臨床推論を教える

【文献名】 
著者名:Kassirer, Jerome P. MD  
文献タイトル:Teaching Clinical Reasoning: Case-Based and Coached Academic medicine 
雑誌名・書籍名:Volume 85 – Issue 7 – pp 1118-1124
発行年:July 2010

【要約】
最善の臨床ケアは、正確な診断技術と最も適切な治療をすすめる臨床医の技術にかかっている。そして臨床推論の技術の習得はどのレベルの医学教育においてもキーとなる必要条件である。臨床推論を教えることは、教育理論のいくつかの基本的な原則に基づいている。成人教育理論によると、学習とは、繰り返し実際の症例に意識的に暴露されることで熟達していく。実際の症例とは、臨床推論の様々な側面から選択された物であるべきで、指導医の参加が教育的経験の価値を高める。成人学習理論は、臨床医学と臨床推論のストラテジーの記憶は、情報や判断や推論のエラーが直ちに指摘されたときに高められるとしている。記憶から作られた人工の症例より、実際の症例の方が、現実の臨床資源の失敗や多相性をしばしば反映するので、そちらが選ばれる。

これらの概念は診断プロセスを教えることと学ぶことを助長する。診断的検査や治療と、臨床推論における認知エラーのリスクとベネフィットはtrade offである。臨床推論を教えることは、学習者が解剖学と病理学を全部理解するまで遅らせる必要もないしそうすべきでない。推論の生成、パターン認識、背景の整理、診断的検査の解釈、鑑別診断、診断的確証といった概念は臨床的問題解決(clinical problem solving)の言語と方法で教えられる。専門的技術はそれに到達する正確なメカニズムを知らなくても到達できる。

Teaching Clinical Reasoning 2010
30人以下の学習者で症例ベースのカンファレンスする方法を提示。

●まず:アウトラインを提示。(List1)

●症例選択:臨床推論を幅広く理解するために、症例はランダムでなく、慎重に選択する必要がある。学習者がList1にある様々な側面を持った症例を持ってくることは推奨される。また学習者のレベルに応じて選ぶ。誰かの記憶で構成された以前の症例よりも、現在進行中の症例で、不確実で矛盾してて完全でなく、複雑で、臨床データが曖昧な症例がいい。認知エラーやニヤミスがどう起きるかを説明するためには、欠点のある推論と素晴らしい推論のケースとあった方が良い。学習者があまり知らない症例が良い。

● 症例の情報のまとめ方:症例のNarrativeは、患者のillnessだけでなく、患者の判断や行動も含まれるべきである。症例は、臨床推論のための統合されたテンプレートという機能だけでなく、臨床医学や臨床推論を学ぶためのバイアスとしての機能もある。なので可能であれば、実際の時間の流れで症例をまとめる。患者の年齢、性別、主訴などから初めても良いが、患者が医師に語った問題から初めても良い。つまりゴールに応じて症例を選び、プレゼンテーションを仕立てるべきである。

● 指導者の役割:指導者の機能は、指導者も学習者と同様に症例についての知らない状態であり、同じ情報から検討しなければいけないときにもっともよくなる。指導者は学習者の疑問と反応とコメントの妥当性正確性をモニタリングする。診断と治療における推論と同様に、患者の医学的側面についての特別な問題は、同時に扱うことが可能である。指導者は学習者になぜその情報を求めたのかをたずね、その答えを得たら何がわかるのかを説明させる。Problem solvingセッションでのこの相互のやり取りのポイントは、症例に関する情報が全て出そろってからディスカッションするより、検査データが出そろった時、診断や治療プランができてきた時など途中途中で検討することで、即座にフィードバックできることである。
  指導者は、参加者のセッションへの積極的に参加するよう努力する。知的にチャレンジングで、楽しくて、脅すことのないセッションにしなければならない。これは常にストレスのないセッションにするという訳でなく、ストレスが記憶に残る要因ともなる。指導者は時に闇に迷い込み、ミスをして、判断を誤り、不適切な仮説を立てるなどするかもしれない。重要なことは何が学ばれるのかということであり、全ての症例に最終的な答えがある訳ではないことである。また指導医は症例の全ての面をカバーしなければならないと感じるべきでない。

● 認知エラーを回避する:最近の臨床推論では、メタ認知が認知エラーの回避に効果的な方法かもしれないとしている。

以下メモ
教育方法は科学的根拠に乏しい。ここ数十年の人間の認知に関する理解は深まっているが、教育方法はいまだ専門科の意見に大部分を頼っている。

ジョンドゥーイJohn Dewey:学習には最善の経験が必要。教育は興味の刺激、自主性、表現の自由が欠かせない。

現在の教育理論は、教育者は知識を与えるのでなく、学習をファシリテートし、自発性を推奨し、互いに探求することを保証する。実際の状況で新しい知識の適応という文脈にいるときに最も効果的に新しい知識や技術を学ぶことができる。

【考察とディスカッション】
フェローシップで学んだ教育理論や、PCCMであつかうillnessなどの内容も含まれた文献であり、参考になった。また普段何となく実施してるケースカンファレンスも概ねこのやり方に則っていたのでバックボーンが得られた。メタ認知は主に医師患者関係の考察に対して使用していたが、臨床推論の世界でもエラーを防ぐためにメタ認知が注目されていることがわかり、実践してみたいと考えた。

