Multimorbidity発生の予測

―文献名―
Luke T.A.Mounce,PhD et al. Predicting Incident Multimorbidity. Ann Fam Med 2018;16:322-329. https://doi.org/10.1370/afm.2271.

―要約―
PURPOSE
多疾患併存は有害な結果に関連するが、その発生の決定要因に関する研究は不十分である。私たちは社会人口統計学的、健康的、個人的な生活習慣(例えば、身体活動、喫煙、BMI)のどのような特徴が多疾患併存の新規発生を予測するかを研究した。
METHODS
10年間のフォローアップ期間を含む英国加齢縦断研究(ELSA)における50歳以上の4,564名の参加者のデータを使用した。慢性疾患がない研究参加者(n=1477)については、2002-2003年から2012-2013年の間の結果とベースライン特性の関連性を別々に調べるための離散時間ロジスティック回帰モデルを構築し、 初期の疾患にかかわらず10年以内の疾患の増加、および多疾患併存の発生に対する個々の疾患の影響を調べた。
RESULTS
多疾患併存の新規発生リスクは、年齢、財産(少ない方がハイリスク)、身体活動低下または外的統制(ライフイベントは自分ではコントロールできないと信じていること)と有意な関連性がある。
性別、教育、社会的孤立に関しては有意な関連性は認められなかった。
疾患が増加した参加者(n=4564)については、喫煙歴のみが追加の予測因子であった。
単一のベースライン疾患(n=1534)を有する参加者にとって、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息および不整脈は、その後の多疾患罹患と最も強い関連性を示した。
CONCLUSIONS
我々の知見は、影響を受けやすいグループの多疾患併存の新規発生予防を目的とした戦略の開発と実施を支援する。このアプローチは、生活習慣要因に対処する行動変容を組み込み、健康関連の統制の所在(Locus of Control)を目標とすべきである。

【開催日】2018年12月5日(水)

プライマリ・ケアにおける高齢者の入院に関連する潜在的な不適切処方の影響:縦断研究

―文献名―
Teresa Pérez, Frank Moriarty, Emma Wallace, Ronald McDowell, Patrick Redmond, Tom Fahey. Prevalence of potentially inappropriate prescribing in older people in primary care and its association with hospital admission: longitudinal study. BMJ (Clinical research ed.). 2018 Nov 14;363;k4524.

―要約―
OBJECTIVE
入院と65歳以上の高齢患者への不適切処方との関連と,入退院前後で不適切な処方が退院後に増加するかどうかについて調べることを目的とする.
DESIGN
 一般(家庭医療)診療所の診療録を後ろ向きに抽出した縦断研究.
SETTING
 2012~2015年にかけて,アイルランドにある44カ所の一般(家庭医療)診療所.
PARTICIPANTS
 診療所を受診した65歳以上の成人.
EXPOSURE
 病院への入院(入院群 v.s. 非入院群,入院前 v.s. 退院後)
MAIN OUTCOME MEASURES
 高齢者の処方スクリーニングツールScreening Tool for Older Persons’ Prescription(STOPP)ver.2の45の基準を用いて,潜在的不適正処方が占める割合を算出し,患者特性で補正を行い,層別化Cox回帰分析(明らかな潜在的不適正処方基準を満たした発生率)と,ロジスティック回帰分析(1人の患者について潜在的不適正処方が1回以上発生したか否かの2項値による)の2通りで分析し,入院との関連を検証した.患者特性と診断名に基づく傾向スコアによりマッチングを行い,感度分析も行った.
RESULTS
 分析には3万8,229例が包含された.2012年時点での平均年齢は76.8歳(SD 8.2),男性が43.0%(1万3,212例)だった.年に1回以上入院した患者の割合は,10.4%(2015年,3,015/2万9,077例)~15.0%(2014年,4,537/3万231例)だった.
 潜在的不適正処方を受けた患者の割合は,2012年の45.3%(1万3,940/3万789例)から2015年の51.0%(1万4,823/2万9,077例)の範囲にわたっていた.
 年齢や性別,処方薬数,併存疾患,医療保険の種類とは関係なく,入院は明らかに潜在的不適正処方基準を満たす割合が高かった.入院補正後ハザード比(HR)は1.24(95%信頼区間[CI]:1.20~1.28)だった.
 入院患者についてみると,潜在的不適正処方の発生率の尤度は,患者特性にかかわらず,退院後のほうが入院前よりも上昇した(補正後OR:1.72,95%CI:1.63~1.84).なお,傾向スコア適合ペア分析でも,入院に関するHRはわずかな減少にとどまった(HR:1.22,95%CI:1.18~1.25).
CONCLUSION
 高齢者にとって入院は,潜在的な不適正処方の独立関連因子であることが明らかになった.入院が高齢者の不適正処方にどのような影響を及ぼしているのか,また入院の潜在的有害性を最小限とする方法を明らかにすることが重要である.

