医学生と家庭医療のキャリアについて話すときに考慮するべき12の論点

-文献名-
Kathleen Horrey. et al. Twelve points to consider when talking to a medical student about a career in family medicine. Canadian Family Physician. 1 January 2020; 66 (1): 74-76.

-要約-
背景;カナダ家庭医の大学(CFPC)の学部教育委員会(UGEC)は、医学生の家庭医療に対する認識と、彼らが私たちの専門分野について受け取るメッセージを調査している。この洞察を収集するために、UGECはメンバーの多様なグループからの意見を求めた。
まず、家庭医療のキャリアのやりがいと課題に関する彼らの見解について学ぶため、医学生のセクションを通じて共有される医学生向けの調査を開発した。これらのデータは、過去の家庭医療フォーラムのフォーカスグループスタイルのワークショップで発表された。ワークショップの出席者は、新卒者から40年以上の都市部と農村部の包括的な診療を含む40年以上の診療経験を持つ家庭医の幅広いグループを代表していた。医学生の認識に関する豊富な議論の後、私たちは居住者と最近の卒業生からより多くを聞く必要があることに気づいた。追加の調査は、居住者のセクションおよび家庭医療実践委員会の最初の5年間を通じて、選択したキャリアのやりがいと課題に対する認識を決定するために広められた。入力を提供したすべての人からの応答を捉えた概念的なテーマを開発した。家庭医療に関連するやりがいと課題の認識に関するこれらの概念的アイデアは、その後の家庭医療フォーラムの別のフォーカスグループスタイルのワークショップで発表され、参加者は反復的に出現した概念をさらに微調整した。UGECのメンバーとCFPCのアカデミック家庭医療部門の同僚は、これらのメッセージをさらに洗練させた。
「家庭医療でのキャリアについての12の論点」は、多数の異なる意見や経験の収集から生まれたものであり、家庭医が医学生と日常診療やその間に起こったことに役立てることができ、家庭医療のキャリアのやりがいと課題に関する医学生との議論において焦点を合わせるのに役立つ。以下に示すこれらの12の論点は、文書「家庭医療のキャリアについて医学生と話をする際に考慮すべき12の点」からのものであり、それはwww.cfpc.ca/uploadedFiles/Education/Twelve-Talking-Tipsからダウンロードできる(フランス語版もあり)。
話すポイント
1.家庭医療は専門であることを強調する
特に、かかりつけ医はジェネラリストの専門知識を持つ熟練した臨床医であることを説明する。家庭医療は、知的に刺激的で、挑戦的であり、非常にやりがいのある職業である。患者とその家族に奉仕することがどんな特権かを話す。これらの有意義な縦断的関係は、医師としての私たち自身の回復力と幸福を高める。かかりつけのポイントとして、家庭医療の4つの原則(www.cfpc.ca/Principles)を強調すると役立つ場合がある。その4つの原則とは、かかりつけ医は熟練した臨床医、家庭医療は地域に根ざした学問、かかりつけ医は、定義された診療集団のリソース、患者と医師の関係は、かかりつけ医の役割の中核であるというものだ。
2.彼らとの包括性の概念を調べ、これが圧倒的と思われるかどうか尋ねる
患者のプレゼンテーションの謎を受け入れ、「多くのことを少し知っている」という認識を拒否する。これは、家庭医療に必要な知的厳格さを低く評価する。
3.地域および新興のニーズを満たすために、コミュニティに適応したケアを提供するための訓練方法について話し合う
医学生は社会的説明責任に強い関心を持っている。かかりつけ医が包括的実践、特別な利益を伴う実践、および集中的実践のすべてを共同で私たちのコミュニティのニーズを満たす方法を調査することにより、この素因を構築する。
4.この仕事は、単独ではなくチームで行うことを指摘する
私たちは、他のかかりつけ医や他の医療提供者とチームで協力し、患者のケアを互いに支援する。
5.家庭医療がいかに多様性を提供し、決して退屈しないかを祝う。毎日が新しい経験をもたらす
私たちの仕事には、すべての人々、年齢、ライフステージ、プレゼンテーションの包括的で継続的な医療が含まれる。リーダーシップ、アドボカシー、奨学金、研究、品質改善が含まれる。
6.家庭医療が、このような多様な実践機会を持つ唯一の医療専門分野である方法を説明する
コミュニティのニーズよりも個人の利益に集中していると解釈されるため、柔軟性の概念よりも汎用性を強調する。
7.家庭医療は私たちと共に適応し成長するキャリアであることを強調する
私たちは自分の人生の段階と実践の段階に合わせて調整することができ、個人や私たちが奉仕するコミュニティとして私たちに最適なものを見つける。
8.この汎用性により、ワークライフの統合を達成するためにどのように努力できるかを説明する
医学生は誤って家庭医療を専門分野の「ライフスタイル」選択であると誤解しているため、ワークライフバランスなどの用語は避けてください。
9.「プラス1」年間の強化されたスキルトレーニングに関する神話を払拭する
学生がこれについて尋ねている理由を調べてください。一部の学生は誤解されており、家庭医療の訓練にさらされる前であっても、家庭医として患者に緩和ケア、産科ケア、緊急ケアなどを提供できるように強化されたトレーニングが必要であると考えている。他の学生は、包括的な実践の考えが圧倒的であることに気づき、より集中したいと考えている。この場合、家庭医療が彼らにふさわしいのか、それとも道筋なのかを探ってください。私たちは、生徒が地域のニーズを満たすために強化されたスキルプログラムを選択し、個人の利益を達成するためだけでなく、最良の結果が得られるように利益を達成することを奨励する。
10.家庭医療を「バックアップ」計画と見なしているかどうかを尋ねる
一部の学生にとっては、カナダのレジデントマッチングサービスでの一致で家庭医療を選択することが適切かもしれないが、家庭医療はすべての人のバックアップと見なされるべきではない。生徒が自分にぴったりだと思う分野を選択し、それに応じてランク付けすることを生徒に奨励する。
11.将来の診療条件の不確実性について懸念がある場合は、対処する
認識について率直に話してください。政治的風潮と家庭医療への支援は、時々変わる。物事が今日不確実に見える場合、それらは将来より良くなるだろう。すべての医療専門職に不確実性があることを認める。しかし、他の多くの専門分野よりも家庭医療の雇用機会に関してはるかに確実性が残っている。
12.患者があなたの仕事をどのように評価しているかについてのストーリーを共有する
かかりつけの医師に対する全身的圧力の背景と、私たちの職業は価値がないという印象に反して、患者が私たちの仕事をどれほど大切にしているのか、患者が私たちとの信頼関係を重視していることを忘れてしまうかもしれない。
結論:医学生の家庭医療に対する認識と、彼らが私たちの専門分野について受け取るメッセージを調査した後、医学生に伝えようとするメッセージは、いつも彼らから聞くメッセージとは違うことがわかった。「12の論点」は、家庭医療のキャリアに関するメッセージを改善し、メリットを強調し、神話を払拭し、課題に正直になり、医学生自身に家庭医療が適切かどうかを振り返るのを促すための推奨事項として浮上した。