【開催日】
2012年10月17日

「コーチングを忙しい臨床現場のコミュニケーションに活かすには?」

【文献名】
著者名:伊藤 守
文献タイトル: 第4章(p137-171) 
雑誌名・書籍名: 「3分間コーチ」 
発行年:2008年

【要約】
※実際の現場でのコミュニケーションのあり方とその内容に焦点をおいた「第4章」の共有と要約をこの場では行う。
※予備知識:ここでいう「コーチング」とは「目標達成に必要な知識、スキル、ツールが何であるかを棚卸しし、それをテーラーメイド(個別対応)で備えさせるプロセス」を指します。

<ビジョンを作る>
 具体的には現場で行うことは「相手の「視点」を未来に向ける」ことを行います(主にある種の質問によって)。イメージ的には一枚のキャンパスに向かって自分と相手が並んで座って会話するような感じ。部下やスタッフの可能性を開くことは上司の仕事です。

<ビジョンは作り続ける>
 基本的にイメージやビジョンは記憶できません。ビジョンは鮮明なときほど動きやすくなりますが、モチベーションやパフォーマンスが落ちているときはこれが不鮮明・混乱・消失しているときです。3分間コーチではビジョンメーキングをひとつのミッションにしています。方法は「会話・問いかけを通じて様々な可能性を思い描く過程で鮮明にしていく」です。ビジョンについて語り続けていないとすぐにみえづらくなります。コーチは常に少し先の未来を語り続けましょう。

<問いを共有する>
組織のコミュニケーションを活発にするにはどうしたらよいのでしょう?このことには、ただ「問う」のではなく、問いを共有することで初めてコミュニケーションは活発になります。上司や部下の間で問いが共有されていることで初めてコミュニケーションを始める動機が生まれます。問いが共有されていれば問いかけに対して「自分はどうすべきか」を知るためにコミュニケーションを交わす必要性がうまれるのです。3分間コーチではすでに問われているような問いにクローズアップすることを行います。この際、答えを強要してしまうと共有された問いは消失してしまうので注意しましょう。自由に考えることに意味があります。

<問いの共有が行動を起こす>
 問われると部下は普段持たなかった視点を持ちます。問いとはほとんど未来に向けられたものであり、当然視点は未来にむき、より自立的、自発的な行動が促されます。「問い」には人を「わかったつもり」から行動へと移行させる力があります。
 問いの共有のもうひとつの効能は自分の中に存在する非生産的な問いを追い出す働きです。非生産的な問いとは「大丈夫かな・・・?」「これでいいんだろうか・・・?」「ほんとうかな・・・?」といったものであり、これらの問いは別の問いを起こさない限りすぐに頭の中を占拠してしまいます。私たちは常に未来に向けた問いを投げかけ、共有し続けることが大事です。

<個人の目標を設定する>
 私たちは常に自分に関心があります。様々な組織の輝かしいビジョンを見せられても、常にスタッフは「WIIFM What’s in it for me?(それで私はどうなるの?)」と考えています。コーチは「これをすることで、わたしが手にするものは何か?」を考えさせることが必要なのです。「皆さんは自分の周りのスタッフの「WIIFM」を知っていますか?」、互いの個人の目標を共有公開することもまたその達成に協力し合う環境を生むことになります。

<今いる場所を示す>
 ビジョンを共有し、WIIFMを明確にし、目標も設定(共有)した。次にコーチが行うのは「フィードバック」と「フィードフォワード」です。
● フィードバック:「今の君は少し急ぎすぎているかな?」:
 ➢ ・・・結果に対して制御をきかせる
● フィードフォワード:「患者さんは私たちの医療にどの程度満足しているのだろうか?」:
 ➢ ・・・まだ起こっていないことに対して、制御をきかせる。
これらはスタッフが各自の目標に対して「今自分がいる場所」を知らせるのに有用であり、多くのスタッフはこれを求めています。自分が行っていることに対して、自分以外の視点を求めています。

<リソースを最大化する>
 コーチングの目的は直接的には「部下の目標達成」にありますが、それだけではなく、その人の能力を引き出し、リソースを最大化することが大事です。リソースの棚卸し、強みの発見。リソースを発揮する環境とは、これらは全て3分間コーチのテーマとなりえます。
 特にリソースとはその能力のみを引き出しても、それを発揮する場がなければ、その人は「有能」とはなり得ません。「場」とは人と人、全体との関係性そのものです。
 つまりリソースを最大化するとは、①リソースにアクセするする手段を持ち、②リソースを表現する「場」(関係性)をもつこと、が必要とされます。よって②を活かすための能力、関係を築く能力もまた開発することが必要です。

【開催日】
2012年8月14日

クリニカル・パールとは何か

【文献名】
著者名:春田 淳志、錦織 宏
文献タイトル:クリニカル・パールとは何か.
雑誌名・書籍名:JIM
発行年:P562?565, vol.22 no.8 2012-8