【開催日】2018年12月5日(水)

患者と家族からみたケアの移行,受け渡し(退院支援)

-文献名-
Suzanne E M et.al. Care Transitions From Patient and Caregiver Perspectives. Ann Fam Med 2018; 16: 225-231.

-要約-
<目的】> ケアの移行/受け渡し(退院支援)を効率的に行うために協調的な対策がとられているにも関わらず,病院から自宅(home)への行程/道のりは患者と介護者にとって危険に満ちたものである.患者と介護者がケアの移行/受け渡し(退院支援)の経験や彼らが望むサービス,彼らにとって価値あるアウトカムについてはほとんど知られていない.この研究の目的は(1)ケアの移行/受け渡し(退院支援)における患者と介護者の経験を描写すること,(2)患者と介護者にとって望ましいケアの移行/受け渡し(退院支援)のアウトカムやそれに関連する健康関連サービスの特徴を明らかにすることである.

<方法>
米国内の6つの健康ネットワークから採用された138名の患者と110名の家族介護者にインタビューを行った.34の同質なフォーカスグループ(103名の患者と65名の介護者)と80のkey informant interview(質的研究において「核となる情報提供者」から問題に関する情報を収集するときに行う方法)実施した.録音された記録を文字起こしし,グラウンデッド・セオリーの手法を用いて分析し,複数のテーマとそれらの関係性を明らかにした.

<結果>
患者と介護者によりケアの移行/受け渡し(退院支援)について望まれるアウトカム3つが示された.
(1) 医療職に「Cared for:世話をされた」「Care about:かまってもらった」と感じること
(2) ヘルスケアシステムによる明解で責任ある説明をうけること
(3) ケアプランを実行する上で「準備ができて」「実行可能である」と感じること
5つのケアの移行/受け渡し(退院支援)や医療提供者の行動がこれらのアウトカム実現に関連していた.
(1) 共感的な言葉とジェスチャーを用いること
(2) 自宅(home)におけるセルフケアを支援するために患者のニーズを先読みして手を打つこと
(3) 退院計画を協同で建てること
(4) 実行可能な情報を提供すること
(5) 最小限の受け渡しにより切れ目のないケアを提供すること

<結論>
連続するケアを通じた明解な説明責任,ケアの継続性,ケアの態度が,患者と介護者にとって重要なアウトカムであった.これらのアウトカムが達成されたとき,ケアは素晴らしい,とか信頼に足ると受け止められる.一方,ケアの移行/受け渡し(退院支援)が業務的で安全でないと経験され,患者や家族にヘルスケアシステムから見放されたと感じさせていることも示された.

【開催日】2018年10月17日(水)

マルチモビディティ診療モデルの試作「アリアドネ プリンシパル」

-文献名-
Christiane Muth. The Ariadne principles: how to handle multimorbidity in primary care consultations.
BMC Medicine 2014, 12:223

マルチモビディティは主にプライマリケア診療で扱う健康問題である。包括性、患者中心のアプローチ、患者との長期的な関係性、そしてケアの継続性と協調性に対する責任の結果として家庭医はマルチモビディティの患者を特に上手く管理出来る。しかし疾患志向のガイドラインは複数疾患の相互作用を捉えていないため、ガイドラインを遵守しその治療の負担から生じる衝突はしばしば物議をかもす。マルチモビティティにおける意思決定の道標を提供する為に、指針原則を作成しギリシャ神話の登場人物アリアドネ(迷宮から脱出する道標を担った王女)を引用しアリアドネ プリンシパルと名付けた。この目的のために、2012年10月にドイツ・フランクフルトで国際シンポジウムを2日間にわたって開催した。発表され、議論されている現状の知識背景に照らして、北米、ヨーロッパ、オーストラリアの19人の専門家がパネルディスカッションや小グループ会議でプライマリケアのマルチモビディティ管理における懸案事項を確認し、公式および非公式のコンセンサス方法で合意した。プリンシパルは、多段階フィードバックプロセスが用いられ、事例を用いて議論された。

医師と患者による現実的な治療目標の共有は、アリアドネの原則の中核であり、以下の3つから成り立つ。(図1参考)
(1) 患者の状態、治療、性格、背景の相互作用評価:
• すべての現在の状態のプロブレムリストを保持し、その重症度と影響を評価し、投薬を見直す。
• 依存や睡眠障害、食欲不振、脱水などの非特異的な兆候や症状を含む認知機能の問題、不安、苦痛および抑うつの徴候を積極的にモニタリングする。
• 社会的状況、経済的制約、生活環境および社会的支援、健康リテラシー、機能自律性、対処方法を引き出し、考慮する。
• 患者のケアに関わる他の医師やセラピストをリスト化し、全体の治療負担を評価する。

(2)患者の嗜好を考慮に入れた健康問題の優先順位付け
• 生存、自立、痛み、緩和ケアの必要性を含む症状緩和などのgeneric health outcomeに対する嗜好を引き出し、患者の嗜好と同じでない可能性があるため、自身の(暗黙の)嗜好を自覚する。
• 該当する場合は、非公式の介護者や家族の好みを考慮する。
• 患者(および必要に応じて患者の介護者)との現実的な治療目標に同意する。

