患者に対し、2010年4月から2011年4月にかけてRCTを実施した。患者は統合ケア介入群と通常ケア群に無作為に割り付けられた。統合ケアマネジャーは主治医と協働して教育、ガイドラインに基づく治療推奨を提供し、それに対する順守状況や臨床状態をモニターした。コンプライアンスはMedication Event Monitoring System(MEMS)によって評価された。血糖コントロールはHbA1c、うつ病はPHQ-9(the 9-item Patient Health Questionnaire)で評価した。
<結果>
統合ケア介入群と通常ケア群は基本情報では統計学的な相違はなかった。12週間経過した段階で、統合ケア介入群は通常ケア群と比較して、7%以下のHA1cレベルを有意に達成し(統合ケア群 60.9% vs 通常群 35.7%:p<0.001)、うつ病の緩解率も有意に改善した(PHQ-9<5の群:統合ケア群 58.7% vs 通常ケア群 30.7%:p<0.001)
<結論>
2型糖尿病とうつ病に対する単純で簡潔な統合ケア介入に対するRCTは、プライマリ・ケアにおけるアウトカム改善に対して問題なく適切に実施された。うつ病と2型糖尿病に対する統合ケアアプローチは、限られたリソースの配分に苦慮する現実世界の臨床において有効に利用されるだろう。
【考察とディスカッション】
・ 方法については追跡率も高く、ITT分析もされており、こうしたタイプの介入研究としては最大限の配慮ができていると考える。HCFMでの研究でも「家族志向型ケア」などを定義して、臨床研究する上で有効な枠組みである。
・ 結果は非常に明確で、薬物コンプライアンスの向上も合わせると、統合ケアが臨床上に有効であることを強く示唆するものとなっている。アウトカムも我々の日常診療と比較しても関連性が強く、適用しやすい。
・ 統合ケアモデルで示された30分×3回の専任担当者による面接、15分×2回の電話フォローアップをいかにして実現していくかがポイント。「生活習慣病指導管理料」によって得られた収入を当てればある程度現実的かもしれない。そのためには、対象者をうつ病罹患者以外にも拡大することが重要とはなるが。今後、診療報酬面でのサポートが重要であり、日本でも同様の研究を実施してデータを示したい。
・ 本日(2012年1月18日)では奇しくもうつ病と生活習慣病を抱えた患者に対する統合ケアという家庭医を特徴付けるアプローチに関する研究であった。以前取り扱った、患者-医師関係の深まり、今回の統合ケアとあわせて家庭医のとるアプローチに関するエビデンスが明らかになっていくことが期待される。
【開催日】
2012年1月18日
2012年01月22日
【文献名】
Treatment Adjustment and Medication Adherence for Complex Patients With Diabetes, Heart Disease, and Depression: A Randomized Controlled Trial. Ann Fam Med 2012;10:6-14.
【要約】
<PURPOSE>
Medication nonadherence, inconsistent patient self-monitoring, and inadequate treatment adjustment exacerbate poor disease control. In a collaborative, team-based, care management program for complex patients (TEAMcare), we assessed patient and physician behaviors (medication adherence, self-monitoring, and treatment adjustment) in achieving better outcomes for diabetes, coronary heart disease, and depression.
<METHODS>
A randomized controlled trial was conducted (2007-2009) in 14 primary care clinics among 214 patients with poorly controlled diabetes (glycated hemoglobin [HbA1c] ≥8.5%) or coronary heart disease (blood pressure >140/90 mm Hg or low-density lipoprotein cholesterol >130 mg/dL) with coexisting depression (Patient Health Questionnaire-9 score ≥10). In the TEAMcare program, a nurse care manager collaborated closely with primary care physicians, patients, and consultants to deliver a treat-to-target approach across multiple conditions. Measures included medication initiation, adjustment, adherence, and disease self-monitoring.