【要約】
クリニカル・パールの定義・基準

  Mosby’s Medical Dictionary 8th edition 2009では”A short, straightforward piece of clinical advice(短く単刀直入な臨床上のアドバイス)”、Whitmanは”Creative Medical Teaching, a compilation of definitions and discussions of individual items of medical education(創作的な臨床教育、すなわち、教育実践の場にある個々の記述・議論の集合体)”と定義している。クリニカル・パールを扱った721文献のレビューでは、11の論文がパールの特徴についてディスカッションされ、そのうち5つの論文に定義が記載されているが、共通した包括的な定義は明確になっていない。

  一方、クリニカル・パールについて、Mangrulkarらは以下の4つの基準を示している。

1) ある患者から得られた情報の中で、他の患者に対しても一般化出来るものである。
 一般化に関しては常にその範囲と程度を考慮する必要がある。

2) 経験豊富な優れた臨床医から得られるものである。
 誰が経験豊富な優れた臨床医なのかを判断することは難しいが、ジョンズ・ホプキンス大学のウィリアム・オスラー卿や、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のローレンス・ティアニー先生などが提唱したパールは日本だけでなく、多くの国の医師に受け入れられている。週刊誌等の一般雑誌に掲載された医師ランキングや教授だからといった社会的地位などで判断することは慎みたい。いったんつくられたクリニカル・パールは今の時代、ネット上の書き込みなどで伝わっていき、その情報源を確かめる術がないこともある。現場では指導医から後期研修医に、後期研修医から初期研修医にというように伝わって、疑問視されず受け入れられることもある。クリニカル・パールのようなパッケージ化された情報やトップダウン式の情報伝達は、批判的思考を抑えたり自己正当化の手段として使われてしまったりする可能性もある。自分自身が間違えたラベリングを行っていないかどうかについて常に振り返り、情報源を評価する必要がある。

3) あまり知られていない知識をうまく伝える事が出来る。
 この基準も非常にあいまいである。専門家のほとんどは知っているが研修医は知らないことをパールということもあるだろうし、パールはよく知られるようになればパールではなくなることもある。指導医として言語化されていない事をパールとして伝える事に長けた人もいるが、この「言語化能力」は良い指導医に求められる能力の一つと言っても良いかもしれない。

4) 注意を惹きインパクトのあることが最も重要であり、簡単で、理解しやすく、覚えやすくあるべきである。
 クリニカル・パールは1973年、Norman Milerが提唱したFactoids(事実のようなもの)とも表現される。Factoidsというのは、「証明されていないが、繰り返し印刷されたり放送されたりして信用を得たもの」である。証明されるというよりも、受け入れられるということが特徴である。
(Mangrulkar RS, et al : What is the role of the clinical “pearl”? Am J Med 113 : 617-624, 2002)
  これらの点を十分に理解した上で、臨床医は診療ツールとして、また指導医は指導のツールとして、クリニカル・パールを使う。
クリニカル・パールと科学的思考における推論
  科学的思考には、演繹と帰納という2種類の推論が含まれている。臨床現場では、科学的思考におけるこれら2種類の推論をうまく組み合わせることが必要である。つい演繹的思考で書かれたエビデンスをもとにして内的妥当性を考える事が科学的思考と考えてしまいがちだが、帰納的なクリニカル・パールも臨床現場では有用な情報であり、これらを発信しデータの量を積み重ねる事もリサーチクエスチョンとして質的検証していくのも、重要な科学的任務の必要であるといえるかもしれない。

クリニカル・パールと臨床教育

  臨床教育のツールとして使用する時には、以下の4つの基準で判断するのがよいといわれる。
① 情報源の妥当性の検討

② エビデンスとの比較
 すべてのパールにエビデンスを調べるのは実際的ではないが、検証する姿勢は持つべきである。

③ 安全性と費用対効果の検討:特に治療に関して

④ 実践性・転用可能性の検討
 高安病のマネージメントについてはプライマリ・ケアの雑誌よりもリウマチ科にとって役に立つ情報だろうし、専門家は皆知っているが研修医が知らないことであれば、研修医を指導する時には役に立つ情報になるだろう。集団・背景においてそのパールが転用可能かどうか、一般化の範囲を検討して発信することも必要である。

 これまでのレビューではクリニカル・パールの包括的で明確な定義は記載されていないが、Mangrulkarの4つの基準は参考になる。パールのような短く包括的で分かりやすい情報は受け入れやすく、盲目的になりやすいが、適応に関しては情報源・信憑性・安全性・費用対効果などを考慮し、一般化の程度と範囲に留意する必要がある。もし、無批判的にパールを適応するとそれが患者へのリスクとなることもありうる。

【開催日】
2012年8月8日

2次文献についての質評価

【文献名】
文献タイトル:Speed of updating online evidence based point of care summaries: prospective cohort analysis
雑誌名・書籍名:BMJ 2011
発行年:343:d5856

【要約】
<Objective>
 To evaluate the ability of international point of care information summaries to update evidence relevant to medical practice.

<Design>
 Prospective cohort bibliometric analysis.

<Setting>
 Top five point of care information summaries (Clinical Evidence, EBMGuidelines, eMedicine, Dynamed, UpToDate) ranked for coverage of medical conditions, editorial quality, and evidence based methodology.