(3)診断、治療、予防におけるケアの最善の選択肢を実現するための個別化されたマネジメント
介入(診断、治療、予防)よって期待される利益が患者個別の不利益や害を上回るかどうかが重要である
• 個々の患者のリスクレベルと好みを考慮して、治療(および予防)の期待される利益が起こりうる不利益や有害性を上回るかどうかを吟味する。
• 患者(および必要に応じて介護者)の漸増および複合治療の負担を評価する。
• 患者のニーズと能力に応じて自己管理を検討する。
• 副作用の徴候や適切な管理に関する推奨などのセーフティネットの指示を提供する。
• 目標到達度を評価し、相互作用を再評価するためにフォローアップ受診のスケジュールを患者と同意する。
• 患者に関わる他の医療従事者や非公式介護者に相談する。 理想的には、関係するすべてのヘルスケア提供者は治療決定についての情報を受けたり、情報にアクセスすることができる。

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【開催日】2018年5月23日(水)

高齢者の肥満への介入

-文献名-
Deniss T.Villareal.et.al Aerobic or Resistance Exercise or Both in Dieting Obese Older Adult,N Engl J Med 2017;376:1943-55.

-要約-
【背景】
高齢者の肥満は虚弱(フレイル)の原因となるが,減量は加齢に伴う筋量・骨量減少を加速させ,その結果サルコペニアや骨減少が生じる可能性がある.
【方法】
肥満高齢者 160 例を対象とした臨床試験で,いくつかの運動方法について,フレイルからの回復と,減量による筋量・骨量減少の予防における有効性を評価した.対象者を,体重管理プログラム(食事療法)に,有酸素運動,レジスタンス運動,有酸素運動とレジスタンス運動の組合せのいずれかのプログラムを併用する群と,対照群(体重管理プログラムも運動プログラムもなし)に無作為に割り付けた.主要評価項目は,身体機能テストの点数(0~36 点で,高いほど身体機能が良好であることを示す)のベースラインから 6 ヵ月後の変化とした.副次的評価項目は,その他のフレイルの指標,身体組成,骨密度,身体機能の変化などとした.
【結果】
141 例が試験を完了した.身体機能テストの点数は,組合せ群(27.9 点→33.4 点 [21%上昇])で,有酸素群(29.3 点→33.2 点 [14%上昇])とレジスタンス群(28.8 点→32.7 点 [14%上昇])よりも大きく上昇し(それぞれ Bonferroni 補正後の P=0.01,0.02),いずれの運動群も,対照群と比較して大きく上昇した(いずれの群間比較も P<0.001).最大酸素消費量は,組合せ群(17.2 mL/kg/分→20.3 mL/kg/分 [17%上昇])と有酸素群(17.6 mL/kg/分→20.9 mL/kg/分 [18%上昇])で,レジスタンス群(17.0 mL/kg/分→18.3 mL/kg/分 [8%上昇])よりも大きく上昇した(いずれの比較も P<0.001).筋力は,組合せ群(272 kg→320 kg [18%上昇])とレジスタンス群(288 kg→337 kg [19%上昇])で,有酸素群(265 kg→270 kg [4%上昇])よりも大きく上昇した(いずれの比較も P<0.001).体重は,いずれの運動群でも 9%減少したが,対照群では有意な変化はみられなかった.除脂肪体重の減少は,組合せ群(56.5 kg→54.8 kg [3%低下])とレジスタンス群(58.1 kg→57.1 kg [2%低下])で,有酸素群(55.0 kg→52.3 kg [5%低下])よりも小さく,股関節の骨密度の低下も,組合せ群(1.010 g/cm2→0.996 g/cm2 [1%低下])とレジスタンス群(1.047 g/cm2→1.041 g/cm2 [0.5%低下])で,有酸素群(1.018 g/cm2→0.991 g/cm2 [3%低下])よりも小さかった(いずれの比較も P<0.05).運動関連の有害事象には,筋骨格損傷などがあった.
【結論】
検討した運動法のなかでは,食事療法による減量に有酸素運動とレジスタンス運動を組み合わせる方法が,肥満高齢者の機能状態の改善にもっとも有効であった.(米国国立衛生研究所から研究助成を受けた.LITOE 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01065636)
【限界】
・研究の参加者はライフスタイルプログラムに参加出来る身体能力を有する参加者を選んだため、肥満高齢者全般への適応は不十分
・性別の差異を分析するには十分なサイズではなかった
・参加者の大部分は女性、白人、教育を受けている方であったため一般化の限界がある
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【開催日】2018年3月7日(水)

高齢者の大腿骨頸部骨折:手術すべきか?

―文献名―
van de Ree CLP, et al. Hip Fractures in Elderly People: Surgery or No Surgery? A Systematic Review and Meta-Analysis. Geriatr Orthop Surg Rehabil. 2017 Sep;8(3):173-180.