【開催日】2020年2月12日(水)

在宅における新生児緩和ケア

-文献名-
Kuhlen, M., Höll, J. I., Sabir, H., Borkhardt, A., & Janßen, G. Experiences in palliative home care of infants with life-limiting conditions. European journal of pediatrics. 2016;175(3):321-327.

-要約-
研究の目的:予後の限られている疾患を持った新生児およびその家族が在宅緩和ケアにおいて直面する問題点を同定し、医師・支援者がそのニーズを理解することを目指す
背景:これまでに在宅緩和ケアを受ける新生児についての実態調査研究は2013年のポーランドのものをのぞいてほとんどない。同研究では37.7%(20人)が緩和ケアから通常のケアに安定して脱していることが報告されている。
デザイン:ドイツ・デュッセルドルフの子供病院の小児緩和ケアチーム(PPCT)に紹介され、自宅ケアを受けた事例を2007-2014年の期間で記述的研究を行った。生後365日を超えた事例は除外した。なお、同都市では5820人の子供が1年あたり生まれている。
結果(Table1, 2, 3参照):31人の患児が該当した。そのほとんど(17人)が先天性奇形または染色体異常だった。21人が死亡し、そのうち5人は入院中の死亡だった。64.5%が自宅でお看取りとなった。83.9%が嚥下機能障害を持ち、NGチューブあるいはPEGを受けていた。1/5の子供がPEG造設のために再入院したが、その周術期に死亡していた。71%が鎮痛薬による治療を受け(そのうち16人72.7%がNSAID、2人9.1%がトラマドール、17人77.3%が強オピオイド)、45.2%が酸素療法が必要で、9.7%が人工呼吸器を要していた。
死亡率が最も高かったのは、周産期合併症を持っていた場合(75%)であった。4人の患者においては、状態が劇的に改善し、緩和ケアから通常ケアに脱することができた。

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【開催日】2020年2月12日(水)

アドバンス・ケア・プランニングの適切なタイミングとは?