<RESULTS>
Pharmacotherapy initiation and adjustment rates were sixfold higher for antidepressants (relative rate RR=6.20; P<.001), threefold higher for insulin (RR = 2.97; P <.001), and nearly twofold higher for antihypertensive medications (RR=1.86, P<.001) among TEAMcare relative to usual care patients. Medication adherence did not differ between the 2 groups in any of the 5 therapeutic classes examined at 12 months. TEAMcare patients monitored blood pressure (RR = 3.20; P <.001) and glucose more frequently (RR = 1.28; P = .006).
<CONCLUSIONS>
Frequent and timely treatment adjustment by primary care physicians, along with increased patient self-monitoring, improved control of diabetes, depression, and heart disease, with no change in medication adherence rates. High baseline adherence rates may have exerted a ceiling effect on potential improvements in medication adherence.
【開催日】
2012年1月18日
2012年01月12日
【文献名】
Matthew J. RIdd et al. Patient-Doctor Depth-of-Relationship Scale: Development and Valication. Ann Fam Med 2011;9:538-545.
【この文献を選んだ背景】
継続性とともに深まっていくのが患者と医師の関係性と言われている。John Saltz著「Textbook of Family Medicine」においても一人の医師による継続性(longitudinal continiuity)と患者-医師関係について述べられている。Annals of Family Medicineにおいてこの患者・医師の関係性の深さを測定するスケールが紹介されており、興味深かったため紹介したい。
【要約】
<目的>
患者・医師間の継続性はその関係性よりもその時間の長さで計測されてきたため、同じ医師にかかりつづけることがよりよい患者のケアにつながるのかどうかを示すエビデンスは乏しかった。患者・医師間の継続性を関係性の視点で計測する既存の方法には限界があり、筆者らは患者・医師の関係性の深さを特異的に測定する患者自記式のスケールを新しく開発した。
<開発の方法>
質問紙の草稿を患者と直接面談してテスト。その後2回のパイロットテストを実施した。最終稿を家庭医の通常外来を受診した患者に記入してもらい、さらに患者の一部には(test-retest reliabilityを高めるため)フォローアップで(同じ質問紙に)回答してもらった。
これらの結果からスケールの骨格、妥当性、信頼性を評価した。
<結果>
草稿の表面的妥当性(※1)は11名の患者との直接面談によって確かめられた。
パイロットラウンド1(対象者375名)、2(対象者154名)におけるデータは質問紙表を改良・短縮化するために用いられた。最終稿は8つの質問項目からなる1つのスケールにまとまり(figure2
)、良好な内的信頼性を示した(Cronbach's α=0.93)。主要調査(対象者490名)では同じ医師にかかり続けることは患者・医師関係の深さと関連しするが、その関係性の深さは直線的ではないことが示された(figure4)。一部の患者で実施した(対象者154名)試験・再試験信頼度は良好であった。
<結論>
Patient-doctor Depth-of-Relationship Scaleは新しい、概念的にしっかりした質問紙表であり、患者にとっても記入しやすく精神測定的にもしっかりしたスケールである。今後の研究がこのスケールの妥当性をさらに高め、患者・医師関係の深さが患者のケアの改善に関連するかどうかという問いに対する答えをもたらすであろう。
【考察とディスカッション】
考察によると、これまでも患者・医師関係を測定しようとする試みはあったようだが、単発の外来を対象としていたり、関係の長さ(longitudinal)を対象としていたり、セッティングが2次医療機関であったり、と不十分なものであったという(John Saultz著 Textbook of Family Medicineに紹介されている測定ツールもlongitudinalなものを測定していた。)。こういったスケールが開発されたことにより、一人の医師による継続性(→関係性の深まり)が患者ケアの改善と関連するかどうか、グループ診療との比較はどうか?など興味深い問いへ答える研究が発表されるかもしれない。
また、継続性の長さが医師-患者関係の深まりと相関するのであれば、一人の医師による継続性が患者中心の医療の技法におけるコンポーネント5(=患者-医師関係の強化)と統合された概念に発展していく可能性も考えられる。
【開催日】
2012年12月28日
2012年01月12日
【文献名】
Warfarin Dose Assessment Every 4 Weeks Versus Every 12 Weeks in Patients With Stable International Normalized Ratios A Randomized Trial. Sam Schulman, MD, PhD; Sameer Parpia, MSc; Clare Stewart, MA; Lisa Rudd-Scott, RN, BScN; Jim A. Julian, MMath; and Mark Levine, MD, MSc
Ann Intern Med. 2011;155:653-659.