―要約―
【Introduction】
 大腿骨頸部骨折の患者数は増加しており、同時に高度の合併症も有している。大多数は手術にて治療されるが、周術期死亡のリスクが容認できないほど高く手術が不適切な患者さんの割合も著しく増加している。脆弱でハイリスクな高齢者については、どのような治療が可能か評価するために、治療オプションを考える前に患者さんの骨折前にQOLや将来的な予測について検討すべき。
 ・既知の事実:手術実施は早期のほうがoutcomeがよいと示されている
 ・未知の内容:手術の有無によるoutcome。倫理的な理由でRCTは乏しい。2008年のcochrane systematic reviewでは手術の有無を
        比較しているが、保存的療法(ベッド上安静+牽引)よりも手術療法のほうがよいというには証拠不十分と報告している

【Objective】
 レビューの目的は、65歳以上の大腿骨頸部骨折患者において、手術の有無による死亡率・health-related QOL・機能的outcome・費用の相違を概観すること。

【Method】
 EMBASE, OvidSP, PubMed, Cochrane Central, and Web of Scienceを検索し、手術の有無を比較した観察研究とRCTを選択。研究手法の質はthe Methodological Index for Nonrandomized Studies (MINORS) または Furlan checklistで評価した。

【Results】
 計1189名の患者がエントリーされた7つの観察研究のうち、242名(20.3%)が保存的に治療された。研究手法の質は中等度(mean: 14.7, standard deviation [SD]: 1.5)であり、30日後と1年後の死亡率は保存的療法の群が高かった(odds ratio [OR]: 3.95, 95% confidence interval [CI]: 1.43-10.96; OR: 3.84, 95% CI: 1.57-9.41)。QOLや機能的outcomeや費用面で比較した研究は存在しなかった。

【Conclusion】
 このsystematic reviewとmeta-analysisでは、少数の患者を手術の有無で比較した少数の研究のみで実施した。30日後と1年後の死亡率の有意な高さが明らかとなった。QOLや費用面でのデータは見いだせなかった。高度な合併症や限られた予後の高齢者に関して有効な判断を行いと保存的療法を開始するためには、さらなる探索が必要である。
 <限界>
  ①潜在的な交絡因子(依存症・性別・年齢・精神状態・脆弱度・介入のタイプ)を調整出来ていない
  ②骨折の安定性を識別できていない
  ③この研究はすべての患者に手術可能でない国には一般化が出来ない

<Flow diagram; selection of articles>
安藤先生図1

<Thirty-day mortality>
安藤先生図2

<One-year mortality>
安藤先生図3

【開催日】
 2017年9月6日(水)

嚥下機能低下ととろみ剤

-文献名-
ROBBINS, JoAnne, et al. Comparison of 2 Interventions for Liquid Aspiration on Pneumonia Incidence A Randomized Trial. Annals of internal medicine, 2008; 148(7): 509-518.

-この文献を選んだ背景-
・60歳代、80歳代の嚥下機能が低下した認知症患者に対しとろみ剤を使用する症例が最近あった。その内一例はムセが続いたためさらにとろみを
 足すか相談した。
・また脳梗塞後遺症で嚥下機能が低下した認知症のない80歳男性を嚥下造影検査(VF)など精査目的に紹介し、とろみ剤使用を指導されたが、
 本人が好まずとろみ剤は使用していない。とろみ剤は美味しくなくなると聞くし、仕方がないかな〜と感じた。その後そもそもどれほどの
 効果があるのか気になった。
・PubMedで「Thickened Fluid」「dysphagia」「aspiration」を組み合わせ検索するなかで見つけ読んでみた。

-要約-
【Introduction】
 誤嚥性肺炎は嚥下障害のある虚弱高齢者において良くあることで、多くの人が嚥下障害による栄養失調・脱水症・肺炎・QOL低下のためケアを必要としている。これらの患者の誤嚥防止のための介入は日常的に用いられているが、その介入の有効性についてはほとんど知られていない。

【Method】
 ランダム化並行群間比較試験。期間は1998年6月9日から2005年9月19日までのうちの3ヶ月間。
 47の急性期病院および79の亜急性期住居施設(subacute residential facilities)の515人で、スプーン3mlのサラサラな液体を嚥下するとき、あるいは、嚥下造影検査時や嚥下時に 特に介入なしに誤嚥をみとめられた際に研究へ登録された。誤嚥は、声帯下に観察されたバリウムとして定義された。顎を引いた姿勢でサラサラ液体、ニュートラルな頭位でネクター様の液体、ニュートラルな頭位でハチミツ様の液体の3群にラムダムに割り当つけられた。
貴島先生図1

Inclusion criteria:50歳〜95歳の認知症あるいはパーキンソン病患者。
Exclusion criteria:過去一年の喫煙、現在のアルコール乱用、頭頸部癌の既往、20年以上のインスリン依存性の糖尿病、経鼻胃管、
         進行性や感染性の神経疾患、6週以内の肺炎。