<Main outcome measures>
 From June 2009 to May 2010 we measured the incidence of research findings relating to potentially eligible newsworthy evidence. As samples, we chose systematic reviews rated as relevant by international research networks (such as, Evidence-Based Medicine, ACP Journal Club, and the Cochrane Collaboration). Every month we assessed whether each sampled review was cited in at least one chapter of the five summaries. The cumulative updating rate was analysed with Kaplan-Meier curves.

<Results>
From April to December 2009, 128 reviews were retrieved; 53% (68) from the literature surveillance journals and 47% (60) from the Cochrane Library. At nine months, Dynamed had cited 87% of the sampled reviews, while the other summaries had cited less than 50%. Overall, 114 systematic reviews (89%) had been cited by at least one point of care summary. The median follow-up time was 33 weeks (range 1-60). Table 2. reports the proportions of citations by summaries over time and the hazard ratio for each summary compared with the top performer. The updating speed of Dynamed clearly led the others. For instance, the hazard ratios for citations in EBM Guidelines and Clinical Evidence versus the top performer were 0.22 (95% confidence interval 0.17 to 0.29) and 0.03 (0.01 to 0.05). This means that the updating speed of Dynamed is 78% and 97% greater than those of EBM Guidelines and Clinical Evidence, respectively. The
median time to citation was 7.7 weeks (range 7-8.2) for Dynamed and 42 weeks (range 34-maximum not reached) for EBM Guidelines.

<Limitations>
Firstly, the total number of citations in the point of care information products should have been taken into account. Secondly, citational analysis counts only bibliographic references without going deeply into the content of the citation.  Qualitative analysis of the updating process and how new evidence is incorporated and affects recommendations should also be taken into account in assessing whether one summary is better than others. We did not directly assess how many systematic reviews in our sample called for a change in clinical practice. 
Finally, we did not consider the updating of results from studies with other designs (such as randomised clinical trials) as we think that systematic reviews are preferable to support decision making at the point of care..

<Conclusions>
 Other studies have assessed other dimensions such as user’s satisfaction, how well different online point of care services answered questions arising in daily clinical work, content development, and evidence based soundness. Updating is only one aspect of the overall quality of a point of care product. But, point of care information summaries include evidence relevant to practice at different speeds. A qualitative analysis of updating mechanisms is needed to determine whether greater speed corresponds to more appropriate incorporation of new information.

【考察とディスカッション】
This literature cannot say which point of care summaries is superior to others. But, it is useful for me to know the difference of the Top 5 point of care summaries.
I’m getting interest in the approaches to content development which found in “Reasons for different updating speeds” section. 
“The updating process is based on two phases: identifying important new evidence and assessing whether it offers new information that might change recommendations for clinical practice. In addition, a third phase exists in which the new evidence should be included in the “old” body of knowledge. Updating is not only a matter of literature surveillance but implies a critical evaluation of what a new item of knowledge adds to other works and what that means for clinical practice.”
There is no major differences between products in the first phase, but in the second and third phase, how a new evidence is deemed relevant and then incorporated into the body of the summary probably largely dictates the different updating speeds.  
This process is similar in mechanism to our practice, I think.

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【開催日】
2012年7月18日

Clinical Prediction Rules その特徴・弱点は?

【文献名】

Gavin Falk, clinical research fellow, Tom Fahey, professor of general practice.
Diagnosis in General Practice: Clinical prediction rules BMJ 2009;339:(Published 7 August 2009) 

【要約】

<Clinical Prediction Ruleとは何か?>

Clinical Prediction Ruleは、症状・徴候・診断的検査を組み合わせて点数化し、その結果から、対象となる疾患を持つ可能性に応じて、患者を層別化する。その際に注目されるアウトカムは多種多様で、診断・予後・治療全般に用いられる。



Clinical Prediction Ruleは一般的に臨床応用されるまでに3つの段階を踏む。

①ルールの開発;探索的因子(症状・徴候・診断的検査)の単独もしくは組み合わせでの影響を確認する段階。

②より狭いまたは広い範囲での妥当性確認;異なる集団での妥当性を調査する段階
③Impact analysis;RCTを用いてClinical Prediction Ruleが患者アウトカム・臨床家の行動・資源利用などに与える影響を調べる段階。例としては、CAGE questionnaireが挙げられる。



<どんな時に用いられるか?>
最もよく用いられるのは、疾患の存在する可能性をより洗練して見積もる段階においてである(下記Fig1参照)。適応するためには、ベイズの定理(事前確率を見積もり、尤度比から事後確率を導き出す)の考え方が必要である。例えばプライマリケアセッティングでは、疾患の除外を行ったり、注意深い経過観察が適切と考えるための根拠がほしい場面が多い。そのような状況では、感度が高く、NPV(陰性適中率)が低いRuleが適切である。
(Bayesの定理においてClinical Prediction Ruleを組み合わせた具体的な利用例がノモグラム併記で原文にあります。ご参照ください。)



<どんな時に誤りが起こるか?>
一般的な診断的検査と同様に、その妥当性や臨床上での適応性に影響を与えるバイアスに弱い。
ヒューリスティック※1は状況が単純であればうまくいくのだが、状況が複雑になってくると誤まった判断の原因となる。
しばしばルールの適応時に起こり得るエラーは、