【要約】
<背景>
ガイドラインではワーファリンを内服している患者ではPT-INRを4週間毎に測定するように推奨されている。
<目的>
12週毎の測定が4週毎の測定と同じくらい安全かどうかを調べた。
<デザイン>
ランダム化非劣性試験。ランダム化のスケジュールはパソコンで作成。集中スケジュールを用いることで、データがロックされている限り、配分は隠された。患者、研究や臨床に関わる人、臨床イベントを審査する人、研究の統計者に治療割り当ては盲検化されていた。
セッティング:カナダのオンタリオ州、ハミルトンの単一センター
<患者>
長期間のワーファリン治療を受けている250人の患者で、少なくとも6か月間は用量の変更がない患者。226人が研究を終了した。
<介入>
12か月間、4週毎の用量評価と12週毎の用量評価を比較した。12週のグループも4週毎に検査を実施し、2回目と3回目は至適範囲内の偽りのPT-INRの数値を報告した。
<測定>
1次アウトカムは治療域に入った回数の割合で、2次アウトカムは治療域を外れたPT-INRの回数の割合と維持量の変更回数の割合、主要な出血イベントの発生率、客観的に確認された血栓塞栓症の発生率、死亡率である。
<結果>
治療域に入った回数の割合は4週で74.1%、12週で71.6%であった。4週のグループ(55.6%)よりも12週のグループ(37.1%)の方が用量の変更は少なかった。2次アウトカムに差はなかった。
<限界>
12週のグループの患者も4週毎に検査をし、クリニックのスタッフと接触していた。この研究は単一のセンターで実施され、代理アウトカムを使っていた。
<結論>
ワーファリンの用量は12週毎の評価でも4週毎の評価と同じくらい安全で、非劣性はなさそうである。12週毎のPT-INR検査を臨床でルーチンに推奨するためにはPT-INR検査と患者との接触、そして、ワーファリンの用量評価を12週毎の実施と4週毎の実施で比較する必要がある。
【考察とディスカッション】
現時点では積極的にPT-INR検査を12週毎に延長して実施する積極的な根拠にはなりにくいかもしれない。
【開催日】
2011年12月21日
2011年12月19日
【概要】POLSTとは
・Physician Orders for Life-Sustaining Treatmentの略語
・'End of life'(敢えて終末期と訳しませんでした。)における医療の質の改善のために考慮されたプログラムで、患者の希望を聞き出すための効果的なコミュニケーション、色彩がはっきりした紙への行いたい医療の記載、その希望に対する医療者の遵守が土台となっている。
・1991年に、オレゴンにて延命治療に対する患者の希望が尊重されていないことに問題意識を感じた医療倫理分野の専門家が活動を開始し、1995年にForm(書式)が初めて出版された。
・現在では、オレゴン州では、POLSTを用いていることが、ケアの基準として受け入れられており、全てのホスピスと95%の高齢者施設において採用されている。2004年にはPOLSTのメンバーが、USの国のタスクフォースとして、国内への流布・政策整備・リサーチの実施のために、活動を開始した。
・現在のUSAにおける、POLSTプログラムの採用状況は図1のとおりである。
【POLST Formの記載内容】
・「POLST Oregon sample」「POLST newest 日本語」にそれぞれオレゴン州のサンプルとその日本語訳があります。
・確認するのは主に以下の3点
①心肺停止状態の時のCPRをするかどうか 日本での従来的なDNARかどうか、に該当します
②①ではなかった時の、医療をどこまで希望するか