参加者は、誤嚥が疑われた場合、嚥下造影検査を受けた。

一時アウトカム:明らかな肺炎(胸部レントゲンによる診断、あるいは38度以上の持続する発熱、聴診所見、白血球を認める痰のグラム染色、
        呼吸器病原菌を認める痰培養の4つのうち3つ以上を満たすもの)
        疑わしい肺炎とは、上記の胸部レントゲンでの診断以外の4つのうち2つ満たすものと定義。
二次アウトカム:明らかな肺炎あるいは死亡

【Result】
 対象者:515人がランダム割り付けされ顎を引いた姿勢でサラサラ液体259名、とろみ液体は256名でその内訳はネクター様の液体133名、
     ハチミツ様の液体123名です。

貴島先生図2

貴島先生図3
Figure 2 顎を引いた姿勢ととろみ液体による肺炎の累積罹患率

貴島先生図4

一次アウトカム:カプランマイヤー曲線で三ヶ月間の肺炎の累積罹患率は、
 顎を引く姿勢0.098(24事例)、とろみ液体0.116(28事例)(hazard ratio [HR], 0.84 [95% CI, 0.49 to 1.45]; P = 0.53)
とろみ液体のネクターとハチミツ様とでも比較しているが、
 ネクター様液体0.084(10事例)、ハチミツ様液体0.150(18事例)( [HR], 0.50 [95% CI, 0.23 to 1.09]; P = 0.083)

二次アウトカム:カプランマイヤー曲線で三ヶ月間の肺炎あるいは死亡の累積罹患率は、
 顎を引く姿勢0.180(46事例)、とろみ液体0.183(46事例)(HR, 0.98 [95%CI, 0.65 to 1.48]; P = 0.94)
とろみ液体のネクターとハチミツ様とでも比較しているが、カプランマイヤー曲線で三ヶ月間の肺炎あるいは死亡の累積罹患率は、
 ネクター様液体0.163(21事例)、ハチミツ様液体0.205(25事例)(HR, 0.76 [CI, 0.43 to 1.36]; P = 0.36)

貴島先生図5

貴島先生図6

貴島先生図7

Table2は 顎引き姿勢、とろみ(ネクター様・ハチミツ様)液体のそれぞれの群での有害事象、入院、死亡をまとめた表です。
少なくとも1回の脱水、尿路感染、発熱を発症した患者は、とろみ群で顎を引く群よりも多く9%対5%([CI, 0.3 to 9 %]; P = 0.055))であった。

【Discussion】
・老人ホームの脳卒中・認知症・パーキンソン病における罹患率は20〜40%ですが、登録患者全員の3ヶ月肺炎の累積罹患率は11%と低かった。
 無治療群のサンプルがないため、介入の結果が表しているこの低い比率か他のケアがもたらす変化かどうか判断できない。
・肺炎の罹患率ですが、ネクター様液体0.084(10事例)、ハチミツ様液体0.150(18事例)( [HR], 0.50 [95% CI, 0.23 to 1.09]; P = 0.083)
 ハチミツ様液体の患者の肺炎時入院期間の中央値がより長く、ネクター様液体はハチミツ様液体より気道からの除去が容易であるかもしれない。
 液体が粘性であればあるほどより安全に摂取するという前提はベッドサイドや嚥下造影検査に基づいている。(目の前で誤嚥を生じていないだけ。
 粘度が高ければ、目の前で誤嚥しないよね。しかし、ゆっくり誤嚥しているよね。ってことを言っている?)
・嚥下障害があっても、サラサラな液体で味や食感を楽しめる顎を引いた姿勢は選択肢になる。
 あるいは嚥下プロセスのトレーニングや監視を要さないネクター様の液体も合理的な選択である。

【開催日】
 2017年2月1日(水)

高齢者のてんかん部分発作の治療にどの薬使ってますか?

―文献名―
A randomized, double-blind comparison of antiepileptic drug treatment in the elderly with new-onset focal epilepsy. Epilepsia 20156(3):450-459,2015.

―この文献を選んだ背景―
 90歳男性。糖尿病、収縮不全を伴う重度大動脈弁狭窄症、C型肝炎による慢性肝硬変、CKD、加齢によるADL低下で訪問診療していた。以前から突然両手が突っ張る発作があったが、診察時に始めて確認した。意識レベルは低下するものの返答もされるためてんかんの部分発作と診断。ADLの低下から病院への受診が困難なため訪問診療が導入になった経緯があり、当院で抗てんかん薬を開始することとした。日本神経学会のてんかんガイドライン2010(2014年度てんかん治療ガイドライン2010追補版)では以下の通り。

福井先生図①

 あまりに選択肢が多かったためPubMedで「epilepsy; elderly」で論文を検索し、648本の論文がヒット。その中でガイドラインに記載されている薬剤の効果を比較している論文として上記論文を選択した。