①疾患の事前確率を見誤る場合
例;利用可能性バイアス 非常に強烈だったり、印象に残りやすい出来事、例えばまれだが記憶に残る疾患 の可能性を高く見積もってしまう)

②ルールの開発時の手法的問題によって誤りが起こる場合
例;ルールの正確性が確認された母集団と、ルールが適応された患者が臨床的に異なったスペクトラムを持っていた場合。(※発表者捕捉この場合はスペクトラムバイアスといって、診断的検査が持つ感度と特異度は変化してしまうため、ルール自体の性能が変わってしまう。) 通常はルールが開発された際の母集団の方が重症で進行した疾患であることが多いため、感度・特異度ともに実際よりも大きく見積もられがちになる。

③ルールにおける量的な見積もりが不正確な場合、そのルールからくる診断的・予後的・治療的な推奨はさらに不確かなものになってしまう。
プライマリケアセッティングにおけるPrediction Ruleの応用の難しさは、CRB-65スコア(肺炎の予後推定スコア)においてもわかる。プライマリケアセッティングで応用されたときに、スコアは低リスク群の患者を的確に導き出したが、では、どこで紹介を考慮すべきなのか、そしてそれがどの程度その後のマネージや生存率を変えるのかについてははっきりしなかったのである。



<どのようにして(弱点を)改善することができるのか?>

・Clinical Prediction Ruleの導入・報告のための、標準的な方法論が報告されている。STARD※2と呼ばれるフレームワークがおそらくはルールの開発・報告の質を上げるだろうし、特にスペクトラムバイアスや選択バイアスへの対策となるだろう。



・近日は、サンプルサイズを多くして、ルールの正確性を改善させようとする試みもなされている。例えば、
UKのプライマリケアでは咽頭痛に関する合併症を予測する臨床的な特徴を割り出すために18000人の咽頭痛患者を蓄積しての研究がおこなわれている。www.descarte.co.uk



・最後に、ルールを正確に想起し、適応するためのコンピューターによるシステム(clinical decision support systems)が開発されつつある。



【参考】

※1ヒューリスティック;人が複雑な物事を分析したり、解決したりするときに、暗黙で用いている簡便な解法や法則を指す。分類として、「代表性」、「利用可能性」、「固着性」といったものがある。

「代表性ヒューリスティック」;特定のカテゴリーに該当しやすいと思われる事柄の確率を過大に評価する。 消化性潰瘍=腹痛と、代表させてしまうと、腹痛がない患者において潰瘍の可能性を不適切に棄却してしまう。(実際には腹痛がない消化性潰瘍はかなりの割合で存在する)
一般的に診断が「難しい」とされる疾患群は「我々の代表的と思っている特徴」と「実際の特徴」のずれが大きいことが多いようです。(例;感染性心内膜炎、大動脈解離、肺血栓塞栓症)

「利用可能性ヒューリスティック」;上述。

「固着性ヒューリスティック」:アンカリング、ともいう。初めに「これだ!」と思ったものからなかなか離れられない。例;胸痛+ST上昇⇒MIと思ってしまうと、なかなか大動脈解離は思い浮かばない。



※2 STARD;http://www.bmj.com/content/326/7379/41.1.full.pdf ←を参照ください。


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Fig 1 Stages and strategies in arriving at a diagnosis



【開催日】

2011年9月28日

精神科・行動科学領域での事例の振り返りはレジデントに何をもたらすか

【文献名】
Cheri Bethune , Judith Belle Brown
Residents’ use of case-based reflection exercises.
Can Fam Physician Vol. 53, No. 3, March 2007, pp.470 – 476

【要約】
<OBJECTIVE>
Qualitative exploration of the experience of family practice residents in using semi structured case-based reflection exercises as a learning medium.

<DESIGN>
Qualitative study using in-depth interviews.

<SETTING>
Memorial University’s Family Medicine Residency Program in St John’s, Newfoundland.

<PARTICIPANTS>
Graduates of the residency program who had taken part in a pilot project that involved completion of case-based reflection exercises as a medium for enhancing learning.

<METHOD>
In-depth interviews were conducted with graduates who had used the reflection exercises during their postgraduate training. All participants were in active practice. All of the audiotaped interviews were transcribed verbatim. Thematic analysis continued until saturation was reached.

<MAIN FINDINGS>
Eight interviews were conducted that included 5 women and 3 men. Three themes emerged from the data analysis: effect on the learning process, effect on the patient-doctor relationship, and effect on the learner.

<CONCLUSION>
The experience of using the reflection exercises appeared to affect how family practice residents learned. Three major themes emerged: the reflection exercises as a continuing education process offered participants a strategy for future learning in practice; the exercises offered a different perspective on the patient-doctor interaction that had doctors looking forcues to deeper meaning; and the exercises engaged the learners in a reflective process that revealed qualities about themselves that gave them personal insight. These reflective strategies have relevance for all physicians in their attempts to incorporate new knowledge and understanding into their practices. Similar dimensions are articulated in the educational literature, and this study supports the usefulness of case-based reflection as a catalyst in the education of family physicians.

【開催日】
2011年2月9日

医学の専門的能力に関する認知学的な考察:理論とその適応

【文献名】

Schmidt HG, Norman GR, Boshuizen HP:  A cognitive perspective on medical expertise: theory and implication. Acad Med. 1990 Oct;65(10):611-21.