1.緩和処置のみ施行 ;対症療法のみ
2.限定された医学的処置の施行;通常の治療を行うが、気管内挿管・長期の生命維持・ICU治療などは行わない
3.積極的な治療 ;侵襲的な処置も全て行う
③人工的な栄養と輸液の投与
1.一切行わない 2.期間を限定して行う 3.長期的に行う
④抗生物質投与(州によって項目として独立していない場合もあり)
1.使用しない。症状緩和のための場合は行う
2.侵襲的な投与は行わない(筋肉内・静脈内は行わない) 3.積極的に行う
⑤話し合いに参加したメンバーの記載
【実際にどのように使用されているか?】
・オレゴン州では、ある年齢を超えた患者全員に対して推奨されているとのこと。電子カルテのAlertとも連動しているクリニックもあるようで、聴取していない場合は、Alertが出るようにされているところもあるとのこと。
※HPでみる限りは、オレゴンは非常に進んでいるようで、プログラム全体としてPOLSTの推奨としているのは、「進行した慢性進行性の疾患を持っている人、翌年に死亡あるいは意思決定能力が失われる可能性がある状況にある人、また、自分が受けるケアについて意思表示を明確にしたいという要望を持っている高齢者ならだれでも」、となっています。
・実際には、希望を書いた紙を、平時は患者自宅の冷蔵庫などに貼ってあって、救急隊が現場到着した際に、その紙を同時に持っていく、というような感じになっているそうです。(外出時はどうしているのかは聞いてきませんでした)
・法的効果も認められており、実際にPOLSTに反して蘇生をして、生き返った当人が訴訟をしたケースもあるとのこと。
・記載はもちろん強制ではなく、患者(あるいは代理人)の自発的な判断に基づく、とあります。
・延命治療への配慮は全ての患者においてなされるべきだと日ごろから感じている。内科的疾患で入院した際にDNARを確認した際に、「今まで話し合ったことがない」と答えた家族には退院後に一度きちんと話すように勧めたり、悪性疾患の診断を受けている患者の定期外来で、近い話題が出たら、確認してカルテに記載するよう努力はしていた。
・このようなフォームの活用することで、家族・本人との話し合いの場は持ちやすくなるし、より具体的な話をする機会を持てるだろう。継続性や関係性構築に長けている家庭医なら、「不要な心配」をかけることなく話題を切り出す役割としては適任と思われる。
・しかし、このようなフォームが本当に効力を発揮するためには、多彩な段階の治療への要望に対応するための複数の場(ホスピス・入院病床)や、それに寄り添える価値観を持ち、多彩な段階の治療を実践できる医療スタッフが存在することが必要だろう。POLSTのようなシステムと実際の受け皿が両輪になって、初めて走り出すもので、片方だけの過剰な整備では、フォームを形骸化させるもととなる。
・その一方で、こうした類のイノベーションにおいては、フォームの導入が、もう一方の「車輪」の整備のきっかけになる可能性(例えばACLSのように)があることも鑑みる価値はあると思う。現場で患者の個別化されたケアの実践に取り組み家庭医としては、システマティックでなくとも、出来ることがあるように感じる。
例えば、我々にでも以下のような活動は出来るかもしれない。
都市部;自分が受ける治療に対して希望があり意識が高い患者とのコミュニケーションに利用する
郡部;こうした概念自体の存在をチームでシェアして、特にリスクが高くかつ地域から出ていく可能性が低い集団(グループホームや特養の利用者)に関わる職種と勉強会やシステムの導入を試みる
・皆さんの普段のこうした分野でのプラクティスや工夫・実践・経験についてお伺いしたい。

【開催日】
2011年12月7日