―要約―
【目的】
 新規のてんかん部分発作の診断となった高齢者に対する、カルバマゼピン(CR-CBZ:テグレトール®)、レベチラセタム(LEV:イーケプラ®)、ラモトリギン(LTG:ラミクタール®)の効果を比較すること
 研究前:CBZが頻用されているがそれを支持するエビデンスが不足。CR-CBZとLTGの比較では投薬維持率に差はなく、CR-CBZの方が発作なし率が
     高く、認容性はLTGが高かった。LEVとLTGの比較試験ではレトロスペクティブで非コントロール試験だった。CBZに対するLTGの非劣性
     試験はあった。

【方法】
 ランダム化二重盲検並行群間比較試験。2007年1月から2011年8月。ドイツ、オーストリア、スイスの外来や病院の計47ヶ所。対象者は60歳以上の新規のてんかん発作の患者で、痙攣の原因となる急性疾患がなく、この研究の薬剤が禁忌とならない者。患者はランダムに上記の3薬剤に1:1:1の人数比で割り付けられた。投与量は6週間で漸増し決定され、その後さらに52週間で投与継続されたり、痙攣の再燃や認容性に合わせて量を調整した。一次アウトカムは58週目(上記の6週と52週の合計)での投薬の継続率。二次アウトカムは痙攣なしの割合(30週目と58週目)と副作用の頻度。

【結果】
 ●対象者:361人の患者がランダム割付され、359人の患者をmodified ITTの対象とした
     (CR-CBZ=121人、LEV=122人、LTG=117人)(平均年齢71.4歳(60〜95歳))。

福井先生図②

福井先生図③

●一次アウトカム:58週目の時点で、LEVの投薬継続率はCR-CBZと比較して顕著に高く(61.5% vs 45.8%, P=0.02)、LTGと比較しても同様だった(55.6%)。

福井先生図④

●二次アウトカム:30週目と58週目の時点での痙攣の無い割合には差はなかった。
 CR-CBZを投与された患者は副作用による投与中止や死亡がLEVの2倍だった(32.2% vs 17.2%; odds ratio 2.28, 95%CI(1.25〜4.19, p=0.007))。一方、LTGの中止はその間(26.3%)。

福井先生図⑤

福井先生図⑥

(↓いずれかのグループで、対象者の10%以上に発症した副作用が他のグループでどうだったかの表)
福井先生図⑦

●投与を完遂した者(3グループ合わせて195人):投与量の中央値は、CR-CBZ 380mg/日(日本では200 〜400mg/日で開始し通常600mg/日くらいが
 維持量)、LTG 95mg/日(日本では25mg/日で開始し漸増して100mg/日で維持)、LEV 950mg/日(日本では通常1000mg/日)だった。

【結論】
 高齢者での部分発作に対して、単剤で治療を開始する場合、1年後の薬剤投与継続割合は、LEVが高かった。それはCR-CBZよりも認容性が高いためだった。LTGの投与継続割合は、その間だったがLEVに近く、大きな差はなかった。
 このRCTによって、高齢者の新規てんかん部分発作に対して、選択薬はLEVであり、LTGはその代替薬になりうる。

【ディスカッション】
 ・今回の研究からLEVによる単剤治療をCR-CBZと比較すると、効果の点では同等であり、認容性の点では優れていた。
 ・どの薬も推奨量より少ない量で維持できた。このことから高齢者では、認容性の問題から低用量から開始すべきである。
 ・LEVの投与継続率が高かったのは、効果の点では同等だったので、認容性の点からだろう。
 ・副作用全体の発生については3剤とも差がなかったが、薬剤に関連した副作用発現までの時間はCR-CBZが一番早かった。
 ・CR-CBZの内服者の60%でγGTの、15%でALPの上昇を認める。一般的にこれで投薬中止になることは少ないが、密な採血評価は必要である。

【開催日】
 2017年1月18日(水)

後期高齢者の厳格降圧は有効か?

―文献名―
Intensive vs Standard Blood Pressure Control and Cardiovascular Disease Outcomes in Adults Aged ≥75 Years: A Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2016 Jun 28;315(24):2673-82.

―要約―
【重要性】
 高血圧を有する高齢者の適切な収縮期血圧(SBP)の目標値は明らかではない。

【目標】
 高血圧を有するが糖尿病がない75歳以上の高齢者において厳格降圧薬(120mmHg未満)と標準降圧(140mmHg未満)の効果を比較する。

【デザイン、セッティング、参加者】
 SPRINT試験(米国50歳以上、血圧130〜180mmHgで非糖尿病かつ心血管リスクが高い患者が対象※1)に参加した75歳以上の患者の多施設、無作為化試験。2010年10月20日から登録を開始し、2015年8月20日までフォローアップした。
 ※1脳卒中を除いた症候性・無症候性の心血管疾患の既往、CKD、フラミンガムリスクスコア15%以上