【要約】
<従来の仮説>

・臨床技能は状況と独立しており、獲得すると新しい問題ですら上手に解決することができる

・病歴/身体診察、データの解釈、診断、臨床推論、マネージメントなどから構成

○Content Specificity(内容の特異性)

・生物医学的な知識と問題解決のための経験則は、個々の問題のレベルになると関連性は低い

○専門性とデータの収集
・専門性が高まれば重要な臨床データの収集が増すという仮説は支持されない
 
→ 初心者(学生、レジデント)と同じぐらいの収集力

○基準の設定

・問題解決の基準を作成するのは想像されるほど明確なものではない

○中間効果
・学生がレジデントになったとき、一時的に臨床推論能力が低下することあり

・専門家はテストで評価することが困難な、ある種の特別な知識を獲得する

○臨床診断の過ち

・今までは、ショートカットの利用や詳細への不注意、明確な知識の欠如が原因と考えられていた

・実際は長い診察時間と関連していることが多い



<臨床推論の段階理論>

○以下の3つの想定に基づく
・医学における専門性の獲得に置いて、学習者はいくつかの移行段階を通過し、それは行動の基盤にある異なる知識基盤に特徴づけられる

・こうした知識の基盤は専門性の発達の中で衰えて駄目になることはなく、状況がそれを必要と
  するときは将来も活用できる

・経験のある医師は、ルーチンの症例を診断する際に、我々が「病気のスクリプト」と呼ぶ知識
  基盤を操作していく

○病気のスクリプト

・病態生理ではなく、疾患に関する臨床的に関連する豊富な情報、その結果、それが生じたコンテクストを含む


[Stage1:詳細な因果関係のネットワークの発展]

・医学部4回生までの本での知識・理論をネットワークでつなぎ、状況を説明する

[Stage2:詳細なネットワークの集合を要約する]
・繰り返しの経験を通じて、このネットワークを高いレベルの簡潔な因果関係モデルへと要約し
  症状や徴候を説明し、診断のラベルに組み込む

・これは実際の患者に遭遇する中で起きる変容である

[Stage3:病気スクリプトの出現]
・要約と同時に因果関係の知識構造が、「病気スクリプト」と呼ばれるリストのような構造へと
  変化していく
・多くの患者との遭遇の中で、学習者は病気の表現に多様性があることを感じる

・そして、病気が生じる背景にあるコンテクストの因子に注意を払い始め、スクリプトが生じる
 
☆illness script:diseaseとillness/contextが一体となって記憶される症例のまとまり

○通常の症例では、スクリプトを探し、選択し、検証することとなる

・病気スクリプトは、連続的な構造を持つことがポイント
・異なる医師は同じ疾患に対しても全く異なるスクリプトを開発することとなる

[Stage4:即席のスクリプトとして患者との出会いを蓄積]
・多様な経験を積むことで、多くのスクリプトを蓄積するプロセスが専門性の獲得

・似たようなスクリプトを適用することで多くの症例に対応することが可能になる
 
→ パターン認識はショートカットではなく、不可欠な技能である



○こうした段階は徐々に獲得されていくが、専門家は前の段階に戻ることは可能であり、状況によって使い分けることができる

○専門家は「深いレベルの情報処理」で働いているのではなく、経験と以前の教育から
 生じた様々な形態の知識の表現を自由に使いこなすことと関連していると言える



<教育への適応>
・問題の数、カリキュラムの中での連続性、それぞれから引き出される情報が極めて重要となる

・どれぐらいの数の問題を解決していけばよいかは不明


<学習者の評価>

・2層に分けて実施する方法
 
1.まず簡単な最低限の情報を持つ多様な状況を提示し解決に至ることを求める
2.正解にたどり着かなければ、問題をより詳しく、追加情報を用いて解決していくこととなる


【考察とディスカッション】
・ 多くの医学生は疾患(disease)経験の多様さ、多さを追い求める傾向にある。私たち指導医はそのような学生にこのような疾患の経験を追い求めるだけ ではなく、患者中心の医療の方法における「病い(illness」」の側面も探求するように働きかけることができる。このことにより学生に 「Illness script」が形成されることになるだろう。
・ 同時に学習者のステージについても注意を払う必要がある。臨床推論「Stage theory」でいうStage2における単純化された因果モデルを高いレベルで学んでいない場合、患者の背景(context)の重要性を強調すること により学習者圧倒されてしまうであろう。指導医はこの点において間違いを犯しやすいと考えており、「Illness script」の学びは卒後3~4年くらい、stage3の「Emergence of illness script」に入る痛ある段階が望ましいと思われる。
・ 改めてIllness script形成が自分の診療のコアにあると痛感する。家庭医の診断能力を他の領域の医師に説明する際に、こうした認知論的観点から「包括的ケア」の妥当性が満たされることを示すのも一つの方法であろう。
・ こうした教育研究も是非HCFMの一研究領域としていきたいものである。その際は、やはり医学部教育ではなく、現場の臨床経験に基づき生涯学習に連動するようなテーマが良いだろう。

【開催日】
2011年2月2日(水)

~新しいCSR(カルテを利用したケースレビュー・振り返り)のワークシート~

【文献名】
Shirley Schipper : Structured teaching and assessment; A new chart-stimulated recall worksheet for family medicine residents: Can Fam Physician 56(9) 958 – 959, 2010.