-文献名-
Nancy L. Schoenborn, MD, MHS, Ellen M. Janssen, PhD, Cynthia Boyd, MD, MPH, John F.P. Bridges, PhD, Antonio C. Wolff, MD,Qian-Li Xue, PhD and Craig E. Pollack, MD,MHSdoi: 10.1370/afm.2309 Ann Fam Med November/December 2018 vol. 16 no. 6 530-537

-要約-
目的: 臨床診療ガイドラインでは、プライマリケアにおける多くのことを決定するために、平均予後を組み込むことを推奨している。全国サンプルで平均余命を議論することの高齢者の好みを調べることを目的にした。
方法:2016年にnational probability-based on line panel(1)から1272人の高齢者(65歳以上)を招待した。我々はすぐに死ぬことがない平均余命が限られた仮想患者を提示した。私たちは参加者に、もし患者であったとしたら、どれくらい生きるか医師と話したいか話したくないか、医師がこの議論を切り出すことを容認できたかできなかったか、医師に平均余命について家族や友人に話してもらいたいかもらいたくないか、いつ話し合うべきかを問いかけた。
(1)あらかじめ登録してもらった人に世論や健康についてオンラインでアンケートをして答えてもらう仕組み
結果:参加者878人(69%の参加率)の平均年齢は73.4歳だった。過半数の59.4%は、提示されたシナリオでどれくらいの期間を生きることができるかについて議論したくないと回答した。このグループ内では59.9%も医師がこの話題を切り出すべきとは考えず、87.7%も医師が余命について家族や友人に話し合うことを望まなかった。55.8%の人は平均余命が2年未満の場合にのみ余命について話し合いたいと答えた。議論を持ちたいと積極的に関連する要因には、教育レベルが高いこと、医師が余命を完璧に予想できると信じていること、生命に関わる病気や愛する人の余命について過去に経験したことがあることがあった。宗教が重要であるという報告は否定的に関連していた。
結論:高齢者の大部分は平均余命が限られている仮想の患者を描いた時、平均余命を議論することを望まなかった。また多くの人はこの議論を提供されることを希望しなかった。 そして臨床医がこのデリケートなトピックに関する患者の好みを同定する方法についてのジレンマを提起する
discussion:臨床医が最初に患者の病気や平均余命に関する議論の経験や平均余命に関する患者の信念を探り、平均余命の議論に対する患者の感受性を評価することがこのジレンマの解決法の一つになる可能性がある。継時的にそれらを評価するのが良い。患者の人生における重大な健康問題や患者家族の重大な健康問題の後に重要かもしれない。平均余命が1-2年になった時もアプローチするタイミングかもしれない。
限界:ITリテラシーの低い高齢者などのサブグループを代表していない可能性がある。架空のシナリオであるため参加者の回答は実際の行動を反映していないかもしれない。さらに単一のシナリオでは患者の健康状態の多様性や健康の動的な自然経過を把握できない可能性がある。

【開催日】2020年2月5日(水)

COPD患者における一般診療所での呼吸機能検査の妥当性

-文献名-
T R Schermer, et al. Validity of spirometric testing in a general practice population of patients with chronic obstructive pulmonary disease (COPD). Thorax. 2003 Oct; 58(10): 861–866. doi: 10.1136/thorax.58.10.861

-要約-
Introduction:
近年プライマリケアの現場で呼吸機能検査の使用が急速に増大している。実践ガイドラインではCOPDの管理に呼吸機能検査が中心的な役割を示すことを示唆しており、患者のほとんどはプライマリケアで診断治療がされるため、これらのガイドラインは一般診療所に密接に関連している。
呼吸機能検査の有効性(もしくは信頼性)は呼吸器疾患の診断、モニタリング、マネジメントを行うための前提条件で、実際に広く使用されているが、プライマリケアの環境で呼吸機能検査の有効性は証明されていない。
過去の研究では、一般診療所で得られた呼吸機能検査の測定指数は検査室で得られた値に比べ、十分な検出がされていないことが示されており、妥当性が不十分であると示唆されている。しかし、これらの報告はいずれもpeer review(査読)がされておらず、今後さらなる研究が必要とされている。今回の研究の主な目的は、一般診療で行われた呼吸機能検査の結果が、検査室で行われた結果と、一致した検査結果を示すかどうかを評価することである。