【介入】
 参加者をSBP<120を目標とする群(厳格降圧群、n1317)とSBP<140を目標とする群(標準降圧群、n1319)に無作為に割り付けた。

【主要評価項目】
 主要評価項目は、非致死性心筋梗塞、不安定狭心症、非致死性脳梗塞、非致死性急性非代償性心不全、心血管死である。全死亡は副次評価項目である。

【結果】
 2636例(平均年齢79.7歳、女性37.9%)のうち、2510例(95.2%)で完全にフォローアップした。フォローアップ期間の中央値は3.14年で主要評価項目(102イベントvs148イベント、HR0.66、95%CI:0.51-0.85)と全死亡(73例vs107例、HR0.67、95%CI:0.49-0.91)は有意に厳格降圧群で低かった。
 重大な有害事象に群間差はなかった。(48.4%vs48.3%、HR0.99、95%CI:0.89-1.11)
 低血圧の発生は厳格降圧群2.4%、標準降圧群1.4%(HR1.71、95%CI:0.97-3.09)、失神はそれぞれ3.0%と2.4%(HR1.23 95%CI:0.76-2.00)、電解質異常はそれぞれ4.0%と2.7%(HR1.51、95%CI:0.99-2.33)、急性腎障害は5.5%と4.0%(HR1.41、95%CI:0.98-2.04)、転倒による外傷はそれぞれ4.9%と5.5%(HR0.91、95%CI:0.65-1.29)であった。

【結論】
 75歳以上の歩行可能な高齢者では、厳格降圧群で標準降圧群と比較し、致死性心血管イベント、非致死性心血管イベント、全死亡が有意に少なかった。


P:糖尿病を除く心血管リスクを有する75歳以上の高血圧患者
I:SBP<120mmHgを目標にコントロールする(厳格降圧群)
C:SBP<140mmHgを目標にコントロールする(標準降圧群)
O:非致死性心筋梗塞、不安定狭心症、非致死性脳梗塞、非致死性急性非代償性心不全、心血管死の複合エンドポイント

inclusion criteria:心血管リスク(脳卒中を除いた心血管疾患の既往、CKD、フラミンガムリスクスコア≧15%、75歳以上)
exclusion criteria:2型糖尿病、脳梗塞の既往、6ヶ月以内の症候性心不全、EF<35%、認知症、生命予後3年未満、6ヶ月以内の故意でない10%以上の体重減少、SBP110mmHg未満(起立1分後)

・無作為化:記載あり(方法の記載なし)
・隠蔽化:記載なし
・盲検化:試験の性質上、患者と治療介入者は盲検化できない。outcome評価者は盲検化されている。
・介入群と対照群の背景(table1参照)
  アスピリン使用とfrailty index(スコアの範囲は0−1で値が高いほどfrailtyは高い)で群間差あり
  厳格降圧群でアスピリン使用が多い、厳格降圧群でfrail indexが高い
・解析:ITT解析
・結果
  複合エンドポイントのうち心不全のみ厳格降圧群で有意に減少している、NNT63(table3)
  内服薬は厳格降圧群で1剤多く、標準降圧薬に比べるとACE、利尿剤、βブロッカーの使用割合が高い(etable2)
  失神、電解質異常、腎障害は厳格降圧群で多い傾向(etable3)
  frail indexが高いほど重大な合併症が多い傾向(etable3)

村井先生図①

村井先生図②

村井先生図③

村井先生図④

村井先生図⑤

村井先生図⑥

 

―考察とディスカッション―
【考察】
 結果からは外来通院可能なADL(認知症や施設患者は含んでいない)で非糖尿病の心血管リスクが高い75歳以上の高齢者を対象に120mmHg前後に降圧することで心不全が減少することが示された。しかし厳格降圧群ではACE阻害薬/ARB、利尿剤、βブロッカーの処方が多く、それが心不全を抑制した可能性がある。また有意差はつかなかったが厳格降圧群で腎不全、電解質異常などの副作用が多く出る傾向があった。また同様に厳格降圧群ではfrailな患者ほど重大な合併症を起こしやすい傾向があった。

【開催日】
 2016年12月21日(水)

【EBMの学び】年齢別の骨粗鬆症薬の効果

STEP1 臨床患者に即したPI(E)CO
【評価を行った日付】
 2016年6月10日
【臨床状況のサマリー】
 81歳女性 町に在住で夫と2人暮らし。昨年1月に脳梗塞で他院入院歴がありその際に骨粗鬆症を指摘されている。(大腿骨の骨密度がYAMで66%と診療情報提供あり)。
 その後ビスホスホネート内服について相談があったようだが内服を増やしたくないことと、副作用の心配もあり経過観察となっていた。今年の4月に再度骨密度を測定(橈骨でYAMが55%、T-scoreが-5.56)。再度ビスホスホネート内服の相談をするが、過去の転倒もなくやはり内服の副作用に不安があると。現在は「毎日骨ケア」というカルシウム飲料を飲んでいる。月額は5000円程度である。

 既往:脳梗塞(プラビックス内服している)。
 ADL:自立(昨年の脳梗塞で左半身麻痺があったが、今は杖もなく歩行可能。ほぼ毎日2時間パークゴルフをしている)。
 認知機能:問題なし。

 骨折のリスクを考えるとBP剤を飲んだ方が良いとは思うが実際にBP剤のコンプライアンスも良くはなく、本人の副作用の懸念もわかる。一度文献を読んで説明した方が納得出来るのではないか。「毎日骨ケア」はどうだろうか?ただこれを比較した論文はない。

 P;80代閉経後のADLが自立している女性で
 I(E);ビスホスホネート内服している人
 C;内服していない人で
 O;骨折の発生率に差がでるか?