【要約】
Evidence and Best Practice
・CSRは、診療の強みと弱みを同定するツールとして効果があり信頼性がある。
・CSRの信頼性と妥当性は家庭医療学の分野とそのほかの専門家、リハビリの領域で発展してきた。
・CSRの最もよい利点はFeedbackをすぐにかけることができる評価ツールであることである。
・学習評価のためのレジデント教育へのCSRの適用は、論理的Stepがある。
・今までのCSRではPatient centered careの評価が弱かったため今回再作成した。またCanMEDS-FMの役割(2009年提唱のカナダの家庭医の役割)に則って質問を再構成した。
・新しいCSRの私たちの使用経験では全てのレベルの学習者に有用であり、特にハイレベルに機能していて外来でのFeedbackが少なくなりがちな優秀な学習者に役に立つことがわかった。また困難を抱えている学習者にとってもCSRワークシートは、知識のギャップを表面化し、臨床推論スキルを評価し、共通の理解基盤に立つための問題点を同定するために有効であった。

Using the CSR tools
・学習者は課題の準備をする。指導医は学習者にカルテをレビューし事例についてディスカッションを行うことを知らせる。
・学習者はこれが教育セッションであることを知らされ、学習者はカルテ記載やカルテレビューでFeedbackを受けることを知らされる。
・レビューのためのカルテが選定される。
・指導医、学習者でカルテ記載をみて、カルテ記載についてのFeedbackをワークシートのBoxAに書く。
・質問リストから、患者中心のケアや家庭医の役割について切実なものを選んで議論のガイドとする。
・議論に対するFeedbackをワークシートのBoxBに記入する。
・Feedbackを学習者に渡し、ポートフォリオにはさんでもらう。

Conclusion
・CSRは各プログラムや自身のニーズに合わせて使用される。
・コンピテンシーに基づくシステムの一部として、また困難を抱える学習者について、有用性を更に調査中である。

*CSRワークシートの使用説明書・質問集の和訳、CSRワークシートのVer1.0は添付文章参照。

【開催日】
2010年12月8日(水)

~家庭医療の発展におけるメンターシップの重要性~

【文献】
Hajar Kadivar: The Importance of Mentorship for Success in Family Medicine. Ann of Fam Med 2010 8:374-375.

【要約】
メ ンターシップは家庭医の個人的な成長やキャリア形成の上で非常に重要な役割を持っている。家庭医療学において学術、研究の領域で適切なフィールドを構築す るためにも必要となる。この記事ではメンターシップの重要性と、主要な要素なコンポーネントを見出し、メンターシップの個人や施設における障壁を同定し、 それらを乗り越えるステップとしたい。

メンターシップは医学の専門性発展のための重要なformal social supportである。このサポートは以下の4つに分類される。
(1) emotional support・・・共感や信頼を提供
(2) instrumental support・・・具体的な支援を提供
(3) informational support・・・アドバイスや情報を提供
(4) appraisal support(評価)・・・形成的なフィードバックと激励をする
こ れらは重要であるが、一人のメンターが全てを提供する必要はない。たいていの人には複数のメンターがいて、彼らが相補的に支援してくれていることが多い。 メンターはメンティーが研修を受けている際には提供されるものであるが、研修早期からずっとメンタリングを受け続けることが重要である。

学術的な分野にいる医師は十分な経験や時間がないと感じているため、メンターシップを提供することに抵抗を感じることもある。メンティーは多種多様な経験レベルのメンターを必要とし、それぞれのレベルのメンターから様々な学びを得る。

メ ンターシップはたいてい個人レベルに対して提供されるが、その利益は個人と組織の双方に認められる。それゆえ、施設間の障壁が取り除かれ、メンターシップ に対する動機づけがなされることで組織は変化する。特に家庭医療が研究の分野での成功を収めるためには重要となる。家庭医が小児科医や内科医と同様にメン ターシップを受けたとしても、フェローシップ終了後のメンターシップはほとんど受けることができず、臨床家や研究者としてのファカルティのポジションもあ まりなく、ほとんど論文も出てこないだろう。よって、研究分野において家庭医療をもっとアピールし、研究、論文を増やしていくことが望まれるのであれば、 新しい研究者に対するメンターシップ制度の構築は不可欠である。

North American Primary Care Research Group (NAPCRG)は、地域においてメンターがいないprotégésのためにメンターシップを提供するワークショップやプログラムの開発を行っている。こ のプログラムの目標は、家庭医療におけるリサーチメンターの数、質、効率、そして生産性の向上にある。Grant generating project(STFM、AAFP、NAPCRGの共同出資)は研究活動に対して支援者がない新人の研究者に対して教育とメンターシップを提供する機会 を与えている。

【開催日】
2010年10月20日(水)

~カルテを利用した教育方法についての検討~

【文献】
Warren Rubenstein:Medical Teaching in Ambulatory Care 2nd Ed:P66-72, 2003

【要約】
TEACHING STRATEGIES
・患者:ケースディスカッション、ケースレビュー、直接観察
・カルテ:カルテレビュー、カルテを素にした再想起、標準化されたカルテcheck(今回はここ)
・教育技術:ロールプレイ・シュミレーション、短く教訓的なプレゼン