Method:
研究には、4つの検査室(大学に2つ、総合病院に2つ)と149人の一般開業医(GP)と185人の検査助手からなる61の一般診療を対象とした。検査室における呼吸機能検査を「ゴールドスタンダード」測定と設定した。
一般診療所における患者は以下が選択された。
年齢は30〜75歳、喫煙者もしくは過去に喫煙歴がある中で、COPDの臨床的定義(「過去2年間に少なくとも3ヶ月間は、日中の咳嗽もしくは呼吸困難がある」)を満たし、気管支拡張薬投与後のFEV1の結果が40-90%、および(または)気管支拡張薬投与後のFEV1/FVCが予測値未満(男性で88%、女性で89%)を示しており、GPによってCOPDと診断された患者を対象としている。重度の併存疾患、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性発疹の既往のある患者は除外された。
研究が実施される前に、一般診療所のGPと検査助手には呼吸機能検査実施におけるトレーニングプログラムを受講させた。プログラムは、2.5時間のセッションを1か月の間隔で2回受講する。セッションの内容は、Thoraxの Webサイトで入手できるものとした。
研究データの収集は1998年12月から2001年1月まで行われ、一般診療所および検査室にはすべて、同じ電子呼吸機能検査計と肺活量測定ソフトウェアが装備された。各研究被験者は、一対の呼吸機能検査が実施された。最初の検査は常にいずれかの検査室で行われ、2回目の検査を一般診療所で行った。2つの検査の間隔が30日を超える被験者は、分析から除外された。研究途中に急性増悪があったケースの測定スケジュールは臨床的な改善が認められた6週間後まで延期された。
被験者は、一対いずれの呼吸機能検査においても、検査前8時間の短時間作用型気管支拡張薬と12時間の長時間作用型気管支拡張薬を控えるように指示され、呼吸機能検査を実施する15分前に、スペーサーによる気管支拡張薬(エアロゾル化サルブタモール400μg)の投与がされた。各テストでは、少なくとも3回の強制呼気操作が行われ、FEV1とFCVの結果の合計が最も高い操作が保存され、分析に使用された。

Results:
61の診療所の内訳は、21(34%)がソロプラクティスであり、35(58%)はグループ診療、5(8%)は学術集中ヘルスケアセンター?である。全体の65%の施設で研究前より呼吸機能検査が導入されていた。Table1には今回の特性が記載されている。トレーニングプログラムの出席率はGPで57%、検査助手で78%でした。61の施設の中で2施設はGPが検査を行い、59は検査助手が実施していた。

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Primary outcomeは、一般診療所と検査室におけるFEV1(一秒量)とFCV(努力肺活量)値の純粋な差の平均とした(ΔFEV1、ΔFCV)。1年目と2年目の研究アウトカムに大きな差はなかった。
また単純な差の平均と別に、調整された推定値も算出された(外れ値の影響を配慮され、最小値付近5%データと最大値付近5%データを除外して計算する5%トリム平均が行われた)。調整された推定値は単純な差の平均値より、(ごく軽度だが)高いことがわかった(Table2)。さらには研究1年目、2年目ともに、すべての診療所で測定した値のほうが、検査室での値よりもFEV1、FCVともに高く算出されていることがわかった(Table3)。この結果は診療所と検査室での呼吸機能検査の測定値に不一致があることを示唆している。
ΔFEV1、ΔFCVの値のばらつきについては、体系的な変化はみられなかった(Figure1,2)。

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Discussion:
今回の研究結果は、一般診療所の呼吸機能検査の品質と「ゴールドスタンダード」の手順で行われる検査室の呼吸機能検査の品質を加味して、納得する結果であった。
一般診療所の呼吸機能検査の平均値を一貫して観察したところ、再現性の割合については、診療所も検査室も同じであった。しかし上述した通り、診療所と検査室の呼吸機能検査の測定値自体の一致は限定的であったため、この結果は診療所と検査室の測定値の結果を同様のものとして扱うことは避けるべきであるということを示唆していることがわかる。

また今回の研究自体は診療所と検査室での呼吸機能検査のパフォーマンスを比較することを目指したものである。
検査のパフォーマンスは検査実施者の関連する因子によって大きく影響を受ける。被験者への指導の質、呼吸機能検査の再現性など多岐にわたる。比較における潜在的なバイアスを抑えるため、検査器具を同様のものを使用する工夫などは行ったが、被験者の気道過敏性や日内変動など個人因子は調査結果に影響を与えた可能性はある。被験者の繰り返し行う検査による学習効果も完全に影響していないとは言い難いが、この点に関しては、過去にCOPDの診断を受けている患者で呼吸機能検査の経験があり、理解力を有する方を対象に行っているため、個々の学習曲線は横ばいになっていると推定される。

(結論)
トレーニングされた一般診療所で得られたCOPDの管理に関連する呼吸機能検査の検査結果は、認定された検査室で測定された値よりもわずかではあるが統計的に高い値が出ていると結論付けた。
しかし再現性については、一般診療所と検査室に差がないことから、プライマリケアの現場で呼吸機能検査の実施が、すでに広く行われていることを支持するものであった。
ただし、上記の通り、診療所と検査室での値は不一致であることも示唆されたため、測定値の評価を入れ替えして使用することは避けるべきである(初回を診療所で測定して、フォローを検査室で測定するような行為)ことも示唆された。
プライマリケアの環境で呼吸機能検査を実施することを奨励することは、実践するスタッフのトレーニングが十分であれば、妥当性のあるものと考える。

【開催日】2020年2月5日(水)