STEP2 検索して見つけた文献の名前
【見つけた論文】
検索したエンジン;up to date で 「骨粗鬆症 治療」で検索
「閉経後女性の骨粗鬆症のマネージメント」に行きつき、高齢者のアレンドロネートの論文を検索。システマティックレビューでは適切な論文もあったが、今回はRCTの学びを深めたいと考えた。その上でRCTでの適切な論文は見つけられなかったのでPub medからsimilar articlesを検索して論文を見つけた。
見つけた論文;Effects of Alendronate on the Age-Specific incidence of Symptomatic Osteoporotic Fractures

STEP3;論文の評価
STEP3-1.論文のPECOは患者のPECOと合致するか?

 P;閉経後2年以上経過した骨粗鬆症がある55-80歳女性の
 I(E);アレンドロネート内服群と
 C;プラセボ群で
 O;年代毎で骨折予防の効果が変わるか?
 →患者のPECOと (合致する ・ 多少異なるがOK ・ 大きく異なるため不適切)

STEP3-2 論文の研究デザインの評価;内的妥当性の評価
①研究方法がRCTになっているか?隠蔽化と盲検化はされているか?
 →ランダム割り付けが ( されている ・  されていない )
 →隠蔽化が      ( されている ・  されていない ・ 記載なし
 →盲検化が      ( されている ・  されていない )
実際のTableで介入群と対照群は同じような集団になっているか?
 →( なっている ・ なっていない)
  どう異なるか?:Table1で患者のキャラクターは整っているが、それをtable2にした時点で世代毎の層にわけられてしまうので、介入群と対照群が同じかどうか不明
② 解析方法はITT(intention to treat)か?
 →ITTが (されている  ・  されていない)

STEP3-3 論文で見いだされた結果の評価
Outcomeについて、以下の値を確認する
 Table 2を参照.ここからcox proportional hazardsにデータを当てはめたのがFig.1(P値、RR)、Fig.2(最年少、最高齢の世代別のARR)
  Table2
  股関節/大腿骨 P: 0.43 椎体 P:0.47 手首 P:0.36 複合 P:0.53
安達先生図
【① 治療効果の有無; P値を確認する】
 Table2のP値は0.05以上であり効果に差が出ない。Figure1のP値は0.05未満であり効果に差がある。

【②治療効果の大きさ;比の指標と差の指標を確認する】
 上記表を参照。ARRはFig2から出してそこからNNTも出している。高齢者の方がARR、NNTが高くなっている。

【③治療効果のゆらぎ;信頼区間を確認する】
 Fig1ではどれも95%Clが1を含んでいない。

STEP4 患者への適用
【①論文の患者と、目の前の患者が、結果が適用できないほど異なっていないか?】
 Table 1を参照、閉経後女性、高齢者、骨粗鬆症は一致している。対象者の年齢が平均して10歳ほど若い。白人の研究。アレンドロネートは2年後から5㎎から10mgに変更になっているので日本では行わない方法。T-scoreが腰椎と大腿骨で‐2.0~-2.5だが実際は橈骨で‐5.56であった。
・内的妥当性の問題点は?(STEP3の結果のサマリー)
 →隠蔽化されていない部分が問題。骨折の予防というアウトカムは問題ない。
【②治療そのものは忠実に実行可能か?】
 高齢夫婦であるが認知面は問題なく服薬コンプライアンスは良好。内服は可能。ただし副作用とコンプライアンスについての説明は必要。(服薬回数についてあらかじめもプランとして提示した方が良さそう)。
【③重要なアウトカムはコストや害を含めて全て評価されたか?】
 コストに関しては105円×30日=3150円と毎日骨ケアより安い。骨折予防のアウトカムはある。
【④患者の考え・嗜好はどうなのか?】
 ・これまでのその治療に対する経験はどうか?
  →ビスホスホネートを今まで新規で処方したことはない。
 ・自分の熟達度から実行は可能だろうか?
  →本人と副作用についてあらかじめ話し合いながら計画をたてて行えば大丈夫と考える。
 ・illness/contextの観点からは治療は行うべきか?あるいはillness/contextを更に確認するべきか?
  →本人にとっての健康感は買い物に行ったり、病院に来たりすること。仲間とパークゴルフをすること。高齢者独居で骨折のリスクも高いと考えると、今回の結果からも説明して治療は行うべきと思う。ただなぜ内服をしたくないかはもう少し深く聞く必要はある。

【開催日】
2016年7月13日(水)