カルテを利用したもの
カルテレビュー
1説明:
 カルテごとに病歴、所見、検査、治療の記載について順に見て、必要なときに議論をする。
 同時に読みやすさ、フォーマット、長さ、徹底具合も見ることが出来る。
2適応:
 外来を一人でこなせるが、外来後にはレビューが求められる程度の学習者に適応がある。
学生や初期のレジデントの場合では内容をカルテの書き方にのみ集中するほうが良い。
3利点:
 指導医のcheckによるケアの安全性の確保
 書かれたカルテの質を保証する
 言葉だけの報告に依存し難い
 事例を議論や教育の資源とすることができる
 カルテの書き方や電子カルテの使い方の指導が可能となる
4限界:
 研修医のカルテ記載の質と量に依存する
 問診や身体診察のスキルは評価できない
5手間:
 通常業務への妨げは最小限
 患者を診終わってからの時間を設定
6例示:省略
7コツ:
 教育的好機を常に意識しておく
 この方法を利用するということは診療カルテを重視しているというメッセージを発している
 質の保証のための大切なツールになる

カルテを素にした再想起
1説明:
 1対1の教育セッションであり、少なくとも30分は必要となる。
 いくつかの患者のカルテを学習者に選んでもらい、ランダムに二つほど選ぶ。
 カルテを一冊選んで渡し、段階を追った形式で患者を思い起こしレビューするよう依頼する。
 カルテは、何が起こったか詳細に思い出すためだけでなく、その外来中にどのような思考状態だったのかという想起も刺激する。以下のように聞いてみる。
 「この時点でどう考えていましたか?」「なぜこれらの質問をしたのですか?」
「どうしてそう決めたのですか?」「なぜそこで止まったのですか?」
「他に考えていたことは?」「この時点でのもっともらしい診断は?」
「このオプションを選んだのはなぜ?」
これらを診察(病歴、診察、鑑別診断、重症度、疫学、アクションプラン、検査の選択、治療)のそれぞれの段階で行い、次の段階に行く前に思考過程を問うことを続ける。想起を支援し続けることが必要で、責めてはいけない。
2適応:
 学習者の臨床的な根拠と意思決定プロセスを理解し、改善するための評価や支援に利用できる。
 特にマネージメント不足、一歩遅れてしまう、安定した意思決定が出来ないように見えるなどの患者のケアに困難を抱えた学習者には有用である。
3利点:
 意思決定プロセスをレビューするための強力な教育方略となる。
 カルテそのもので「実際に何が起きたのか?」を詳細に知るための手がかりとなる 
4限界:
 時間が必要
 通常のカルテレビューとは異なった特別な時間を必要とする
 (記憶の問題で)診療後48時間以内には行ったほうが良い
 学習者に不安を与える得る方略なので、指導医-学習者の信頼関係が必要とされる
5手間:
 通常の患者ケアのcheck以外の余計な時間が必要なる
 時間は通常診療もしくは個人の時間が消費される
6例示:
 ここ二日で診た印象的な患者さんを4例選んでもらう。そこから2例選ぶ。学習者の仮説を評価しながら、次回は仮説意外での短い議論となるための準備をする。
7コツ:
 偶然のバイアスが入るが、2週間に一回以上は行わないようにする
 問題のある学習者のみならず、高いレベルの学習者にも意思決定プロセスを教えるため利用される時にはビデオレビューと並行して開催することができる

標準化されたカルテcheck
1説明:
 カルテレビューを完成させるもう一つの方法。
 自分のペースで行うカルテのオーディットで15-30分あれば可能である。
 事前に後日開催することを説明し、checkリストの基準を作って、カルテのどこをcheckするのかを案内しておく。十分で包括的な病歴聴取が出来ているのかの有効で信頼性のある方法となる。
 そのために自分の診療所で良質なcheckリストをつくる事は良いプロジェクトとなるし、カルテレビューの際に、どんな情報を重視しているのかを伝える方法となる。
2適応:
 通常業務内に顔のあわす機会が少ない場合の教育方法
 余分な時間に学習者がいなくても、学習者の仕事ぶりをレビューすることができる
3利点:
 指導医のcheckによるケアの安全性の確保
 書かれたカルテの質を保証するものとなる
 時間を選ばない
 Checkリストは、教育者が行うべき特定のcheckの備忘録として機能する
 記載された情報によって、学習者のケアのマネージメントやカルテの記載を支援してくれる
 学年のすすんだシニアレジデントに対して、自律して働いた後で評価をすることを可能にする
 直接観察よりは時間が短くてすむ、しかし教えるべき修正点の情報を集める必要がある
4限界:
 教育者による精密な吟味と、レビューの結果をまとめて伝える機会で、カルテレビューよりは時間がかかる。
 学習者のカルテ量に依存する
 問診や身体診察のスキルは評価できない
5手間:
 Checkリストの考慮と準備の時間、実際のレビューの時間が必要となる。
6例示:省略
7コツ:
 もととなるCheckリストを事前に渡しておく。
 不意な評価ではなく、計画された学習経験とする。

【日付】
2010年7月21日(水)